なぜ「安く働く外国人」が許されてきたのか…日本の外国人労働政策の迷走を招いた”霞が関官僚たちの争い”

※本稿は、濱口桂一郎『外国人労働政策 霞が関の権限争いと日本型雇用慣行が招いた混迷の30年史』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
外国人労働問題に対する労使それぞれの利害構造をごく簡単にまとめれば次のようになるでしょう。まず、国内経営者の立場からは、外国人労働者を導入することは労働市場における労働供給を増やし、売り手市場を緩和する効果があるので、望ましいことです。また導入した外国人労働者はできるだけ低い労務コストで使用できるようにすることが望ましいでしょう。この両者は「できるだけ安い外国人労働者をできるだけ多く導入する」という形で整合的にまとめることができます。
これに対し、国内労働者の立場から考えたときには、外国人労働問題には特有の難しさがあります。外国人労働者といえども同じ労働市場にある労働者であり、その待遇や労働条件が低劣であることは労働力の安売りとして国内労働者の待遇を引き下げる恐れがありますから、その待遇改善、労働条件向上が重要課題となります。
しかしながら、いまだ国内労働市場に来ていない外国人労働者を導入するかどうかという局面においては、外国人労働者の流入自体が労働供給を増やし、労働市場を買い手市場にしてしまうので、できるだけ流入させないことが望ましいのです。もちろん、この両者は厳密には論理的に矛盾するわけではありませんが、「外国人労働者を入れるな」と「外国人労働者の待遇を上げろ」とを同時に主張することには、言説としての困難性があることは確かです。
ほんとうに外国人労働者を入れないのであれば、いないはずの外国人労働者の待遇を上げる必要性はありません。逆に、外国人労働者の待遇改善を主張すること自体が、外国人労働者の導入を既に認めていることになってしまいかねません。それを認めたくないのであれば、もっぱら「外国人労働者を入れるな」とのみ主張しておいた方が論理的に楽です。そして、国内労働者団体はそのような立場をとりがちです。
国内労働者団体がそのような立場をとりながら、労働市場の逼迫のために実態として外国人労働者が流入してくる場合、結果的に外国人労働者の待遇改善はエアポケットに落ち込んだ形となります。そして国内労働者団体は、現実に存在する外国人労働者の待遇改善を主張しないことによって、安い外国人労働力を導入することに手を貸したと批判される可能性が出てきます。
実際、外国人労働者の劣悪な待遇を糾弾するNGOなどの人々は、国内労働者団体が「外国人労働者を入れるな」という立場に立つこと自体を批判しがちです。しかしながら、その批判が「できるだけ多くの外国人労働者を導入すべき」という国内経営者の主張と響き合ってしまうのであれば、それはやはり国内労働者が拠ることのできる立場ではあり得ません。
いまだ国内に来ていない外国人労働者について国内労働市場に(労働者にとっての)悪影響を及ぼさないように最小限にとどめるという立場を否定してまで、外国人労働者の待遇改善のみを追求することは、国内労働者団体にとって現実的な選択肢ではあり得ないのです。
この利害構造は、日本だけでなくいかなる社会でも存在します。いかなる社会においても、国内労働者団体は原則として「できるだけ外国人労働者を入れるな」と言いつつ、労働市場の逼迫のために必要である限りにおいて最小限の外国人労働者を導入することを認め、その場合には「外国人労働者の待遇を上げろ」と主張するという、二正面作戦をとらざるを得ません。外国人労働問題を論じるということは、まずはこの一見矛盾するように見える二正面作戦の精神的負荷に耐えるところから始まります。
労働政策は労使の利害対立を前提としつつ、その間の妥協を両者にとってより望ましい形(ウィン‐ウィンの解決)で図っていくことを目指すものです。外国人労働者政策もその点では何ら変わりありません。ただその利害構造が、「できるだけ安い外国人労働者をできるだけ多く導入する」ことをめざす国内経営者と、「できるだけ外国人労働者を入れるな」と言いつつ「外国人労働者の待遇を上げろ」と主張せざるをえない国内労働者団体では、非対称的であるという点が特徴なのです。
日本の外国人労働政策も基本的には上述の労使間の利害構造の枠組みの中にあります。しかしながら、1980年代末以来の日本の外国人労働政策の大きな特徴は、そのような労使間の利害関係の中で政策を検討し、形成、実施していくという、どの社会でも当然行われてきたプロセスが事実上欠如してきたこと、より正確に言えば、初期にはそのような政策構想があったにもかかわらず、ある意図によって意識的にそのようなプロセスが排除され、労使の利害関係とは切り離された政策決定プロセスによってこの問題が独占され続けてきたことにあります。
本書の前半部で詳しくその経緯を追いかけることになる「雇用許可制」の提唱とその完全なる否定という一連の政策過程は、労働省の介入の余地を完全に断ち切りたかった法務省官僚の強い意思に基づきます。つまり、外国人を労働者として導入するという回路を極小化し、(労働者と同様に働くが労働者とは認めない)研修生と(労働者として働くが血縁に基づいて入国在留する)日系南米人に限って外国人労働者の入国を認めるという「サイドドア」政策に結実しました。
そのために、現実に日本において労働している外国人に対する政策は、労働問題として正面から議論されることすら不可能になってしまったのです。法務省官僚にとっては、労働省官僚の不当な介入を撥ね付けるための工夫であったのでしょうが、それが外国人労働政策を労働政策から排除する理由となり、労働政策の基本原則である「使用者」「労働者」「公益」を代表する三者構成原則による政策決定が否定され、重要な利害関係者である労働者団体が政策決定過程から排除される原因となったわけです。
とはいえ、この状態は肝心の労働者団体にとって必ずしもそんなに居心地の悪いものではなかった可能性があります。というのも、本来あるべき外国人労働政策の議論が正面から行われていたならば、一方でまだ入ってきていない者については「外国人労働者を入れるな」と主張しつつ、他方で既に入ってきている者については「外国人労働者の待遇を上げろ」と主張するという、一見矛盾するように見える二正面作戦を強いられてしまいます。
その意味では、労働政策ではなくなったがゆえに制度的な関与の余地が奪われてしまったことは、労働者団体としては、それが望ましいと正面切って言うわけにはいかないとしても、内心は外野席に座らされてしまっていることにほっとしていた面もあったのかも知れません。
もちろん、この政策過程の間、労働者団体は外国人労働政策に対して意思表示をし続けてきました。労働組合のナショナルセンターとしての連合は、1987年11月に民間労組が先行して統一して民間連合を結成し、2年後の1989年11月に官公部門も合流して「日本労働組合総連合会」(連合)を結成するという時期でした。その民間連合が1988年5月に出した昭和63‐64年度『政策・制度要求と提言』においては、「雇用・労働政策」の中に「外国人労働者対策の推進」として次のような事項が明記されていました。
こうした記述は、その後も毎年の『政策・制度要求と提言』の中で繰り返されていくことになります。とはいえ、分厚い政策制度要求の中にこれだけの記述が盛り込まれたからといって、それが現実の政策過程に何らかの影響力を及ぼせるかといえば、そのための政策回路は上述のようにあらかじめ外されているわけで、口先で文句を言っている以上の効果はありませんでした。
なにしろ、当時の政府部内の仕分けでは、この問題は「雇用・労働政策」ではなく、「法務政策」であり、実際に権限を握っている法務省にとっては「雇用・労働政策」の項に何が書かれようが顧慮するに値しなかったからです。
そして、この半ば二律背反的なスタンスを政策過程の大舞台の上で演じざるを得なくなることを免れるという意味において、この外野席のポジションは必ずしも居心地が悪いものではなかったのではないかと思われます。
日本人労働者であれば「他の労働者と同じように働いているのに研修生だから労働者に非ず、などという不条理は許されない」と叫ぶはずなのに、自分たちの手の届かない入管法上に非就労在留資格としての「研修」が規定されていることを理由に、事実上「時給300円の労働者」を容認していたことの背景には、この利害構造があったのではないでしょうか。
こうして、本来労働者団体が立場上主張すべき「外国人労働者の待遇を上げろ」を主張し、そもそもその前提として「研修生を労働者として認めろ」と主張するという役割は、労働政策プロパーの世界では労働者団体の天敵であり、労働者の利益に反する主張ばかりする存在だと思われていた規制改革関係会議の手に委ねられることになりました。
本書第二部第一章で詳しく描写することになりますが、労働政策関係では何かと敵役として取り扱われがちな規制改革関係会議こそが、労働者保護を第一義に考えるべき労働省がその創設の経緯に縛られてきちんと指摘することができず、また労働者の利益を声高に叫ぶべき労働者団体がその利害構造の複雑性のゆえに突き詰めて主張することができなかった「研修生は労働者である」という不都合な真実を、あれこれ顧慮することなくズバリと指摘することができたことの意義は極めて大きなものがあります。
少なくともこの局面に関する限り、労働者性を剥奪された研修生という名の外国人労働者を本質的なレベルで救おうという動きを政府部内で提起し得たのは、規制改革関係会議(とその関係者が参加した経済財政諮問会議)だけであったことは、労働行政や労働組合関係者が繰り返し正面から向き合うべき苦い経験であるはずです。
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(労働政策研究・研修機構労働政策研究所長 濱口 桂一郎)

中道合流の立民女性議員が謝罪「原発再稼働反対、入った上で中で頑張る」投稿削除「言葉足らず」

前武蔵野市長で立憲民主党から新党・中道改革連合入りした松下玲子衆院議員(55)が21日までにX(旧ツイッター)を更新。自身の投稿を削除した上で謝罪した。
松下氏は20日「中道」合流を表明した上で「原発再稼働反対です。入った上で、中で頑張りたいと思います」とポスト。この投稿が、「中道」が掲げている理念からかけ離れているとし、ネット上では批判が殺到していた。
松下氏は騒動を受け、当該ポストを削除。その上で「言葉が足らず、覚悟に欠ける投稿があったことを、心からお詫び申し上げます」と謝罪した。
その上で「立憲民主党と公明党が結成した新党『中道改革連合』の理念である『生命・生活・生存を最大に尊重する人間主義』のもと、綱領に掲げられた5つの柱を政策に掲げています。この理念と綱領の実現に賛同し、中道改革連合に入党しました。理想を掲げながら、現実的な政策実現のために結集する。その責任を果たす覚悟を持って、私は新たな歩みを始めて参ります」と意気込んだ。
松下氏は実践女子大卒業後、サッポロビール、都議などをへて17年から2期、武蔵野市長を務めた。24年の衆院選に菅直人元首相の後継として東京18区(武蔵野市・小金井市・西東京市)から出馬し、選挙区では自民候補に敗れたが、比例で復活当選した。現在1期目。

冬眠しないクマか? 畑にクマ出没し駆除 1月の駆除は記録上初 北海道上ノ国町

2026年1月21日午前、北海道上ノ国町宮越で、80代男性が所有する畑にクマ1頭が出没しました。
町によりますと、畑を所有する男性からの通報でクマの出没を認知し、21日午前11時20分ごろ、駆けつけたハンターが猟銃でクマを駆除したということです。
クマは体長およそ1.4メートル、体重推定100キロ、推定8歳のメス。
町内でのクマの駆除は今年初で、1月にクマが駆除されたのは記録が残っている2016年以降、初めてだということです。

【偽ブランド品】 偽のディーゼルのベルトやアトリエフォルマーレのバッグなどを販売した疑いで女3人を逮捕 出品役や発送役など役割分担か 北海道警察

2024年、ディーゼルのベルトやアトリエフォルマーレのバッグなどの偽物を販売したり、輸入しようとしたりした疑いで、北海道釧路市などの女ら3人が逮捕されました。
関税法・商標法違反の疑いで逮捕されたのは、釧路市の看護師、阿部恋雪容疑者(36)、スポーツ施設経営の長尾佳緒里容疑者(36)、長崎県佐世保市の飲食店従業員、森梓容疑者(43)の3人です。
3人は共謀して、2024年8月から11月までの間に、ディーゼルのベルトとアトリエフォルマーレの「ボール&チェーン」バッグの偽物2点を販売、さらに同様のベルトとスターバックスのロゴのキーホルダーの偽物合わせて37点を中国などから輸入しようとした疑いが持たれています。
「コピー品を輸入し…」容疑者の供述
長尾容疑者は2024年11月、アトリエフォルマーレのバッグの偽物12点を輸入しようとした疑いも持たれています。
警察によりますと、ベルトとバッグは、フリーマーケットのアプリで販売し、岡山県に住む女性(30代)と神奈川県に住む男性(20代)に、宅配便で送っていたということです。
また、販売価格はベルトが2000円、バッグが3199円で、新品の定価と比べ安いとみられます。
取り調べに対し、阿部容疑者は「海外からブランド品のコピー品を輸入し、輸入した商品を販売したことは間違いありません」と容疑を認めていて、長尾容疑者は「偽物を取り扱っているという認識はありましたが、ベルトの取引については私が関与していないのではないかと思っている」と容疑を一部否認、森容疑者も「発送や出品をしていたのは事実ですが、私は輸入には関わっていません」と容疑を一部否認しているということです。
3人のうち、阿部容疑者は業務の統括をする主犯的な役割を、長尾容疑者は出品役を、森容疑者は発送役を担っていたということで、警察がさらに詳しく調べを進めています。

出直し大阪知事選に3人出馬 維新吉村氏と2新人、都構想争点

大阪府知事だった吉村洋文氏(50)の辞職に伴う出直し選が22日告示され、日本維新の会の吉村氏と、いずれも新人で会社経営の無所属納藤保氏(44)、政治団体「無所属連合」の共同代表大西恒樹氏(61)の3人が立候補を届け出た。維新が本拠地で掲げる看板政策「大阪都構想」の是非が争点。ただ主要な政党・政治団体は出直し選を批判し候補擁立を見送っており、論戦が本格化するかどうかは見通せない。投開票は衆院選と同日の2月8日。
吉村氏は大阪市で第一声に臨み「府と市が一つになれば大阪はもっと成長できる」と強調。午後には堺市で街頭演説し、「副首都」にふさわしい大阪を目指すため「都構想の設計図をつくらせてほしい」と訴えた。3選を果たした場合、来年4月までの任期中に都構想の住民投票実施を目指す意向だ。
大西氏は、都構想に反対する考えを示し「本当に良いことなのかどうか、根本を問いたい」と強調した。
納藤氏は都構想に関し「二重行政の撤廃、コスト削減になるのであれば良い」と述べた。
都構想の住民投票はこれまで2度否決された。

常連客限定の“裏メニュー”牛の「生レバー」提供か 飲食店経営者を逮捕「客から要望があれば提供していた」 滋賀・豊郷町

滋賀県の飲食店で常連客に“裏メニュー”として牛の「生レバー」を提供した疑いで、経営者の男が逮捕されました。

食品衛生法違反の疑いで逮捕されたのは、滋賀県豊郷町の飲食店「肉料理滋ぃ家」を経営する今村圭司容疑者(55)です。

警察によりますと、今村容疑者は去年4月と9月に店で二度にわたり、十分な加熱をするなどの必要な処理をせずに、客に牛の肝臓を提供した疑いがもたれています。

関係者から「リピート客に生レバーをだしている」という情報提供があり、警察が店を捜査したところ、常連客限定の“裏メニュー”として「生レバー」が提供されていたということです。

今村容疑者は取り調べに対し「客から要望があれば提供していました」と容疑を認めているということです。

「家族への思いもう少し弱ければ…」山上徹也被告の裁判に参加の裁判員が会見 『被告はまっすぐしか見られない』と語る人も

安倍元総理銃撃事件をめぐり、山上被告の裁判に参加した裁判員らが会見を行い、被告について「家族思いな部分がとても強い」などと話しました。

2022年に奈良市で演説中の安倍元総理(当時67)を銃撃し殺害した罪に問われた山上徹也被告(45)に対し、奈良地裁は21日、無期懲役の判決を言い渡しました。

約3か月間、裁判に参加した裁判員らは被告について…

(裁判員)

「家族思いな部分がとても強い方だなという印象です。(家族思いの気持ちが)もう少し弱ければ、家族と離れて過ごすことで、これほど不幸な事件が起きることはなかったのかなと思います」

(裁判員)

「この人はまっすぐしか見られない人なんだなと思います。妥協もできない人で止まることができなかったのかなと思いました」

また、判決をうけて「山上被告が刑を受け入れたかはわからなかった」などと話しました。

「富士山なめるな」封鎖を“強行突破”した中国籍の男性がまた遭難…冬季閉鎖中の登山道に入ってもお咎めなしの理由

1月18日午後1時ごろ、富士山の富士宮口付近で中国籍の男性(20)が下山中に転倒し、救助を求める119番通報があった。静岡県警は2チーム11人で構成された山岳救助隊を派遣し、丸1日かけて男性を救出した。閉山中の救助要請に「ルール違反だ」「富士山なめるな」など批判の声が上がる。
【画像】相次ぐ遭難…民間団体が捜索・救助を行なう場合に発生する費用
閉山中の富士山で弾丸登山…法的処罰はあるのか
「転倒し、右足首を負傷して歩けない」
1月18日午後1時半ごろ、閉山中の富士山へ弾丸登山を行なった中国籍の男性(20)から、下山中に身動きが取れなくなったと119番通報があった。男性は同日午前0時ごろに富士山への登山を開始した。
「男性は富士山の登山道が閉鎖されていることを知りながら入山。入山の際に緊急時に必要な登山計画書も提出していませんでした。静岡県警・山岳救助隊の2チーム11人が派遣され、先行部隊が18日午後7時30分に遭難者と接触し、日付が変わらないうちに後発隊も合流。
当時は天候が悪かったことから、近くの安全な場所で待機し、翌19日の午前8時ごろに下山を開始。19日午後1時頃、救急隊に引き継ぎ救助を終えました」(静岡県警地域課)
静岡県警地域課によると、現在、富士山の登山道は冬季閉鎖中で、閉鎖された登山道を使用した場合、6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処される可能性があるというが、今回の男性のように冬季閉鎖中の山岳に入山しても罪に問われることはないのだろうか。
「遭難者が閉鎖中の登山道を通ったかどうかは、積雪や氷で道の判別が難しいのが現状です。登山道は『閉鎖』されていますが、法的に『入山禁止』ではないんです。
登山道という『線』は閉鎖できても、山全体という『面』への立ち入りを禁止する法律や条例はないんですよ。だから、勝手に入った人間を強制的に排除したり、入った瞬間に罰則を適用したりするような法的根拠は、現状ゼロなんです」(同前)
「この時期の富士山は、人が浮いてしまうほどの風が吹いている」
民間の捜索・救助チーム「山岳遭難捜索ネットワーク」も同様に、「入山禁止」の法的効力の弱さを感じていた。
「いわゆる富士山に関しては、一応『登山禁止』とは書かれてはいますが、法的に入山を禁止する権限はないのが現状です。林道は通行止めであっても、そこに強制的に入った瞬間に逮捕されるような法律や条例は存在しませんから」
実際、同ネットワークの担当者が過去に警察関係者と話をした際も、「林道そのものではなく、積もっている雪の上を歩くなら法的にどうなのか」という議論になるほど、線引きはあいまいだという。
今回の現場となった富士宮口8合目付近は、冬季は極めて過酷な環境だという。
「富士宮側の登山道は傾斜がかなり急峻(きゅうしゅん)で、風をまともに受ける場所です。基本的にこの時期の富士山は、人が浮いてしまうほどの突風が吹いており、天候次第ではどんなに登山経験が豊富であっても滑落してしまうケースが多いです」(同前)
また、男性が登山道へ入った経緯について、担当者は「“誤って入ってしまった”と考えるのは難しい」と指摘する。
「主要な登山口はベニヤ板などで頑丈に封鎖されており、そこを突破するのはかなり大変です。簡単には入山できないようになっているはずなので、無視して突破しようという意思がないと入山できないでしょう」(同前)
背景には外国人観光客による富士山への関心の高さもあるという。
「近年、海外の方々から見ても、日本の象徴として『登ってみたい』という外国人は非常に多いです。歩いて登り下りする人もいれば、下山時は滑り降りたいという人もいて、楽しみ方はさまざまです。エベレストのような記録に残るほどの標高や難しさはないものの、登山未経験者にとっては十分に難しい山と言えます。さらに富士登山で厄介なのは、途中までは意外に簡単に登れてしまう点です。
5合目までは比較的容易に行けてしまうが、そこから先で環境が急変する。登りは体力でカバーできても、下りになると地面が凍結しているので、とても危険なんです」(同前)
救助費用は2日間で100万円かかることも…
公的機関である警察の救助活動は基本的に無償だが、民間団体が捜索・救助を行なう場合、多額の費用が発生する。
「我々のような民間の場合、1日1人につき5万円超の費用がかかります。生存の可能性がある場合、5人以上の体制や本部運営費を含めると、2日間で50万円から100万円ほどの救助費用がかかる計算になります」(同前)
相次ぐ遭難を受け、罰則付きの入山規制を求める声も上がっているが、担当者は「何でも禁止にすれば良いわけではない」と言う。
「禁止や罰則だけで縛るのは成熟した社会とは言えません。今後は、冬山登山を許可制にするなどの仕組み作りや、正確な情報発信が必要になってくるのではないでしょうか」(同前)
前出の静岡県警は、国籍を問わず事故防止に向けた啓発活動を強化している。県警公式SNSやホームページでの情報発信に加え、インバウンド需要の回復を受けて外国人向けの対策も拡充した。
具体的には、登山道が閉鎖中であることを伝え、入山自粛を求めるチラシを数カ国語で作成し、インターネット上で公開している。また、今回の遭難者が中国籍であったことに関連し、静岡県では独自の施策も展開。中国に駐在する県職員を通じ、現地での呼びかけを行なうなど、夏山シーズン終了後から継続して水際での周知に努めている。
冬の富士山を訪れる外国人登山者の実数については、この時期は登山者カウンター等での計測を行なっていないため、正確なデータは存在しない。そのため、現状では遭難や救助に至った件数ベースでしか実態を把握できないのが実情だ。
一部で外国人特有の問題として捉える向きもあるが、昨年末には日本人の遭難事故も発生している。静岡県警の関係者は「データがないため断定はできないが、リスク管理が必要なのは日本人でも外国人でも変わらない」として、国籍を問わず冬山の危険性を正しく認識するよう求めている。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

〈もう反応がほとんどない…〉政界引退の菅義偉元首相、接待疑惑の“ロン毛”長男ではなく「かばん持ち」から始めた叩き上げの秘書が後継指名された理由

1月27日公示、2月8日投開票の衆院選に向けて各党が慌ただしく選挙準備に追われる中、菅義偉元首相(77)が衆院選に出馬せず政界を引退する意向を表明し、永田町に衝撃が走った。大手紙政治部記者が語る。
「昨年10月の総裁選の際、高市陣営の1人が菅氏と面会したときの印象として、『菅さんに話しても、もうほとんど反応がない』とこぼしていました。このタイミングでの政界引退は致し方ない」
菅氏は17日に横浜市内で記者団の取材に応じた際、「喜寿を迎え、後進に道を譲ることを真剣に考えた」と語っていたが、自民党神奈川県連は19日、菅氏の後継として神奈川2区から出馬する候補者として、菅氏が首相時代に内閣総理大臣秘書官を務めていた新田章文(しょうぶん)氏(44)を擁立する方針を決めた。
新田氏は大阪出身で、関西の大学を卒業後、会社員をしていたが、「もっとやるべきことがあるのでは」と思い立ち、25歳のときに菅氏の秘書となった。運転手、鞄持ちからスタートした「生粋の秘書」で、長年の貢献から後継指名された。
「地盤・看板・鞄のない『たたき上げ』として首相まで上り詰めた菅氏だけに同じ境遇と言える新田氏を指名したのは彼の譲れない”遺言”のようなものでしょう」(同記者)
別の永田町関係者は新田氏の評判について、こう話す。
「新田氏は文字通り菅氏の手足となって、菅氏のために働いてきた人です。秘書の経歴としては永田町よりも地元・横浜の事務所勤めの方が長く、菅氏本人よりも地元関係者を押さえているかもしれません。
常に腰が低く、華があるタイプではないので政治家としてはつまらないかもしれませんが、地元の信頼は厚いようです。
新田氏は10年ほど前にも国政選挙への出馬を模索していましたが、秘書としての役割に菅氏の覚えがめでたく、なかなか許しを得られなかった。菅氏の体調悪化が進むと、菅氏はいろんな行事に新田氏を同行させるようになり、論功行賞として後継指名したのでしょう」
菅氏の後継をめぐっては、一時、菅氏の息子(長男)の名前も取り沙汰されたが、菅氏が首相時代に総務省のキャリア官僚に対する高額接待問題が露見しており、見送られたようだ。
前出の政治部記者は「当時の報道で見られた長男の姿が、ロン毛で咥えタバコをしていたことから印象に残っている人もいるかもしれません。地盤・看板・鞄のない『たたき上げ』として首相まで上り詰めた菅氏ですから、さすがに後継を世襲というわけにはいかなかったでしょう。菅氏自身も大学卒業後に小此木彦三郎氏(旧神奈川1区)の秘書として政界のキャリアをスタートさせているので、地元としても新田氏で納得でしょう」と話す。
第2次安倍政権のもと、2012年12月から2020年9月まで、歴代最長となる7年8カ月にわたって官房長官を務め、安倍氏の退任後はその後継として2020年9月から2021年10月まで首相を務めた菅氏。
政界の巨星は、今回の衆院選をどのような思いで見守っているのだろうか。

出直し大阪知事選、3人の争いに=都構想争点、2月8日投開票

吉村洋文前知事(50)の辞職に伴う出直し大阪府知事選が22日告示され、立候補の届け出を締め切った結果、日本維新の会公認の吉村氏、無所属新人で会社経営の納藤保氏(44)、政治団体共同代表で新人の大西恒樹氏(61)の3人による争いが確定した。大阪市を廃止して特別区に再編する「大阪都構想」への再挑戦の是非が争点。25日告示の大阪市長選、27日公示の衆院選と同じ2月8日に投開票される。
吉村氏は大阪市内で第一声を上げ、「大阪が強くなることで日本が強くなる。そのためには都構想が必要だ」と訴えた。
自民、立憲民主、公明、共産など主要政党は出直し選を「大義があるのか」と批判し、対立候補を擁立しなかった。
都構想は、2015年と20年の住民投票で反対多数で否決された。吉村氏は、3度目の住民投票に向けて民意を問うため、横山英幸市長(44)と共に任期途中で辞職願を提出し、知事・市長の出直しダブル選を仕掛けた。
吉村氏は都構想について、府と市の二重行政解消などのメリットを説明。「副首都構想」の実現にも必要不可欠だと主張している。出直し選で当選しても任期は現状と変わらず27年4月までで、吉村氏は3度目の住民投票について、任期中の実施を目指す考えを示している。
都構想について大西氏は反対、納藤氏は府民の約9割が納得すれば容認するとしている。 [時事通信社]