2月末の緊急事態宣言解除からわずか1カ月あまり。4月5日、大阪市にまん延防止等重点措置が適用された。2月末に1日54人だった大阪府内の新型コロナウイルス新規感染者数も、3月下旬には200人を超え、4月16日には1209人に。医師や市民に聞くと、行政の対応が追いつかず、検査や感染症対策を「自助」に頼らざるを得ない大阪の現状が見えてきた。【田畠広景】
3月末の夕刻、北新地の繁華街入り口にあるPCRセンターは、盛況を見せていた。切れ目なく検査客が訪れて列をなし、道に背を向けブースで唾液を採っている。30代女性(大阪市)は「勤務先で感染を疑われる人が出たので、同僚と検査を受けに来た」。受付の男性は「これでもまだ並んでない方ですよ」と短く話すと、慌ただしく鳴る電話の対応に戻った。
府が国にまん延防止等重点措置を要請した直後、インターパーク倉持呼吸器内科(宇都宮市)の倉持仁医師は「大前提として、感染症の対策は個人の能力に依存したものはだめ。守る人と守らない人がいるというのは感染対策になっていない」と述べ、府が呼び掛けた「マスク会食」に否定的な見解を示した。飲食店での感染対策も「換気能力やパーティションの高さなど、行政で基準をつくる必要がある」と指摘した。
強調したのは検査の重要性だ。「事前に陽性と分かれば会食しない。感染者数が減った時に、自治体がきちんとした数のスクリーニング検査をこなしていれば、どういう株が増えるかも把握できた。今は感染が増えた時に検査が増える仕組みになっている」と語る。
まん延防止等重点措置は「(4月頭の)感染数を見ても変異株の状況を見ても、部分的にやるのはナンセンス」とし、「緊急事態宣言で社会を止めて、コロナ対策を進めることが大事」と話した。
自主休校を選択
小学1年の長男を自主休校させる選択をした大阪市内の30代の母親は、子供は検査を受けにくい印象を持っており「検査を徹底しないと、学校関係で感染が広まるのでは」と懸念する。子供への行政の感染対策に不安を抱き、他人への感染を防ぐためにも休校を決め、入学式も欠席した。出席停止扱いで評価が空欄になると言われたが、時間割を自分でつくり、ICT教材でネット学習をさせる。
「下の子もいて、ご飯もつくるので難しい。授業をライブで流してくれたら……。現場の負担が重く、市長など上が指示しないと学校単位では動きづらいのかな」とこぼす。吉村洋文知事は14日、自主休校の児童生徒にオンラインを活用するよう述べ、松井一郎・大阪市長も同調。16日に市教委が各校に通知したが、具体的な方策は明らかになっていない。
自宅療養「死んでしまうかも」
感染が判明して自宅療養中の50代男性に、電話で話を聞いた。発症は4日。感染症対策で1年間風邪をひかずに過ごしてきたが、のどに違和感が出て倦怠(けんたい)感もあり、検査で陽性と判定された。
徐々に熱が出たり、匂いが消えたりした。保健所からは、血中の酸素飽和度が低くなれば入院できると説明されたが「この(医療逼迫(ひっぱく)の)状況では1週間待ってくださいとなりかねないですよね。死んでしまうかも」。医師とのつながり方も分からず、不安を募らせる。「つながらない電話に何回もかけて、なぜ自分がコロナだと思うかを一生懸命説明し、その上で何日か後にようやく検査が受けられる、という体制では手遅れになる」
結局、男性の陽性が分かったのは、なかなか連絡がつかない保健所経由の検査を待たず、自主的に受けた民間検査の結果だった。治療どころか満足な検査すらおぼつかない公的医療の窮状に、府民の危機感が募っている。
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まん延防止「期待せず」70% 内閣支持は上昇 毎日新聞世論調査
毎日新聞と社会調査研究センターは18日、全国世論調査を実施した。新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」の効果について、「期待しない」との回答は70%で、「期待する」の21%を大きく上回った。「わからない」は9%だった。まん延防止措置が適用された都府県でも新規感染者数は増加傾向にあり、効果を疑問視する人が多いようだ。
コロナ対策「評価する」19%
菅政権の新型コロナ対策については、「評価する」が19%で前回(23%)より減少し、「評価しない」は63%で前回(57%)より増えた。「どちらとも言えない」は18%(前回20%)だった。緊急事態宣言の解除から1カ月もたたずにまん延防止措置が始まった地域もあることなどから、政府の新型コロナ対策への不満が強まっていることがうかがえる。
一方で、菅内閣の支持率は40%と前回の36%から4ポイント増加。不支持率は51%で、前回の55%から4ポイント減少した。新型コロナの感染拡大に歯止めがかからない状況だが、現状では支持率低下には直結していない。
調査は、携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)機能を使う方式と、固定電話で自動音声の質問に答えてもらう方式を組み合わせ、携帯764件・固定321件の有効回答を得た。【伊藤奈々恵】
【独自】おたふくワクチン不足、接種休止相次ぐ…製造工場トラブル
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)のワクチンの供給が滞り、小児科などの医療現場で接種の休止が相次いでいることがわかった。国内で製造する2社の一つ、武田薬品工業の工場でトラブルがあったためで、秋頃まで不足が懸念される。
おたふくかぜワクチンは、国が勧める定期接種ではなく、希望者が受ける任意接種。日本小児科学会は1歳時と小学校入学前の計2回の接種を推奨しており、2019年には約160万人が打っている。
同社によると、このワクチンの製造を担う山口県内の工場で1~4月に実施した定期点検で、原液を製造する設備のフィルターに異常が見つかった。このため、点検結果を待って出荷する予定だったワクチンを「品質への影響が否定できない」として廃棄した。
廃棄した量が何人分に当たるか、同社は明らかにしていないが、今月中に在庫切れになる見込み。出荷再開は10月末になるという。
もう一つの製造元の第一三共は「ワクチン不足の影響を緩和するため、自社製品の出荷のペースや地域を調整したい」としている。
この事態を受け、NPO法人「VPD(ワクチンで防げる病気)を知って、子どもを守ろうの会」の片岡正理事は「情報を収集し、ホームページなどで親たちに発信していきたい」と話す。日本小児科学会も対応の検討を始めた。
おたふくかぜは4、5年ごとに子どもを中心に流行し、感染者の1000人に1人が重い難聴になる。ワクチンには、発症を90%防ぐ効果があるとされる。
首相、ワクチンは「9月までの供給にメド」…ファイザー社と追加供給で実質合意
菅首相は19日午前、国内の接種対象者の全員に必要な量の新型コロナウイルスワクチンについて、「9月までに供給されるメドが立った」と首相官邸で記者団に述べた。
首相は米国訪問中の17日、米製薬大手ファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)と電話会談を行い、追加供給で実質合意した。国内の接種対象者は約1億1000万人で、1人2回接種で約2億2000万回分が必要となる。首相はブーラ氏との電話会談で、「CEOから(ワクチン供給の)協議を迅速に進めたいとの話があった」と説明した。政府は今後、ワクチンの日本向け輸出が安定的に進むように全力を挙げる方針だ。
首相は大阪府で新型コロナの感染者が急増していることに関しては、「極めて危機感を持って対応している。病院確保に全力で取り組んでいる」と語った。緊急事態宣言を発令する可能性については、宣言に準じた対策が可能となる「まん延防止等重点措置」を適用中であることを踏まえ、「大阪府と相談をして対応していきたい」と述べるにとどめた。
また、首相は初めて対面での首脳会談を行った米国のバイデン大統領について、「個人的な信頼関係を構築することができた。米国が(自由で開かれた)インド太平洋にコミットする(取り組む)ことも成果だ」と強調した。
ミャンマーに邦人記者解放を要求=菅首相「保護に万全」
加藤勝信官房長官は19日の記者会見で、ミャンマーの最大都市ヤンゴンで40代の日本人ジャーナリストが治安当局に逮捕されたと明らかにした。2月に拘束された北角裕樹さんとみられる。加藤氏は「ミャンマー側に対しては早期解放を求めており、引き続き邦人保護に万全を期していきたい」と表明。拘束理由については現在確認中だと説明した。菅義偉首相も首相官邸で記者団に「邦人保護に万全を尽くす」と述べた。
[時事通信社]
190万円郵便局強盗 時効まで1年、情報提供呼びかけ 山形
山形県村山市富並の大高根郵便局で2012年4月、現金約190万円が奪われた強盗事件は、容疑者が特定されないまま、時効まで1年となった。県警捜査1課と村山署は17日、現場近くでビラなどを配って情報提供を呼びかけた。
事件は、12年4月17日午後2時10分ごろ発生。男が刃物のようなものを持って郵便局に押し入り、局員を脅して現金約190万円を奪って逃走した。
県警によると、現場は人通りが少なく目撃情報が乏しいため、捜査は難航。9年間で、県警は延べ約3万2900人の捜査員を投入し、47件の情報が寄せられたが、容疑者特定に結びつく有力な情報は寄せられていないという。
17日は、検問所を設けて運転手にチラシなどを配り、情報提供を呼びかけた。同署の宮地武副署長は「ささいなことでもいいので、情報を提供してもらいたい」と話す。情報は村山署(0237・52・0110)。【藤村元大】
刃物?持つ男、ミニストップ店員男女に「騒ぐな」…80万円奪い逃走
19日午前0時20分頃、三重県川越町当新田のコンビニ店「ミニストップ名四川越店」の事務所に男が押し入り、売り上げ金を整理していた店員の男女2人に刃物のようなものを見せ、「騒ぐな」などと脅した。男が「中に入れろ」と出してきた袋に店員が現金約80万円を入れると、男は奪って逃走した。店内に客はおらず、けが人はなかった。
発表によると、男は20~30歳で身長約1メートル70の中肉。黒色のジャケットとズボン、えんじ色の帽子を身につけていた。県警四日市北署で強盗事件として捜査している。
63歳男性死亡 兄弟トラブルか 弟の行方追う 茨城・東海村
18日午後8時20分ごろ、茨城県東海村船場の住宅で「兄弟がもめ事を起こし、弟が兄を刺した」と同村内に住む女性(55)から110番通報があった。警察官が駆けつけたところ、住所不定の職業不詳、永山善一さん(63)が1階の居間で頭から血を流して倒れており、その場で死亡が確認された。県警ひたちなか署は殺人事件とみて捜査している。永山さんの50代の弟が現場から車で立ち去っており、事情を知っているとみて行方を追っている。
同署によると、現場の住宅は、永山さんの母親(86)と弟との2人暮らし。18日に永山さんが訪れ、兄弟間でトラブルとなったため、母親が東海村内に住む親類の女性に助けを求め、この女性が通報した。
現場はJR常磐線東海駅から西へ約2キロ離れた住宅街。【長屋美乃里】
期日前投票した女性、昨年選挙の入場券で再度投票…特定できず「有効」に
和歌山県串本町選挙管理委員会は18日、すでに期日前投票を済ませていた町内の80歳代女性に対して再度、投票用紙を交付するミスがあり、この女性の分が二重投票になったと発表した。
発表によると、女性は18日午前11時過ぎ、同町内の投票所を訪れ、昨年8月に行われた同町議補選の入場券を提示。職員は入場券や選挙人名簿を入念に確認せず、町長選と町議選の投票用紙2枚を交付した。
投票後、別の職員が名簿を確認。女性が14日に期日前投票を済ませており、入場券は補選のものだったことに気付いた。女性が投票した用紙は特定できないため、いずれも有効になる。
町選管は「投票の公平性を損ない、おわびする。今後は、入場券が一目で識別できるよう改善する」としている。
【独自】歯科医もワクチン注射打てるように…接種の担い手確保、厚労省が「特例」案
政府は、新型コロナウイルスのワクチン接種について、歯科医師が注射を打てるようにする方向で調整に入った。現在認められている医師や看護師以外に担い手を増やし、今後本格化してくる接種に向けて人員を確保する狙いがある。
厚生労働省が近く有識者懇談会を開き、歯科医師による接種を特例として認める案を示す。了承されれば、今月中にも全国の自治体や関係団体などに条件などを伝え、各地で接種体制を整備してもらう考えだ。
現行法上、ワクチン接種は原則として医師や看護師に限られている。歯科医師は歯科治療の範囲内でしか注射が認められていないが、特別の事情があると判断すれば違法ではなくなるとされる。
65歳以上の高齢者向け接種は12日から始まったが、多くの市区町村で看護師不足が深刻となっている。高齢者向け接種は5月中旬以降に本格化する予定で、その後の一般向け接種も含めて1億回以上の接種が必要となることを見据えると、政府は担い手のさらなる確保が必要だと判断した。
一方、歯科医師による接種は、市区町村が医師や看護師を確保できないと判断した場合などに限って認める方向だ。集団接種会場での接種を想定しており、個別の歯科医院での接種は認めない。事前研修を課すことも検討している。