トランプ大統領が拉致被害者家族と面会問題解決に意欲を示す

日本を訪問しているアメリカのトランプ大統領は高市総理とともに北朝鮮による拉致被害者の家族と面会し、問題の即時解決に向けた支持を伝えました。
アメリカ トランプ大統領 「私とアメリカはずっと被害者家族とともにあります。日本と日本の総理とともにあります」
トランプ大統領は28日、東京・港区の迎賓館で高市総理とともに北朝鮮による拉致被害者の家族と面会しました。
このなかでトランプ大統領は、拉致被害者の横田めぐみさんの母親・早紀江さんらに対し、「強い思いを抱いている。アメリカは拉致被害者の家族とともにある」と強調し、問題の即時解決に向けた支持を改めて伝えました。
また、記者団から拉致問題について北朝鮮の金正恩総書記と協議する可能性があるかと問われると、「いずれ議論するだろう。常に念頭に置いている」などと答えました。

徳島大の研究棟で27歳男性が「酸素欠乏」で死亡 入館3時間前に停電対応でドライアイス設置と判明 研究室関係者や大学側には周知されず

徳島大学大学院の研究棟で今月20日、特別研究学生の男性(27)が死亡しているのが見つかった事案で、大学は28日、男性の発見現場の室内には停電への対応でドライアイスが置かれていたと発表しました。
男性の死因は酸素欠乏と判明していて、警察は詳しい経緯を調べています。
大学によりますと、男性が見つかったのは研究棟1階の試薬を保管している「低温培養室」で、電気設備の点検のため、19日に停電がありました。
この際の温度上昇を防ぐために、男性の所属先とは別の研究室関係者が18日午前10時ごろ、室内に約31キロのドライアイスを置いたということです。
男性は同日午後1時過ぎに研究棟に入館した記録があり、20日午前10時半ごろ、室内で倒れた状態で見つかりました。
ドライアイスの設置は、男性の所属する研究室関係者や大学側には周知されていなかったということです。
男性の死因は酸素欠乏で、徳島県警は引き続き詳しい経緯を調べています。

立憲民主議員「自民党がヤジの仕方をレク」新人議員の国会ヤジ騒動で疑われた“党ぐるみの指示”に言及

10月24日の臨時国会において、就任後初となる所信表明演説を行った高市早苗首相。女性初の内閣総理大臣としての晴れ舞台で飛び交った、国民の知る権利を奪った“ヤジ”騒動は治る気配がない。
「新首相が誕生して、所信表明の出だしでどういう話をするのか、まずはしっかりと受け止めるというところから始めなければいけなかった」
翌25日の静岡第一テレビにて、国会で党議員に“注意”したことを明かした立憲民主党の野田佳彦代表。国会でヤジを飛ばしたのは立憲民主議員であることを認めた形で、当の本人も「礼節を守ります」と真摯に受け止めたという。
日本テレビ系『ミヤネ屋』など、地上波でも生中継された所信表明だが、カメラは主に高市首相を捉え続けたことでヤジ議員の声のみが放送に乗っていたが、ネット生配信された『ニコニコ動画』では“犯人らしき人物”が抜かれていた。
「ネット上では、高市首相に向かって何やら声をあげていた、水沼秀幸衆院議員と岡田悟衆院議員がヤジ議員として拡散されています。野田代表は名前こそ出しませんでしたが、おそらく彼らのを指しての注意だったと思われます」(政治ライター)
一躍、名前が広く知られた立憲議員2名のSNSには批判殺到。水沼議員はまもなくインスタグラムのコメント欄を閉鎖し、一方の岡田議員は25日にXを更新するも《アルフォート食べたい。》と、謝罪の言葉はなく通常運転。火に油を注ぐ形となり3000件以上のコメントがついている。
吉村知事にも噛みついた岡田議員
「岡田議員は2025年4月にも、財務金融委員会で“居眠り”姿をXで指摘されるも、意に介さない様子で《誰に怒られるのでしょうか?》と、煽るような投稿をしています。今回も、批判に対して“効いてない”とでもアピールしたかったのか」(前出・ライター)
さらには日本維新の会代表の吉村洋文大阪府知事が24日にXで投稿した、
【もうやめた方がいいよ。反対意見や批判はあるとしても、人の話はちゃんと聞こう。子供に見せれない。恥ずかしいよ】
との苦言にも、引用リポストして【見せれない→見せられない】と、逆に「ら」抜き言葉を指摘して噛みついた岡田議員。一連の投稿から、問題の“ヤジ議員”かどうかはさておき、国会でのヤジを悪びれていないのは確かだろう。
これに同調するように持論をポストしたのが、立憲・小西洋之参院議員。
【これぞ、議会政治であり、このヤジを放った議員は国民代表として称賛されるべきだと思います】
まるで高市首相をヤジった議員を誇りとするような物言い。さらに立憲の石川大我前参院議員も同じくXで、ヤジには【問題点を示す上で大きな役割】があるとして、
【代表が注意するとは、野党の役割を放棄してるとしか言えません】
前出の静岡第一テレビの記事を添付しては、ヤジ議員に注意した野田代表を逆に批判するかのような意見を述べた。立憲内における「ヤジ」に対する意見、考えの相違があり、むしろ推奨する議員もいることも露呈した。
「立憲はヤジ部隊が存在します」
そもそも水沼議員と岡田議員は「自らの意思でヤジを飛ばしたのか」との疑問も持たれている。というのも、
《1年生議員の自己判断より立憲の指示でヤジしたと思っている》 《新人議員があの場で、大声でヤジ出せるもんかね? 相当図太い精神なのか、上からの強い指示がなければ言えないな》
SNS上でも指摘があるように、2024年10月の衆議院議員選挙で初当選を果たしたばかりの両議員は、ようやく“若葉マーク”がとれたばかりの新人議員だ。ちなみに水沼議員は千葉県第4区で当選、岡田議員は兵庫県第7区で敗れるも、比例区で復活当選した経緯がある。
そんな一介の新人議員が、おいそれと高市首相にヤジれるはずもなく、党からの「指示ではないか」との疑いの声も向けられているわけだ。
エジプト出身の“物言うタレント”フィフィも、Xでヤジ騒動に触れては、
【内部事情に詳しい方から「立憲はヤジ部隊が存在します。一年生から三年生ぐらいの国会議員がやらされてる、ヤジの内容も決まっていますよ。」と親切にご連絡を頂きました。これは本当でしょうか?】
新人議員によって組織される「ヤジ部隊」の存在を疑うも、立憲民主・米山隆一衆院議員が即座に反応。これを引用した上で、
【全く事実ではありません。因みに私は多くの方々からヤジ将軍と認知されていると思いますが、完全にその場の即興です。】
党ぐるみでの「ヤジ」を否定している。
自民党の国対がヤジの仕方をレク
また10月27日、ビジネス系YouTubeチャンネル『ReHacQ』に出演した立憲民主の中谷一馬衆院議員。かつては“議会の華”とも称されたヤジ、また「ヤジ部隊」といった組織的行為について、
「一期生に自民党の国対がヤジの仕方をレクして、ヤジを飛ばした人が褒められたみたいな文化もあったと聞いていたので、そういう社会はあったと思います」
かつて2005年の小泉純一郎前首相のもとで当選した「小泉チルドレン」時代、むしろヤジが文化化していたのは自民党の方と証言する。そして今回のヤジについて、立憲民主の国会対策委員長代理を務める青柳陽一郎衆院議員は、
「一回生だとか、中堅、若手に対して“こういうふうにヤジれ”とか、“今日はヤジやるな”とか、そういう指示を出しているとかありませんので。(略、水沼議員のヤジも)別に教えられてとか、指示があってやってるわけじゃ全然ないと思う」
党から議員に対してヤジを指示することはなく、あくまでも水沼議員自らが率先して動いたとの見解を示し、答えとした。
このまま“迷宮入り”になりそうなヤジ議員騒動だが、国会議員として、水沼議員と岡田議員から国民に真相が語られる日は来るのだろうか。

【速報】安倍元総理銃撃事件初公判 傍聴券の倍率は「22.7倍」 727人が奈良公園に列

10月28日午後2時から行われる安倍晋三元総理銃撃事件の山上徹也被告の初公判。

傍聴抽選券の交付が午前8時半から奈良公園で行われましたが、奈良地裁によりますと、727人が列に並んだということです。

一般傍聴席は32席設けられていて、倍率は実に「22.7倍」となっています。

▽殺人など5つの罪で起訴

山上徹也被告(45)は、▽殺人▽銃刀法違反▽火薬類取締法違反▽武器等製造法違反▽建造物損壊の5つの罪に問われています。

被告側はこのうち、▽2022年7月に安倍氏を銃撃して殺害した殺人の罪▽火薬を製造した火薬類取締法違反の罪▽銃撃前日に、旧統一教会の施設が入るビルに向かって“試し撃ち”をした建造物損壊の罪については起訴内容を認めるとみられます。

一方、武器等製造法違反や銃刀法違反の罪については、一部で罪の成立などを争うとみられています。

また、母親の旧統一教会への信仰・献金が家庭に与えた影響などを指摘し、情状酌量を求める構えです。

▽被告の母親も証人出廷へ妻・安倍昭恵さんも被害者参加制度を利用し…

公判は予備日を除くと、28日の初公判を含め計16回。関係者によると、山上被告の母親も、弁護側請求の証人として出廷する予定です。

また、被害者参加制度に基づき、安倍元総理の妻・昭恵さんの心情が記された書面も読み上げられる予定だということです。

判決は、来年1月21日に言い渡されます。

閑静な民家にトカレフ 暴力団の武器倉庫「知るのは信頼ある幹部のみ」 規制強まり潜在化

今年に入り、暴力団関係者が自宅などに隠し持っていた拳銃を、警視庁が相次いで摘発している。暴力団に関係する拳銃の押収量は近年、銃器の規制強化などを背景に低調に推移しているが、捜査当局内部では、摘発は「氷山の一角」で、暴力団が拳銃の管理を厳格化するなどして隠し持っているとの見方も根強い。警察は突発的に抗争や内紛に使用される可能性にも警戒している。
住宅に眠る拳銃、組織の武器保管担当か
茨城県坂東市の田園地帯に立つ、一見変哲のない2階建て住宅。9月30日朝、警視庁薬物銃器対策課の捜査員は、住人が薬物事件に関与しているとの情報を基に家宅捜索に入った。
屋内の収納から出てきたのは、米国製のE28型自動装填(そうてん)式拳銃や、中国製の自動拳銃「トカレフ」。それらの拳銃に適合する実弾計34発も押収した。このうち、米国製の拳銃は発砲が可能で、殺傷能力があると確認された。トカレフは一部が故障していたが「久しぶりの押収」(捜査関係者)という。
「保管していたものですが、すべて私の所有物に間違いありません」
銃刀法違反で現行犯逮捕された住人は、北関東を中心に縄張りを持つ住吉会系3次団体の組長代行の男(62)。押収品は「護身用」と説明したが、捜査関係者は、男が組織の「武器」の保管担当だったとみている。
警視庁は今年に入り、9月末までに暴力団の関係先から計7丁の拳銃を押収。前年は「ゼロ」だったが情報提供などで摘発が相次いでおり、暴力団と拳銃の強固な結びつきが改めて浮き彫りとなっている。
「加重所持罪」「発射罪」銃刀法改正で厳罰化
警察庁の統計によると、昨年、全国で押収された暴力団関連の拳銃は24丁。平成26年には104丁が押収されており、10年間で4分の1程度に減じている。20年前の16年は、300丁以上の押収があった。

減少の理由として、銃器に対する規制や罰則の強化が挙げられる。銃刀法は平成5年の改正で、拳銃と適合する実弾を共に携帯する「加重所持罪」が設けられ、7年には公共の場所などで発射した場合の「発射罪」が新設されるなど厳罰化が進められてきた。
拳銃の所持を巡り、指定暴力団の最高幹部に責任が波及したケースも影響しているとみられる。
17年には、指定暴力団山口組の篠田健市(通称・司忍)6代目組長がボディーガードに拳銃を持たせた銃刀法違反(共同所持)の罪で懲役6年の実刑判決を受けた。
暴力団に詳しい関係者は「抗争が起きても銃器を使わずに、別の方法で(相手の組を)脅す場合もある」としており、拳銃の使用については組織内部にも一定の警戒感が広がったとみられる。
「一般の組員は武器の倉庫を知らない」
ただ、暴力団が〝戦争の道具〟と呼び、かつて大量に押収されてきた拳銃の管理状況などの実態は不明で、規制強化で監視が強まる中、取引がより潜在化している可能性が指摘されている。
拳銃の摘発では、暴力団内部や近い人物からの情報提供が重要な手がかりになることがあるが、捜査幹部は「武器の担当は組長に信頼がおかれた幹部のみ。一般の組員は武器の倉庫を知らない」と説明。「巧妙に隠していて、表に上がってこないだけかもしれない」と警戒する。
拳銃の押収量が低調となる中で、過去には、いったん収束したかに見えた発砲事件が、再燃した年もあった。山口組が分裂した平成27年、暴力団関係者による発砲事件は8件だったが、翌28年は17件に跳ね上がった。
ある捜査関係者は、暴力団がらみの拳銃摘発の意義について、「実際に抗争が起きれば拳銃が用いられ、発砲事件は起きる。内紛や抗争への警戒は緩められない」と力説する。

深川警察署が相談記録ファイル1冊を紛失 相談者や関係者202人分の個人情報を含む115件分の記録

深川警察署で、相談内容を記録したファイル1冊を紛失していたことが分かりました。
202人分の個人情報が含まれるということです。
紛失したのは、警察への相談内容を記録した115件分の「警察安全相談受理カード」です。
警察によりますと、今月、過去に相談した人からの開示請求を受けて確認したところ、2020年3月31日から5月31日までのファイル1冊分がなくなっていることが分かりました。
相談者や関係者など202人分の個人情報が含まれています。
ファイルは相談室にある鍵付きのキャビネットに保管されていたということです。
警察によりますと、これまでに個人情報の悪用は確認されていません。

“統一教会”解決金計12億8900万円支払いへ…新たに元信者ら39人と調停成立

世界平和統一家庭連合、いわゆる“統一教会”の元信者らが申し立てた集団調停で、新たに39人に教団側が計12億円以上の解決金を支払うことで調停が成立しました。
いわゆる“統一教会”の高額献金をめぐっては、これまでに元信者ら約190人が計約59億円の損害賠償を求めて集団調停を申し立てていました。
一連の集団調停では、今月2日に3人と教団との間で初めて調停が成立しましたが、全国統一教会被害対策弁護団によりますと、27日、新たに39人について、教団側が解決金として計12億8900万円を支払うことで、調停が成立したということです。
39人は主に80代以上の高齢者で、弁護団は年齢などを踏まえて、優先的に交渉を進めてきたということです。
調停が成立した1人、献金など約6000万円を教団側に支払ったという80代の都内在住の女性は、「統一教会からは先祖の因縁が不幸となり返ってくる、息子たちの今後の生活不安が出てくるので、強く献金を請求され幾度も涙を流しました。今回、解決のご連絡をお受けし、 この日が本当に来た事を心静かに受け止めています」とコメントしています。
教団側は「弁護団より80歳以上の高齢な方あるいは重病の方等につき、緊急解決の要望があり、当法人としても、早期解決を図る方針へと方針を大きく転換することとし、和解が成立するに至りました」「今後も引き続き早期解決に取り組んで参ります」としています。
一方、弁護団は、新たに、元信者ら30人が教団に計約13億5600万円の賠償を求めて、追加で調停を申し立てたと明らかにしました。弁護団は「教団の解散命令が確定した場合、清算手続きが始まるので、その前にできるだけの解決をしたい」としています。

銀行本店の地下駐車場に子グマが侵入、獣医師が吹き矢で麻酔かけ捕獲…親グマの行方は不明

28日午前6時45分頃、盛岡市中央通の岩手銀行本店の地下駐車場に子グマ1頭が侵入したと、警備員から110番があった。現場は県庁や裁判所が立ち並ぶ官庁街。岩手県警などが駐車場の出入り口を封鎖し、約3時間半後に盛岡市動物公園の獣医師が吹き矢で麻酔をかけて捕獲したが、周辺は一時騒然となった。
県警によると、27日午後10時10分頃、銀行近くの中津川にかかる上ノ橋付近で「親子のクマが歩いている」と通行人らから複数の110番があった。駆けつけた警察官らが、川沿いの遊歩道付近を徘徊(はいかい)する親子とみられる2頭のクマを発見した。
2頭は近くの住宅の木に登って約1時間とどまった後、別々に走って逃げた。銀行の駐車場に入り込んだのは、このうちの1頭とみられ、親グマとみられるもう1頭の行方はわかっていない。
銀行は通常営業し、けが人もなかった。市教育委員会によると、周辺の小中学校計9校では、保護者に児童生徒の登校に付き添うよう求めた。市は広報車での注意喚起やパトロールを強化し、SNSでもクマに関する情報を発信した。
同市では9月以降、中心部でクマの出没が相次いでいる。23日にも今回の現場に近い中津川の河川敷などでクマ1頭が約4時間にわたって走り回り、住宅街に逃げ込んだ後、姿が見えなくなっていた。
銀行近くのバス停にいた飲食店経営の女性(71)は「最近はクマがよく出るので外を歩くのも怖い」と不安そうに話していた。

精神障害の労災請求、大幅増 職場環境原因多く、医療現場深刻

政府は28日、過労死・過労自殺の現状や国が進める防止対策をまとめた2025年版「過労死等防止対策白書」を閣議決定した。精神障害による労災請求件数が年々増加して10年度と比べ3倍以上となり、対人関係やパワハラなど「職場環境」に関する原因が急増。医療現場の精神障害による労災認定件数も増えており、深刻な状況が浮かんだ。
高市首相は「心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和検討」を厚生労働相に指示しており、政府がどのような姿勢で臨むのかが問われそうだ。
白書によると、精神障害による労災請求件数は10年度の1181件から24年度は3780件に大きく増加。請求に対する決定件数(不支給を含む)を原因別で見ると、22年度に749件だった「対人関係」が、24年度は倍以上の1519件になった。パワハラ、セクハラも増加した。
認定件数を業種別で3年ごとに平均すると、「医療」は11~13年度に14.7件だったのが20~22年度では46.7件。医療に続き「建設業」、「自動車運転従事者」が多かった。

【きょう公判開始】山上徹也被告の家族に旧統一教会は何をした? “高学歴一家”の転落と安倍元首相暗殺の背景

10月28日、安倍元首相銃撃事件の公判が始まる。事件を起こした山上徹也被告が、旧統一教会に抱いていた「恨み」とは。山上被告の家庭に 何が起きたのか をレポートする。
◆◆◆
山上家の悲劇
遠く近くに鳥が鳴き、道端からは虫の声。車1台がようやく通れるほど狭い路地。その両側に新旧の住宅が密集する。
山上徹也が少年期を過ごした奈良市の実家周辺は、周囲に田畑や林が点在する古い住宅街だ。中学時代の同級生は、山上は古く大きな家に住む、物静かな子だったと振り返る。
「あまり友だちも多くなく、小さい妹さんの世話をよくしていた覚えがある。中学時代はバスケットボール部だったので、家の前でよくドリブルの練習をしていた」
山上は1980年、年子の兄がいる次男として生まれた。目立つタイプではなかったが、勉強ができるという点で記憶に残る子だった。
山上家は高学歴の家庭だ。父は京都大学工学部卒、母は大阪市立大学生活科学部の出身。父の兄は弁護士で母の妹は医師。父は結婚を機に、妻の父が創業したトンネル掘削を得意とする建設会社に勤務していた。平穏に成長して行けば、山上も進学コースを歩むはずだったろう。
だが現実にはいくつもの不運が重なった。山上家を襲った最初の悲劇は父の自殺だ。山上は4歳だった。
父の兄である弁護士の伯父は、山上の父についてこう語る。
「弟が死ぬ直前の1、2年はトンネルを掘るためにずっと山の中で生活するハードな日々でした。裏金の飛び交うゼネコン業界は研究者気質のあいつには耐え難かった。過労で鬱とアルコール中毒の混ざった状況でね。なくなる数カ月前、様子を見に行ったら、完全に寝たきりでした」
東大阪のビルの屋上から身を投げたのは1984年12月。伯父は山上の母親とともに警察の事情聴取を受けたが、その際、彼女のお腹が大きくなっていたことをよく覚えている。当時の母親を知る人物が言う。
「彼女は『お腹の子も一緒に一家心中まで考えていた』と話していた。藁にもすがる思いやったんでしょう。そんな彼女に声をかけたのが、統一教会だったんです」
3年間で合計6000万円の献金
年が明け、徹也の妹が生まれた。伯父は1985年4月から、父がいなくなった山上家に対し毎月5万円、生活費を支援したという。だが、山上家の生活は苦しかった。徹也の母は、夫の死の数年後に統一教会への献金を始めていたからだ。
1991年に入会すると多額の献金を始めた。伯父が言う。
「入会とほぼ同時に2000万円、その後すぐに3000万円。さらに3年後くらいに現金で1000万円。合計で6000万円。これらの原資は弟(徹也の父)の保険金、命の代償ですよね」
徹也の母と同じ奈良教会に所属していた60代男性はこう話す。
「当時奈良県には250人ほどの信者がいましたが、彼女の献金額はトップクラスでした。1000万円くらい献金すると女性信者が褒めそやすんです。『あの方は素晴らしい』『あの方は3000万円よ』。それで自分も頑張ろうとなるわけです」
各地域の教会には献金を集める専属の人がいたと男性が続ける。
「『親衛隊』と言って女性が担当していました。献金は表向き強制ではなく本人の意思。でも、どれくらいの資産をもっているかは全部書き出させる。家族は何人、家は持ち家か、銀行預金はいくらか。その上で弱みにつけ込む。彼女の場合、それは長男のAちゃんでした」
妹が生まれてまだ1歳にもならない頃、山上の兄に小児がんが見つかった。開頭手術をした後、抗がん剤治療をした。その副作用で右目を失明する。1986年のことだ。
伯父によれば、建設会社を営む家族の精神的支柱だった実母の死も追い打ちをかけたという。
徹也の母は、先祖の霊を慰めるという「先祖解怨式」にも繰り返し参加。参加料は1回70万円。4回ほど通っていた形跡がある。また、韓国・清平の本部に長男を連れて訪れ、教義や祈祷を受ける40日間修練にも参加した。
呆れた伯父は生活費の打ち切りを通告。生活は一層厳しくなった。
〈 この続き では、山上徹也被告が事件を起こすまでの経緯を伝えています〉
※本記事の全文(約1万8000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(森健、本誌取材班「 安倍元首相暗殺と統一教会 深層レポート 」)。この他にも「文藝春秋PLUS」は旧統一教会問題に関する記事を多数掲載しています。

鈴木エイト「 勝共連合会長が安倍元首相とのビデオ出演交渉の裏話を激白《映像あり》 」

梶栗正義「 統一教会と自民党 すべてを知る男の告白 」

宮崎哲弥×島田裕巳×仲正昌樹×小川寛大「 統一教会と創価学会 」

小川久仁子「 小泉進次郎が握り潰した『山際衆院議員の旧統一教会汚染』告発 」

鈴木エイト「 2021年衆院選、旧統一教会に支援された自民候補者実名リスト 」
(森 健,本誌取材班/文藝春秋 2022年9月号)