在任中は夢に何度もトランプ氏が出てきた…石破前総理が語った米国との関税交渉を成功させた「逆転の論理」

※本稿は、RSK山陽放送特別番組「石破茂×小長啓一 未完の列島改造」(12月27日15時~16時放送、ラジオ12月23日、30日6時30分~7時放送)の内容を再編集したものです。
――95歳になった今も現役の弁護士として活躍する小長さんは、石破政権をどう見ましたか。
【小長啓一氏(以下敬称略)】石破政権の1年はですね、国際的には色々な波乱万丈のことがあったんですけれども、そういう中で、ちゃんと国益を守りながらですね、一貫した政策を遂行されたという意味では非常に意義のある1年間だったんではないでしょうか。
【石破茂氏(以下敬称略)】大先輩からそう言っていただけるとありがたいことでね。やっぱり我々にとって田中角栄総理ってのは、もう一つの理想像だった。何でもアメリカの言う通りにはしませんよっていうのがありましたよね。日米繊維交渉もそうだったし、日中国交回復もそうだったし。
一番の懸案はトランプ大統領の「関税」でした。「貿易赤字を減らすんだ」と繊維交渉みたいな話なんですけれども。いやそれは違うでしょと。関税ベースの貿易赤字を減らすというのは手段なので。
トランプ大統領、あなたが目標としているのは、アメリカにもう一度製造業を復活させて、アメリカの労働者たちにもう一回職を与えるんだと。それがトランプ大統領の目標でしょ、と。
日本はアメリカに対して最大の投資国で、最大の雇用を創出していて、その原資というのは日本からアメリカに自動車をはじめとして輸出して稼いでいって、その原資がなくなっちゃったら投資もできませんよと。
(トランプ大統領には)関税よりも投資ですっていうことをずっと貫いたんですよね。多くの国とアメリカは関税交渉やっているけど一番いい形で日本はできたと思いますね。
1年ですけど本当に皆さんに支えていただいて、自分としては、あれ以上のことはできなかったなっていう思いはございます。
【小長】お父様が、「息子が今、三井銀行に勤めています」ということを田中さんにおっしゃって。田中さんが「すごい息子を持ってるね。サラリーマンっていうのは、ちょっともったいないんじゃないか。今すぐもう政治家になるということで、衆議院やったらどうかね」という話をされたのを私よく覚えております。
【石破】角栄先生がいないと私は間違いなく政治家をやってない。
私が「サラリーマンとして職務を全うしたい」と言ったらまあ怒った、怒った。「君はそれでも石破二朗の倅(せがれ)なのかあ」と言ってね。
角栄先生が応接室でバーンと机を叩いてね「いいかよく聞け、日本で起こる全てのことはこの目白で決めるんだ」。本当にそう言われたからね。すごかったですね。いやもうだから、あの方は人間ではない。神ですから。角栄先生に言われたら、何か言うことを聞かされちゃうところがありませんでしたか。
【小長】全国どこに住んでも一定以上の生活ができる格好にしようではないか、というのが日本列島改造論の基本的なコンセプトだったわけですね。結論的には東京がより過密になるという状況は変わってない。地方の過疎状況というのも変わってない。そういう意味では、改めて新日本列島改造論を考えなきゃいけないタイミングに本当に来ているんじゃないのかなっていう感じはしております。
――石破さんは2014年に初代の地方創生担当大臣に就任するなど、長年地方創生に力を入れてきました。今年1月の国会での施政方針演説でも「楽しい日本」を実現するための政策の核心として「地方創生2.0」と「令和の日本列島改造」を強力に進めることを打ち出しました。
【小長】田中さんの思いというのは、石破政権のいろんな政策の中に生きているんだなというのを私は実感をしております。
【石破】田中内閣ができた時に私は高校1年生で、地方が沸き立った。すごく地方はぱっと明るくなった。鳥取であっても、山形でも宮崎でもどこでもいいんですけど、中央政府と地方が一体だったような気がする。一緒に頑張ろうっていう、そういう意識があったような気がしますね。
――しかし、田中角栄元総理が提唱した日本列島改造は、50年経っても実現していません。それはなぜなのでしょうか。
【石破】あらゆるものを東京に集めた方が効率的だっていうね、そういう考え方がずっとあったんですよ。東京一極集中でオリンピック、万博みたいな。その限界が来たのが今であって。角栄先生や竹下先生はそれを予見してらっしゃったから、分散型国土を作るんだっておっしゃったんですね。(日本列島改造が実現していないのは)やっぱり東京一極集中が成功し過ぎたんじゃないですかね。
未完だけれども、列島改造から国土の均衡ある発展はずっと連綿と続いています。地方創生って何も東京の富を地方にバラまこうという話じゃない。国を本当に均衡ある発展にしようっていう角栄先生がおっしゃった、(私は)それをきちっと形にしたかった。
――石破さんは総理になる前から、そして総理になってからも、ずっと地方創生に取り組んできました。地方創生が進んでいるという手応えは感じていますか?
【石破】それはね、地方の町村長さん、市長さんに、もう一回一緒にやろうっていう目の輝きがまた戻ってきたなっていう感じはしましたね。なんかね、地方創生もずっと10年もやっていると何となく定型化してきて、東京のコンサルタントに(資料を)書いてもらってそれで補助金もらいましょうみたいな流れになってしまっていた。それじゃもう地方創生ならんわけですよ。そこの町のことって、そこの人しか分かりませんものね。
――民間企業のトップに取材すると、トップリーダーは、最後は誰にも相談できないから孤独だという話をよく聞きます。国のトップリーダーを務めた石破さんはどうでしたか?
【石破】相談はできませんね。もちろんいろんな意見は上がってくるんですよ。外交であれば外務大臣の意見があり、あるいは経産大臣の意見があり。大臣の意見はみんな一緒なはずがないんで、みんな違うんですよ。そうすると最後は自分で決めなきゃいかん。
でも誰にも相談できない。誰にも責任は転嫁できない。それはやっぱり寝られないですよね。24時間365日とは言わないけど、寝てても夢に見る。うん。うん。それはトランプさんの夢を何回見たことか。そんなもんです。でも、それが嫌だったら総理大臣なんかやっちゃいかんですよ。
――総理としてやりたいことがたくさんあったのに、1年でこういう形で終わり、完全燃焼していないのでは?
【石破】いや、それは次の時代が判断することだけど。日々ね、私は大臣の時もそうだったんだけど今日1日どれだけ自分は人々のために国のために何ができたかなっていう反省を、役所から出る時にしていたんですよ。「今日何にもお国のためになんなかったな」ってしょんぼりして帰ることが多かったですけどね。
――1年間の石破政権を自ら振り返って、石破さんがやりたかったけど結局やれなかった政策はあったのでしょうか?
【石破】それはやっぱり未完に終わったっていうかね、今なお途上なのは地方創生でしょう。東京一極集中は止まらない。コロナの時にちょっと止まりかけたんだけど、コロナが収束したらまた一極集中が加速するようになりました。
東京一極集中は止まりません。少子高齢化も止まりません。このまま行ったら80年経ったら日本人半分になりますっていうことがあって。
やっぱり地方の持っている農林水産業であり、あるいは中小企業であり、女性の力であり、そういう地方が持っている潜在力を最大限に引き出していくっていう。これがまだなお途上ですよね。これが一番やりたくて、形にならなかったことだと思いますね。
もう一つはやっぱり最低賃金を引き上げることです。最低賃金の近くでギリギリ暮らしている人って、日本の労働者の十分の一がそうなわけで。角栄先生がおっしゃっていた「1億総中流」というのは崩れかけているわけです。
やっぱりもう一回、中流ってものを取り戻していかないと社会が不安定になると、それがなお途上ですね。
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(衆議院議員 石破 茂、弁護士、元通商産業事務次官 小長 啓一、ジャーナリスト・関西大学客員教授 春川 正明)

《参政党の急伸は“反エリート・反グローバル”のスローガンか》現役世代の不安を取りこぼす既存政党の問題点とは

2025年参院選は右派ポピュリズム勢力の伸長を印象付けた。
参政党は米トランプ大統領のような「日本人ファースト」を掲げ、一躍14議席を獲得した。しかも自民、立憲がともに支持者の中心が60代以上になるのに対して、参政党の支持層は50代以下にある。
維新やみんなの党と参政党の決定的な違い
2010年代にも現役世代の支持を獲得して、自民、旧民主の間に割って入るような「第三極」はいた。大阪から全国展開を目指した橋下徹が率いた維新、あるいは改革派として注目を集めた「みんなの党」が代表格だろう。決定的な違いは参政党にはマスメディアを賑わすスター、そして看板政策が不在であることだ。
維新にはタレント弁護士、大阪市長、府知事として名を売った橋下徹、みんなの党には大臣経験もある渡辺喜美という大看板がいた。いずれも行政経験を積み重ねており、結成した新党には行政改革が掲げられた。彼らは旧来的な左右のイデオロギーを強調するより、経験による実務的な解決能力をアピールしていた。
参政党は彼らとはまったく違う道のりを歩んでいる。地道にその数を増やしていった党員が活動の軸になっており、代表の神谷宗幣にしても、目立つ経歴は地方議員を経て自民党候補として衆院選に挑んだ(結果は落選)ことくらいだ。参院選直前までテレビ討論会への出演を熱望していたくらい露出は少なく、インターネット上のアピールに限られていた。
肝心なのは参政党の政策が荒唐無稽でしかないことだ。エリートが推し進めたグローバル化によって起きた諸問題へのカウンターとして「日本人ファースト」を叫び、「日本人=普通の人々」のために消費税の段階的廃止、既成政党批判を繰り返した。外国人をターゲットにした主張、歴史認識はいかにも右派的イデオロギーを前面に押し出す。だが、威勢はいいが、大胆すぎる減税と社会保険料の減免をしながら、どうやって子育て世帯に月10万円を給付するのか? 支持者以外も納得するような答えは存在しない。
注目された「日本人ファースト」にしても、参院選後に神谷は「移民上限は人口の10%まで」と発言している(後に5%以下に訂正)。2024年末の在留外国人が約3%であることを鑑みると、まだ受け入れ幅があるということになる。
実務経験も乏しく、政策も具体性がないとなれば政党として伸びる条件を欠いているようにも思える。だが、彼らは第三極としての立ち位置を得た。
グローバリズムを明確な「敵」と設定
それはポピュリズムが説得力を持つ地盤が日本においても整ったことを意味している、というのが彼らを取材してきた私の仮説だ。ポピュリズムとは、単に大衆に心地よい政策を訴える「大衆迎合主義」ではない。オランダの政治学者カス・ミュデの定義を提示しておこう。
《社会が究極的に『汚れなき人民』対『腐敗したエリート』という敵対する二つの同質的な陣営に分かれると考え、政治とは人民の一般意志の表現であるべきだと論じる、中心の薄弱なイデオロギー》(『ポピュリズム デモクラシーの友と敵』白水社、2018年)
ポイントはエリート層が推し進める政策、たとえばグローバリズムを明確な「敵」と設定して、「中心の薄弱」な主張と結びつくところにある。ポピュリズム政党に体系的かつ理論的な主張はない。よく言えば柔軟ではあるが、悪く言えば節操のない主張で体制を揺さぶる。
これは右派だけでなく左派――日本なられいわ新選組――とも結びつく。参政党とれいわには外国人を含む人権問題では大きな差があるが、エリートが重要な地位を占める既成政党や体制への不信を訴えること、大胆な財政出動といった共通点も多くある。反グローバリズムを唱えるポピュリズム政党は右派、左派ともに国境を超えて、むしろグローバルに広がっている。神谷はドイツ最大野党で極右と位置付けられる「ドイツのための選択肢(AfD)」の共同代表と会談し、さらに凶弾に倒れたアメリカの若き保守活動家チャーリー・カークを招いたイベントを開催するなどネットワーク作りにも熱心に取り組む。
体系的な主張は存在しない?
既存政党が既得権を持つエリートと位置付けることができれば、あとはその場でウケる言葉が高い効果を発揮していく。なぜなら、彼らの唱える言葉はあくまで「反エリート」のスローガン以上の意味を持たないからだ。有権者への説明や理詰めの説得などは一切気にせずに「日本人への気持ち」を込めて訴えることだけに集中すればいい。
大手メディアがこぞって参政党は排外主義的だと批判したが、言葉は空を切った。体系の無さや主張の矛盾はポピュリズム政党のダメージにはならないからだ。主張に理詰めで論争を仕掛けても、神谷は「問題提起のつもりだった」とあっさり言えてしまう。政治的な立場が異なる私のインタビューでも好戦的な論破ではなく、意見の違いを素直に認める柔軟さは印象に残った。取材でもよく聞いたのは、支持層の「日本の政治家が日本人を第一に考え、大切にするのは当たり前」といった声だ。それに応えているという姿勢のほうが批判よりもずっと真摯に響いてしまっているのが現実である。
日本に限った話ではないが、最大の課題は既存政党が単なる古いものに成り下がってしまい、議席減少を重ねている点にある。ポピュリズム研究の到達点は、彼らに「正しい解」を示す力はないが、「正しい問い」は発していると認めることだ。解は既存政党が示さなければ、政治システムそのものが揺らぐ。左右のポピュリズムが「普通の人々」を取り込んで台頭した参院選の結果は、現役世代の漠然とした不安に自民党をはじめとする既存政党が答えを出せていないという問題を浮き彫りにした。ポピュリズム政党に支持者を奪われたくなければ、自らが変わり、説得的な解を示すことに尽きる。この波はまだまだ続く。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『 文藝春秋オピニオン 2026年の論点100 』に掲載されています。
(石戸 諭/ノンフィクション出版)

駅で録音・撮影の危険行為が多発 メロディー中止のJR東が啓発

JR東日本が、駅ホームでの録音や撮影に伴う危険な行為が多発しているとして注意を呼びかけている。長いマイクを使った音声録音や、線路に身を乗り出しての列車撮影などをやめるよう今月から主要駅でポスター掲示を始めたほか、啓発のインターネット動画を作成し1月中旬から公開する予定。
ホームから列車を撮影する際に脚立を使用したり点字ブロック上に止まったりすると、通行の妨げになり、けがをする可能性もある。発車メロディーなどを録音する目的で、柄の長い集音マイクをスピーカーに近づければ、高圧電流が流れる架線に接触して感電する恐れが生じる。
JR東は10月、集音マイクを持ち込む人が相次いで危険だとして東北新幹線の東京、上野、大宮の各駅で流していたアイドルグループ「SixTONES(ストーンズ)」の楽曲による発車メロディーを使用中止した。
同社は「危険行為は他の利用客の迷惑になるだけでなく、列車運行に大きな影響を及ぼす。録音・撮影時には配慮をお願いしたい」としている。

温暖化進めば台風の雨量3倍に 九州大が試算、間接影響も検証

地球温暖化が進むと、台風によって日本に降る雨量が約3.1倍に増加するというシミュレーション結果を九州大がまとめ、論文が国際学術誌にオンライン掲載された。11月23日付。過去の台風について、台風本体の雨量(コア降水)に加え、従来注目されることが少なかった、台風が間接的に影響した雨量(遠隔降水)も検証。より正確な予測につながったとしている。
2010~19年の7~9月に、北太平洋西部で発生した台風のうち38個をモデルに、地球の平均気温が産業革命以前と比べ約2.5~約3℃上昇したケースを想定した。日本の1日当たりの降水量は22.52ミリから70.04ミリになった。

名古屋中心部の地下を通る…リニア中央新幹線のトンネル掘削工事 2026年1月中旬から本格的にスタートへ

JR東海は名古屋市中心部を通るリニア中央新幹線のトンネル掘削工事について、2026年1月中旬から本格的に始めると明らかにしました。 名古屋駅の手前から春日井市までおよそ7.6キロの名城工区では、地下水への影響などの調査が想定以上に時間がかかり、当初予定されていた2026年3月の工事の完了時期が、3年半ほど遅れる見通しとなっています。 JR東海は本格的な工事を始めるためのシールドマシンの準備などが整ったとして、名城工区でのトンネル掘削工事を2026年1月中旬にも始めると明らかにしました。 会社側は既に沿線住民への説明会を終えていて、名古屋市内を唯一通すリニアのトンネル工事が年明けから本格化することとなります。

【瞬間】会計ごまかし肉盗む 窃盗相次ぎ無人販売所閉店に 1.5万円相当手に取り600円払う 札幌

カバンいっぱいに商品を詰める人物。
慣れた手つきで冷凍庫から次々といれていきます。
12月22日、無人販売所に設置された防犯カメラが窃盗の瞬間をとらえました。
(向山記者)「犯行に及んだ人物は1万5000円相当の肉をかばんにいれ、600円だけ会計して立ち去りました」
窃盗の被害にあったのは、札幌市中央区の肉の無人販売所です。
在庫の数と支払われた金額が合わず、不審に思ったオーナーが防犯カメラを確認し、被害に気が付きました。
(オーナー)「まず怒り。無人店舗にして人件費を削減することで安く提供していたのに」
この人物は12月2日午前1時半ごろにも店を訪れ、1万5000円相当の冷凍の肉をカバンにいれて、600円だけ払い店を立ち去りました。
わずか3分の犯行です。
店は相次ぐ窃盗をうけ、22日に閉店しました。
(オーナー)「これ以上万引きを防止するには何百万もかけて新しいシステムを入れないといけないが、原材料も上がっているので回収することは不可能だと思って、このまま閉めて終わらせた方がいいなと」
店は被害届を提出し、警察は窃盗事件として捜査しています。

維新・藤田共同代表 次期衆院選での自民との選挙区調整「不可能に近い」

日本維新の会の藤田共同代表は、次の衆議院選挙での自民党との選挙区調整などについて「不可能に近い」との認識を示しました。
日本維新の会 藤田文武共同代表 「今のところ(自民党と)上手く選挙区を調整したり連携するっていうのはほとんど難しいだろう。不可能に近いんじゃないか」
藤田氏はきのう都内で行われた講演で、次の衆院選での自民党との選挙協力について「すでに多くの選挙区で候補者が重複している」などと指摘し、「選挙区調整をすることは不可能に近い」との認識を示しました。
その上で「いまは連立合意文書に盛り込まれた政策の実現に邁進したい」と強調しました。
一方、自民党の鈴木幹事長は、きのうの会見で衆議院の解散・総選挙の時期について「選挙よりも政策を前に進めることが先で、選挙はいまいまの話ではない」との見通しを示しました。
また、維新との選挙区調整についても「具体的な調整は行っていない」と明かしています。

【原発】再稼働「地元同意」も…山積する課題 避難道路の整備や東電の信頼性は《新潟》

花角知事が再稼働を容認する前提として国に求めた7つの項目。「地元同意」が完了してもなお避難道路の整備など課題は残されたままです。
赤沢経済産業相と面会した花角知事。手渡した回答書には国に求める7つの項目が記されていました。
〈花角知事〉
「最終的には7つの項目について国の対応を確認したうえで了承するということに結論に達した次第」
柏崎刈羽原発の再稼働を容認する前提として花角知事が挙げた7つの項目。その一つが避難道路の整備です。原発から6方向の放射状に延びる避難道路については全額国費で整備することが決まっています。ただ、完成まで10年以上かかることも予想されています。とくに懸念されるのが大雪と原発事故が重なる複合災害です。
2022年12月には大雪の影響で柏崎市の国道8号で大規模な車の立往生が発生。避難の課題が浮き彫りとなりました。花角知事は「避難路の整備促進」や「除雪体制の強化」などを国に求めています。
〈赤沢亮正 経済産業相〉
「避難する経路の整備促進や、除排雪体制の強化などに向けて県、関係省庁と連携しつつできる限り速やかに整備を推進してまいります」
さらに花角知事が求めたのは東京電力の信頼確保に向けた取り組みです。東京電力をめぐってはIDカードの不正使用や核セキュリティの不備など問題が相次いで明らかになりました。
〈東京電力 小早川智明社長(2021年当時)〉
「大変なご心配をおかけしましたことにつきまして会社を代表して心よりお詫び申し上げます」
〈花角知事(2021年当時)〉
「東京電力の信頼性現状でも信頼性はなかなか回復していないと思っています」
県が行った調査では「東京電力が柏崎刈羽原発を運転することは心配だ」と答えた県民は約7割に上ります。
赤沢大臣は内閣官房副長官をトップとする「監視強化チーム」を新たに設置したことなどを花角知事に伝えました。
〈花角知事〉
「ぜひとも着実に、そして確実に実施していただきたい、取り組んでいただきたい」
1月にも再稼働が見込まれる柏崎刈羽原発。避難道路の整備や東京電力の信頼回復など課題は残されたままです。

「ふげん」トリチウム水漏れ、配管切断中にしたたる 外部へ漏れなし

福井県と日本原子力研究開発機構は23日、廃炉作業中の新型転換炉「ふげん」(同県敦賀市)で、配管を切断する作業中に放射性物質「トリチウム」を含む水が漏れたと発表した。作業員は二重の手袋を着用するなどしており、被ばくはなかった。
県などによると、原子炉補助建屋内でこの日午後3時18分、不純物の測定などに使う装置の配管を切断した際、配管内に残っていたトリチウムを含む水約20ミリリットルがしたたり落ちた。漏れた放射能量は、国への報告基準の約10倍の4000万ベクレルと推計している。作業現場はビニールハウスで覆っており、外部への放射性物質漏れはない。
装置は1994年以降使われておらず、配管内の水抜き作業は済んでいた。【高橋隆輔、萱原健一】

次席検事「虚偽と言えるか疑義ある」 大川原冤罪、告発対象の報告書に

化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の冤罪(えんざい)事件の捜査を巡り、検察審査会が「不起訴不当」と議決した警視庁公安部捜査員(当時)の3人について、東京地検は23日、再び不起訴処分(容疑不十分)とした。虚偽有印公文書作成・同行使容疑での刑事告発に対する捜査は終結した。民事訴訟では違法捜査が認定されたが、刑事事件として個人の責任が問われることはなくなった。
地検の市川宏次席検事は取材に、告発の対象となった報告書が「虚偽と言えるのか疑義がある」と理由を説明した。
大川原化工機側は①捜査を指揮した警部と部下の巡査部長が不正輸出の対象となった装置の温度実験で、立件に不利な結果が出た回収容器の実験データを報告書から削除した疑い②元取締役の取り調べを担当した警部補が供述調書を過失で破棄したとする虚偽の報告書を作成した疑い――で刑事告発した。
地検の不起訴処分に対し、①を審査した東京第6検察審査会は9月、公安部の捜査を「立件ありき」と指摘し、虚偽の公文書が作成されたと認定した。また、②を審査した東京第4検察審査会は2月、「調書の破棄は過失」とした警部補作成の報告書の内容について「虚偽」と言及した。
地検が①で報告書を虚偽として捜査員を起訴するには、回収容器が「装置の内部」ということを立証する必要があった。地検は捜査員には「装置の内部」という認識がなかったとし「実験データが必ず報告書に記載すべき事項だったとは認められない」とした。
②も報告書を虚偽とするには、警部補が故意で調書を破棄し、それを隠すためにうその内容を書いたことを立証する必要があったが、地検は「隠蔽(いんぺい)や虚偽記載の意図を認定するのは困難」と説明した。
捜査終結を受け、大川原化工機の大川原正明社長(76)は「検察は組織を守るために身内の悪に目をつぶったのだろうか。残念であきれるばかりだ」とコメント。代理人の高田剛弁護士は「不起訴不当でも強制起訴を可能とする制度改正が必要」とした。
民事訴訟では公安部の逮捕や地検の起訴を違法とし、東京都と国に計約1億6600万円の賠償を命じた東京高裁判決(5月)が6月に確定した。警視庁と最高検はそれぞれ検証報告書を公表し、幹部が大川原化工機側に謝罪した。【岩本桜、北村秀徳】