北欧でワクチン接種後に高齢者死亡…ファイザー社の見解は

「できる限り2月下旬の(医療従事者を対象とした)接種開始を目指して準備したい」

1月22日の会見で、新型コロナウイルスのワクチンについて語った河野太郎“ワクチン担当相”。

日本で真っ先に接種が始まるのは、米ファイザー社と独ビオンテック社が共同開発したワクチンだが、1月中旬には、世界の医療関係者が注目した報道があった。

「ノルウェーで両社のワクチンを接種した約4万2千人のうち33人が、発熱や吐き気などの副反応を示し、接種後数日以内に亡くなったと報じられました。大半は80歳以上の高齢者だったそうです」(医療ジャーナリスト)

ファイザー株式会社の広報担当者は、本誌の取材に対し、次のような見解を示した。

《(亡くなった方の)ご冥福をお祈りするとともに、ご家族の皆様にお見舞いを申し上げます。

ノルウェー当局は老人ホームの入居者等に対するワクチンの接種を優先していますが、その多くは非常に高齢で基礎疾患を有しており、中には終末期の方もいます。

ノルウェー医薬品局は、医学的にリスクの高い人に対する本剤の接種と死亡の関連性は完全には否定できないものの、ワクチン接種との直接的な因果関係を示すエビデンスは得られていないと表明しています。

今回の件を受けて、ノルウェー保健局は重度のフレイル患者(例えば、Clinical Frailty Scale 8以上)、および終末期患者に対するワクチン接種のガイダンスを改訂し、ワクチン接種によって得られるベネフィットとリスクを慎重に評価するよう求めています。》

■「追跡調査の期間が足りない」と指摘する専門家も

この件について、日本の専門家はどう見ているのだろうか。大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授の宮坂昌之さんは、

「ノルウェーは日本と同じように高齢者が多い国ですし、その状況は今後も注視すべきだと思います。しかし、いっぽうで“ワクチン接種は危険なのではないか”というイメージだけが独り歩きしてしまうことを心配しています。ファイザーや米国のモデルナが開発したのは“mRNAワクチン”という種類のものです。ファイザーのワクチンは有効性が95%、モデルナは約94%と、非常に優秀です」

だが軽重はともかくとして、あらゆるワクチンに“副反応”はつきものだという。

「基本的には打った部分が腫れる、接種後に発熱する、関節痛のような痛みが生じる、といった症状です」(『ワクチン診療入門』の著書もある、ナビタスクリニック川崎の医師・谷本哲也さん)

新潟大学名誉教授の岡田正彦さんはこう語る。

「mRNAワクチンには、たんぱく質などを安定化させるポリエチレングリコール(PEG)が使用されていることが判明しています。“PEGによるアレルギー反応は不明”という論文もあり、その点について私は懸念を抱いています」

PEGについて、前出の宮坂さんは、

「薬品や化粧品などにも添加されている物質ですが、調査によればPEGによりアレルギー反応を引き起こされる人も多いのです。だから医師仲間の間では、『ワクチン接種後に、PEGによるアナフィラキシー(アレルギーの原因物質が体内に入ることによって、一つの臓器にとどまらず複数の臓器に強い症状が現れる過剰反応)が発生する可能性もあるのでは』という話はしていました。しかし幸い、アナフィラキシーに関して言えば、注射後の15?30分で反応が出ますので、医療機関の付近にいれば救命措置をとることもできます」

“ワクチン反対派ではない”という岡田さんだが、接種後すぐに判明する副反応よりも、将来の不安を感じているという。

「特に英国のアストラゼネカが開発したウイルスベクターワクチンで、すでに日本で治験が始まっています。人工合成したDNA遺伝子そのものを、無毒化したアデノウイルス(風邪のウイルスの一種)に組み込んで注射します。

いままで人類が経験したことのない新型ワクチンですので、本来であれば、発がん性の有無などを確認するために、5年以上は追跡調査すべきだったと思います。長期的な安全が証明されていないわけですから、私自身は打つことを考えていません」

『AERA』(1月25日号)には医療関係者1726人への調査結果も掲載されている。『ワクチンを接種しますか』という設問に対しては、「する」が31.4%、「種類による」が27.3%、「しない」が11.8%、「わからない」が29.5%と、意見も割れているようだ。

■「若い人も高齢者も副反応は同じ」

今回取材した専門家たちに、“接種を控えるべき条件”について聞いてみた。

「ワクチン接種によりコロナ感染を防ぐというメリットと、接種による副反応というデメリットのバランスを、個別に判断していくことが必要となります。

その際に、一つの尺度となるのが、“病気の重篤度”です。たとえば、高齢で、認知症のために寝たきりのような状態の方であれば、ワクチンの副反応が出たときに、体に致命的な影響が及ぶ可能性もあるでしょう。また心臓が弱っている方の場合、ワクチン接種で高熱を発することで、さらに心臓への負担がかかり、亡くなってしまうというケースもあるかもしれません」(谷本さん)

現在は、医療従事者についで、高齢者が優先的に接種できるという方針が示されている。1月25日に厚生労働省は、65歳以上の高齢者への接種券を3月中旬以降に発送するといったスケジュールを明らかにした。

だが、岡田さんは違和感を覚えているという。

「ワクチンを製造している会社の論文を読むと、若い人も高齢者も副反応は同じ、とありますが、たとえばインフルエンザワクチンも私の経験では高齢者のほうが副反応は強いです」

また、深刻なアレルギーを持つ人も注意が必要だという。

「イギリスでは医薬品や食品、あるいはワクチンに対して重大なアレルギー反応が現れたことのある人には接種しないように呼びかけています」(宮坂さん)

「アナフィラキシーを起こしたことがある方は避けたほうがいいと考えています」(谷本さん)

最後に宮坂さんは、こんなアドバイスをしてくれた。

「一般の人に接種の順番が回ってくるまで、あと数カ月は必要になるでしょう。その間に、世界のワクチンに関するデータは積み上がっていきます。そのデータを見て、自分は打つべきかどうか最終的に判断してはどうでしょうか」

自分や家族の身を守るために、感染状況だけではなく、ワクチンの影響にまつわるニュースも注視していく必要があるのだ。

「女性自身」2021年2月9日号 掲載

河原に謎の木組み、その正体は 戦国期から伝わる「中聖牛」、京都で設置取り組み

川の流れを自然素材でせき止めずに変える伝統的な木組みの構造物「中聖牛(ちゅうせいぎゅう)」を、京都府井手町多賀の木津川右岸に設置する取り組みが4年目を迎えた。これまでに12基が設置され、京都大防災研究所などが流れや砂のたまり方、川の生物への影響などを調査してきた。昨年は初めて業者の手を借りず、市民グループの会員だけで設置でき、技術の普及にも期待が寄せられている。
中聖牛は、丸太を三角すい状に組み合わせて川に設置し、増水時の流れを変えたり、緩やかにする伝統的な河川工法。戦国時代ごろに東海地方で誕生し、江戸後期に全国へ広まったとされる。大きさや形状によって「大聖牛(だいせいぎゅう)」や「菱牛(ひしうし)」と呼ばれる物もある。 木津川では2017年から、京大防災研の提案を受けたNPO法人「やましろ里山の会」(京田辺市)など地元の3団体が、伝統的な河川工法に詳しい静岡県の土木業者や、国などの協力を得て毎年3基ずつ設置してきた。 調査では、砂の堆積を促したり、洪水時に水の流れを弱めたりする効果が見られた。ほかにも、聖牛の周辺にできる水たまりが昆虫類の新しい生息場所になるといった変化もあるという。 4年目の昨年は、里山の会の会員らが3基の設置に向けて9月から作業を開始。週末を中心に、竹で編んだ細長いかごに石を詰めて重りにした「竹蛇籠(たけじゃかご)」を作ったり、高さ約4メートルになる木組みを立ち上げるなどしてきた。12月には、研究に携わる学生も含め、関係者約60人が集まって完成を祝った。 今回は会員らが独力で中聖牛を作り上げた。京大防災研水資源環境研究センターの竹門康弘准教授は「材料の確保から設置まで独自でできるようになり、会のみなさんが講師として各地で指導できるようになった」と今回の意義を強調する。 里山の会理事の有田勉さん(75)は「大変な作業もあったが、自分たちの手で作り上げられ感激している」と喜んだ。有田さんによると、木津川での活動を知って、遠方から見学に訪れる人の姿も見え始めたという。 竹門准教授は「絶えず水筋が変わる日本の河川では、木と竹、石で作り、壊れれば作り直す方法が適している。聖牛にはどういう役割があるのか、どこに置けば効果があるのかなどを今後も確認していきたい」と展望を語った。

バス停で殴打され亡くなった女性に自分重ねる 「わたしは人と見做されているか」 詩人平田俊子さんと現場を歩く

所持金は8円。携帯電話も持っていたが、電源が入らない状態だった。
昨年11月16日未明、東京都渋谷区幡ケ谷の「幡ケ谷原町」バス停で、路上生活をしていたとみられる大林三佐子さん(64)が、近所に住む男に殴打され、死亡した。亡くなる前、彼女がバス停に夜通し座っていたり、パンを食べたりしている姿を、周囲の人たちが目撃している。
この事件を重く受け止め、考え続けている人たちがいる。詩人の平田俊子さん(65)もその一人だ。何度も現場に足を運び、手を合わせる。「彼女を身近に感じる。彼女だけではなく、家をなくした人たちに自分が重なり、言葉があふれてきた」。そのようにして書いた詩「『幡ケ谷原町』バス停」が『現代詩手帖』(思潮社)の1月号に掲載された。平田さんと一緒に、現場を歩いた。(共同通信=田村文)
深夜の「幡ケ谷原町」バス停=1月21日、東京都渋谷区幡ケ谷2丁目
▽高くて小さくて冷たい椅子
詩の中で平田さんは、大林さんの目で周囲を見る。いや、見るだけではない。彼女の足でイチョウ並木を歩き、彼女の指でお金を数え、彼女の脳で思考する。「詩作の技巧としてその方法を選んだというわけではなく、自然にそうなった」
詩の冒頭を引く。
「道があった/どこまでも続く道があった/足があった/どこまでも歩ける足があった/夜は毎晩やってきた/夜は毎晩長かった/夜更けに甲州街道を/西へ西へと向かった/歩くたびに故郷に近づいた/帰郷したいわけではなかった」
バス停は京王新線・幡ケ谷駅と笹塚駅の中間あたり、甲州街道沿いにある。上には首都高速が走る。昼間は目の前と頭上を絶えず車が通り、騒がしい。
「幡ケ谷原町」バス停に供えられていた花や飲み物=1月21日、東京都渋谷区幡ケ谷2丁目
平田さんとここを訪ねたのは1月21日の午後。事件から2カ月以上過ぎているが、花や飲み物が手向けられている。普段からこのバス停を利用している小学生の女の子に「事件のこと、知ってる?」と聞くと、小さくうなずいて言う。「花があるから…」
平田さんがここに来るのは7度目だが、昼間来るのは初めてだという。
「最初は11月25日でした。初めのころは、柿やパンなど食べ物も供えられていたし、お香の匂いもした」。年明け間もないころに来たときは、聖書が置かれていた。彼女のことを気にかけ、手を合わせ続けているのは自分だけではないと思った。
ベンチに目をやる。
「椅子が高くて、すごく小さい。仕切りもあって、冷たくて。眠れたのかな。キャリーバッグを持っていたというから、それにもたれかかっていたのかな。近くに赤い郵便ポストがあるでしょ。あれを見て、故郷の友だちのことを思ったりしたのかな」。問いが次々に浮かぶが、答えてもらえる日は来ない。
▽ゆったりとした容れ物
なぜこの事件にこだわるのか。
平田さんは無類のバス好きである。『スバらしきバス』というエッセー集もある。あとがきに「運転手さんがどこかに連れていってくれる、ゆったりとした大きな容れ物」と記している。この乗り物のおおらかさが気に入っているのだ。
中野区の自宅から渋谷に出るときも、バスに乗る。途中にこのバス停がある。何度その前を通ったことか。事件が起きたとき、心に引っ掛かったのはそのせいだ。新聞や週刊誌の記事を読んだ。記事について誰かがネットでつぶやいている情報も見た。
大林さんと自分は似ていると思った。年齢は1歳違い。身長が150センチぐらいでおかっぱ頭というのも、153センチで、やはりおかっぱにしている自分に近い。出身地が広島県ということにも、親近感を持った。平田さんは島根県生まれ。高校は山口県で、92歳の母は福岡県に暮らす。
「ここを通るとき、思うんです。この道をずっと西へ行けば、母のいるところに着くんだなって。大林さんもきっと、故郷のことを考えたのではないかな」
ネットに、初台の東京オペラシティ付近で見かけたという情報が載っていた。そのすぐ近くにある緑道の東屋(あずまや)のベンチにいたという話もあった。真偽不明の情報だが、それをもとに推理した。バスが行き来している時間帯は、トイレも使える新国立劇場や東京オペラシティのあたりにいて、最後のバスが行った後の午後11時ごろに、甲州街道横の歩道をゆっくり歩いて、あのバス停に移動していたのではないか。
平田さんも東京オペラシティから歩いた。「新国立劇場」「幡代」「幡ケ谷駅」「幡ケ谷原町」「笹塚駅」…。バス停を一つ一つ確認した。
「巡ってみて、自分もあのバス停を選ぶだろうなって思った。『幡代』はマンションの入り口、『幡ケ谷駅』は営業中の『松屋』の前、『笹塚駅』は交番の目の前。『幡ケ谷原町』のバス停はクリーニング店の前だけど、この時間は店を閉める。ベンチに座ると、店のかわいい羊のマークが目の前にある。おまけに、バス停の屋根の蛍光灯が切れていて薄暗い。ほっとする」
甲州街道沿いの歩道。上の首都高速でも車がひっきりなしに行き交っている。亡くなった大林三佐子さんも、この歩道を歩いたのだろう=1月21日、東京都渋谷区
▽崖っぷちにいる私たち
大林さんは、帰る家がなくてバス停で寝ていた。所持金が8円だった。衝撃だった。でも、人ごとではないとも思う。
「私は離婚して、子どももいないから、いま一人で暮らしている。原稿料やなにかで暮らせているし、家賃も払っているけれど、いつ払えなくなるかわからない。払えていたとしても、年をとれば、契約を更新してもらえないかもしれない」
「でも、私もきっと、そうなっても福祉を頼らない気がする。生活保護を申請したら、福岡の母や、妹に連絡がいってしまうかもしれないと思うと、躊躇(ちゅうちょ)する。SOSの声をあげられる社会の方がいいと思うけれど、自分のこととなると、どうなんだろう」
「お金がなくなれば、いろんな関係性が途絶えるかもしれない。人間は人との関係の中で生きている。だからとてもつらいと思う」
痛切な思いを、詩はこう表現する。
「何度数えても所持金は八円/これでは飴玉さえ買えない/何も買えなければゼロと同じだ/八円はお金と見做(みな)されない/わたしは人と見做されているか/交番を過ぎる/警察署を過ぎる/イチョウの葉っぱが降りしきる/黄色い葉っぱがお金ならいいのに/パンならいいのに/葉っぱは葉っぱ/八円は八円」
バス停のある歩道はイチョウ並木だが、いまはもう葉はない。でも、大林さんが亡くなってすぐのころは、黄色い葉っぱがたくさん舞いおりてきた。
「かたわらのイチョウに『おやすみ』という/イチョウは黙って葉っぱを降らせる/葉っぱのようにわたしも散るのか/散って地面に落ちるのか」
大林さんの身になって詩を紡いでみると、彼女に似た自分も、多くの女性たちも、いま崖っぷちにいるのだと分かった。新型コロナウイルスの感染拡大で見えてきたこともあるけれど、前からずっと、崖っぷちにいたのかもしれない。
平田俊子さん。1955年島根県生まれ。詩人。98年、詩集『ターミナル』で晩翠賞。2004年、詩集『詩七日』萩原朔太郎賞。05年、小説『二人乗り』で野間文芸新人賞。16年、詩集『戯れ言の自由』で紫式部文学賞。
平田さんは言う。詩を書くことに、ためらいがあった、と。事件を題材に詩を書くことは、不遜ではないかと恐れた。でも、大林さんに寄り添いたい気持ちがまさった。
平田さんと現場を歩いたその日。私も夜の様子が見たくなって、最終バスが行った後、再び「幡ケ谷原町」バス停に立った。今度は1人で。道を歩く人は少ない。広告の明かりで、バス停が暗闇に浮かびあがる。そこは、昼間とは全く違う相貌を見せていた。
椅子に座った。冷え切っていて、すぐに下半身がじんじんしてくる。
薄暗いその場所は、確かにどこか落ち着く。それでも10分と座っていられなかった。
夜は寒く、寂しかった。大林さんの夜の長さを思った。
詩「『幡ケ谷原町』バス停」の前半。『現代詩手帖』2021年1月号より
詩「『幡ケ谷原町』バス停」の後半。『現代詩手帖』2021年1月号より

今夜もほぼ満月で観測のチャンスあり 今年最初の満月「ウルフムーン」

今日29日午前4時16分頃に今年最初の満月となりました。昨夜雲が広がり観測できなかった関東地方などの地域でも、今夜は観測のチャンスがありそうです。
今年最初の満月 今夜もチャンスあり

国立天文台の資料によりますと、今朝29日午前4時16分頃に今年最初の満月になりました。1月の満月は「ウルフムーン」と呼ばれています。 今日29日の夜も、満月を過ぎたばかりの月の観測ができそうです。 太平洋側の地域を中心に晴れるでしょう。昨夜雲が広がり、月を観測することができなかった関東地方でも、今夜こそは観測のチャンスがありそうです。 一方、北日本や日本海側の地域では雪が降り、大荒れの天気になりそうです。無理な外出は控えるようにしてください。

二木芳人教授、自民党の「密」状態の会議に苦言「私はこういう委員会には参加したくありません」

29日放送のフジテレビ系「とくダネ!」(月~金曜・午前8時)で、28日の参院予算委員会で質問に立った国民民主党の伊藤孝恵氏が19日に自民党本部で行われた新型コロナ対策会議が多数の出席者で「密」になっていることを指摘したことを伝えた。
菅義偉首相は、今回の会議に「3密を避ける工夫を行っている」とした上で「結果として参加人数が多くなったと聞いている。党内で問題になっていましたので政調会長の下でしっかりと検討していきたい」と述べた。
スタジオでこうした自民党の「密」状態の部会に昭和大医学部の二木芳人客員教授は「私はこういう委員会には参加したくありません」とし大学ではリモート会議となっていることを引き合いにし「ちょっとこれは過密すぎます」と指摘していた。

「鶴岡親分」孫の現役慶応ボーイが持続化給付金詐欺…キックバック数十万円を要求したその手口

プロ野球界を代表する指導者のひとり、故鶴岡一人元監督の孫が、知人をそそのかした上、ダマし取った金の一部を「アドバイス料」としてキックバックさせていた――。

新型コロナウイルスの影響を受けた事業者を支援する国の持続化給付金を詐取したとして、東京都港区白金台の慶応大生、鶴岡嵩大容疑者(22)が26日、詐欺の疑いで島根県警松江署に逮捕された。

昨年7月ごろ、鶴岡容疑者は共通の友人を通じて、松江市の男子大学生を紹介してもらった。大学生は受給対象ではなかったが、鶴岡容疑者は給付金を申請するようけしかけた。

「共通の友人というのは20代の投資仲間です。鶴岡容疑者は犯行直前、投資仲間の旧知の知り合いだった大学生に『いい儲け話があるよ』と持続化給付金の話を持ち掛けた。大学生を個人事業主であるように装わせ、コロナの影響で収入が半分以下になったと虚偽の申請をさせた。大学生は中小企業庁から100万円の給付金を得て、鶴岡容疑者は申請を指南した見返りとして『アドバイス料』の名目で数十万円を受け取っていた。当然、余罪もあるとみて捜査を進めている」(捜査事情通)

全国で持続化給付金詐欺に絡む摘発が相次いだため、怖くなった大学生は昨年9月、警察に「自分がやったことは詐欺にあたるのではないか」と相談。鶴岡容疑者らの関与が発覚した。

鶴岡容疑者は慶応大環境情報学部4年で体育会の野球部に所属。大阪府出身で中学時代は「大阪南海ボーイズ」で全国大会準優勝を飾ったこともある。桐蔭学園高(神奈川)ではクリーンアップを打っていたが、大学のリーグ戦の通算成績は2試合出場2打数1安打1打点。ポジションは捕手だった。

「体育会野球部に所属していたのは間違いありませんが、4年生ですのですでに引退しています」(同大広報室)

今年3月卒業予定で、卒業後は「海外留学」を希望していた。

「鶴岡親分」と慕われた祖父・鶴岡一人は南海ホークス(現福岡ソフトバンクホークス)の監督を23年間務め、黄金時代を築いた。監督通算1773勝は歴代最多。勝率6割9厘は500勝以上の監督で唯一の6割超えだ。

■「グラゼニ」の名言届かず

鶴岡親分が残した「グラウンドにはゼニが落ちている。人が2倍練習してたら3倍やれ。3倍してたら4倍やれ。ゼニが欲しけりゃ練習せえ」という言葉はいまも語り草。金を稼ぎたければ人一倍努力しろという名言だが、どうやら「孫の耳」には届いていなかったようだ。

鶴岡容疑者は、慶応野球部HPの「将来の夢」欄に「祖父を超える人間になる」と大きな目標を掲げていたが、働きもせず、金をダマし取るだけのただの「詐欺師」だった。

特殊清掃員は見た…「オフィスのコロナ除染」をコソコソやる日本の特殊事情

コロナ感染症が拡大するにつれ、感染源の除染を手がける特殊清掃業者への依頼が急増している。
特殊清掃業「友心まごころサービス」(福岡県久留米市)の代表、岩橋ひろしさんはこの1年、数多くのコロナ感染の現場をクリーニングしてきた。その除染作業からみえてきた3つの問題点を指摘してくれた。
それは、「感染の隠蔽」「悪質業者による情報漏洩のリスク」、そして「“ゴミ屋敷”の中での高齢者の孤独死」だ。岩橋さんは「こうしたコロナを巡る間接的な問題にも、国や行政は早急に手立てを整える必要がある」と警鐘を鳴らしている。
岩橋さんの本業は特殊清掃だ。特殊清掃とは、孤独死や自殺・他殺の凄惨な現場をクリーニングすることである。腐乱した遺体の体液などが残る現場は細菌だらけで、感染症に冒される危険性を秘めている。
「目や防護服の隙間などから細菌が入ると、極めて危険です。特にウイルス性肝炎にかかったご遺体からの感染はわれわれにとっても命取りになるため、完全に防御をした上で臨みます。コロナの除染には、この技術を応用しています」
コロナ感染症が流行する前から、岩橋さんは防護服やゴーグル、医療用のN95マスクで完全防御した状態での室内除染の経験を数多く踏んできた。そのため、特殊清掃の技術を生かしたコロナ除染にニーズが集まっているのだ。
この1年、独自の除染技術をもつ岩橋さんの会社には、コロナ感染者が出たオフィスや飲食店、ホテル、美容院、整骨院、遊興施設、学校、コールセンター、個人宅などからの除染依頼がひっきりなしに入っている。依頼主は九州が多いが、時には関東など全国に出張に出向くこともある。
変わったところでは先日、建築中の戸建て住宅の除染の依頼が入った。施工する大工さんに感染が発覚したからだ。多数の感染者を出している米軍基地の除染も手がけるが、こちらは守秘義務があり、詳細は言えないという。
岩橋さんはコロナ除染の現場を通じて、多くの厄介な問題点が見えてきたという。
「現場感覚では、あちこちに感染源が飛び火している感じですね。共通するのは依頼主が、まるで犯罪者になったかのように事実を隠蔽する行動に出ていることです。コロナはインフルエンザのように誰にでも感染する可能性があるのに、社会全体が感染者を“非国民”のような扱いにしてしまう。そのことで、感染の事実を隠そうとする心理が働く。むしろ、社会不審がコロナを広げているとさえ、思います」(岩橋さん)
実際、「奥歯にモノがつまったような」依頼が増えているという。「オフィスの消毒をお願いできませんか。コロナが出たわけじゃないんですけどね……」
岩橋さんは直感的に「コロナ感染が疑われる」と判断し、「コロナ感染者が出た場合の除染は、正直に申告してくださいね」と告げる。だが、依頼主は明らかに挙動不審で、否定も肯定もしないという。
現場に下見に行くと、オフィスには誰もいない。「コロナ感染者が出たことに対して、会社内で箝口令が敷かれている可能性があります……」。岩橋さんは防護服を着込み、万が一の感染に備えて慎重に作業を進める。
除染の作業の進め方はコロナ除染も、そのほかの除染も変わらないが、コロナ除染の場合、使用する薬剤の濃度を通常の2.5倍ほどにしている。そのため、正直に申告してもらわないと、除染効果が得られない場合があるという。
依頼した側としては、感染者を出したという負い目と、コロナが公になれば事業継続ができなくなることへの怖れを抱いていることが多い。これが強まると、検査結果が陽性であってもそれをカムフラージュするために無理に出勤するケースが出てどんどん感染が広がっていきかねない、と岩橋さんは見ている。
依頼主は、近隣の企業や住宅など人目をはばかり、深夜などの営業時間外に除染を依頼することがほとんどだ。
テーブルやドアノブなどに付着したコロナウイルスは3日ほどで不活化するといわれているため、1週間も感染源に立ち入らなければ特段、除染する必要はない。保健所も清掃業者による除染は義務付けていないが、施設の管理者は、除染せざるをえない心理状況になるという。
岩橋さんがコロナの最前線に足を運んで気づいたのは、こうした感染の隠蔽の問題だけではない。情報漏洩の危険だ。
オフィス内で感染者が確認されると、従業員は逃げるように退去する。デスクを整理整頓する間もなく、オフィス外へと出されると、岩橋さんら除染スタッフが入る。デスク上には業務上の契約書、個人情報が書かれた書類などの機密書類がそのまま散乱している場合もよくあることだと、岩橋さんは明かす。
「大切な書類にも薬剤を噴霧する必要があります。私たちは印字がにじまないように一枚一枚、書類を裏返して消毒するように心かげています。感染者が出たオフィスはしんとして、時間が止まったような空間。飲食店の場合は、スプーンが刺さったままの香辛料の容器が厨房に置いたままになっていたりする。残されたものに薬剤がかからないように、一つひとつ養生して、消毒していきます。危機管理上、オフィスでは普段からきちんと整理整頓しておいたほうがいいです。衛生的にもよくないですし、悪意のある業者が除染を手掛けると機密情報が漏れてしまう可能性もあります」
岩橋さんが代表を務める友心では、除染の基本料金が1平方メートルあたり2000~3000円。書類や段ボールが山積みされたようなオフィスの除染は手間がかかり、コストが高くなるという。
「コロナ除染ではすでに業界の価格破壊が起きています。1平方メートルあたり1000円を切るような業者もありますが、そのクオリティには疑問を抱かざるをえません。相見積もりをとって、一番安い業者に、という安易な発想はコロナ除染の場合、危険です」
本業である特殊清掃の依頼も、昨年は1.5倍ほどに増えた。特に高齢者がゴミ屋敷状態の中で死亡し、発見が遅れるケースが目立つという。
内閣府の「高齢社会白書」(2020年)によれば現在、65歳以上の一人暮らしは700万人を超えている(推定)とみられる。この数字はうなぎ上りに増え、2040(令和22)年には900万人近くまで達するとの試算がある。内閣府の「高齢者の健康に関する意識調査」では、一人暮らしの高齢者のうち45%が「孤独死を身近な問題と感じている」と回答している。それが、コロナ禍による家族、地域社会の分断で深刻さを増してきているのだ。
「一人暮らしの高齢者とはいえ、普段は何かしらの地域コミュニティに関わっているものです。例えば、趣味のサークルや老人会など。仮に孤独死の危険があるような方は平時であれば、地域の民生委員の方が定期的に様子を見にきていることも多い。しかし、コロナ禍では老人会などが中止に追い込まれ、民生委員の方の活動も自粛が余儀なくされています。年末年始などの家族の帰省もなく、完全に孤立した状態の高齢者があちこちにいることが考えられます」
地域や家族との接点がなくなった高齢者の中には、急激に認知症が進行してしまうケースがある。すると、次第に居住空間はゴミ屋敷と化していく。コンビニ弁当や缶詰などを食べ残したままゴミに出さず、次第に部屋中にゴミが積み上がっていく。そして、ある時、ゴミに埋もれた状態で、遺体が発見される(※) 。
※高齢者のゴミ屋敷問題に関しては岩橋さんの会社で作成しているYouTube「友心チャンネル」を参照いただきたい。
「コロナ禍が始まってわずか1年で、そうした事例がずいぶん増えているように感じます。高齢者の孤独死の増加もコロナウイルスの影響と考え、国や行政はサポートしていく対策を打っていくべきでしょう」(岩橋さん)
たとえば、高齢者でも簡単に使えるようなオンラインのコミュニケーションツールの開発や、地域見回りサービスの拡充、町内会の復活など、高齢者と社会とをつなぐ仕組みの構築が急がれる。コロナ感染症による「直接死」だけではなく、「間接的な死」へももっと目を向けていかねばならない時期にきていると思う。
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(浄土宗僧侶/ジャーナリスト 鵜飼 秀徳)

「幻のそば」、ISSへ 福島・川俣の特産品 2月に打ち上げ

福島県川俣町山木屋地区で古くから栽培されている「山木屋在来そば」の種が2月、宇宙へ旅立つ。被災3県の自治体の特産品を国際宇宙ステーション(ISS)に打ち上げるプロジェクトの一環。東京電力福島第1原発事故の影響で一時は生産が途絶えた特産そばが「宇宙そば」となる。
山木屋在来そばは栽培量が少ないことから「幻のそば」と呼ばれ、実が細長く、香り高いのが特徴だ。地区の農家らが協力して栽培を続けてきたが、同地区は2011年4月に計画的避難区域に指定され、多くの農家が農地を手放すことになり、生産者が不在になった。
18年に川俣町仲ノ内そばの会の村上源吉さん(71)らが「山木屋地区のために」と立ち上がり、県農業総合センターに保存されていた4キロの種子から栽培を再開した。20年は1トンの収穫に成功。今年から他のそば農家にも種子を配布し、生産を本格化する。そばは、同地区のそば店「語らい処やまこや」で食べられる。
打ち上げプロジェクトは茨城県の一般財団法人「ワンアース」(長谷川洋一代表理事)が企画。28日に町役場で引き渡し式があった。参加した村上さんは「町の代表として山木屋在来そばの実が選ばれたことを誇りに思う」と喜び、帰還した「宇宙そば」の種は「毎年少しずつだが収量を増やしていくことを目指す」と話した。【磯貝映奈】

「支援はいらない」 両親が面会35回拒絶 感染不安も理由に 埼玉・乳児放置死

埼玉県美里町で2020年9月、生後3カ月の女児を放置して死なせたとして両親が逮捕された事件では、両親が町職員による35回にわたる女児への面会要望を拒絶し、児童相談所が対応に乗り出す前に事件に至った。父親は感染不安も面会拒否の理由に挙げており、コロナ禍の中、虐待のリスクがある家庭への支援は困難さを増している。専門家は、家庭状況把握のために方策を練る必要性を指摘している。【中川友希、平本絢子、成澤隼人】
児相対応前に犠牲
町が生後3カ月で亡くなった金井喜空(きあ)ちゃんの母あずさ容疑者(28)と関わりを持つようになったのは、次女(5)の妊娠が判明した15年ごろのことだった。当時未婚だったあずさ容疑者は、経済的な不安などを相談。町職員の訪問も受け入れていた。
しかし、19年7月ごろに裕喜容疑者(29)との交際・同居が確認されてから、裕喜容疑者が対応の「窓口」になり、支援を拒絶するように。同9月、町や児童相談所、警察などでつくる「要保護児童対策地域協議会」(要対協)はこの家庭への支援を決定。町を中心に支援することにした。
だが、裕喜容疑者のかたくなな態度は変わらない。20年3月に町職員が訪問した際、「支援はいらない」と怒り、以後、訪問を受け付けなくなった。
あずさ容疑者が同5月に喜空ちゃんを含む双子を出産後、町は両親に電話で計35回、面会を申し込んだ。裕喜容疑者に23回、あずさ容疑者に12回電話したが、あずさ容疑者は出ない。裕喜容疑者からは数回応答があったが、「ばかにしているのか」などと怒り、拒否したという。
町はあずさ容疑者の親族に依頼して連絡を試みたが、親族も玄関先で話すのみで、双子に会えないことが少なくなかった。「自分たちは一生懸命やっているのに、周りが認めてくれない」。町によると、裕喜容疑者は親族にそうこぼしていたという。
8月24日には、警察が近隣からの通報を元に自宅を訪問。喜空ちゃんの体を確認し、虐待がないと判断した。要対協は再び会議を開き、9月の乳児健診で双子の安否が確認できなかったり、両親と連絡が取れなかったりした場合、児童相談所が対応に乗り出すことにした。児相は児童虐待防止法に基づき、虐待が疑われる家庭に強制的な立ち入り(臨検)を行うことができる。
ところが、事態は急変する。
9月9日、両親は病院の乳児健診に訪れず、町は親族に家庭訪問を依頼。しかし同11日未明、喜空ちゃんは救急搬送先の病院で死亡した。「10日に訪問したが、会えなかった」。親族から町に連絡があったのは、亡くなった後のことだった。
裕喜容疑者は新型コロナウイルスの感染不安も面会拒否の理由に挙げていた。町は両親と子どもにベランダに出てもらった上で電話し、遠方から職員が目視することも申し込んだが、断られた。
関西大の山県文治教授(子ども家庭福祉学)は町の対応について「家庭に関する情報を口頭と視覚で得ることが大切だ。子どもに会えない状況は危険。乳児健診まで待つ理由はなく、児童相談所による立ち入り調査を依頼しても良かったのでは」と話す。要対協で、児相がより積極的に関わる必要があったとも言う。
コロナ下での家庭訪問については、接触の仕方を工夫する必要性を指摘する。具体的には、自治体職員よりも抵抗感が少ないと思われる保健師が訪問する▽大人だけでも会えないか交渉する▽民生委員や町職員が家の周りに行き、生活状況を目視する――といった策が考えられるという。

大手民間病院「コロナ患者」積極受け入れの秘訣 医療法人グループの徳洲会、伯鳳会は収益も確保

新型コロナウイルスの感染患者が拡大し、病床の確保が各地で難航している。しかし、一部の民間病院は早期からコロナ患者を受け入れ、収益も確保しているところもある。
2021年1月、埼玉県羽生市にある羽生総合病院(311床)にコロナ専用の仮設病棟が開設した。埼玉県がコロナ用に確保した病床の利用率は、1月20日時点で70%に上る。同病院の駐車場に設置された仮設病棟の80床も、すでに半数ほどが埋まっている。
羽生総合病院は、国内最大の病院グループ徳洲会の傘下だ。同病院は2020年3月からコロナ患者を受け入れ続けている。きっかけは、搬送先が見つからない発熱患者が2時間かけて運ばれてきことだった。松本裕史院長は「これは断ったら今後大変な事態になる」と考え、コロナ患者の受け入れを決断した。同年4月にはコロナ患者を受け入れる埼玉県の重点医療機関に指定された。
■看護師のローテーション制を確立
羽生総合病院がコロナ患者の対応を続けられた理由の1つが、看護師の勤務体制だ。同病院では、コロナ患者に対応する看護師を15人1チームで分け、ローテーション制にしている。1カ月間コロナ病棟で勤務した後は、別のチームと交代する。コロナが長期戦になるとみた松本院長が、「絶対に1カ月以上は(コロナ患者に)対応するな」と判断したからだ。
松本医院長は「疲労と慣れはエラーを生む。受ける以上は院内感染で犠牲者を出さない。そのためには現場の人間を消耗させてはいけない」と話す。そのためには、グループの支援が不可欠だった。同病院では2020年4月に病院内の1病棟(28床)をコロナ専用病棟とし、以降、満床状態が続いていた。11月、感染拡大に備えて病床確保を進める埼玉県から打診を受け、さらに80床の仮設病棟を設置した。
仮設病棟の設置でコロナ病床が増えれば、病院内のマンパワーだけでは追いつかない。そこで、北関東にある別の徳洲会グループの病院から看護師14人が同病院に派遣された。現在は院内のコロナ病棟から、仮設病棟に患者を集約。看護師のローテンション制も持続できている。
徳洲会グループは、羽生総合病院のほかに湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)、千葉西総合病院(千葉県松戸市)でコロナ専用の仮設病棟を開設している。
積極的にコロナに対応する徳洲会は、収益も上向いている。外来患者が減少したことで、2020年4~5月の収益は落ち込んだ。しかし、その後はコロナ受け入れ病院を中心に利益が改善している。羽生総合病院では、11月、12月と連続で月次ベースで過去最高収益を更新。グループ全体では8月に月次ベースで過去最高益を更新した。
政府の医療機関への補助金は、第一波のときよりもかなり手厚くなっている。重症者・中等症患者を受け入れる医療機関の診療報酬は、5月に通常の2倍から3倍、さらに9月には5倍に引き上げられた。また、コロナ患者を受け入れる重点医療機関では、病床確保のために空けた病床に、1日7万円が支給されている。
ただし、補助金の申請方法や支給時期は、都道府県によってばらつきがあり、申請期間が限られるケースもある。徳洲会では補助金をきちんと得られるよう、グループ本部が各地域の支給時期を入念にチェックし、申請漏れのないよう、それぞれの病院に迅速に情報を提供をしている。
■コロナを避けずに正面から身構えた
先の羽生総合病院では、埼玉県の補助金で仮設病棟に人工心肺装置のECMO(体外式膜型人工肺)を導入し、重症度が高い患者も受け入れている。こうした重症患者への診療報酬の加算が収益に寄与している。
「はじめの患者を受け入れた3月時点ではこうした補助金制度はなかったが、どんな患者も断らないという理念で受け入れてきた。(病床を拡大できたのは)感染者の少ない時期に受け入れ、(感染者対応の)経験を積める助走期間があったことが大きい。院内感染を出さずに済んでいるのは、コロナを避けずに正面から身構えていたからだ」(松本院長)
コロナ患者を受け入れながら、収益を維持している病院は徳洲会だけではない。兵庫県を中心に10病院を運営する伯鳳会グループでは、5つの病院でコロナ患者を受け入れている。伯鳳会は、戦略的なマーケティングで病院のM&Aを進め、東京都や埼玉県にも進出している医療法人だ。
伯鳳会の2020年4~12月期の経常利益は、春先の患者減少と2019年に買収した病院の減価償却費が重く、前年比で3割ほど下がっている。しかし、足元ではコロナ患者を受け入れている病院を中心に収益が回復しているという。
例えば、4月からコロナ患者を受け入れている東京都内の病院(200床)では4~6月期の利益は落ち込んだものの、8月から補助金が入ったことで、11月時点で前年比で約1割の増益に転じている。伯鳳会の古城資久理事長は、「すべての疾病や外傷患者が減少する中、増加していたのはコロナ患者だけだ。コロナ患者を受け入れる方向で試算をしたら、むしろ短期的にはプラスになることが期待できた」と話す。
収益に貢献したのが、PCR検査の内製化だ。PCR検査機器の購入経費には補助金が支給される。検査機器の導入で20~40分で検査ができるようになり、コロナ患者を受け入れる5つの病院に発熱外来を設置した。全病院で外来患者数は減っているが、発熱外来のPCR検査で単価が向上したことにより、収益の落ち込みをカバーできているという。
■医療スタッフに2万円の「危険手当」
伯鳳会では、こうした利益を医療スタッフへの手厚い危険手当として還元している。PPE(個人防護具)で対応するスタッフには1勤務当たり2万円、コロナに関係するスタッフには1勤務当たり1万2000円を支給している。東京都では、コロナに携わる医療従事者の危険手当として、1日当たり3000円分を補助しているが伯鳳会はそれ以上だ。
「5病院で月間3000万円程度の(コロナに関連する)危険手当を見込んでいる。コロナ患者の受け入れで、(通常の急性期疾患の治療を行う)一般急性期の診療報酬に2万1000円(1日当たり)が上乗せされ、ほかに空床補償もある。上乗せ分は感染対策の管理費としてもらっていると理解しているが、物品は自治体から現物支給されるものも多い。民間病院なら危険手当を支払っても、やっていけるはずだ」(古城理事長)
しかし、もし院内で集団感染(クラスター)が起こり、コロナ病棟以外のところからスタッフを集めることで危険手当が増えれば、収益は赤字になるという。
医療機関がコロナ患者を受け入れるうえで、最も懸念されるのがクラスターだ。ひとたびクラスターが起これば一時閉院を余儀なくされ、病院の損失は大きい。伯鳳会では病院ではないものの、過去に痛手を負ったことがあった。2020年4月、グループの特別養護老人ホームで51人のクラスターが起こったのだ。だが、すでに同グループでコロナ患者を受け入れていた病院と連携し、約2カ月で収束した。
クラスターのリスクとはつねに隣合わせだが、古城理事長は「コロナから逃げ回れば、(むしろ)クラスターを起こすリスクは上がる」と言う。
古城理事長によると、現在病院では新規入院患者全員にPCR検査を行っていても、入院後に1人だけぽつんと感染が確認されるケース(孤発的な感染)が増えているという。感染経路は職員からしか考えられない。市中感染が拡大したことで、患者よりもむしろ職員や出入り業者などからの感染が懸念される。「どんなに感染対策に気をつかっても、わずかな隙間を通って感染者が発生する」(複数の医療関係者)という。
「孤発的な感染が起こったときに、迅速に職員や患者全員に検査をして感染拡大を食い止めることが重要だ。それにはコロナ対応への慣れが必要になる。第1波の経験で、一定のノウハウが蓄積されたことは大きい。クラスターが起こった施設へ応援スタッフをグループ全体から出したため、グループ内でコロナを過度に恐れることはなくなった」(古城理事長)。
コロナから逃げ回っていてはいざというときのノウハウがないため、閉院の期間が長引くおそれもある。古城理事長は、病院の運営面とクラスターを食い止める安全面からも、コロナに向き合うことが大切だとみている。
■積極受け入れが可能な3つの理由
このように、コロナ患者を積極的に受け入れる2つの民間病院に共通しているのは、①病院内やグループ内で人手を融通できる、②医療スタッフを疲弊させない仕組みがある、③補助金を活用して収益を維持しているということだ。規模の大きい病院は、病院内でもグループ全体でも医療資源を効率的に活用できる点で有利だ。
反対にいえば、規模が小さい病院では受け入れが難しい可能性がある。病院経営コンサルティングのグローバルヘルス・コンサルティングジャパン(GHC)が行った病床規模別のコロナ患者受け入れ病院の分析によると、200床未満の病院で受け入れが少ない。

GHCによると、入院が必要とされる中等症以上の患者への対応には、専門の治療に対応できる医師や通常の2~3倍の看護師数が必要だ。また、人工呼吸器やECMOなどの専門的な医療機器も必要になる。これらの体制が整備されている医療機関は、少なくとも200床以上の病院だ。
実際、徳洲会グループでも規模の小さい病院では、コロナ患者の受け入れが難しいという。前出の羽生総合病院は300床以上を有する。同病院は2018年に建て替えられ、それぞれの病棟が分離している。こうした建物の構造から、コロナ専用病棟が確保できた。月に200~300件の救急患者を受け入れる急性期病院のため、下地として充実した人員体制があった。

病床規模別の病院数の割合を見ると、設立母体によって大きな差がある。コロナの入院に用いられる一般病床と感染症病床を持つ民間病院では、200床未満の割合が9割以上だ。つまり、徳洲会や伯鳳会のような大規模な病床を備えるところは民間グループの中では少数派といえる。
■回復患者の受け入れも課題に
日本の病院の約8割を占めるのが民間病院だ。 厚労省の資料によると、感染者の受け入れが可能な医療機関数のうち、事業主体別の割合は、公立病院が69%、公的病院が79%なのに対して、民間病院は18%にとどまっている(2020年10月時点) 。
こうしたことから、民間病院への受け入れを進めるべきだという論調が強まっているが、GHCの渡辺幸子社長は「小規模で医療資源が不十分な病院でコロナ患者を受け入れることは危険を伴う。医療資源の充足具合に応じて、病院間で役割分担を明確にし、連携を強化していくべきだ」と指摘する。

病院間の役割分担として、中小規模の病院はコロナ患者が退院した後の受け皿となりうる。人工呼吸器などを付けていた重症のコロナ患者は、回復後もリハビリテーションが必要だからだ。
しかし、回復患者の受け入れ先となる病院が見つからないことが、病床逼迫の一因になっている。退院基準を満たした患者は感染力がないと認められるが、院内感染を恐れて受け入れを断るケースがあるからだ。こうした目詰まりを解消するため、政府は1月22日、回復患者を受け入れる病院に対して診療報酬をさらに手厚くすることを発表した。
市中での感染が広がるなか、直接コロナ患者を受け入れていない医療機関であっても、コロナからは避けられない状況だ。最前線に立つか、後方での支援に回るか、病院の能力に応じた陣形の組み立てが急務だ。
井艸 恵美:東洋経済 記者