作業台と建設中の建物の間に挟まれる 40代男性が死亡 物流倉庫の建設現場 福岡・古賀市

福岡県古賀市の物流倉庫の建設現場で15日、作業員の男性が作業台と建物に首を挟まれる事故があり、男性は搬送先の病院で死亡が確認されました。
■井手妃奈子記者
「古賀市のこちらの工事現場で、作業中に人が挟まれたということです。」
午前10時すぎ、福岡県古賀市玄望園の物流倉庫の建設現場で、作業台の上に乗って柱の型枠を設置していた男性作業員が、作業台の手すりと建設中の建物の天井部分の鉄骨に首を挟まれました。男性は搬送された病院で死亡が確認されました。
死亡したのは、福岡県うきは市の会社員、龍頭史弥さん(41)です。
警察が事故の状況を調べています。

元衆議院議員・石川知裕氏、52歳で逝去 葬儀には波乱の政治家人生を偲ぶ700人が参列

52歳で亡くなった元衆議院議員・石川知裕さんの葬儀が週末開かれ、およそ700人が参列しました。その政治家人生は波乱に満ちたものでした。
笑顔で有権者らに手を振る石川知裕さん。今月6日、大腸がんのため52歳の若さで亡くなりました。13日、帯広市で営まれた通夜に2人の子どもたちと並んであいさつに立ったのは、妻で衆議院議員の香織さんです。
石川知裕氏の妻・石川香織衆議院議員)
「決して平坦ではない人生の中で、悔しい思い、納得しない思い、我慢しなければいけなかったことたくさんあるかと思いますが、私は本人から不満や面白くなかったといったようなことは、一度も聞いたことがありません」
参列者はおよそ700人。同じ足寄町出身で新党大地・真民主時代に共に戦った鈴木宗男参議院議員が、葬儀顧問を務めました。
鈴木宗男参議院議員)
「年は私より若いけども、人生の中で私自身、教えられること多々あったなと今、改めて振り返ってます」
小沢一郎氏の秘書だった2005年、地元の道11区から当時の民主党公認で初めての衆院選に臨んだ石川さん。
石川知裕さん)
「ひとつひとつの発言、行動というものがより大きく意味合いを持つことになるので、慎重に頑張っていきたい」
2007年に繰り上げ当選を果たすと、2009年には自民党の中川昭一氏を破り「中川王国」の牙城を崩しました。しかし小沢氏の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐり政治資金規正法違反に問われ、2013年に議員辞職、執行猶予付きの有罪判決が確定しました。
公民権停止中の2017年には、代わりに出馬した妻の香織さんを裏方として支え、当選に導きました。
石川知裕さん)
「しっかりまずはトップリーダーになって、この被災地の復興に全力を傾けることをまずはお約束させていだたきたい」
2019年には道知事選に出馬するも鈴木直道氏に敗れ、立憲民主党から出馬した2022年の参院選でも落選しました。そんな中、去年の3月、大腸がんが発覚。1年半の闘病生活の末、この世を去りました。
亡くなった翌日、石川さんが企画していたイベントには本人不在の中2000人もの支援者らが詰めかけ、立憲民主党の野田佳彦代表も哀悼の意を示しました。
立憲民主党・野田佳彦代表)
「いつも地元のことを熱く語る人でありました。石川知裕さんの政治人生は、不撓不屈の政治人生だったんじゃありませんか」
14日に営まれた告別式。弔辞を読み上げたのは、石川さんを息子のような存在と語る小沢一郎氏です。
小沢一郎衆議院議員)
「まさにこれから政治家としてさらに一層の高みに飛躍しようとし、その時に小沢一郎を潰せ、当時の政府、検察、官僚の不当な行使に巻き込まれてしまいまして大変な苦労をし、そして挙句に衆議院議員の地位を失う結果となってしまいました。君には本当にこの間も大変つらい思いをさせたことに対し、申し訳ない思いをずっと自分の心には持ち続けてまいりました。君に対するせめてもの恩返しとの思いで残された香織君と子どもさんたちに対して出来る限りのバックアップをしていく決意であります。知裕くん、本当に世話になった。本当にありがとうございました。どうか安らかにお眠りください」

鹿児島市の県道で車3台絡む事故、3人搬送 高齢女性の車が赤信号で進入か

鹿児島市の県道の交差点で15日、車3台が絡む事故があり、あわせて3人が病院に運ばれました。
鹿児島中央警察署によりますと、15日午後0時半ごろ、鹿児島市坂元町の県道の交差点で、右折待ちをしていた乗用車に、交差点を直進してきた軽乗用車が衝突しました。
そして、その乗用車に、さらに別の軽乗用車が追突しました。
この事故で、乗用車を運転していた女性と助手席に乗っていた男性、そして、乗用車に追突した軽乗用車を運転していた女性のあわせて3人が首の痛みを訴え、病院に搬送されました。
最初に事故を起こした軽乗用車は高齢の女性が運転していて、警察は、赤信号で交差点に進入したとみて、当時の詳しい状況を調べています。

【SLやまぐち号】「バックで帰ることになったが、恐ろしかった」車両トラブルのため後進で戻る・乗客200人はバスで目的地へ(山口)

JR山口線の「SLやまぐち号」が津和野に向かう途中、車両トラブルが発生しました。約200人の乗客がおよそ3時間に渡って車内で待機する事態となりました。
きょう正午ごろ、JR山口線の仁保駅と篠目駅の間を走行していた「SLやまぐち号」で車両トラブルが発生し、走行できなくなりました。現場は仁保駅から篠目駅方面に向け4.5kmの地点でこの区間はトンネルと急勾配が連続していて、隣接する道路もないため約200人の乗客は車内で待機となりました。
トラブル発生からおよそ3時間後、「SLやまぐち号」は自力で仁保駅に到着しました。
(乗客は)
「この駅のちょっと上のトンネルの手前で、2時間くらいずっと止まって機関車の不具合が発生したということで、ずっと待っているだけ」
「SL乗れたのはうれしかったけれど津和野まで行けなかったのがショックだった」
「大変でした。汽車の中で長時間いて疲れた」
「バックで帰ることになったが、恐ろしかった」
乗客はJRが用意したバスに乗り込み、目的地に向かいました。このトラブルの影響でJR山口線は宮野駅と益田駅の間で運転見合わせとなっていましたが午後5時20分に再開されています。

日本とEU、蓄電池の供給網強化で包括協力…「脱中国依存」目指し15日に覚書署名へ

日本と欧州連合(EU)は、蓄電池のサプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)化を目指し、包括的な協力を始める。EUの執行機関・欧州委員会のセジュルネ上級副委員長の来日に合わせ、日欧の業界団体間が15日にリサイクル促進などの協力を盛り込んだ覚書に署名し、経済安全保障上の観点から、蓄電池の「脱中国依存」を進める構えだ。
政府関係者が明らかにした。覚書には、原材料の再利用に向け、蓄電池のリサイクルに関する協力策を盛り込む。蓄電池の供給網に関するデータ共有を進め、蓄電池産業の人材育成を図るための情報交換や展示会などを通じた日欧間の企業間交流も促進する方針だ。
日EU首脳間で7月に合意した日欧「競争力アライアンス(連合)」に基づく協力策の第1弾で、16日には石破首相がセジュルネ氏と会談し、蓄電池を含む日欧の供給網強化に向けた協力も確認する見通し。
日本は、リチウムイオン電池をはじめとする蓄電池分野で高い技術を誇る。2015年には電気自動車(EV)などに使う車載用で世界シェア(占有率)の半分を占めたが、近年は低価格を売りにする中国勢が市場を席巻しており、23年は中国の約6割に対し、日本勢は約8%にとどまる。
中国はリチウムイオン電池生産に不可欠な黒鉛(グラファイト)の輸出規制を23年に始めている。EVの普及が急速に進む欧州側は、中国メーカーの蓄電池への依存が続けば、経済安保上のリスクが高まると危機感を強めている。
このため、欧州側は、日欧メーカーによる生産力を向上させたい考えだ。価格競争が過度にならないよう、補助金や公共調達のあり方を見直すことで、高性能で安全な蓄電池が市場から高評価を受ける環境を整備しつつ、産業界同士の協力も後押ししていく。

毎月100万円の国会議員「第2の給与」透明化、政治への信頼回復につながるか

月額約130万円の歳費とは別に、国会議員に毎月100万円支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費、非課税)。8月から1万円超の支出を対象に使途公開を義務付ける運用が始まった。「政治とカネ」に厳しい目が向けられる中、透明性の向上で、政治の信頼回復につながるか。
在職1日で満額支給 問題視

旧文通費は歳費法などで定められており、税金が原資だ。渡しきりで使い道の公表や残金の返還は不要だったため、国会議員の「第2の給与」と呼ばれ、不透明さが問題視されてきた。
1947年に創設された「通信費」と「滞在雑費」が起源で、通信費は「会期中公の書類を郵送し及び公の性質を有する通信をなす」と規定し、滞在雑費は会期中に限って支給された。名称変更や整理統合を経る間に増額されていき、93年に旧文通費となった。
改革のきっかけは、2021年10月31日投開票の衆院選で当選した新人や元議員計約120人に在職1日で10月分が満額支給されたことだ。日本維新の会の新人が「世間の常識では考えられない」と問題視し、各党が制度の見直しに乗り出した。
22年4月、月割りから日割り支給に改め、名称を「調査研究広報滞在費」と変更し、使途を「調査研究、広報、国民との交流、滞在等の議員活動」に事実上広げた。
一方、透明化の議論は停滞が続き、24年5月、岸田首相(自民党総裁)が維新の馬場代表との党首会談で立法措置を講じることで合意したものの、その時期は明言しなかった。
1万円超支出 使途公開義務付け

昨年10月の衆院選で与党が過半数割れしたことで、事態が再び動き始めた。
同12月に使途公開と残金の国庫返還を義務付ける改正歳費法が成立。衆参両院は今年4月、支出について報告書の提出や領収書公開に関する新たな規定を決めた。
具体的には、支出総額のほか、1万円超の支出は、支出先、目的、金額、年月日を報告書に記載し、領収書の写しも添付する。項目は、「経常経費」と「議員活動費」を設け、選挙運動に使うことは禁止した。
毎年5月末までに前年の報告書を所属する院の議長に提出する。報告書は毎年11月末までにインターネット上で公開され、3年間閲覧できる。1万円以下の支出を含め、請求に応じて領収書の写しを開示し、国民のチェックを受ける体制を整えた。
罰則規定なし

旧文通費を巡っては、過去に海外投資、家族と住むマンションの家賃の支払い、家電購入といった有権者から理解を得られないような支出もあった。
規定では、調査研究広報滞在費から支出できる項目は、秘書に支払う給料や書籍購入費などと具体的に記した。ただ、議員活動と主張すれば何にでも使えるほか、規定に反した使途に対する罰則も設けていない。
議員の資金管理団体への寄付も認めた。同費を充てて支出した際、議員には報告書への記載を求めているが、選挙活動と議員活動の線引きは明確にできないことも多く、完全な実態把握は難しいとの指摘もある。
これに対し、税金が原資で、公的な活動以外に使うことが出来ない地方議員の政務活動費は「1円以上」から領収書を公開する自治体も多い。不適切な支出が判明すれば、市民らが返還請求することも可能だ。
近年の物価高も重なり、政治家の政治資金の集め方や使い道には有権者からより厳しい目が注がれている。公開基準を「1万円超」としたことの妥当性や、使途の更なる明確化が必要になっている。

「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断疑いの被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”

同居する交際相手の男性・Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された23歳の被告女性の初公判が9月9日、大阪地方裁判所で開かれた。事件の衝撃的な内容はもちろんのこと、Aさんが有名配信者のチャンネルに出演するなど、ネット媒体等により話題は方々に広がり大きな関心を呼んだ。
公判当日、その話題性を考慮してか、法廷前の廊下には傍聴人の列を整理するためのポールが設置され、職員が立つなどといった特別対応がなされた。開廷に先立って、弁護人から被告人に無罪推定が働く点、女性である点などを理由として、被告人の住所等を傍聴人の前で明らかにすることへの疑義が唱えられた。
公開が原則の裁判において、日々行われる裁判には女性の被告人も多数いる。この訴えは異例ではあったが、裁判所は事実上配慮という判断を行った。これにより、被告人の現住所かつ事件現場の詳細は法廷で明らかにされなかった。裁判の様子をライターの普通氏がレポートする。【前後編の前編】
猟奇的な事件内容に対し「私はやっていません」
身柄拘束された被告人は、キャラクターが描かれた長袖のTシャツを着て入廷をした。パジャマのような印象だった。顔の半分はマスクで隠れていたが、くっきりとした目元とスッと通った鼻梁から端正な顔立ちをしているのがうかがわれる。肩まで伸びている髪も一部ピン留めするなどして、整えられていた。
起訴状によると、事件当時21歳の男性・Aさんに対する、3件の傷害事件が問われていた。いずれも被告人宅でのできごとだ。
1件目はハサミで左乳頭を切断する加療10日間を要するケガを負わせた事件。2件目は斧で左薬指を切断し回復不能としたケガを負わせた事件。3件目は拳で耳や鼻付近を複数回殴打し、加療3日間のケガを負わせたという事件である。
これら事実について、被告人は1件目、2件目の事実について「私はやっていません」、3件目の事実については「Aから首を絞められたので殴り返しました。またその行為でケガを負わせたとは思っていません」と否認した。声はややか細い印象だったが、聞き取りやすく、また意思をはっきり感じた。
弁護人も被告人の主張に沿う意向を表し、3件目の事実に関しては正当防衛と、暴行行為とケガの因果関係を争う姿勢を示した。
通帳は金庫で保管、部屋にはカメラで監視
検察官は冒頭陳述によって、立証を予定している事実を詳細に述べていった。
なおあらかじめ付言するが、この後に行われた検察官の証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し「不同意」としている。被告側が同意しなければ裁判所は証拠として採用できないため、書類を作成した人や供述をした人の証人尋問をして正確性を争うことになる。すなわち、以下で報じるのは、あくまで今後、検察官が立証を目指す内容である。

動物が近づくとセンサー感知、目から赤いレーザー照射で威嚇…農作物を食害から守る「モンスターウルフ」

野生動物による農作物の食害などの深刻化に対し、山形市や農協などでつくる山形市有害鳥獣被害防止対策協議会は5日、オオカミを模した野生動物撃退装置「モンスターウルフ」を使った実証実験を、同市高瀬地区上東山の畑で始めた。
協議会によると、市内ではサルやクマ、イノシシ、カモシカなどによる果樹や野菜、水稲などの食害が増えている。被害を受けて耕作を放棄する農家もいるという。
モンスターウルフは、動物が近づくと赤外線センサーが感知し、目から照射する赤いレーザーで威嚇する。同時に、オオカミの鳴き声など50種類以上の警戒音を、約90デシベルの大音量で周囲約1キロに響き渡らせる。装置は全国各地で高い撃退効果が確認されているという。
協議会は12月上旬まで実証実験を行い、効果が裏付けられれば導入を検討する予定だ。

復興進まぬ輪島・門前町 地域と交流する若者が生み出す変化

能登半島地震で大破し、兵庫県姫路市で修復されたみこしの帰還を追って、今夏、石川県輪島市門前町の黒島地区を取材した。住民やゲストハウス経営者の話を通じて、復興が進まない被災地の現状と若者が生み出しつつある変化を伝えたい。
みこしは黒島地区で毎年8月に開かれる黒島天領祭で地区内を巡回していたが、地震で大破した。姫路市の大工が約8カ月かけて修復。7月31日には地元に戻されたことを祝う式典があり、住民は「みこしを見るとみんな元気になる」と笑顔を見せていた。
その式典の前、地区を歩くと被災地の厳しい状況を感じずにはいられなかった。屋根の黒瓦が崩れたままの民家や壁がはがれて崩れそうな蔵、戸口や壁がビニールシートで覆われた建物もあった。家を取り壊した空き地からは、青い海が見えた。
地区は江戸時代に北前船の寄港地として栄えた。黒瓦の家々も残り重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定されている。2024年元日の地震で門前町の震度は7。国の重要文化財指定の住宅「旧角海家住宅」のほか、多くの建物が倒壊した。
区長の川井隆三さん(69)は「地震後、屋根にブルーシートをかけたけれど、24年9月の豪雨で2階が水浸しになり、布団もすべて捨てなくてはならなくなった。雨漏りしている所に住んでいる人もいる。普段の生活をまずは取り戻したい。そんな段階だ」と話した。
復興の力になろうとする移住者もいる。
震災8カ月後に地区の民家でゲストハウスを開業した杉野智行さん(38)を訪ねた。元石川県職員で4年前に移住。災害支援に取り組みながら、開業にこぎつけた。
復興の現状を尋ねると「建物を見ると、復興は遅いと感じるかもしれませんが、見えないところでは少しずつ変化が起きています」と話してくれた。建物の解体では伝統的な町並みを守るために、手続きを踏んで慎重に検討される事情もあるという。
杉野さんは震災翌月に地域の課題を行政などに要望していこうと、被災者で地域の将来像を議論する会議を立ち上げた。当時は「杉野くんは、未来って言うが、今は目の前のことでいっぱいいっぱいで、心が追いつかないよ」とよく言われたという。
被災者には80~90歳代も多く、自宅を再建・修繕したとしても子や孫世代はここに戻らない。杉野さんは「虚無感のようなものがあった」と振り返る。
一方で、地区では大学生らとの交流も始まった。
ゲストハウスには、これまででのべ約40人の学生が住み込みスタッフとして滞在。学生は船乗りが多く暮らした町の歴史や生活文化に興味を持ち、住民から教わるうちに、次第に「学生さん」ではなく名前で呼び合うようになった。地区を離れても、電話で住民と近況を報告しあう学生もいるという。
7月31日のみこしの帰還を祝う式典で披露された「天領太鼓」でも、地元住民に交じって、長期滞在する学生がバチを振るった。杉野さんらが企画する新しい取り組みにも「面白そう」と興味を持ってくれる住民が増え、「あと5年がんばらないけんね」と話す人もいる。「黒島に人が通ってきてくれるかも、という期待感が生まれてきている」と杉野さんは話している。【幸長由子】

「よそ者が山を壊していて許されへん」太陽光パネルに囲まれた古墳も…奈良の自然と景観を脅かす“メガソーラー開発”に住民が怒りの声

メガソーラー建設が進む釧路湿原は太陽光パネルの“黒い海”に覆われ、希少生物の命が脅かされている。だが惨状は釧路にとどまらない。「再生可能エネルギー」の仮面の下で各地の故郷が潰される現場を取材班が追った。 ◆造設現場で盛り土が崩落「いつか大惨事になる」 奈良県でもメガソーラーをめぐる紛糾が続く現場がある。山下真県知事は五條市の県有地に25haの大規模太陽光発電所を整備する構想を発表したが、県議会や地元住民の強い反発を受けて、今年1月に断念。パネルの敷地面積を大幅に縮小すると方向転換した。 このように計画が止まる事例もあるが、開発が強行されてしまう場所もある。 奈良県北西部にある平群町には、一度も伐採されたことがない自然林に5万枚超のパネルを敷設する計画が進んでいる。 今年の5月、雨により造成地の盛り土が崩落したその場所だ。取材班が山道を行くと突如、現場が現れる。 「急勾配に雨水の排水路を造ったことで、一気に水が流れ出して土堰堤が崩壊。土砂が町路まで流出しました。もし車が通っていたら大惨事でした」 ブルーシートで覆われた崩落箇所を指差しながら憤るのは、「平群のメガソーラーを考える会」の代表を務める須藤啓二さん。 1級土木施工管理技士の資格を持つ須藤さんは事業者の工事設計に疑問を覚え、県に提出した書類を調べると、杜撰な内容だった。 ◆数値改ざんに産廃が混入した盛り土… 「事業者は開発を急ぐあまり造成地の勾配の数値を改ざんし、林地開発許可を取得した。しかし、工事が杜撰で、仮設調整池の容量不足などにがり、崩落が起きました」 今年1月、地元住民は事業者を相手取り、工事の差し止めと県に対して林地開発許可の取り消しを求めて提訴。しかし3月、奈良地裁は住民の訴えを退けた。 平群町に40年暮らす男性は「よそ者が山を壊していて許されへん」と怒りをあらわにする。そのなかで今年8月、初めて事故現場を視察した須藤さんは新たな問題を突き止めた。 「工事業者は、産業廃棄物が混ざった土を盛り土に利用していたんです。自然破壊レベル以上の蛮行。危険性も高いので、盛土規制法で調査すべきだと県に訴えています」 11月には、再び開発許可の取り消しを求める控訴審が始まる。県の誠意ある対応が見られない場合には、事業者を廃棄物処理法違反で刑事告訴することも検討中だという。 ◆パネルに囲まれた古墳「管理放棄が不安」 奈良県でもう一つ、アルピニストの野口健氏がXで「本来の日本人の感性を持っていたのならばこんな事にはならないのではないか」と警鐘を鳴らし話題になった太陽光発電所がある。