[沖縄から]DVや養育費、米軍人らとトラブル抱える女性を救え…県が相談窓口

沖縄県が米軍人や軍属との間で結婚生活や交際のトラブルを抱える女性の支援に乗り出した。フェンスの内側の相手との意思疎通には、言葉だけでなく制度の壁もはだかる。県は専用の相談窓口を開設し、家庭内暴力(DV)など深刻な事案で連携できるよう米軍側に働きかけており、当事者は、より実情に即したサポートを求めている。(寺垣はるか)
■時間だけが過ぎ…
「あの時、役所で具体的なアドバイスをもらえていたら……」。数年前に元米軍人の夫からDVを受けていた40歳代の女性はつぶやく。
海兵隊員だった夫と2年半の交際を経て結婚。2人目の子の出産後に退役した夫は、女性や子どもに手をあげたり、どなり続けたりするようになった。
女性は幼子2人を連れて自治体のDV相談窓口などを何度も訪れたが、担当者に米軍や米国の制度に関する十分な専門知識がないため効果的な助言は得られず、1か月が過ぎた。この間、夫が任務先の第三国でも家庭を築いていたことが発覚。離婚や養育費の話ができないまま、夫は第三国に去ったという。
こうした米軍関係者との問題に悩む女性を支援しようと、県は今年1月、嘉手納基地などを抱える同県

北谷
( ちゃたん ) 町に相談窓口を開設した。役場1階の空き部屋を活用。「国際家事福祉相談所」と表示し、常駐する支援コーディネーター2人が離婚や養育費の請求、DVなどの相談に無料で応じている。
窓口には「夫が威圧的で話し合えない」など、3月までに9件の相談が寄せられた。うち1件では、県の依頼を受けて仲介役を務める国際家事相談支援団体「ウーマンズプライド」のスミス美咲さん(44)が米軍施設内に同行。上官も立ち会って離婚に向けた協議が行われた。
県の窓口について、第三国の夫から養育費を受け取れていない女性は「専門知識を持つ人が相談に応じ、子どもに聞かせたくない内容の時は面倒をみてくれるなど細やかなサポートをしてほしい」と訴える。
■殺人事件が契機
県の窓口設置は、2年前に米海軍兵の男が同町の女性を殺害し、自殺したとされる事件がきっかけだった。2人には交際トラブルがあり、米軍側が男に接近禁止措置を取っていた経緯があるという。
県警によると、米軍関係者による女性らへのDVに関する相談は、2016年11件、17~20年は7~10件。事態を重く見た県は、悩みを相談できる場所や米軍側との連携が不可欠として窓口設置を決めた。
米軍側にも働きかけ、DVや虐待といった深刻な事案に焦点を当てた連携を模索。県の担当者は「米軍側の支援機関とも協力し、県民女性を保護できる仕組みを整えたい」と話す。

菅首相が人間ドック受診、就任後初…「体調に異常はない」

菅首相は24日、東京・代々木のJR東京総合病院で人間ドックを受けた。人間ドックの受診は昨年9月の就任後初めて。首相周辺によると、年1回の定期健診といい、「体調に異常はない」としている。病院には約5時間半滞在した。
首相は18日に米国から帰国後、オンライン形式で開かれた気候変動問題に関する首脳会議(サミット)への出席や新型コロナウイルス対応に追われた。緊急事態宣言の発令に伴い、大型連休中も都内にとどまって新型コロナ対応の陣頭指揮を執る予定で、体調管理の徹底に努めたようだ。

遊園地に「無観客開催を」? ナゾ過ぎる「都の要請」に施設困惑

25日に発令される緊急事態宣言を踏まえ、各地の商業施設や娯楽施設が営業休止や縮小に乗り出した。関係者からは「要請の中身が意味不明」「あまりに急」といった戸惑いと不満の声が聞かれた。
日本最古の遊園地「浅草花やしき」(東京都台東区)は24日朝、緊急事態宣言期間中の休園を決めた。都は遊園地への「無観客開催」を求めており、事実上の休業要請と受け止めた。肥後修施設運営部長は「うちは遊園地。お客さんがいてこそ意味がある」と都の要請に首をかしげ「あまりに急な決定で、来園者にも迷惑がかかる。もう少し早く決めてほしかった」と漏らした。
同様に臨時休館を決定したテーマパーク「東京ジョイポリス」(港区)の担当者も「『無観客開催を』と言われても、お客さんがいないのでは意味がない。(国や都に)いろいろな思いはあるが、感染防止を第一に考え、休業要請に従う」と肩を落とした。
「うちは1200平方メートル超なので残念ながら……」。映画「男はつらいよ」の世界が追体験できる「葛飾柴又寅さん記念館」(葛飾区)は、都が休業要請の対象とした「1000平方メートル超の施設」に当てはまるため、休館を決めた。
感染防止対策を徹底し、来館者は1日100人程度という。「なぜ、という思いはある。1000平方メートル以下なら安全なのか。都の基準の根拠がよく分からない」と担当者はぼやいた。
施設だけでなく、イベント主催者にも混乱は及んだ。一般社団法人日本ホビー協会は、東京ビッグサイト(江東区)で27~29日に開催予定だった「日本ホビーショー」を中止とした。手芸用品の購入や手作り体験ができるとあって、例年10万人以上の愛好家が訪れる。だが、23日夜に施設側から「無観客イベントしか開催できない」と突然伝えられた。
物品の発送も全て終わり、これから準備にとりかかるところだったという。担当者は「まさか直前に補償もない中で決断することになるとは……。関係者には申し訳ない気持ちでいっぱいです」とうなだれた。【吉井理記、竹内麻子】

国内、新たに5608人感染=6府県で最多更新―新型コロナ

国内では24日、新たに5608人の新型コロナウイルス感染者が確認された。1日当たりの感染者数が5000人を上回るのは4日連続。石川、兵庫、京都など6府県で過去最多を更新した。
大阪府は新たに1097人の感染が確認されたと発表した。5日連続で新規感染者が1000人を超えたが、前週の土曜日(17日)の1161人は下回った。
東京都の新規感染者は876人。3月21日で2度目の緊急事態宣言が解除されて以降、最多となった。
兵庫県では過去最多となる635人の感染が判明した。県の山下輝夫感染症等対策室長は「非常に厳しい数字。単なる感染症のまん延ではなく災害レベルだ」と話した。
京都府では新たに174人の感染が確認され、1月17日の154人を上回り過去最多となった。三重、徳島、大分各県でも最多を更新した。
全国で確認された死者は54人。厚生労働省によると、全国の重症者は837人で、前日から21人増えた。
[時事通信社]

首都圏36市町で酒提供自粛要請 神奈川、千葉、埼玉の3県

神奈川、千葉、埼玉の3県は24日、新型コロナウイルスの対策会議を開き「まん延防止等重点措置」の対象区域の店舗に酒類提供を終日自粛するよう求めることを決めた。対象区域は神奈川で3市、千葉で5市、埼玉で2市としてきたが、会議でそれぞれ6市、7市、13市町の追加を決定。3県で計36市町に拡大。自粛要請は28日から5月11日までとする。
神奈川県の6市は鎌倉、厚木、大和、海老名、座間、綾瀬。千葉県の7市は、千葉、野田、流山、鎌ケ谷、我孫子、八千代、習志野。埼玉県の13市町は川越、所沢、草加、越谷、蕨、戸田、朝霞、志木、和光、新座、富士見、ふじみ野の各市と三芳町。

「変異株の拡大力すさまじい」…知事会が国に緊急提言提出へ

新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が4都府県に発令されるのを前に、全国知事会は24日、国に対し、国民に危機感を伝え、行動変容を促す強いメッセージを出すよう求める緊急提言をまとめた。近く国に提出する。
提言では、変異ウイルスの広がりを防ぐため、大型連休中は感染拡大地域からの帰省や旅行を控えるよう国が強く呼びかけ、旅行のキャンセル料を国が全額負担することを要望した。
変異ウイルスについては、遺伝子解析の全国体制構築に向け、検査費用や人員確保、試薬の配分などの道筋を具体的に示すよう求めた。
提言をまとめたオンライン会議で、大阪府の吉村洋文知事は「変異株の感染拡大力はすさまじい。既存のものとは違うという理解で対策を考えなければいけない」と訴えた。

星出さん、ISSで野口さんと再会…「クルードラゴンで来られたのは名誉」

【オーランド(米フロリダ州)=船越翔】星出彰彦・宇宙飛行士(52)ら4人が搭乗する米民間宇宙船「クルードラゴン」が24日午前5時8分(日本時間24日午後6時8分)、高度約400キロ・メートルを周回する国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングした。星出さんは約2時間半後にISS内に移動し、昨年11月から長期滞在中の野口聡一飛行士(56)との再会を喜んだ。
星出さんは到着後の地球との交信で「クルードラゴンに乗って、ここに来られたのは名誉なことだ。ISSで世界中の人々と一緒に働けることを楽しみにしている」と語った。
今回が3回目の宇宙飛行となった星出さんはISSに秋頃まで約半年間滞在し、日本人として2人目となる船長も務める。今月28日に野口さんが地球帰還に向けて出発するまで、日本の2飛行士がISS内で共に活動する。日本人飛行士が2人そろうのは、2010年以来で2回目だ。
23日早朝(同23日夕)に米フロリダ州ケネディ宇宙センターから打ち上げられたクルードラゴンは、予定の軌道に投入された後、地球を回りながら高度を徐々に上げ、ほぼ1日かけてISSに到着した。

「安全性高まっている」=福井知事が40年超原発視察

福井県の杉本達治知事は24日、運転開始から40年を超える関西電力美浜原発3号機(同県美浜町)と高浜原発1、2号機(同県高浜町)を視察した。杉本知事は視察後、記者団に「安全性が格段に高まっている」と評価。今後、梶山弘志経済産業相らと面談した上で、近く再稼働可否の判断を示すとみられる。
視察には、県原子力安全専門委員会の鞍谷文保委員長が同行。重大事故が起きた際の対策本部となる緊急時対策所や、デジタル式に変更された中央制御盤などを確認した。
[時事通信社]

【有本香の以読制毒】自民党有志が「南モンゴル議連」を設立 自由、民主、人権をリードする大国として日本が立ち上がる

自民党有志による「南モンゴルを支援する議員連盟」の設立総会を21日、取材した。この「南モンゴル議連」ができたことで、既存の「ウイグル議連」「チベット議連」とあわせ、中国政府から激しく弾圧されている3民族を支援する議連が永田町にそろったことになる。北京政府にとっては好ましからざる動きに違いない。 南モンゴル議連の代表は高市早苗前総務相が務める。「議連」というと、親睦や利権つながりを趣旨としたものが多いなかで、中国という大国に物申す、まさに「闘う」議連のトップを、女性が単独で務めることは例がない。その高市代表は、冒頭のあいさつでこう言い切った。 「南モンゴルの問題に対して、日本国政府や日本の国会が行動を起こそうとすると、中国共産党政府は『内政干渉だ』と言ってくるであろうと思いますが、私は、既にこれは内政干渉ではなく、国際問題だと考えております」 私も長く、チベット、ウイグルといった中国の民族問題に関わってきたが、日本の政治家が、かくも堂々と、そしてよどみなく、民族問題に関する「正論」を公言するのを見たのは初めてだ。日本国民として、また同性としても心強い限りである。 ところで、読者の皆さまの中にも「はて、南モンゴルとはどこ?」と思う方もおられるかもしれない。南モンゴルとは、多数の力士の出身地であるモンゴル国とは別で、その南にあるこの地域を現在は、中国共産党政府が「内モンゴル自治区」と呼んで支配している。 しかし、新疆ウイグル自治区やチベット自治区と同様、「中国政府が『自治区』と名付けたところに自治はなし」の定石どおり、今やモンゴル人には自らの母語を学校で教える自由すらない。 南モンゴル問題のポイントは大きく3つある。 第1は、本コラムでもお伝えした、南モンゴルの学校でモンゴル語での使用が事実上禁じられた件だ。 第2は、フランス・ナントの歴史博物館での一件に象徴される「歴史簒奪」の問題。同博物館でのモンゴルの歴史展示について、中国政府が「チンギス・ハーン」や「モンゴル帝国」という用語を使うなという噴飯ものの要求をしたため、企画展そのものが中止されたのだ。 第3は、在日モンゴル人への中国当局の脅迫である。これはウイグル人にとっても切実な問題だ。 高市氏は言う。 「多くの南モンゴルの研究者、留学生が日本国内で安心して生活ができるように。また、モンゴル人にとっても日本人にとっても大切な文化や歴史、倫理的価値を守るために。そして、国内外の多くの方々が安心して南モンゴルを訪問できる環境をつくるために、闘って参りましょう。主権国家として当然の責務です」
自民党有志による「南モンゴルを支援する議員連盟」の設立総会を21日、取材した。この「南モンゴル議連」ができたことで、既存の「ウイグル議連」「チベット議連」とあわせ、中国政府から激しく弾圧されている3民族を支援する議連が永田町にそろったことになる。北京政府にとっては好ましからざる動きに違いない。
南モンゴル議連の代表は高市早苗前総務相が務める。「議連」というと、親睦や利権つながりを趣旨としたものが多いなかで、中国という大国に物申す、まさに「闘う」議連のトップを、女性が単独で務めることは例がない。その高市代表は、冒頭のあいさつでこう言い切った。
「南モンゴルの問題に対して、日本国政府や日本の国会が行動を起こそうとすると、中国共産党政府は『内政干渉だ』と言ってくるであろうと思いますが、私は、既にこれは内政干渉ではなく、国際問題だと考えております」
私も長く、チベット、ウイグルといった中国の民族問題に関わってきたが、日本の政治家が、かくも堂々と、そしてよどみなく、民族問題に関する「正論」を公言するのを見たのは初めてだ。日本国民として、また同性としても心強い限りである。
ところで、読者の皆さまの中にも「はて、南モンゴルとはどこ?」と思う方もおられるかもしれない。南モンゴルとは、多数の力士の出身地であるモンゴル国とは別で、その南にあるこの地域を現在は、中国共産党政府が「内モンゴル自治区」と呼んで支配している。
しかし、新疆ウイグル自治区やチベット自治区と同様、「中国政府が『自治区』と名付けたところに自治はなし」の定石どおり、今やモンゴル人には自らの母語を学校で教える自由すらない。
南モンゴル問題のポイントは大きく3つある。
第1は、本コラムでもお伝えした、南モンゴルの学校でモンゴル語での使用が事実上禁じられた件だ。
第2は、フランス・ナントの歴史博物館での一件に象徴される「歴史簒奪」の問題。同博物館でのモンゴルの歴史展示について、中国政府が「チンギス・ハーン」や「モンゴル帝国」という用語を使うなという噴飯ものの要求をしたため、企画展そのものが中止されたのだ。
第3は、在日モンゴル人への中国当局の脅迫である。これはウイグル人にとっても切実な問題だ。
高市氏は言う。
「多くの南モンゴルの研究者、留学生が日本国内で安心して生活ができるように。また、モンゴル人にとっても日本人にとっても大切な文化や歴史、倫理的価値を守るために。そして、国内外の多くの方々が安心して南モンゴルを訪問できる環境をつくるために、闘って参りましょう。主権国家として当然の責務です」

【コロナ戦争の戦犯】厚労省の「医系技官」はなぜワクチンの早期承認を嫌うのか 接種も遅れ、世界では異例の医療従事者優先

新型コロナウイルスに限らず、人類が感染症と穏やかに共存できるようになるのは、ワクチンを多くの人々が接種したときだけだ。爆発的流行もなくなるし、かかっても症状は軽くなる。PCR検査のように何度も繰り返す必要はなく、1年ほどは安心だ。 新種の伝染病のワクチン開発には、2年とかそれ以上が普通だった。しかし、世界の製薬会社が頑張り、政治家も支援して、欧米では昨年末には接種まで始まった。 ところが、日本では開発も、海外ワクチンの承認や接種も遅れている。厚労省が決めた新薬開発の治験(臨床試験)や承認基準が厳しいままで、海外と違ってアクセルを踏めなかったからだ。 欧米では昨年中に接種が開始された米製薬大手「ファイザー」のワクチンが日本ではやっと2月14日になって承認され、他社のものは、早くても5月中だ。 厚労省の「医系技官」らが早期の承認を嫌うのは、国民が副反応に極端に敏感ということもあるが、コロナ対策の緊急性を理由に海外での実績で例外を認めると、独自の承認システムに「蟻の一穴」が空くと懸念しているようだ。欧米でも専門家は似た立場だったが、政治家が押し切った。 特に、米国のドナルド・トランプ前大統領、英国のボリス・ジョンソン首相、イスラエルのベンヤミン・ネタニエフ首相が剛腕を振るって接種が進み、流行は終息に向かっている。対して、医療界の意見を重視したEU(欧州連合)、特に大臣が医師であるフランスがやや出遅れたのは象徴的だ。 日本では世界でも異例なことに、医療従事者等だけを接種の最優先とし、しかも、コロナ治療の現場だけでなく、美容整形から出入り業者まで拡大できる緩い基準にしたので、勤労人口の8%という480万人もが対象になって高齢者や介護関係者が後回しになった。 海外では、クラスター発生が懸念される高齢者施設入居者や従業者が最優先だ。ドイツでは、80歳以上の高齢者と高齢者施設の職員、コロナ患者に接する狭い範囲の医療従事者らが1位で、80歳以上の人の家族や70歳以上が続き、一般の医師はスーパーの店員や教師と一緒である。死者を減らすなら、高齢者とその感染の最大の原因となる家族、介護関係者を優先させるドイツのやり方が合理的だ。 この順序については、第43回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会(12月25日)で決まったという報道もあったが、この席で厚労省の林修一郎予防接種室長が「新型インフルエンザ等対策有識者会議新型コロナウイルス感染症対策分科会(コロナ分科会)」での議論を受けて進めているとしており、主導権はそちらにあったようだ。
新型コロナウイルスに限らず、人類が感染症と穏やかに共存できるようになるのは、ワクチンを多くの人々が接種したときだけだ。爆発的流行もなくなるし、かかっても症状は軽くなる。PCR検査のように何度も繰り返す必要はなく、1年ほどは安心だ。
新種の伝染病のワクチン開発には、2年とかそれ以上が普通だった。しかし、世界の製薬会社が頑張り、政治家も支援して、欧米では昨年末には接種まで始まった。
ところが、日本では開発も、海外ワクチンの承認や接種も遅れている。厚労省が決めた新薬開発の治験(臨床試験)や承認基準が厳しいままで、海外と違ってアクセルを踏めなかったからだ。
欧米では昨年中に接種が開始された米製薬大手「ファイザー」のワクチンが日本ではやっと2月14日になって承認され、他社のものは、早くても5月中だ。
厚労省の「医系技官」らが早期の承認を嫌うのは、国民が副反応に極端に敏感ということもあるが、コロナ対策の緊急性を理由に海外での実績で例外を認めると、独自の承認システムに「蟻の一穴」が空くと懸念しているようだ。欧米でも専門家は似た立場だったが、政治家が押し切った。
特に、米国のドナルド・トランプ前大統領、英国のボリス・ジョンソン首相、イスラエルのベンヤミン・ネタニエフ首相が剛腕を振るって接種が進み、流行は終息に向かっている。対して、医療界の意見を重視したEU(欧州連合)、特に大臣が医師であるフランスがやや出遅れたのは象徴的だ。
日本では世界でも異例なことに、医療従事者等だけを接種の最優先とし、しかも、コロナ治療の現場だけでなく、美容整形から出入り業者まで拡大できる緩い基準にしたので、勤労人口の8%という480万人もが対象になって高齢者や介護関係者が後回しになった。
海外では、クラスター発生が懸念される高齢者施設入居者や従業者が最優先だ。ドイツでは、80歳以上の高齢者と高齢者施設の職員、コロナ患者に接する狭い範囲の医療従事者らが1位で、80歳以上の人の家族や70歳以上が続き、一般の医師はスーパーの店員や教師と一緒である。死者を減らすなら、高齢者とその感染の最大の原因となる家族、介護関係者を優先させるドイツのやり方が合理的だ。
この順序については、第43回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会(12月25日)で決まったという報道もあったが、この席で厚労省の林修一郎予防接種室長が「新型インフルエンザ等対策有識者会議新型コロナウイルス感染症対策分科会(コロナ分科会)」での議論を受けて進めているとしており、主導権はそちらにあったようだ。