女性蔑視発言をきっかけに、五輪・パラリンピック組織委員会会長を辞任することとなった森喜朗氏。森氏は自著『遺書 東京五輪への覚悟』(2017年 幻冬舎刊)に、組織委の仕事は「無報酬」であることを誇らしげに記していた。 〈(ロンドン五輪組織委のセバスチャン・コー会長は)年間六千万円だか八千万円だかを貰っていたそうです。それに引き換え日本の組織委員会会長は、一円も貰っていないどころか、飯代も自分、車代も自分、運転手も自分で雇っています〉 だが、その“ボランティア精神”は本当なのだろうか。森氏は2012年に政界を引退したが、自身の政治資金管理団体「春風会」は2017年まで存続した。その収支報告書を見ると、組織委会長に就任した2014年1月以降も多額の資金を集めていたことが分かる。 2014年は年間で6000万円超の収入があり、そのうちパーティー券収入は約5200万円。2016年にはザ・プリンスパークタワー東京の忘年会で一度に4902万円のパーティー券収入を得ている。政治資金規正法に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授が指摘する。 「収支報告書を見ると、プリンスパークタワーのパーティー券の購入者数は608人で、企業や団体が買ったと推測できる。現役の国会議員以上の集金力です。 引退後も2014~17年まで自民党最大派閥の清和政策研究会へ計1300万円の献金を続けており、政界に大きな影響力を維持していたことが想像されます」 パーティー券の購入者には森氏の地元・石川県の企業が多く名を連ねるが、その中に東京五輪と関連する会社もあった。 オフィスの間仕切りやトイレの個室の壁などパーテーションメーカーとして国内トップシェアを誇るコマニー(石川県小松市)はそのひとつ。春風会の収支報告書によれば、同社は2014年に40万円分のパーティー券を購入しており、東京都オリ・パラ準備局が発表した「東京2020大会に係る共同実施事業の契約案件一覧」には、選手村関連の間仕切り工事を受注したことが記されていた。 日経電子版(2018年11月29日)では、〈コマニー、五輪効果〉の見出しで、〈首都圏で建設が続くオフィスや五輪関連の施設からの受注が増加(中略)増収増益に〉と取り上げられている。 パーティー券の購入についてコマニーに聞いたが、「回答につきましては差し控えさせていただきます」(経営企画部社長室)とのことだった。
女性蔑視発言をきっかけに、五輪・パラリンピック組織委員会会長を辞任することとなった森喜朗氏。森氏は自著『遺書 東京五輪への覚悟』(2017年 幻冬舎刊)に、組織委の仕事は「無報酬」であることを誇らしげに記していた。
〈(ロンドン五輪組織委のセバスチャン・コー会長は)年間六千万円だか八千万円だかを貰っていたそうです。それに引き換え日本の組織委員会会長は、一円も貰っていないどころか、飯代も自分、車代も自分、運転手も自分で雇っています〉
だが、その“ボランティア精神”は本当なのだろうか。森氏は2012年に政界を引退したが、自身の政治資金管理団体「春風会」は2017年まで存続した。その収支報告書を見ると、組織委会長に就任した2014年1月以降も多額の資金を集めていたことが分かる。
2014年は年間で6000万円超の収入があり、そのうちパーティー券収入は約5200万円。2016年にはザ・プリンスパークタワー東京の忘年会で一度に4902万円のパーティー券収入を得ている。政治資金規正法に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授が指摘する。
「収支報告書を見ると、プリンスパークタワーのパーティー券の購入者数は608人で、企業や団体が買ったと推測できる。現役の国会議員以上の集金力です。
引退後も2014~17年まで自民党最大派閥の清和政策研究会へ計1300万円の献金を続けており、政界に大きな影響力を維持していたことが想像されます」
パーティー券の購入者には森氏の地元・石川県の企業が多く名を連ねるが、その中に東京五輪と関連する会社もあった。
オフィスの間仕切りやトイレの個室の壁などパーテーションメーカーとして国内トップシェアを誇るコマニー(石川県小松市)はそのひとつ。春風会の収支報告書によれば、同社は2014年に40万円分のパーティー券を購入しており、東京都オリ・パラ準備局が発表した「東京2020大会に係る共同実施事業の契約案件一覧」には、選手村関連の間仕切り工事を受注したことが記されていた。
日経電子版(2018年11月29日)では、〈コマニー、五輪効果〉の見出しで、〈首都圏で建設が続くオフィスや五輪関連の施設からの受注が増加(中略)増収増益に〉と取り上げられている。
パーティー券の購入についてコマニーに聞いたが、「回答につきましては差し控えさせていただきます」(経営企画部社長室)とのことだった。
「news」カテゴリーアーカイブ
精子バンク、生まれた子の権利「認めて」 国内の購入者150人超
精液の中に、精子が見つかりません―。関東に住む30代の山口希さん(仮名)は2年前、夫の精液検査をした医師からそう告げられた。「まさか、そんな」。ぼうぜんとしたが、それでも子どもがほしいという夫婦の思いは変わらなかった。養子縁組、海外での治療…。調べるうちに、デンマークに本社のある世界最大の精子バンク「クリオス・インターナショナル」が、日本に窓口を開設したと知った。(共同通信=白川愛)
▽生まれた子の権利
窓口では精子の輸入サポートのほか、国内で治療できる病院も紹介してくれると知り、購入を決めた。専用サイト上で、精子提供者(ドナー)のプロフィルや幼少期の写真を見比べ、幼い頃の夫と雰囲気が似ているドナーを選択。精子を輸入して医療機関で顕微授精し、現在妊娠中だ。夫も「自分とは血縁がないからこそ、ドナーを選んだ責任を持つことで、父親になる覚悟が強まるはずだ」と賛同している。
輸送用の箱に入れられた、提供精子が入った液体窒素タンク(クリオス・インターナショナル提供)
山口さんは、「子どもが成長して『自分のルーツを知りたい』と思った時、ドナーの情報にアクセスできる権利を保障したい」と望む。クリオス社にひかれたのは、ドナーの情報を開示する仕組みがあるからだ。
同社によると、ドナーは身元開示と非開示を選ぶことができ、開示の場合、生まれた子どもが一定の年齢になって希望すれば、身元に関する情報を知ることができる。国内では、購入者の約7割が開示を選ぶという。
国内には、こうした「出自を知る権利」を保障する治療法がない。長年、匿名のボランティアが精子を提供する「非配偶者間人工授精(AID)」が一般的だったが、ドナーの情報は血液型程度しか開示されない。「出自を知る権利を担保した治療が当たり前にできる仕組みを作り、不妊治療の選択肢を増やしてほしい」と山口さんは訴える。
▽150人超が購入
クリオス社は1987年に創設され、ドナー数は世界最多。約100カ国の医療機関や個人に精子を販売し、これまでに6万5千人以上が生まれている。19年2月、東京都内に窓口を設置して以降、30都府県の夫婦や独身女性、子どもを持ちたい性的少数者らに精子を販売し、購入者は150人を超えた。
クリオス・インターナショナルが作成した日本語版パンフレット
クリオス社によると、購入者の約7割は、同社と協力関係にある国内の医療機関で体外受精や人工授精を受けた。日本産科婦人科学会(日産婦)は会員医師に対し、営利目的での精子提供に関与することを会告で禁じているが、一部の医療現場では既に、商業的精子バンクを容認しているのが実態だ。
日本事業責任者の伊藤ひろみさんは、国内では近年、精子ドナー不足が深刻で、医療機関が子どもを望む患者のニーズに応えられなくなっていると指摘。新型コロナウイルスの影響で、海外での不妊治療を諦めるケースも増え、クリオスの利用者増加につながったとみている。
▽ルール整備
国内では、夫婦以外の精子や卵子を使った生殖補助医療に関する法整備が進む。昨年末、生まれた子どもの法律上の親を明確化する民法の特例法が成立。精子提供の場合は、治療に同意した夫が父になり、卵子提供では出産した女性が母になると定めた。
ただ、精子などの売買に関する規制や、出自を知る権利を巡る議論は先送りに。商業的精子バンクについては、個人情報管理などの懸念も指摘されており、特例法成立の過程でも慎重な意見が上がった。
不妊治療に関わる医師らが集まる学会で、クリオス社の展示ブースに立つ伊藤ひろみさん=2019年11月、神戸市(提供写真)
「欧米では、精子バンクが肯定的に受け入れられている」と伊藤さん。日本国内でも、厳密なドナーの検査や精子の衛生管理といった安全面、出自を知る権利への配慮が利用者や一部の医療機関から高く評価されているという。将来は日本でドナーを募り、不妊治療の選択肢の一つになることが目標。そのためにも「国は生まれた子やドナー、育ての親の意見を聞いて、精子バンクに関するルールを早急に整備してほしい」と訴えている。
普通の会話の数分後に急変 新型コロナの恐るべき特性 神奈川で相次ぐ療養中の“突然死”
新型コロナウイルスの感染が拡大する神奈川県で、軽症・無症状の感染者が自宅や宿泊療養施設での療養中に死亡する事例が相次ぎ、医療関係者が危機感を募らせている。保健所の担当者らは患者の“突然死”を防ぐため、監視体制の強化に努めているが、感染者が増え続けるなかで、業務に手が回らなくなっている現状もあり、ジレンマにさいなまれている。(外崎晃彦)
神奈川県内の保健所などによると、「第3波」とよばれる感染拡大のなか、昨年12月以降、軽症や無症状と診断され自宅や宿泊療養施設での療養中などに容体が急に悪化し亡くなった事例が、少なくとも計7件起きている。それ以外にも、自宅で死亡が確認されてから陽性が確認されるといった事例もあり、患者本人や周囲が気づかないまま病状が進行し容体が急変することがあるというこの病気の恐ろしい特性を浮き彫りにしている。
既往症なくても
関係者に衝撃を与えたのが1月9日に県が発表した、大磯町の70代女性が亡くなった事例だ。女性は昨年12月31日にせきなどの自覚症状が現れ、その後PCR検査を受け、年明け後の1月6日に陽性が判明。7日、自宅で容体が急変し、救急搬送先の医療機関で死亡した。
県担当者が驚くのはその急変ぶりだ。「同居家族と普通に会話をしていて、家族が別の部屋に行って戻ってくるそのわずか数分の間に意識を失っていたようだ。ついさっきまで元気にしゃべり、受け答えができた人が突然、倒れてしまった」という。この女性に既往症はなかった。
既往症がないにもかかわらず、自宅療養中に亡くなった事例は他にもある。1月28日に県が死亡を発表した伊勢原市在住の50代男性だ。17日にせきや喉の痛みなどの自覚症状が現れ、18日に検査して陽性が判明。「療養期間」の終了を翌日に控えた26日、自宅で死亡した。死因は「新型コロナウイルス肺炎に伴う脳出血」。自宅を訪れた親族が死亡している男性を発見した。
無症状があだに
横須賀市の担当者は同月23日に市が発表した市内の飲食店に勤める60代女性の死亡事例に胸を痛める。この事例では、19日に女性の同居する70代男性の陽性が判明。女性は翌20日午後に検査を受ける予定だったが、当日の午前中に自宅で死亡した。
女性には既往症があったが、発熱などの症状はなく、倦怠(けんたい)感があった程度。市の担当者は「逆に高熱や息苦しさなど、強い訴えが必要な状態だったならば、結果は違っていたかもしれない」と悔やむ。結果的に無症状だったことが、あだとなってしまったことに複雑な思いを抱いていた。
県では、患者のこうした突然の死を防ぐため、療養者らに対してスマートフォンアプリのLINEを使い、1日2回、体温や体調の変化などの状況報告をしてもらっている。ただ、それでも防ぎきれないのが現状だという。
県の担当者は「常に患者を見ることはできず、監視のはざまで、脳卒中のような一分一秒を争う何かが起きてしまうこともあり、予防は困難を極める」とする。その上で「できる範囲で最善を尽くすしかない」と話している。
救急体制利用を
県内の新型コロナの感染状況をめぐっては、昨年11月ごろからの「第3波」によって感染者が急増。1週間当たりの新規感染者数は、昨年12月の第1~4週が1千~2千人台で右肩上がりで推移。1月第2週(5910人)と第3週(5635人)には6千人に迫った。
こうしたなか、感染者一人一人のケアや監視体制も逼迫(ひっぱく)し「手が回らず、すでに限界に近い」(関係者)。県では黒岩祐治知事を筆頭に「市中感染の拡大をなんとしても防ぎ、少しでも新規の感染者を減らしていくこと」に力を入れてきた。
一方“突然死”の防止策として救急体制の利用を推奨している。療養中の患者や家族には「少しでも息苦しさなどを感じたら、遠慮せずすぐに救急窓口(県設置の『コロナ119番』)に連絡してください。場合によっては(一般の)119番でもかまいません」と呼びかけている。
《不都合メモをシュレッダー》加古川中2いじめ自殺訴訟 市側の“開き直り”は法廷で通用するか
すべてを闇に葬りたかったと思われても仕方がない。いじめを苦にした中学2年生の女子生徒の訴えを何度も見逃した挙げ句、生徒が自殺した後も事実を隠蔽し続け、「法的責任はない」と言い張る学校と教育委員会がまた一つ、問題になっている。
2016年9月、兵庫県加古川市で市立中学2年だったAさん(当時14歳)がいじめを苦に自殺した。その後に明らかになったのは、Aさんや他の生徒が再三にわたって教師にいじめを訴え、「死にたい」というメッセージを送り続けていたにもかかわらず、学校側が一貫して「ただの生徒間のトラブル」と無視を決め込んでいた事実だった。地元記者が言う。
「さらに問題になったのが、いじめ発覚後の学校の対応です。Aさんへのいじめは主に所属していた剣道部で深刻でした。Aさんの訴えを受けて、剣道部の顧問は部員たちにメモ用紙を渡していじめについて書かせましたが、あろうことかそのメモを副顧問がシュレッダーで廃棄したのです。いじめの事実を校長にも報告していませんでした」
廃棄のメモ「紛失した」とごまかし
Aさんがいじめを受け始めたのは、中学1年の頃からだ。部活やクラス内で無視や仲間はずれにされ、無力感に苛まれるようになった。「うざい」などの暴言を日常的に受け、「死ね」と書かれたメモを渡されることもあった。
一方で、Aさんは何度もSOSを発した。1年生の秋には両親経由で部活の顧問に相談し、冬以降には担任への連絡ノートに「しんどい」と書き続けた。2年生になってからも、全校生徒向けのアンケートで「友だちにバカにされることがある」「無視されることがある」などのいじめ関連の全5項目で「あてはまる」と答え、周囲にも「死にたい」とこぼしていた。だが、学校側は何の反応もしなかった。
前述のメモ廃棄は、1年生だった15年11月に両親の訴えを受けて剣道部の顧問が行った調査で起きた。加古川市関係者が明かす。
「メモには、複数の部員らが見聞きした悪口や舌打ちの場面など、いじめの内容が書かれていたようです。ただ、事を大きくしたくない顧問や副顧問は『お互いさまやろ』の一言で片付け、メモを捨て去りました。そして、その後に市が設置したいじめの第三者委員会に副顧問は『メモは紛失した』と答えています。ウソにウソを塗り重ねたわけです」
「調査に協力する生徒への圧力と受け取られても仕方ない」
学校側の隠蔽体質は一貫していた。Aさんの自殺後、学校側はAさんらがいじめの事実を書いたアンケートの存在を遺族である両親に伝えず、自殺の事実そのものも公表しなかった。両親は16年10月に真相究明を訴えて加古川市に第三者委員会の設置を求めたが、アンケートの存在は、その外部調査の過程で知らされたという。
さらに今年1月、メモのシュレッダー廃棄が明るみになった後も学校側は「廃棄したかは答えられない」と事実を伏せた。
「実は自殺があった2年後、遺族にメモの所在を聞かれた副顧問が『僕がシュレッダーにかけた』と説明していたんです。それでも学校は廃棄を認めませんでした。遺族はこのやり取りを録音しており、その音声データが報道されて初めてしぶしぶ認めました」(学校関係者)
第三者委員会の調査による生徒への聴き取りで廃棄されたメモの内容は大半が復元できたものの、その中でも学校側の調査妨害とも取れる行為があったという。
「第三者委はAさんへのいじめを知る他の生徒らにも話を聞いていましたが、学校側は調査を受けた生徒を呼び出し、何をしゃべったかを聞き回っていたのです。調査に協力する生徒への圧力と受け取られても仕方ありません」(同前)
こうした経緯について、文春オンライン編集部を通じて加古川市教育委員会に質問状を送ったところ、教育委員会は隠蔽と圧力を否定した。
「メモは副顧問が廃棄したが、話し合いでAさんと他の部員との関係は改善していました。いじめを隠蔽しようとしたものとは認められません。
第三者委員会の調査について生徒に聞き回ったという事実自体、市教委として確認できておりません。学校関係者からの聞き取りも行いましたが、かかる事実の存在を否定しております。市としては第三者委員会の調査に協力する姿勢を示してきたものであり、圧力という表現は極めて心外であります」
だが、「極めて心外」な対応を受け、怒りが冷めないのは遺族だろう。娘のいじめに関する調査と再発防止を求め続けてきたAさんの両親はその後、加古川市教委と全面的に対立せざるを得なくなっている。理由は「市教委への不信」だ。
「娘は学校に殺されたも同然」
第三者委員会は17年12月に出した報告書で、Aさんの死がいじめによる自殺だったと認め、「Aさんがアンケートでいじめを訴えたときに学校がきちんと対応していれば、Aさんは自殺せずに済んだと考えるのが合理的」と学校の落ち度を指摘。Aさんの父親もこのとき、「教師たちはいじめを疑うことすらせず、娘の『絶望の中にいる』というシグナルを無視した。娘は学校に殺されたも同然だ」という手記を公表している。
県教委は報告を受け18年11月になって剣道部の顧問や元担任、校長らに懲戒処分を下した。だが、その内容は校長に戒告、担任らに訓告。メモを廃棄した顧問ら2人は「厳重注意」という軽いものだった。
加古川市「法的責任はない」と遺族と法廷闘争
加古川市側の「誠意がない」対応に業を煮やした両親は昨年、市に7700万円の損害賠償を求める提訴に踏み切った。不信感を抱きながらも和解の道を探り続けた末の法廷闘争だった。
だが、市教委はここでも「調査から得られた事実や過去の裁判例などに照らせば、市側に法的責任は認められない」と、遺族の感情を刺激するコメントを公表。岡田康裕市長も、メモの廃棄を「理解できないことではない。紛失も廃棄も大差ない」と隠蔽行為を問題視しない姿勢を見せている。
両親はすぐに「市教委の対応に誠意を感じなかった。娘の身に起きた悲しい事件を二度と起こさないためにも市教委の改革が必要。争い事が大嫌いであった亡き娘は、訴訟を一番嫌がっていると思うと忸怩たる思い」と怒りをあらわにした。
前述の市関係者は言う。
「遺族は娘さんを失っただけでも相当なショックを受けている。そのうえ、市との和解協議でも決裂し、『法的責任は認められない』なんてコメントを出されてしまった。市がケンカを売ったとしか思えない」
両親が苦悩の末に起こした裁判は2月10日、神戸地裁姫路支部で初めての口頭弁論が開かれ、Aさんの父親は「ただの言い逃れに終始する加古川市教育委員会には反省の気持ちを微塵も感じず、許すことはできない」と改めて憤った。それに対し、事実を闇に葬り続けた市が見せたのは、「請求棄却」を求めて争う姿勢。遺族を悲しませる対応を、どこまで続けるつもりだろうか。
(稲本 千晴/Webオリジナル(特集班))
深夜営業のキャバクラを「斧で破壊」 “カリスマYouTuber嬢”はなぜ摘発されたのか?
さながら過激派のアジトへの手入れだった。警視庁が斧を振りかざしながらドアを破壊し、捜索に入ったのは新宿・歌舞伎町のキャバクラ「花音」。この店、経営者は元キャバ嬢のカリスマユーチューバーでもあった。捜索容疑は営業時間を守らなかった疑いだが、警察はなぜ強制捜査にまで踏み込んだのか。
ドアを施錠して立ち入りを拒否
一夜明けた入り口の姿が捜索のすさまじさを物語る。ドアにはガムテープがはりめぐらされ、その上に「緑茶」などと書かれた段ボールがドアの上半分を覆うように無造作にはられている。
捜索があったのは2月1日の未明のこと。花音は新型コロナウイルス禍での営業時間の短縮に応じなかったばかりか、風営法で午前1時までと定められている風俗店の営業時間すら守らずオーバーしていたという。
捜索に入った警視庁保安課も当初からドアを破壊するつもりでいたわけではない。当日、営業時間の行政指導の立ち入りに訪れたことを警察官が告げると、ドアを施錠して立ち入りを拒んだのだ。
店内にいたのは従業員7人、ホステスが15人、男性客が13人。新型コロナに伴う時短営業であぶれた客が、灯火を求めて集まる夜虫のように集っていた。ドアに「感染防止徹底宣言ステッカー」がはってあったのは悪い冗談としかいいようがない。
機動隊員が斧でドアをぶち破ると、保安課はなかにいた従業員のうち店長の渡部圭介容疑者(36)以下6人を風営法違反(立ち入り拒否)容疑で逮捕した。だが、営業時間を超えることはむしろ風俗界では日常茶飯事。なぜ保安課は捜索に踏み切ったのか。
度重なる行政指導も無視。踏みにじられたプライド
実は、警視庁がこのキャバクラを訪れたのは初めてではない。
新型コロナ禍で歌舞伎町のネオンサインが次々と消えるなかで、深夜営業を続ける店をさすがに警察も見逃すはずがない。
新宿署は昨年3月と11月にも午前1時以降、営業していることを確認。しびれを切らして行政指導をしていた。
だが、花音が指導に従うことはなかった。そこで乗り出したのが保安課だ。
保安課はわいせつ動画や違法賭博の取り締まりのほかに風営法も管轄し、「夜の街」の取り締まりのスペシャリスト集団を擁する。過去に一部世論の批判も浴びながら深夜営業するクラブの摘発を進めていたのも、この課だ。
夜の街では客も店も心が緩み、さまざまな犯罪が身を潜める。捜査関係者にいわせれば、「営業時間はせめてもの歯止め」。その歯止めを軽んじる姿勢が、風俗街の守護神を自認する保安課のプライドを傷つけたのだろう。
斧まで持ち出しての強制捜査は、保安課でいえば違法カジノの摘発ぐらいでしか普段はお目にかかれないもの。「憤り」が背景になかったとはいえないだろう。
そうした憤りを抱えながらも、課員の目は、捜索現場にないものも捉えていたに違いない。営業時間の指示をしていた可能性のある、一部では有名な女性オーナーの姿だ。
整形前後の顔公開「暴露系」ユーチューバー
現場にいなかったのは花音の女性オーナー。源氏名を桜井野の花という。数年前にはギャル向け雑誌の「小悪魔ageha」の読者投票で1位となって表紙を飾ったこともある。
雑誌ではキャバ嬢界ナンバー1を自称。大阪から出てきてキャバ嬢としての稼ぎをもとに自分の店を持つまでにこぎ着けた。
ただの美人、というわけではない。読者投票を呼びかけるプロフィールの「公約」欄には他の参加者が「公開ダイエットをする」「電話番号を教える」などと他愛もない内容を書き込むなか、「100万円をかけた自腹オフ会を開催」と明記。読者の投票を一気にさらう策士でもあった。
テレビのバラエティ番組などでも出演歴があるが、目下、有名なのはユーチューバーとしてかもしれない。「桜井野の花TV」の登録者は25万人を超えている。
何より閲覧者が急増したきっかけは、美容整形の前や最中の腫れた顔までさらした「暴露系」動画。2018年11月に公開されると、170万回以上再生された。相当の広告収入もあげていたとみられる。その後間もなくオープンしたのが今回捜索を受けた花音だ。
だが、今回の強制捜査で、それも当分断念せざるを得ない。桜井は最新の動画では違法な深夜営業が自分の指示によるものだったことを明かし、「営業時間内の売り上げではお店を続けられる状況でなく、客の需要もあり、2度の行政指導を受けたにも関わらず深夜営業を続けてしまいました」と、その動機を語った。
「影響力のある身ながら今回の報道の件についてご迷惑をおかけしたことを反省し、動画の活動を一時休止させていただきます」とユーチューバー活動の一時休止も宣言した桜井。
雑誌の表紙を飾った際には「あなたの努力は必ず誰かが見てくれていて、困ったときには手を差し伸べてくれる人がいる」とのメッセージも載せていたが、その努力の結果が違法営業であっていいわけはない。
(末家 覚三/Webオリジナル(特集班))
宮城、福島で震度6強…震災10年直前に住民「津波の心配はないと言われても信じられない」
13日午後11時7分頃、宮城県南部、福島県の中通りと浜通りで震度6強の地震があった。地震の規模はマグニチュード(M)7・3と推定され、東日本大震災の余震とみられる。宮城、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川の9県で155人が負傷。宮城、福島では少なくとも約240人が避難所に身を寄せ、東日本の広範囲で停電と断水が発生した。1万5000人以上が犠牲になった震災から10年の節目を迎える直前の大型地震に、住民たちは不安な夜を過ごした。
震災発生10年の節目まで、あと26日。またも強い揺れに見舞われた住民たちは、恐怖の中で朝を迎えた。
宮城県石巻市の高台には、津波を心配して車で避難する住民が相次いだ。震災で自宅が全壊した主婦(50)は「突き上げるような揺れが2回来た。10年前のように危ないと思い、家財道具を車に積んで夫や娘と避難した」。男性会社員(50)も「津波の心配はないと言われても信じられない。10年前、苦い目に遭ったから教訓として逃げた」と明かした。
自宅2階で就寝中だった福島県いわき市の女性公務員(46)の頭によぎったのも10年前のことだった。「思い出して怖かった。子供たちをすぐに見に行った」。宮城県塩釜市の吉田万里子さん(76)は寝付いた直後、立て掛けていたテーブルが体に倒れてきた。「余震も怖い。1人暮らしでどうすればいいのか」と心細そうに語った。
気象庁によると、東北沖を震源とする最大震度6強の地震は2011年4月以来。政府の地震調査委員会は、震源は長さ40キロの南北方向に伸びる断層との見解をまとめた。震源断層は東側に傾いており、垂直方向にずれる逆断層とみられる。宮城県山元町では、重力の加速度980ガルを超える1432ガルの強い揺れを、福島県南相馬市では西に2センチ弱動く地殻変動を観測。調査委は、1週間程度は最大震度6強程度の地震に注意が必要としている。
東京電力と東北電力の管内で計約95万戸が停電。日本卸電力取引所などによると、地震に伴い火力発電15基以上が停止。北海道や西日本から電力の融通を受け、供給不足を回避した。停電は東京、山梨、静岡にまで及んだ。宮城や福島、茨城、栃木県内では最大約2万5700戸が断水した。
震度6強を観測した福島県相馬市では、常磐自動車道の道路脇斜面が崩れ、土砂が数十メートルにわたって道をふさいだ。相馬港では岸壁が液状化し、泥が地面から噴き出す現象が見られた。
東北地方を象徴する武将・伊達政宗が眠る霊廟(れいびょう)「瑞鳳殿」(仙台市)では、石灯籠や墓石など約100基が倒壊。福島県二本松市のサーキット場「エビスサーキット」ではコース脇の崖が崩れてレストランなどの入る建物が損壊した。
福島など9県で152人けが 東北沖震源で震度6強は10年ぶり
13日午後11時7分ごろ、福島県や宮城県で震度6強を観測する地震があった。地震の規模を示すマグニチュード(M)は7・3と推定される。総務省消防庁のまとめでは、9県で152人が負傷した。地震は2011年3月に起きた東日本大震災の余震とみられ、気象庁は同程度の地震に1週間程度は注意が必要だとしている。
気象庁によると、震源は福島県沖で、震源の深さは約55キロ。震度6強を観測したのは福島県国見町(くにみまち)、相馬市、新地町(しんちまち)と、宮城県蔵王町(ざおうまち)。さらに北海道から中国地方の広い範囲で震度6弱~1を観測した。この地震による津波は発生しなかった。東北の太平洋沖を震源とする最大震度6強の地震は11年4月7日以来で約10年ぶり。
総務省消防庁によると負傷者は、福島県78人▽宮城県57人▽栃木県7人▽茨城県3人▽埼玉県、千葉県各2人▽山形県、群馬県、神奈川県各1人。うち重傷は11人で、死者や行方不明者は確認されていない。けが人には地震でベッドから転落して足を骨折したり、割れたガラスで足を切ったりしたケースがあった。建物火災は宮城、福島両県で3件。住宅被害は福島、宮城、山形の3県で86棟の一部損壊が確認された。
土砂崩れも相次いだ。常磐自動車道の相馬インターチェンジ(IC)―新地ICではのり面が崩落し、長さ70メートルにわたって道路を塞いだ。復旧作業が行われているが、同区間で通行止めが続いている。また、福島県二本松市のサーキット場「エビスサーキット」でも大規模な土砂崩れが起き、コースに土砂が流れ込んだ。
内閣府によると、宮城、福島両県では一時、避難所に258人が身を寄せた。各避難所では避難者同士のスペースを確保するなど、新型コロナウイルスの感染防止にも留意した。
地震の影響で、東北新幹線は那須塩原駅(栃木県那須塩原市)―盛岡駅(盛岡市)の上下線で運転を見合わせており、全面復旧には10日程度かかる見通し。停電も発生し、東北、関東両地方を中心に12県で計約95万戸が一時電気がストップした。14日午前までにすべて復旧している。
福島、宮城両県では地震による断水が起きており、福島県の内堀雅雄知事は14日、給水支援について自衛隊に災害派遣を要請した。自衛隊が14日午後から、新地町で給水支援を実施した。【黒川晋史、山本佳孝】
震源は南北40キロの断層 揺れは熊本地震を上回る 地震調査委
宮城県と福島県で13日深夜に震度6強を観測した地震について、政府の地震調査委員会(委員長・平田直東京大名誉教授)は14日、臨時会合をウェブ会議形式で開き、震源は南北方向に延びる約40キロの断層で、東側に傾斜する逆断層とみられるとの評価をまとめた。
今回の地震では、宮城県山元町の観測点で揺れの勢いを表す加速度が1432ガルだったことが防災科学技術研究所によって記録された。これは重力の加速度980ガルを超え、2016年の熊本地震の際に益城町で記録した1362ガルを上回る強い揺れだった。
また福島県南相馬市の観測点では、西に2センチ弱移動する地殻変動が観測され、宮城県石巻市の石巻港で20センチの津波を観測するなど、宮城県と福島県の沿岸で津波が観測された。
平田委員長は11年の東日本大震災を引き起こした地震の余震だったとの考えを示し「余震の数は時間の経過とともに減っていくが、減り方はだんだん少なくなっていく。(現在のような地震発生の状況は)今後10年くらい続くだろう。自然現象としてマグニチュード(M)8を超える余震が起きることもあり得る」と話した。
調査委は、今後も長期間にわたって、東日本大震災の余震域や内陸を含むその周辺で規模の大きな地震が発生し、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性があるとして、注意を呼びかけている。【信田真由美】
熊本の山中で男性が自殺 41歳女性刺殺との関連捜査
14日午前10時すぎ、熊本県八代市妙見町の山中にある遊歩道で、高齢男性が首をつって死亡しているのが見つかった。県警は自殺と断定。現場から約1キロ離れた同市のアパート玄関前の駐車場で住人の平田久美子さん(41)が複数の刺し傷を負って死亡した事件との関連を調べている。
八代広域消防本部などによると、男性は70代ぐらい。
県警は14日、平田さんの死因が出血性ショックと判明したと明らかにした。
平田さんは12日午前7時50分ごろ、アパート玄関前で血を流して倒れているのが見つかり、その後死亡が確認された。
地震でまたも飛び交ったデマや差別発言 桁違いの拡散、どう対処?
13日深夜に福島県と宮城県で震度6強を記録した地震をめぐっては、またも差別的な発言やデマ、不確実な情報がツイッターやユーチューブなどで飛び交った。災害のたびに同じような現象は起きている。かつて関東大震災ではデマがきっかけで朝鮮半島出身者らへの虐殺も起きた。しかし、当時に比べ、今は情報の広がるスピードが桁違いに速い。そうした悪質な情報にどう対処したらいいのか。【大迫麻記子/統合デジタル取材センター】
「井戸に毒を投げ込んだ」
地震の直後からツイッターで目立った差別的なデマは「朝鮮人」や「黒人」などが「井戸に毒を投げている」というものだ。1923年の関東大震災では「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ」「暴動を起こした」などのデマが流れたが、それをまねたとみられる。当時はそのデマを真に受けた市民らによる朝鮮半島出身者や中国人らへの虐殺事件が各地で起きた。
「人工地震」といった書き込みも散見され、中には「安倍晋三前首相が起こした人工地震」などという荒唐無稽(こうとうむけい)な投稿もあった。地下核実験などで地震が起きることはあるが、今回のような大規模な地震を人工的に起こすことは不可能だ。ツイッターでは一時「人工地震」がトレンド入りした。ただ、誤りであることを指摘したり「陰謀論」と皮肉ったりする内容のツイートの方が多く、一種の話題として盛り上がりを見せたケースといえる。
千葉県の「爆発」は人々の勘違い
災害時にデマが流れやすいのは、人々に不安があるためだ。そのため、悪意はなくても事実と異なる情報が広がってしまうことも多い。
今回は千葉県市原市の臨海部で爆発が起きたとする複数の動画や画像が拡散された。確かに工場施設の排気筒から炎のようなものが出ているように見える。しかし、市原市消防局によると工場施設での爆発や火災は確認されていない。同市に石油関連施設を持つ会社関係者によると、石油製品生産プラントでは常に余ったガスを燃焼させているが、地震による停電で装置を止めたために多くのガスが排出され、普段より炎が多く発生したという。それを見た多くの人が勘違いしたとみられる。
近年、大規模な災害が起きるたびに、デマの拡散はネットを舞台に繰り返されてきた。
2011年の東日本大震災では被災地で「外国人犯罪が横行している」とのデマが流れ、東北学院大の研究者が仙台市民に調査したところ、8割以上が「それを信じた」と回答している。18年7月の西日本豪雨でも「火事場泥棒の中国人、韓国人、在日朝鮮人たちが――」とのデマが流された。
刑事事件になったケースもある。16年の熊本地震では「動物園からライオンが逃げた」との偽情報をツイッターに投稿した神奈川県の男が動物園の業務を妨害したとして偽計業務妨害容疑で逮捕されている。
メディアの報道を待ち悪質な情報は通報を
誤った情報の拡散に加担しないためにはどうしたらいいのか。ネット上のデマに詳しいジャーナリストの津田大介さんは「不確実な情報に接したらすぐに拡散せず、メディアが報じるのを待ってほしい」と話す。「新聞やテレビの情報は信頼性が高いし、最近は報道も速い」
差別やヘイトスピーチなどの悪質な書き込みを見つけたらどうすればよいのか。「差別扇動のような明らかに悪質なツイートは、どんどん通報すべきです」と津田さんは言う。
ツイッターには、悪質な内容のツイートをツイッター社に通報する仕組みがある。問題のあるツイートを開いた時に表示される3点リーダーから「ツイートを報告」を選ぶことで簡単にできる。そのツイートの内容がルールに反すると認められれば、投稿者に対する削除要請や投稿制限、問題のツイートの非表示などの措置が取られる。
津田さんは地震発生直後から、問題のあるツイートを次々にリツイートして通報を呼びかけた。「緊急時の扇動的な情報は具体的な暴力につながります。短時間で多くの通報があることでツイッター社の処理の優先度が上がることを期待しました」。津田さんによると、投稿者が軽い気持ちで書き込みをしている場合、非難を受けると驚いて自分で削除することも少なくないという。津田さんがリツイートした悪質な投稿の大半は、投稿者が自ら削除したという。
津田さんは情報を受け取る側の知恵も必要だと指摘する。「虚偽情報の『質』は年々高まっていて、数年前の画像をアップして今起きているように見せかけるケースもあります。ブラウザーの画像や動画検索の機能を使って、それが本物かどうか確認してみてください」