18日午後1時15分ごろ、札幌市南区の民間動物園「ノースサファリサッポロ」で、スノーモービルでけん引するボートに乗っていた40代と60代の女性2人が転落し、救急搬送された。いずれも軽傷だった。
北海道警札幌南署によると、スノーモービルは園の運営会社「サクセス観光」の男性従業員が運転し、ボートに4人が乗っていたという。署が業務上過失傷害容疑で事故原因を調べている。
ノースサファリサッポロは156棟の施設で違法建築が確認され、9月末に閉園することになっている。【石川勝義】
筑波大付属小のいじめ、担任パソコンから情報漏えい 児童3人が閲覧
筑波大付属小学校(東京都文京区、佐々木昭弘校長)で2023年度に6年生だった男児がいじめの訴えを担任に無視され内部進学を断念した問題で、いじめの内容や経緯をまとめた文書が担任のパソコンから少なくとも3人の児童に閲覧されていたことが、関係者への取材で判明した。
この情報漏えいは学校側がいじめを把握した直後で、児童へのアンケートや聞き取り前に起きており、保護者は「児童が口裏合わせできるようになった」と問題視している。筑付小と運営する筑波大は24年7月、「情報管理の重篤な不手際があった」と両親に謝罪した。
関係者や筑付小によると、情報漏えいがあったのは24年1月初旬。男児が不登校になり、父親が内部進学試験の辞退を校長に伝えたことを受け、担任が報告用にいじめの内容や経緯をまとめており、校務用パソコンにファイルを保存していた。
24年3月、学校側が他の児童にいじめに関する聞き取り調査を実施する中で児童から「パソコンの文書を見た」と申告があった。筑付小の調査では3人が文書を見たことを明らかにしたが、他にもいた可能性がある。【西本紗保美】
「歴代の総理が慣例として」 自民・舞立参院議員 党会合で石破首相の“商品券問題”に言及 法的な問題はないとの認識も 鳥取県鳥取市
鳥取・島根選挙区選出で自民党の舞立昇治参院議員は、3月16日に鳥取市で開かれた今夏の参議院選挙に向けた鳥取県連の選挙対策会議に出席し、地元・鳥取県選出の石破首相の商品券配布を巡る問題について「想像以上にお騒がせしている。歴代の首相が慣例として普通にやっていたこと」だと述べました。
さらに舞立氏は「ここまで問題になるというところは現在の情勢なり物価高の厳しい状況の中で、一般常識とかけ離れているというご指摘につきましては真摯(しんし)に受け止めないといけない」との認識を示す一方「法的問題はないにせよ、道義的問題を指摘されれば言い返せない」とし、違法性はないと強調しました。
舞立氏は、石破首相が会長を務める鳥取県連に所属し、立場が近いことで知られています。前回の参院選で鳥取・島根合区で当選しましたが、今夏の選挙では優先的に当選する比例代表「特定枠」での擁立が決まっています。
一連の発言は、“商品券問題”で苦しい立場に立たされた石破首相を擁護するものとみられますが、国民の厳しい目が向けられる中、波紋を呼びそうです。
「麻原信じたことが一番の罪」 妻に語った土谷正実元死刑囚
オウム真理教による地下鉄サリン事件から30年を前に、教団幹部だった土谷正実元死刑囚の妻が、17日までに共同通信の取材に応じた。元死刑囚はかつて法廷で松本智津夫元死刑囚=教祖名・麻原彰晃=への帰依を口にしたが、妻とのやりとりを通じ事件の悲惨さを認識し、「麻原を信じたのが一番の罪」と語ったという。
土谷元死刑囚はサリンを製造するなど多くの事件に関わった。妻によると、中学2年の時、塾講師だった元死刑囚と知り合いに。高校受験を機に疎遠となり、以降は連絡を取っていなかった。だが、刑事裁判中だった元死刑囚から2006年に突然手紙が届き、交流を再開。08年に結婚した。
交流当初は、教団を自衛するためにサリンを製造したとし「こんなことになって訳が分からない」と人ごとのような受け止めだった。妻から「被害者が私だと考えたら?」などと尋ねられるうち、重大性を認識するようになったという。妻は、もっと内省を深めてほしい部分があったとしながら「自尊心が人一倍強い人だったから、本人なりの後悔、全否定と感じた」と話した。
《森友文書開示》遂に財務省職員が赤木雅子さんに「本気で始めてます」と宣言 〈財務省の名刺で始まり、大谷翔平選手で終わった一日〉
情報開示を求めた当人をないがしろにして、先に第三者に説明をするってことがあっていいのかな? 赤木雅子さん(53)は釈然としない心持ちを抱えていた。
森友学園との土地取引を巡る財務省の公文書改ざん事件で、夫の赤木俊夫さんを亡くした雅子さん。財務省に情報開示を求めた裁判の控訴審で逆転勝訴し、石破茂首相の上告断念で判決が確定。3月4日には加藤勝信財務相が今後の文書開示の方針について国会で明らかにした。森友学園との交渉記録をまとめたファイルを、まだ公にしていない内部のやり取りなども含め、今後1か月程度をメドに開示する方針だという。これが報じられるや、雅子さんの元には友人・知人からお祝いの言葉が寄せられた。その際、必ず聞かれるのが、「財務省から説明はあったんでしょ?」。
4月上旬をメドに、2000枚以上の文書を
ところが、何の音沙汰もない。一体いつ説明があるのだろうと思っていたら、3月14日の朝、ある記事に気づいた。今後開示を予定している文書の概要について、19日にも参議院予算委員会理事会に提示する調整を進めているという。
当事者を置いてけぼりにしたままで、いくらなんでもおかしい。雅子さんは立憲民主党の川内博史衆議院議員に相談した。森友事件を発覚当時から追及し、2月には国会で石破首相から情報開示に前向きな答弁を引き出している。この日も素早く財務省に連絡を取り、その日の昼に議員会館の事務所で説明を受けることになった。雅子さんもこの日たまたま東京にいたため、一緒に話を聞くことにした。
昼前、川内議員の事務所に行くと、すでに財務省の担当者が2人訪れていた。川内議員が「赤木雅子さん、開示請求のご本人です」と紹介すると担当者に緊張感が走ったように見えた。担当者の説明によると、加藤財務相が開示方針を明らかにしてから1か月となる4月上旬をメドに、2000枚以上の文書を開示する。その中にどのような文書が含まれているのかわかるような資料を、19日に参院に出せるかどうか、今調整中だという。これに川内議員が疑問を呈した。
ご相談とは誰とのご相談なのか?
「開示請求の当事者は赤木雅子さんです。それを本人が知らないところで、国会は国権の最高機関だからといって内容を事前に漏らすというのは、情報公開法上の別の問題を招来するのではないかと思います」
これに対し財務省の担当者は、
「国会のご要請でございまして、いかにしたらよろしいか、まさにご相談だと思うんですが」
ご相談とは誰とのご相談なのか? 雅子さんはまたも置いてけぼりだと感じた。
「私に相談してくださったらいいんじゃないかと思うんですね。代理人もおりますしね」
川内議員も賛同した。
「当事者の赤木雅子さんに事前に相談して、『それならいいですよ』と了解を求めた上で国会に出すべきじゃないですか?」
「あの~、持ち帰らせていただいてよろしいでしょうか?」
「はい、ぜひ加藤大臣に、赤木さんからこういう申し出があったとお伝えください。本人の知らないところで国会に出たということがないように」
この提案は持ち帰って検討した上で、週明け早々に返答することになった。
肌身離さず身に付けていた国家公務員倫理カード
ここで雅子さんは最初から気になっていたことを尋ねた。応対している財務省の担当者はどういう役職のどういう名前の方なのか? すると2人は名刺を差し出した。一人は理財局国有財産審理室長。もう一人は別の部署の課長補佐で、現在開示に向けて応援に入っているということだった。2人の名刺を手にして雅子さんは感慨深げに話した。
「ありがとうございます。私は財務省の方から名刺を頂いたのは初めてです」
裁判を起こしてから、財務省や近畿財務局と何度も交渉を重ねてきたが、毎回「たまたま切らしておりまして」と言われ名刺をもらえなかったという。雅子さんはさらに尋ねた。
「お二人は今、国家公務員倫理カードはお持ちですか?」
すべての国家公務員に配られる、職務に当たっての心がけを記したカード。その最初には「国民全体の奉仕者であることを自覚し、公正に職務を執行していますか?」と記してある。亡き夫・俊夫さんはこのカードを予定帳にはさんで肌身離さず身に付けていた。一方、この日の担当者は次のように答えた。
「机の中に、引き出しを開けるとすぐに入っているんですが……」
「また裏切られることはないんでしょうか?」
雅子さんは最後に尋ねた。
「今後3回に分けて1年をかけて開示するということでしたが、本当に出してもらえるんでしょうか? また裏切られることはないんでしょうか?」
これについては国有財産審理室長が明言した。
「今のところは、本気でやる気でやってます。(開示資料は全部で)17万ページプラスアルファでして、本当に人をかき集めてやれと言われて始めてます」
担当者が自身の言葉で実感を込めて語っていると感じられた。雅子さんは答えた。
「皆さんが大変な思いをしてやってくださっているのも重々承知しておりますので、その中で夫のこと、一瞬でもいいので思い出していただければと思います」
そして宣言した。
「最初に開示される文書が2000ページでしたら、私は財務省に取りに行かせていただきます」
話し合いの後、雅子さんはうららかな陽気の下、議員会館から歩いて財務省の正面に向かった。ここで夫と一緒に写真を撮ったことがあるという。この日は玄関前に咲き誇るハナモモを写真に収めた。来月はここに開示文書を取りに来ると誓いながら。
球場内でクレープ店の行列に並んでいる時に
その後、雅子さんは当初予定していた目的地、東京ドームへと向かった。お目当てはロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手。メジャーリーグの開幕戦となる東京シリーズを前に公式練習が行われた。友人に誘われ、大谷選手を一目見ようと訪れた。球場内でクレープ店の行列に並んでいる時、代理人の生越照幸弁護士から電話が入った。
「最高裁から上告棄却の決定が届きました」
雅子さんは情報開示の裁判より先に、国と佐川宣寿元財務省理財局長を相手に裁判を起こしていた。国は“認諾”という異例の手法で賠償だけを支払い、何の説明もしないまま裁判を終わらせた。残る佐川氏との裁判は一審二審と連敗し、最高裁で審理が続いていた。その上告が退けられたという連絡だ。ちょうどクレープを受け取るところだった。
「そうじゃなかったらその場で倒れていましたよ」
冗談交じりに語っていたが、悔しさは計り知れないだろう。佐川氏が主導した改ざんさえなければ、夫の俊夫さんが命を絶つことはなかった。裁判を通してお詫びと説明をと願ってきたが、佐川氏は法廷に姿を見せず何も語らなかった。裁判所は「公務員個人は賠償責任を負わない」という判例に基づき佐川氏の責任を認めなかった。改ざんをさせた責任を問えないなら、もう公務員がどんなことをしても責任を問えないことになる。
少しずつ事実に迫るしかない
グラウンドでは大谷選手がはつらつと体を動かしている。知り合いからの連絡で気付いたのだが、佐川氏勝訴の決定を出した最高裁判事の一人は大谷選手のファンだとネットに出ている。そこは同じだけど、あなたの決定にはとても賛同できないよ。あまりに皮肉な巡り合わせだ。
思えば雅子さんが、改ざんを告発する夫の手記を週刊文春で全文公開し、国と佐川氏相手に提訴したのが2020年3月18日のことだった。それからほぼ5年がたち、すべての裁判が終わった。でも真相解明の道が閉ざされたわけではない。これから開示される大量の公文書から新事実がわかるかもしれない。まずは週明けに財務省からどういう返答が来るか? そして4月上旬に開示される2000枚超の文書にどんな内容が記されているか? 少しずつ事実に迫るしかない。
それにしてもあまりに濃密な一日だ。球場を出たらあたりはもう薄暗い。空にはきれいな満月。まるで俊夫さんが笑っているような気がして、少し元気をもらった雅子さんだった。
(相澤 冬樹/週刊文春)
【独占入手】女占い師の自殺教唆事件で亡くなった男性の長男が手記「200万円の預金通帳を取り上げられ…」「学費と生活費をストップ」、さらに「突然、親子の縁を切る」 警察に真相解明も求める
自称占い師の女に自殺するようそそのかされて命を落としたとされるオーディオ会社元社長の寺本浩平さん(事件当時66歳)。その寺本さんの長男が、手記を寄せた。当初、父の最期は「事件性のない自殺」と聞かされていたが、今になって事件だったことがわかり、長男は「気持ちが混乱した」と明かす。
大阪府河内長野市の自称占い師、濱田淑恵容疑者(62)ら2人が自殺教唆の疑いで3月11日、大阪府警に逮捕された。濱田容疑者は2020年、和歌山県広川町の海岸で寺本さんと、アルバイトの米田一郎さん(当時51歳)に対し、「命を捨てて(濱田容疑者の交際相手から)悪いものを取り除く」「気が変わったら沈め合うこと」などと伝えて自殺を決意させ、入水自殺させた疑いがある。
しかし、当時捜査した和歌山県警は「事件性のない自殺」と判断し、遺族らに伝えた。寺本さんの長男は〈2020年8月に亡くなったと聞いた時は、突然のことでびっくりしましたが、悲しいという気持ちにはなれませんでした。父親を忘れようとしていましたから〉と綴っている。
手元にある遺品はハンカチ1枚のみ
長男が「父親を忘れようとしていた」するのは、20年ほど前から募る不信感があったからだという。
〈これまで父親に対して抱いていたのは、『自分を見捨てた最低の父親』というものでした。高校生の時には、亡き祖母が僕に残してくれた唯一の形見である200万円の預金通帳をだますようにしてとり上げられました。20歳の時には、突然、学費と生活費をストップされて親子の縁を切るといわれ、びっくりしました。理由を聞こうと、夜行バスに乗って大阪の河内長野の父の家まで行ったのですが、家にあげてもらえず、その場で追い返されました。その後、何の音沙汰もなかったのですが、(父が)会社を退職する2014年に健康保険の扶養家族から外すので書類を送れという連絡があり、今後は家族や親戚との縁を切ると一方的に言ってきました。以後、何の連絡もありませんでした〉
だが、大阪府警の再捜査により、寺本さんが亡くなるまでの十数年間、占い師を名乗る濱田容疑者に“入信”していたことが明らかになった。自殺をそそのかされて命を落とした疑いがあることを、最近になって知ったのだ。
〈単なる自殺ではなく自殺するよう仕向けられていた。僕に対して行ってきたひどい仕打ちも、容疑者である濱田淑恵によって命令されていたことだと知って、父が哀れでなりません。(父は)給料だけでなく、退職金や祖母から相続した実家の土地、以前住んでいた京都のマンションを上納していたようです。京都のマンションには、中学生のころ何回も行ったことがあり、当時ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに連れて行ってもらったことを思い出します。退職後の顧問料もすべて上納し、自分はわずかなお金を与えられて米田さんと会社に寝泊まりしていたそうです〉
【大荒れ】JR124本運休、臨時休校も続出…3月17日の北海道は“春の暴風雪”
週明けのきょう(2025年3月17日)の道内は、発達した低気圧にともない各地で大雪となる予想で、北見市では小・中学校などが休校を決めているほか、JRにも運休が発生しています。
発達した低気圧の影響で、17日の道内は、現在(5時)浦河町に暴風雪・波浪警報が出ているなど、道東を中心に非常に強い風と大雪になる予想です。
北見には風雪注意報や大雪注意報が発表されていて、この影響で北見市立の小中学校など36校ではすでに臨時休校を決めています。
またJR北海道は、札幌と帯広・釧路間をつなぐ特急や石北線の上川・網走間など、124本の運休を決めています。
今後、さらに運休や遅れが発生する場合もあるため、最新情報を確認するようにしてください。
北日本中心に暴風雪の恐れ 気象庁が警戒呼びかけ
発達する低気圧の影響で、北日本の太平洋側を中心に雪を伴った非常に強い風が吹くとして、気象庁は17日、猛吹雪や吹きだまりによる交通障害、高波などに警戒するよう呼びかけた。九州北部でも暴風への警戒が必要としている。
気象庁によると、日本の東にある低気圧が17日夜にかけて急速に発達しながら千島近海へ進み、日本付近は西高東低の気圧配置となる。また、北日本の上空約5500mに氷点下33度以下の強い寒気が流れ込む。
17日に予想される最大風速(最大瞬間風速)は北海道25m(35m)、東北20m(30m)、九州北部20m(30m)。波の高さは北海道6m、東北6mでうねりを伴う。
まるで朝ごはん…給食費無償化がもたらした負の側面。「放課後の“買い食い”でかえって出費が増えた」家庭も
全国的に急拡大する給食費無償化政策。いまやわざわざ無償化地域に移り住むファミリーもいるほど。タダで嬉しいはずなのに子供や親からはなぜか不満の声も出ている。“無償化ブーム”がもたらす負の側面とは? ◆「給食が足らないよ!」お腹をすかせる子供たち 「子供が以前より学校給食が少なくなったとお腹をすかせていて、困っています」 実は、給食費無償化を果たした自治体に住む保護者から、そんな悩める声が漏れている。 近年、小中学校の給食費無償化は東京都を筆頭に全国の自治体の3割が導入するなど、一大ブームのように拡大してきた。今期衆議院でも野党3党が給食費無償化法案を共同提出している。 ◆まるで朝ごはん?見本との乖離が進む献立 しかし、家計の負担が減る一方で、小学6年生の息子を23区内の公立小学校に通わせる母親は「無償化後の給食が明らかに違うんです」と不満を漏らす。 「特におかずの品数が減って、こまごまとした副菜が消えたんです。野菜炒めも以前は4~5種類の野菜を使っていましたが、今は人参とキャベツ、かまぼこ程度。ママ友とは、『校内展示されている給食の見本とは別物だ』と話しています」 また、別の区で娘が今春に公立小学校を卒業する母親はこう振り返る。 「パンとクリームシチュー、コールスローのような“朝ごはんに近い献立”が増えました。子供は『揚げ物や揚げパンが少ない』と、物足りなさを訴えていましたね」 それでも、無償化によって毎月5000円ほどの負担が減る。「質が落ちても仕方がない」と受け入れつつ、進学する予定の同じ区内の公立中学校の給食を心配していた。 ◆メインがわからない 「まるで戦時中の食卓」 学校給食は文部科学省によって1食あたりの栄養価の目安が定められている。例えば中学生の場合は1食850キロカロリーといった具合だ。 しかし、’23年度から無償化をスタートした大阪市の公立中学校に息子を通わせる40代の母親は、市のホームページで公開している給食献立の写真を指さしながら、「ダイエット中のOLのようなメニューじゃないですか。本当に十分な栄養がとれるのでしょうか?」と疑いの目を向ける。 「ボリュームも少ないし、正直みすぼらしい感じ。ある日の献立はメインの食材が、“ご飯とめざし”でした。まるで戦時中の食卓のようだなと……」 給食の量が足りなくなったことで、サッカー部の息子にはよくない習慣がついてしまったとか。
「全入化時代」の大学入試再考、文科省答申の限界
前回記事では、日本の大学が万人に開かれた「ユニバーサル段階」にあり、6割の私立大学が定員割れを起こしている現状を踏まえ、「全入化」した状態にある大学の選抜試験は今後どうなっていくのかについて考えてみた。
【画像】まるで「かけ声答申」?文科省が示した「高等教育が目指す姿」
全入化した大学とそうでない大学ではその在り方が大きく異なる。もちろん、大学入試もまったく異なるものになるだろう。つまり、これからは日本にあまたある大学をひとくくりにして語れないことを意味する。
文科省答申は残念な結果に終始した
文部科学省(以下、文科省)の中央教育審議会は2025年2月21日に『我が国の「知の総和」向上の未来像 ~高等教育システムの再構築~』といった答申を出したが、第5回の記事で批判したとおり解像度の低い議論の結果であり、「かけ声」ばかりであまり目新しさを感じない。
大学運営に大変詳しい大学職員らともこの答申について情報交換をしたが、同じ印象だった。
地方の大学関係者のみなさんなら、この答申を読めばわかるように、文科省はそんなに頼りにならない。答申の概要に「地域コーディネーター」 などの言葉が踊るが、実際にはどうなのだろうか。どのような人物をどのくらいの報酬で雇うのだろうか。
地方議会や政治家、経済界、地域で活躍する人々など多くの人たちとの調整をはじめ、本気で取り組めばかなりの重責だ。そうした人を、文科省は十分な予算の下で用意できるのだろうか。なかなか難しいだろう。
「各地域で実効性のある取組を推進するための協議体」を創設するようだが、あまたある既存の各地域の連携組織の見直しから始めて、まずそれを機能させないといけない。そのための人間関係を構築するのもひと苦労だろうに。
ならば、地方国立大学を核に、自発的、主体的に、地域の大学との連携、地域社会との協調を試みるべきだ。
今回の答申は、「文科省を頼るな」といったメッセージだと受け取ったほうが良い。地域の大学が主体的に協調する環境を整えたうえで、実効性のある地域連携の協議体ができるのであれば、そこと協調していけばいい。こうした協議体は実態があってこそ機能する。まずは文科省に頼らず、主体的に手弁当での地域における大学間での協調からだ。
「再構築」と言うのであれば、もっと踏み込んで、ひとくくりにできない大学の「機能分化」をするところまで議論してもらいたかったが、そこまでは至らず、本当に残念な結果になっている。
一方で、文科省のこうした答申と一緒に提出される関連資料やデータはとても読み応えのあるものだ。
これらをみていると、文科省が大学を取り巻く状況を俯瞰(ふかん)しており、多岐にわたる課題意識を持っていることがよくわかる。そんな資料による下地があるにもかかわらず、なぜこんなに解像度の低い議論になったのか。
「かけ声答申」になった背景
タイミングが悪かったのだろう。
少子化と人工知能(AI)を中心としたデジタルに関しては、今後の大学を取り巻く環境において、注視しないといけないものであることは言うまでもない。しかし、AIがここまで急激に進化すると、教育への影響は測りきれないし、この先、いつ、どこまで進化するのか予測が立たない。
少子化の行方はデータから推測できたとしても、どこまで進化するかわからないAIの影響を予測して議論することはできない。だから、AIに関する議論はフェードアウトしている。AIやそれを活用したEdTechが教育に及ぼす影響についての議論に物足りなさを感じることは致し方ない。
少子化ゆえに、文科省においては国家予算が付きにくく、大学教育に回りにくい状況だ。予算がふんだんに付くことを想定できるのであればもっと華々しい議論もできるだろうが、そうではないのだから、元気が出ず「かけ声」だけで終わってしまったのだろう。
今回の答申を「かけ声答申」と呼びたいくらいだ。
とは言え、大学進学率は徐々に上がっている。大学進学者の学力の幅は広がり、大学進学の目的も多様になっているのではないだろうか。
まさに大学は「ユニバーサル段階」にある。また、受験生を見ていると、受験による学習へのインパクトが弱まり、「大学教育にふさわしい準備」ができているかどうか怪しい面もある。
大学入試という側面から大学を捉えれば議論すべきことは山ほどあるし、ここから今後の大学の在り方も見えてくるのではないか。
時代の先行きが不透明なときこそ
大学を語るうえで、入学する学生の存在は教育に限らず研究においても重要なファクターである。彼らの中から研究を担う学生が生まれるからだ。研究大学においては、いかに研究者としての資質のある学生を選抜できるかは大きな問題だ。
今回の答申にまつわる議論もこうした側面からの検討が必要だったのではないか。しかし、そこには審議会としての限界がある。中央教育審議会は文部科学大臣の諮問機関である。短時間で結論を得られなければならないので、諮問の課題を絞り込み、議論が拡散しないように、不自由な議論にしかならないのだ。
ステークホルダーが多いようなテーマだとそれに合わせて委員も増えることがある。実際に中教審メンバーを新規に13名任命している。「船頭多くして船山に上る」にならなければ良いが。
こうしたところに文科省幹部の自信のなさが見え隠れする。自分たちで議論をコントロールする自信があれば少人数でも成果を出せるはずだ。このままでは、文科省職員の調整相手が多くなるため、職員の疲弊につながらなければ良いがと心配する。
そして、会議において、事務局の説明が長いとすべての委員が発言できなかったり発言は1回までに規制されたりすることもある。とても自由闊達(かったつ)な議論にはならない。
このような状況では、多岐にわたる議論は期待できず、審議会の限界を感じる。今回の答申も少なからずこうした限界があったのではないか。
時代の先行きが不透明なときこそ、なにかに偏ることなく、広く学ぶことに価値が出る。時代がどう変わろうとも、その変化に対応する力が求められるからだ。もちろんいままで以上に学ぶ必要がある。
ところが、大学は少子化による定員割れ、募集停止に臆病になっている。AIの進化とは別に、少子化の要素だけで十分に今後を占えそうなことだ。以前から何度も書いているように、どんな方式であっても大学入試での審査で「学力の三要素」を問うことが求められているが、果たしてそのあたりは十分なのだろうか。
特に、年内入試と言われる選抜時期の早い「総合型選抜」「学校推薦型」では十分に基礎学力を問うているだろうか。こうしたことも問い直すべきだったろう。
一方で、高校は大学入試とは関係なく予測不可能な社会に対応するための基礎学力を付けているだろうか。文科省は“東洋大学問題”で早期の学力試験はルール違反だとするが、ならば、いかに基礎学力を判定するのかを問われる。
高校生の探究学習・活動の評価は適切か
この後の大学側と高校側の協議に注目したいが、そもそも「大学教育にふさわしい準備とはなにか」を大学は提示できるかを問われることになるだろう。
高校では「総合的な探究の時間」が導入されて、探究学習・活動の成果発表会が行われている。そこに登場して講評をする大学教員がいるが、果たして研究ではない「探究」、つまり研究と探究の違いをどのくらい理解しているだろうか。
私は、毎年、成果発表会に呼ばれて講評することがあり、大学関係者と同席することがあるが、募集に苦しむ大学の関係者は「よく頑張りました」のような褒めることだけで終わる。探究にゴールはないのだから今後の取り組みへのフィードバックは必要だろう。
社会課題解決に取り組むものの中には、Web検索すれば出てきそうな解決策が示されることがある。自分たちでは解決できそうもない課題に取り組み、結果として「調べ学習」で終わってしまうケースも多い。大学教員としてフィードバックすることはいっぱいあるのに、それができない、資質を問いたくなる教員に出くわすことが何度かあった。
フィードバックに関する理解なしには総合型選抜で、探究学習・活動を評価することはできないだろう。
こうした「探究」という学び方を学んだ学生に大学はどのような教育をするのだろうか。高校までの学校教育における学び方と大学での学び方は異なるはずだ。だから中等教育では学習者が「生徒」であることに対して高等教育では「学生」と呼ぶことになるのだ。
少子化で人口が減るのは学力中下位層だけではない。学力上位層も同じように減る。そうしたときに東京大学をはじめとする難関大学の入学定員はいまのままでいいだろうか。彼らはビジネスでも研究でも競争のある社会に入っていくことになる。その準備は十分かを問い直す必要もあるのではないか。
難関大学でも、少子化によって定員が変わらなければ学力が下がる。教育や研究での個別の対応が求められるケースも増えるはずだ。これまで以上に、より基礎的なところから教えなければならなくなり、教育に時間がかかるようになるだろう。
いまのカリキュラムで十分だろうか。そして、いまの定員は多すぎないか。そうしたことを議論しても良かったのではないか。
このように、AIやEdTechの進化にかかわらず、いくつもの課題があるはずだ。そうした議論をしないで、高等教育の「再構築」は見えてこないのではないかと考えるのは私だけだろうか。
後藤 健夫:教育ジャーナリスト