看護師や介護士が「実習難民」に 現場での事故増加リスクも懸念

新型コロナウイルス感染拡大による医療体制の逼迫が叫ばれるなか、コロナ後の「医療崩壊」も危惧されている。大きな問題は、医学部の学生の「臨床実習」ができないことだ。コロナの影響で多くの医学部が臨床実習を取りやめ、オンラインでの模擬実習やレポート提出に切り替えた。
文科省は臨床実習が中止されても必要な単位を履修すれば、国家試験の受験資格を認める方針だが、このままでは問診が不慣れな新人医師が大量発生することになる。
若手医師も同様の問題に直面する。都内の病院で働く整形外科医が語る。
「今は『ホット』と呼ばれる急を要する手術が優先で、『コールド』と呼ばれる不急の手術は激減しました。コールドは人工関節など特殊なオペが多く、長期間手術をしないと速度が落ちるなど、技術力の低下は避けられない。特に経験の少ない若手医師は勘が鈍り、影響が大きくなると懸念しています」
看護師も「実習難民」だ。日本看護学校協議会調査では、昨年、全国の看護学校316校の9割が病院実習を拒否された。
「看護師の『患者に安心感を与えるスキル』が育たないことが心配です」と語るのは医療ジャーナリストの油井香代子氏。
「入院患者の精神面をケアして落ち着かせることは、看護師の重要な役割です。終末期患者の余命が、看護師のスキル次第で1か月から3か月になることもある。病院実習の中止でそうしたスキルを身に付けられないと、入院患者の生活の質が低下する可能性があります」(油井氏)
介護についても実習の機会が少なくなっている。「コロナ以降、全研修をオンラインに切り替えました。結果的に受講率が上がり、効率的と評価されています」と、介護大手関係者は実習減の影響に否定的だが、一方で専門家は事故の増加を懸念する。
「今の介護現場はコロナでベテランが離職する一方、他の業種で職を失った人が新たに流入しています。オンライン研修を受けて現場に出る新人は対人経験が不足し、利用者の転倒や食事介護時の喉の詰まりなどの事故が増える恐れがあります。
現在はコロナでデイサービスの廃業が相次ぎ、訪問介護が主流になっている。新人ヘルパーが利用者とマンツーマンで働くことが増えているため仕事仲間が傍におらず、ミスしても適切な連携が取れないなど、この先、介護現場で様々な問題が浮上するリスクがあります」(ケアタウン総合研究所所長の高室成幸氏)
※週刊ポスト2021年2月19日号

小池百合子都知事、“天敵”森会長に引導…4者会談ボイコット宣言効いた

東京都の小池百合子知事(68)は11日夕、都庁で報道陣の取材に応じ、組織委の森喜朗会長から直接電話で辞意の説明を受けたことを明かした上で、東京五輪を「何としても成功させていくことに変わりはない」と述べた。
午後6時すぎ、記者団の前で、小池氏は辞任の意向を固めた森氏から携帯電話で連絡を受けたと明らかにした。新型コロナウイルス対策に追われ、大会を半年後に控える中でのトップの辞任劇。戸惑いを隠せず表情は硬いままだった。森氏との会話については「申し上げない」と口をつぐんだ。
12日には組織委の会合があり、森氏から事実上の後継指名を受けた元Jリーグチェアマンの川淵三郎氏の就任が確実視される。組織委は公益財団法人で、都知事に人事権はなく、評議員らによる承認の手続きが必要となる。小池氏は「(12日に森氏が)いろいろな話をするのではないか」とし、川淵氏については「いろいろな手続きが必要ではないか。それ以上は申し上げません」と多くを語らなかった。
事態が大きく動いたのは9日だった。小池氏は自民党本部を訪問し、親交のある二階俊博幹事長(81)と会談。関係者によると、森氏の発言などについて意見交換をした。国会では菅義偉首相(72)らが野党の追及を受け、報道各社の世論調査でも半数以上が森氏の発言に「不適切」と回答するなど政局化。外堀が徐々に埋まり、「内閣支持率にも影響しかねない」(自民党幹部)事態を招いていた。
決定的だったのは翌10日の小池氏の発言だった。「今ここで、4者会談をしてもあまりポジティブな発信にはならないのではないか」。IOCのバッハ会長のほか、森氏も出席予定だった4者会談への異例のボイコット宣言は、くすぶっていた森続投の声を打ち消した。「政府や組織委は『いつかほとぼりは冷める』『大丈夫だろう』と過信していた」(党幹部)。小池氏が引導を渡す形になった。
小池氏と森氏は国会議員時代から犬猿の仲とされる。都知事就任後も、組織委がマラソン・競歩の会場変更を小池氏に相談せず、進めるなど、両者の溝は広がっていた。森氏は自らの失策で、大会を前に表舞台から去った。「大会を何としてでも成功させていくということは変わりません」。小池氏はそう言い残し、足早に立ち去った。
◆小池氏VS森氏
▼2002年 小池氏は自民党入りし、森派に所属。
▼07年8月 小池防衛相が守屋武昌防衛事務次官を更迭。森氏は「守屋氏が切腹しようとしたら、小池氏が後ろから刀で切りつけた感じ」と批判。
▼08年9月 党総裁選で森氏が麻生太郎氏を推す中、小池氏が自ら出馬表明。森氏は「了承していない」と激怒。
▼16年9月 都による五輪3会場の抜本見直し案について、森氏が「(IOC)理事会で決まったことをひっくり返すことは極めて難しい」とダメ出し。小池氏は「負の遺産を都民に押しつけるわけにはいかない」と応戦。
▼19年10月 五輪のマラソン・競歩の札幌開催がIOCと組織委の2者間合意で決まったことについて、小池氏は「青天の霹靂(へきれき)。涼しい所なら、北方領土でやったらどうか」と不快感を表明。森氏は「極めて無責任なことを言っている」と批判。

性別違和の園児が涙の訴え「1回死んで女になる」 市がHPで「アウティング」

大津市の市立保育園に通う園児(6)が、性別に違和感を抱えていることを許可なく市のウェブサイトに掲載されたとして、昨年12月、市に削除を求める訴えを両親と共に大津地裁に起こした。園児は性別違和が原因でいじめを受け、昨年10月ごろから不登園状態に。戸籍上は男だが、自分の心と身体のずれに悩み続けている。母親(35)がインタビューに応じ、園児の状況や社会への思いを語った。(共同通信=福田亮太)
▽「特定されてしまう」
「ねえ、これってA(園児の名)ちゃんのことじゃない?」
園児の母親のもとに、知人から連絡が来たのは昨年10月のことだ。伝えられたとおり、大津市のホームページからたどっていき、市立保育園の「保育園評価書」を見て、驚いた。
「今年度入所した4歳児が、自分の身体の性別に違和感を感じる訴えをしたことをきっかけに、11月に受診」。氏名は伏せられているものの、自分の子どものことが書いてある。「LGBTに対する知識や認識を職員が高めていくようにする」と、園の取り組みに関する文脈の中での記載だが、園や市から事前の連絡は全くなかった。
園児が通う大津市立保育園の評価書。園児の入園年度や年齢、性別違和の訴えなどが同意なく記載されていた(園児側代理人弁護士提供)
母親は子どもが抱える性別違和を少しでも理解してもらおうと、園児の様子や行動を逐一、園に報告してきたが、公表を許可した覚えもない。
「入園年度や状況の記述から、分かる人には特定されてしまうのではないか」「これから通う小学校にまで知れ渡ったら、またいじめられてしまうのではないか」
不安が募った母親は夫と話し合い、弁護士に相談。本人が認識する性別(性自認)や好きになる相手の性別(性的指向)を、了解なく第三者に暴露する「アウティング」に当たるとして、昨年12月25日、削除を求めて提訴に踏み切った。
アウティングを巡っては、2015年6月、一橋大法科大学院の男子学生が同級生に同性愛を暴露された後、校舎から転落死したことをきっかけに社会問題化。両親が大学に賠償を求めた訴訟の判決で、東京高裁は昨年11月、アウティングについて「人格権やプライバシー権を著しく侵害する、許されない行為」と認定している。
大津市は昨年7月からサイトに評価書を掲載していたが、提訴を受け、今年1月18日に削除。両親側は29日に訴訟を取り下げた。
▽ピンクの服が好き
園児の性別違和について、両親も最初は「かわいいものが好きなのかな」と思う程度だった。ピンクの服を好み、しきりに妹の服を着たがる。「自分は女の子」「髪も伸ばしたい」と言う園児と接する中で「この子の心は女の子かもしれない」と思うようになったという。
周囲は「妹に焼きもちを焼いている」「今だけ」と園児の行動を一時的なものとして扱った。
「なぜ男の子の格好をさせないのか」。両親は時に白い目を向けられたが、無理やり男の子らしくさせることは人格否定になると思い、強制はしなかった。
女児用の服を着る園児(母親提供)
「女の子の格好をしていると、周りに変な目で見られることになる」と話したこともあった。しかし、園児はそれでも女の子として振る舞うことをやめなかった。「それなら本人の思うように、親としてできる限りのことをしよう」。悩んだ末、両親はそう決めた。
▽「ママが間違えて産んだ」
19年4月、年中クラスに途中入園した園児は時々、女の子の格好で登園した。だが、他の園児から「なんで女の子の格好してるの?」「おとこおんな」などとからかわれた。
「女で生まれたかった」「1回死んで女になりたい」。園児は家に帰ると泣いて訴えた。「ママが間違えて産んだ。ママが悪い」と口にすることも。母親は「なぜちゃんと産んであげられなかったのか」と自分を責めた。
インタビューに応じる園児の母親
両親からすれば、園の対応にももどかしさが募った。他の園児に対し「心と体の性にずれがある人がいる」「お友達の気持ちを大事にして」といった話をする一方、園児が身体測定で「間違った体を見られたくない」と裸になるのを嫌がると、「我慢する力も付けないと」などと言われたという。女の子としての振る舞いをわがままのように扱われていると感じたこともあった。
「ここまで分かってもらえないものなのか」。母親は性的マイノリティーへの理解が広がっていないことを痛感した。
▽円形脱毛症に
他の園児からは持ち物を取られたり、仲間外れにされたりしたほか、暴言や暴力のいじめも受けた。ストレスからか、園児は円形脱毛症になった。
両親は園や市に改善を求めたが、園は「(加害園児の)成長過程での行為」「じゃれあい」などとして、「いじめとは思っていない」と回答。園児が覚えたてのひらがなで「なかまはずれ」「ぼこぼこ」などと書いたメモを握りしめて市に相談に行ったこともあった。両親が継続して対応を求めた結果、市は最終的にはいじめがあったことを認め、園の対応が不十分だったと謝罪した。しかし、それは園児が年長になった後の昨年11月のことだ。いじめはその後も解消せず、園児は現在も不登園状態が続いている。
園児が書いた、いじめ内容のメモ
園児は今春、小学校に進学する。女の子として生きたいが、いじめの心配があるため、性別違和のことは隠して入学する。「これからも壁はたくさんあると思うが、子どもと一緒に考えていく」と母親。「性に悩む人が多くいることを知ってもらいたい。みんなが自分らしく生きられる世の中に早くなってほしい」と願っている。
▽取材を終えて
「性的マイノリティー」や「LGBT」という言葉を頻繁に目にするようになったのはここ数年のことだ。一昔前は同性愛者を「気持ち悪いもの」と差別する風潮が当たり前だった。その状況が少しずつ変わっているのは確かだ。しかし、今回の園児のように、周囲から理解を得られず孤立し、苦しむ人はまだまだたくさんいる。幼少期の子どもたちが園児のような子を受け入れるには、まず大人が性的マイノリティーの人々について理解を深め、受け入れる必要があると思う。人間は肌の色から好きな食べ物まで、誰でも何かしらマイノリティーになり得る要素を持っている。彼らはその中の性自認や性的指向が少数派だっただけ。「みんなちがって、みんないい」。金子みすゞの詩のように、誰もがそれぞれのマイノリティーな面を認め合える世の中になればいい。取材を通じ改めて感じた。

「まさに神の国」、真央選手は「大事な時に必ず転ぶ」…森氏は過去にも問題発言

東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長で元首相の森喜朗氏は過去にも度々、問題発言で批判を浴びた。
首相就任翌月の2000年5月、「日本の国は、まさに天皇中心の神の国である」と発言。6月の衆院選投票日直前には、無党派層について「関心がないといって、(投票に行かずに)寝てしまってくれればいいが、そうはいかない」と述べ、世論の反発を招いた。
01年2月に起きた米原子力潜水艦と水産高校実習船の衝突事故の際、第一報を受けた後もゴルフを続けていたことなどが問題視された。記者団に「危機管理じゃないでしょ。事故でしょ」と言い切り、政府・与党内からも不満が噴出した。
12年に政界を引退した後も五輪招致に携わり、14年1月、組織委の発足とともに会長に就いた。ただ、その翌月には、ソチ五輪でフィギュアスケートの浅田真央選手が転倒したことについて、「あの子は大事な時には必ず転ぶ」と語り、釈明に追われる一幕もあった。

「廊下は全長100メートル」…“右腕”を失った麻生太郎氏 蒸し返されたセレブ生活

「軽率のそしりは免れない。心から申し訳ない」
2月4日、自派閥の例会で麻生太郎副総理兼財務相(80)は、こう頭を下げた。松本純衆院議員が緊急事態宣言下、深夜に銀座のクラブをはしごし、自民党離党に追い込まれたのを受けたボスの陳謝だ。
「右腕を失った麻生氏は、相当ガックリ来ているようだ」(政治部記者)
松本氏は自他ともに認める麻生氏の最側近だった。麻生氏に気に入られるため、若い頃いかに宴会芸を磨いたかを番記者らに話し、「君たちも麻生さんに食い込むには、時には図々しく振る舞うことも大事だぞ」と指南していた。
08年秋に発足した麻生政権では官房副長官を務め、リーマンショックと支持率低迷で苦しむ麻生氏の「精神安定剤」と呼ばれた。首相動静では二人きりで帝国ホテルの高級バーで3時間も過ごすこともしばしば。「麻生氏はこっそり別部屋で有力者と会食し、その後、バーに戻って松本氏と葉巻を吸いながらクールダウンしているといわれた」(前出・記者)。
蒸し返された麻生氏のセレブぶり
麻生氏は当初、党幹部から示された松本氏の離党勧告の処分案に「そんな必要があるのか?」と難色を示したが、最終的に世論の反発を恐れた菅義偉首相に押し切られた。松本氏は昨秋の総裁選で麻生派が菅氏を推すことに消極的で、「能力がない」などと漏らしていたことが菅氏の耳に入っていたのも災いした。
さらに、実は「松本切り」には同派の佐藤勉総務会長も加担していた。佐藤氏は17年、旧山東派などとの合流で生まれた新生麻生派の結成時に入会。「外様の佐藤氏と、古参側近の松本氏とは関係が悪かった」(自民党関係者)。佐藤氏は96年初当選同期の菅首相に近い。総裁選でも麻生氏に仁義を切らずに早くから菅支持を打ち出し、その功で総務会長の座を射止めた。
右腕をもがれ、求心力を失いつつある麻生氏。弱り目に祟り目となったのは蒸し返されたセレブぶりだ。銀座通いで松本氏が注目されると、同氏が07年にHPに記した福岡県飯塚市の麻生邸潜入記がネット上で話題に。「本家だけで2万坪、離れが2000坪」「廊下の全長は100メートル」と記されており、10万円の一律給付の再支給を拒む麻生氏の発言と相まって「こんな人が財務相では、庶民の困窮などわかるはずもない」と批判を浴びた。
蔵相・財務相の通算在職日数では歴代3位の麻生氏。この10月には6度蔵相を務めた高橋是清の記録更新が迫るが、右腕を失った麻生氏にその気力はあるか。周囲には「じいさんの歳まではやる」と公言するが、吉田茂が政界引退した85歳まではあと4年半だ。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年2月18日号)

「人殺し」“池袋暴走”法廷で投げかけられた“上級国民”への怒り《民事訴訟で1億7千万円を請求》

「私にとって、2人と過ごした思い出は夢のようで、あまりにも愛にあふれた幸せな日々でした。何に代えてでも守りたかった大切な命でした」
「私は加害者本人に直接聞きたいことがたくさんあります。そして私の前で、自身の口から真実を述べてもらい、真実を明らかにしてほしいと思っています」
昨年4月、東京・池袋で乗用車が暴走して母子2人が死亡、通行人ら9人が重軽傷を負った事故で、自動車運転処罰法違反罪(過失運転致死傷)に問われ刑事裁判が続いている旧通産省工業技術院の元院長・飯塚幸三被告(89)が遺族から損害賠償を求められた。
民事訴訟の第1回口頭弁論が2月9日、東京地裁(鈴木秀雄裁判長)で開かれ、遺族側は民事に踏み切った理由を「真実を聞きたい」と説明。形式的に謝罪をしてはいるものの事故の原因を車のせいにする飯塚被告の態度を、不誠実に感じていることが窺われる。
訴状によると、遺族側は慰謝料など1億7千万円を請求、飯塚被告側は早期和解を求めながらも、金額については刑事裁判同様に争う姿勢だ。
事故が起きた、2019年4月の昼下がり
悲惨な事故は2019年4月の昼下がり、東京・池袋の路上で突然発生した。
飯塚被告は4月19日、東京都豊島区の路上で運転する乗用車のブレーキとアクセルを踏み間違えて交差点に侵入、自転車に乗って横断歩道を渡っていた松永真菜さん=当時(31)=と長女の莉子ちゃん=当時(3)=を死亡させ、同乗者の妻を含む男女9人に重軽傷を負わせたとして起訴された。
飯塚被告は東大卒業後、当時の通産省工業技術院に就職。計量の分野などで国際的にも頭角を現し、同院で院長を務めた後も学術団体や天下り先の企業などで要職を歴任したエリート中のエリートだ。それゆえに、事故を起こし2人を死なせながらも警視庁が逮捕しなかったことから、優遇されているのではないかという疑惑が持ち上がり、「上級国民」としてインターネット上などで炎上した。
昨年10月に開かれた刑事裁判の初公判で、飯塚被告は、真菜さんの夫である拓也さん(34)に視線をあわせることなく、「心からお詫びします」などと静かに謝罪。事故自体は「アクセルを踏み続けたことはない」「車に異常があった」などとして、無罪を訴えた。
検察側は冒頭陳述で、前の車に近づきすぎたために車線変更を繰り返し、アクセルを踏み間違えて時速約96キロまで加速して、真菜さんらに衝突したと指摘している。また、1ヶ月前の点検でブレーキ、アクセルに異常が確認されていないことや、ブレーキが踏まれた記録も残っていないことから事故の原因は飯塚被告の過失にあったと主張しているのだ。
「人殺し」法廷で傍聴席から発せられた言葉
12月3日の公判では、事故を目撃した証人が「ブレーキランプはついていなかった」「減速せず、赤信号の交差点につっこんでいった」と証言した。
12月14日の公判で弁護側は「経年劣化し、トラブルが起きてブレーキが作動しなかった」と主張したが、2月1日の裁判で証言した警視庁の担当者は「車両に異常があると暴走できない」と切り捨てた。
「人殺し」
同日の公判が終わると傍聴人が発言して、法廷内はざわついた。大手紙司法担当記者は「飯塚被告側の主張は説得力がない。傍聴している人には、飯塚被告が真摯に事故に向き合っていないように映るんです」と話す。
心に誓った「この2人を守り、絶対に幸せにする」
2月9日の民事訴訟で拓也さんは悲痛な胸のうちを意見陳述で述べた。

「2014年にプロポーズをしました。『頼りない男だけど、あなたを幸せにしたい気持ちは誰にも負けません』。そう伝えると、真菜は泣いて喜んでくれました」
「2016年1月11日に娘の莉子が生まれました。『かわいい』と言いながら涙を流し喜ぶ真菜と、懸命に泣いている生まれたばかりの莉子。<略>『この2人を守り、絶対に幸せにする』と心に誓いました」
「3人で色々なところに行きました。春は花見、夏は海やお祭り、秋は紅葉を見て、冬は莉子が好きだった温泉に。暖かい日は、真菜の手作りパンを持って、3人でピクニックによく行きました」
「2019年4月19日。警察からの電話で病院に向かった私は、妻と娘の並んだ遺体と対面しました。真菜の顔を見ると、傷だらけになって冷たくなっていました。娘の顔は原型を留めておらず、小さな手を握っても二度と握り返してくれることはありませんでした」
2人の尊い命を奪ってしまった飯塚被告。
自動車運転処罰法違反罪に問われており、交通裁判は時間がかかることが多く、控訴審も、となれば先行きは不透明だ。また、示談がなければ実刑の可能性が高い。
ただ、90歳を間近に控え、高齢を理由に執行停止の可能性もある。もしそうなれば「上級国民」との批判がまた巻き起こりかねない。まずは会見を開くなど真摯な説明の場を設け、拓也さんが求めるように、自身の口から真実を述べ、真実を明らかにするべきではないだろうか。
(西川 義経/Webオリジナル(特集班))

小林化工検査不正 社長釈明 「ルール守るより作業効率優先」

消費者の命に関わる医薬品のずさんな製造・管理実態が明らかになった。過去最長となる業務停止命令を受けた小林化工は9日、福井県あわら市の本社で記者会見を開いた。小林広幸社長は「患者さんに甚大な健康被害を発生させたことを深くおわびする」と謝罪。承認外の手順で製造したことや、一部の品質検査をしなかったことについては「ルールを守ることより、作業効率を優先した」などと釈明を繰り返した。
今回、経営陣が多数の法令違反を認識しながら改善策を講じなかったことも新たに発覚。小林社長は「経営者としての私の責任は極めて大きく、しかるべき時期に職を辞する」と述べた。
国が承認しない手順で製造し続けたことについては、別の役員が「変更の承認を得るのに時間がかかるため、その間の出荷を止めなければならなくなる」と利益を優先したことを明らかにした。小林社長自身は製造現場の責任者だった2005年ごろ、国が認めた手順と実際の製造工程が一致していない製品が複数あることを知ったというが、「安定供給を優先した。出荷を停止すべきだった」と釈明。一部の品質検査をせずに結果を捏造(ねつぞう)したことについても、「時間がかかる」ことを理由に挙げた。
「説明うそか」患者は怒りあらわ
一方、服用した患者からは憤りの声が上がった。睡眠導入剤が混入した問題の薬を服用し、意識を失った岐阜県高山市の会社役員の女性(30)は「安全だと思って薬を飲んでこんなことになるなんてあり得ない。処分は妥当だ」と話した。原薬を取り違えた経緯や補償に関する説明を小林化工から受けたが、「説明に来た役員も不正の放置を知っていたのだとしたら許せない。これまでの説明はうそだったのか」と怒りをあらわにした。【大原翔、深尾昭寛】
教育の徹底や監査改善の検討を
不良薬や偽造薬に詳しい木村和子・金沢大特任教授(国際保健薬学)の話 コスト削減などのため海外では品質の粗悪な不良薬が製造されることがあるが、製薬に関する制度の整った日本で睡眠導入剤が混入するようなずさんな製造が行われていたことに驚いた。小林化工には、人命にかかわる薬を作っているという認識が欠如していたのではないか。国や都道府県は今回の事例を踏まえ、製薬会社に対する教育の徹底や、監査の改善について検討することが望まれる。

大阪府の要請見送り 1週間後に再検討へ 「解除後」見据えた動きも

新型コロナウイルスの緊急事態宣言について、大阪府は9日、国への解除要請を見送ることを決めた。医療体制の逼迫(ひっぱく)状況や専門家からの慎重意見などを受け止めた形だ。一方、感染拡大の兆候をとらえる監視体制整備の検討を始めるなど、遠くない時期に訪れるとみられる「宣言解除後」を見据えた動きも始まった。
府は解除要請の基準を①新規感染者数が直近1週間平均で300人以下②重症病床使用率が60%未満――の「いずれか」が7日間続いた場合、としている。これに対し、府の専門家会議座長を務める朝野(ともの)和典・大阪大教授は9日の対策本部会議で、両指標が「両方とも」達成された場合とするよう、改めて求めた。
府の基準の「緩さ」については、他の医療有識者からも異論が出た。大阪府医師会の茂松茂人会長は重症者数について「現時点で下降傾向に入ったのか判然としない」とし、「ひとたび高齢者施設で大規模クラスター(感染者集団)が発生すると、重症用病床使用率が容易に70%を超過する可能性がある」と危機感を示した。りんくう総合医療センターの倭(やまと)正也・感染症センター長は、「解除基準として60%では甘い可能性がある。少なくとも、50%未満に下がることを確認する慎重さも求められる」とのコメントを出した。
こうした意見に、吉村洋文知事は「現状の重症病床の使用率は減少傾向だが、まだ高い。もう少し抑えたい」と理解を示した。府は、重症病床使用率が11日には60%を切るとの想定を示しており、解除要請について1週間後に改めて検討する。
一方、府は宣言解除後の再拡大防止のため、モニタリングに力を入れる方針を決めた。朝野教授は「2週間後の感染状況は予測できる」とし、感染初期に増える傾向がある20~30代の若者世代の状況を監視し、対策を取ることが重要だと指摘。重症者の多数を占める60代以上の患者数に注意することで、病床使用率もある程度予想がつくとの認識も示した。【近藤諭、松本光樹】

電話やメールでの“コロナワクチン詐欺”に消費者庁が注意喚起 そもそも「接種は無料」

消費者庁は2月9日、新型コロナウイルスのワクチン接種を巡り、電話で金銭や個人情報を求められたとする相談が相次いでいるとして、専用の電話相談窓口を15日に開設すると発表した。受付時間は午前10時から午後4時で、土日祝も相談を受け付ける。電話番号は(0120)797-188。
消費者庁によると「金銭を振り込めばコロナワクチンを接種できる」「個人情報を話せばワクチン接種が無料で受けられる」といった不審な電話が高齢者などにかかってきているという。
消費者庁は「(そもそも)ワクチン接種は無料」とした上で、「(ワクチン接種に)電話・メールで個人情報を求めることはない」としている。
また、井上信治消費者行政担当相も9日の記者会見で「ワクチン接種に際し、行政機関などが金銭や個人情報を求めることはない。不審な点があれば一人で悩まず相談してほしい」と窓口への相談を呼び掛けた。

新たに1570人の感染確認 死者94人増え6618人に

新型コロナウイルスの感染者は9日、国内で新たに1570人が確認され、クルーズ船の乗客乗員らを合わせた全国の感染者数は40万9182人となった。火曜日の1日当たりの感染者数が2000人を下回ったのは昨年11月24日以来。死者は94人増えて6618人、重症者数は前日比14人減の759人となった。
東京都で確認された感染者は412人で、3日連続で500人を下回った。直近7日間の新規感染者の平均は534・7人となり、1週間前の71・2%になった。都の基準で集計した重症者は前日と同じ104人。福井県では技能実習生のベトナム人女性6人の感染が確認された。大野市の寮で共同生活をしていたという。【まとめ・金子淳】