安倍ー菅と継承された腐敗政権。広島の「不正選挙」を許すな<弁護士・元東京地検特捜部検事 郷原信郎>

◆官僚のモラル崩壊

―― 菅政権の不祥事が止まりません。週刊文春の報道により、放送事業会社「東北新社」に勤務する菅首相の長男・菅正剛氏たちから複数の総務官僚幹部が接待を受けていたことが明らかになりました。郷原さんはコンプライアンス問題の専門家で、かつて総務省の「顧問・コンプライアンス室長」を務めていましたが、この不祥事の原因はどこにあると見ていますか。

郷原信郎氏(以下、郷原) 官僚のモラルが崩壊してしまったことが大きいと思います。中央省庁の中核を担うはずの総務省幹部たちが利害関係者から度重なる高額接待を受け、贈答品やタクシーチケットまで受領していた。ここには官僚としてのモラルは微塵も感じられません。多くの国民が呆れ返っていると思います。

しかも、彼らは自らの責任を認めようとせず、虚偽答弁まで行っていました。菅正剛氏との会食を報じられた情報流通行政局長の秋本芳徳氏は、2月17日の衆議院予算委員会で、会食の際に同局が所管する放送業界の話題が出たかどうか質問され、「記憶にない」と答弁しました。これを受けて、文春が会食時のやりとりとされる音声データを公開し、所管業務が話題になっていたことを突きつけましたが、秋本氏はその音声が「自分の声だ」と認めながらも、放送業界に絡む話題については「記憶にない」と繰り返しました。

文春の記事を見る限り、放送業界の話は秋本氏と菅正剛氏たちの会食のメインテーマだったはずです。その会合から2か月ほどしか経っていないのに、記憶がなくなるはずがありません。「記憶にない」は明らかに虚偽答弁です。

ここまで官僚のモラルが低下してしまった原因は、8年近く続いた安倍前政権にあります。安倍氏は「桜を見る会」前夜祭をめぐる問題で虚偽答弁を続け、検察の捜査によってその虚偽が明らかになったあとも、国会で説明にもならない説明を繰り返すだけでした。彼はいまだに合理的な説明をしていません。

行政の長たる総理大臣がこういう姿勢では、配下の官僚たちに「自分にとって都合の悪いことでもしっかり答弁しろ」と求めても、本当のことを言うはずがありません。その結果、官僚のモラルは完全に崩壊してしまったのです。

現在の菅政権は安倍政権の継承を掲げて成立しました。そのため、総理大臣や官僚たちの姿勢も、安倍政権からそのまま引き継がれています。安倍政権が長期化したことによって、日本政府全体が虚偽答弁に汚染されてしまったということです。

◆なぜ旧郵政省出身者ばかりだったのか

―― 接待を受けていた総務省幹部たちは、旧郵政省出身者ばかりでした。なぜ旧郵政省に不祥事が集中したのでしょうか。

郷原 それには郵政省の歴史的背景が関係しています。郵政省は2001年の省庁再編によって自治省・総務庁と統合され、総務省になりましたが、もとをたどれば郵政事業を取り扱う官庁で、平たく言えば郵便屋さんです。郵政省の本庁舎は当初、他の省庁が集まる霞が関ではなく、現在の港区麻布台にありました。そのため、中央省庁の中でも格下と見られ、「三流官庁」「四流官庁」と揶揄されていました。

しかし、のちに総理大臣までのぼりつめた田中角栄氏が郵政大臣に就任したことで、状況が大きく変化します。田中氏の政治力を背景に、郵政省は地位を向上させていったのです。

つまり、郵政省には政治にすり寄り、政治権力に依存する体質があるということです。

彼らの姿勢は総務省に統合されたあとも変わりませんでした。私はかつて「日本郵政ガバナンス検証委員会」の委員長を務め、西川善文日本郵政社長時代に起きた「かんぽの宿」問題などの解明にあたったことがあります。一連の不祥事の原因は、政治情勢が激変する中で、日本郵政が郵政民営化を後戻りさせないという政治的意図から拙速に業務執行に取り組んだことにありました。彼らはそれほど政治の意向を忖度していたのです。

これは日本郵政だけでなく、それを監督している旧郵政省系の部局にも言えることです。私は総務省の顧問・コンプライアンス室長を務めていたころ、今回処分された情報流通行政局長の秋本芳徳氏や内閣広報官の山田真貴子氏をはじめ、旧郵政官僚たちの振る舞いを目にする機会がありましたが、彼らは総じて権力に従順でした。民主党政権時代でもそうだったわけですから、安倍一強時代になって彼らがどれほど権力にすり寄ったか、容易に想像できます。

また、今回の接待問題の背景として、旧郵政官僚の権限と能力のアンバランスさという点も見落とせません。デジタル化・IT化の流れの中で旧郵政省の担当分野は急速に拡大し、社会的重要性も高まっていきました。しかし、「三流官庁」「四流官庁」と揶揄された旧郵政官僚たちには、それに見合った能力が欠如していました。それを補うため、彼らはより一層政治権力にすり寄るようになり、ついには総理の息子である菅正剛氏との癒着にまで発展したということでしょう。

◆顧問・コンプライアンス室長の重要性

―― 総務官僚幹部の接待問題などを受けて、菅首相は再発防止のために国家公務員倫理法を徹底すると述べています。

郷原 それでは再発防止につながりません。国家公務員倫理法では利害関係者から供応接待を受けることなどが明確に禁止されており、国家公務員であれば誰でもそのことを知っています。しかし、それが歯止めになっていないからこそ、今回の不祥事が起こったのです。

先ほど述べたように、この問題の背景には、官僚が政治にすり寄り、政治に迎合していく構図があります。こうした事態を防ぐには、政治と官僚の間に「緩衝材」を入れるしかありません。

そこで重要になるのが顧問・コンプライアンス室長なのです。大臣から直接任命された顧問・コンプライアンス室長が、政治からも官僚からも独立した監視機能を果たすことで、初めてコンプライアンス問題の発生やその深刻化を防止することができるのです。

私が総務省顧問・コンプライアンス室長のころ、ICT(情報通信技術)に関する不適切な予算執行が発覚しました。民主党政権発足直後の第2次補正予算で、NPO法人などに対して60億円もの補助金交付を行ったという案件でした。

私たちはすぐに調査を開始し、弁護士やICTシステム専門家、公認会計士などの外部有識者で構成する「ICT補助金等調査・検討プロジェクトチーム」を立ち上げました。そして、不適切な予算執行の実態・問題を解明し、概算払いされていた補助金を大幅に減額しました。その後、調査結果に基づき、制度・運営に関する改善や職員の意識改革を提言しました。

この問題の原因も、総務官僚たちが政権の意向を過剰に忖度し、形だけの審査で杜撰極まりない補助金の採択をしてしまったことにありました。当時の民主党政権に不適切な予算を執行する意図はなかったと思いますが、総選挙で圧勝した民主党政権による肝いりの補助金事業だったため、総務省としては異を唱えることができなかったのでしょう。

現在でも多くの中央省庁にコンプライアンス室が設置されており、外部弁護士が室長に委嘱されているところもあります。しかし、そのほとんどが単なる内部通報の窓口としてしか機能していません。コンプライアンス機能をうまく働かせるには、大臣が直接、顧問・コンプライアンス室長を任命し、それ相応の権限を持たせなければなりません。

コンプライアンス室は専任として取り組むほどの仕事量がなく、非常勤にすると単なる通報窓口になってしまうという難しい問題もありますが、いかにコンプライアンス室の役割を拡大していけるかが不祥事を食い止める鍵になります。

◆贈収賄罪は成り立つか

―― 総務官僚たちの接待問題が刑事事件にまで発展する可能性はありますか。

郷原 刑法の定める贈収賄は、請託・便宜供与のない単純収賄も処罰の対象としています。そのため、接待が職務と関連性があり、社交的な儀礼の範囲内と言えない限り、賄賂と認められ、贈収賄罪が成立します。

それでは今回の問題はどうか。まず職務との関連性を見ると、菅正剛氏の勤める東北新社は総務省の許認可を受けて衛星放送を運営する会社で、彼らは会食の場で明らかに総務省の電波行政に関連する話をしていました。そのため、職務との関連性を否定することは難しいでしょう。

次に今回の接待が社交的な儀礼の範囲内かどうかを見ると、これを判断する上で一つの基準になるのは、接待額が国家公務員倫理法で報告を義務づけられている5000円を超えているかどうかです。総務官僚たちの接待総額は5000円を優に超えているので、とうてい社交的な儀礼の範囲内とは言えません。これらを踏まえれば、贈収賄罪の成立は否定できないと思います。

もっとも、贈収賄罪の成立要件を満たしているからといって、検察が実際に起訴に踏み切るかどうかは別の話です。過去の例からすると、20万円、30万円という金額では検察の起訴基準になりません。また、週刊文春の取材で詳細が明らかになっているのは昨年12月10日の接待だけで、他の接待の賄賂性は不明です。数万円の接待1回で贈収賄罪に問われた例は、これまで聞いたことがありません。

しかし、週刊文春の記事に基づいて告発がなされれば、検察捜査では過去の接待も問題にされるでしょう。それによって賄賂の金額が増える可能性もあります。仮に検察が不起訴処分にしても、国民から怒りの声が上がり、検察審査会への申し立てが行われるはずです。そうなれば、黒川弘務元検事長の賭け麻雀賭博事件のように起訴相当の議決が出ることは十分考えられます。

現在の世論の状況を見ると、この問題を裁判にかけることが良いかどうかはともかく、検察が不起訴処分にすることは受け入れられないと思います。検察が不起訴処分にすれば、国民の怒りは検察にも向かうはずです。安倍政権時代と同じように、この問題でも検察の対応が問われているのです。

◆広島県民をなめるな

―― 安倍政権に続き菅政権でも不祥事が頻発し、政治の信頼は地に堕ちています。どうすればこうした状況を変えることができますか。

郷原 とにかく菅政権を倒すしかありません。この政権は完全に腐りきっており、自浄作用が全く働いていません。だから常識では考えられないようなことが次々に起こるのです。

特に私が腹立たしいのは、参議院広島選挙区の再選挙です。自民党は経産省課長補佐だった西田秀範氏を公認候補として擁立し、選対本部を発足させました。自民党県連が開いた会合には、国会議員や首長、地方議員など70人が集まったと報じられています。マスコミ関係者によると、ここには河井克行・案里夫妻から多額の現金を受けとった地方政治家が多数参加し、再選挙に向けてのろしを上げていたそうです。

しかし、彼らは本来、選挙に関わる資格のない人たちです。彼らの多くは河井夫妻から現金を授受し、しかもそれが買収の金であったことを認めています。選挙買収事件では通常、買収者と被買収者が同時に刑事処分されます。現金を配った案里氏が公選法違反によって有罪になったのだから、現金を受けとった彼らも本当ならば刑事処分されなければならないのです。

公選法違反で起訴され、少なくとも罰金刑を受ければ、公民権が停止されます。公民権停止になれば、一定期間選挙権を失い、選挙運動に関われません。しかし、検察が本来行うべき被買収者の刑事処分に手をつけていないので、それを良いことに、彼らは堂々と選挙に関わっているわけです。

この選挙はもともと、案里氏の有罪が確定したことに伴って行われる「やり直しの選挙」だったはずです。その選挙に、案里氏の選挙で選挙違反を犯した人たちが関わるなど、いったい何を考えているのか。これではとても公正な選挙とは言えません。それこそ「不正選挙」です。選挙運動を行う資格のない者が選挙に関わっていること自体が「不正」ですし、そのような者が関われば、また「不正」が繰り返されるのは必至です。

これほど広島県民をなめた話があるでしょうか。いや、広島県民だけでなく、国民を馬鹿にしているとしか言いようがない。こんなやり方を許してよいのかと、私は怒りが抑えられません。

こうした状況を変えるには、政権交代を実現する以外に方法はありません。それが難しいなら、石破茂氏のように安倍政権に批判だった自民党議員が自民党を割るしかない。それによって政治を一度リセットするしかない。私はそう考えています。

<聞き手・構成/中村友哉 記事初出/月刊日本2021年4月号より>

【月刊日本】

げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。

日米であまりにも異なる航空機の感染予防対策

◆アメリカの航空会社は全てを公開

ドアを閉めれば“密室”となってしまう航空機は、どうしても新型コロナウィルスの感染に対して懸念を持たれてしまう。だが、昨春以降、各エアラインは航空機にはHEPAフィルターを装備し、2~3分で換気のできることなど、感染症予防対策に力を入れている。だが、日本とアメリカのエアラインの取り組みを見比べてみると、大きな違いがあることがわかる。

アメリカ3大エアラインの アメリカン航空、デルタ航空、ユナイテッド航空(アルファベット順)は、感染症対策の取り組みにキャッチコピーを付けて分かり易く訴えており、どのメーカーのどの除菌液を使用しているか固有名詞を入れて宣伝する。対策の情報をUp Dateするアプリなども開発されている。更には、どの医療機関ないし医科大学のアドバイスを受けているかまでの詳細を告知している。

特にデルタ航空では、2020年6月には社内組織にグローバルクリーンネス部門を立ち上げ「クリーンアンバサダー」を指名する念の入れようである。このアンバサダーは、メイヨークリニック、エモリー、およびリソルのメーカーであるRBのデルタ航空のパートナーからの意見を基に開発された厳格な品質保証プログラムを監督している。各方面のスペシャリストの意見を元に、徹底したコロナ対策が取られているのである。

◆なぜか回答を控える日本の航空会社

では、たいして日系の航空会社はどうかというと、ANAが「ANA Care Promise」と伝えている。JALは「安全・安心な空の旅をお届けする」と表記するがアメリカのエアラインに比べインパクトは弱い。これだけでは、どのような感染症予防対策をしているのかわかりにくく、利用者側に立って見ればどちらがより高い訴求力を持つかは一目瞭然である。

例えば、除菌に使われる消毒液1つ取っても、その固有名詞が出ているのはPeach Aviationのみ。ホームページにおいて「A2Care」という商品を告知するのが日本では唯一である。この商品、あまり知られているとは思えず、調べてみた。横浜と金沢に本社を持つ「株式会社 ADI.G」というメーカーが製造し、ANAグループの「全日空商事」で扱っている。使用するエアラインはPeach Aviationの他に、ANAとソラシドエア、スターフライヤーの表記がある。だが、Peach Aviation以外はANAでさえ何の告知もしていないことに違和感を覚える。

そこで日系エアライン各社に使用している薬剤について取材した。JAL広報部は、使用する薬剤などが変更されることも多いと前置きし、「会社として回答は控えさせて頂きたい」とのことだった。ジェットスタージャパン広報部は、同様に「今後指定の消毒液が変わる可能性があることから具体的名称の表示は避けて頂きたい」と回答した。スプリングジャパンのマーケティング推進部からは「アルコール消毒等の具体名を出さないのは社内規定によるものです」と回答があった。

◆使用する消毒液の商品名をホームページに出すと法律に抵触する!?

どうにも歯切れの悪い回答に思えるのだが、じつは医薬品の表示については、厚生労働省が管轄する医薬品医療機器等法(通称:薬機法で旧称:薬事法)が絡んでくる。同法内に規制される「医薬品等の広告規制について」を読むと、虚偽や誇大広告に対する規制のあることがわかる。

これについて東京都福祉保健局の健康安全部薬務課監視指導担当に取材すると、「エアラインのホームページに告知を出すこと自体に問題はないが、内容によっては規制を受けることがある」と回答を得た。つまり、商品名を出して薬効を謳うことにより、薬機法に抵触する可能性が少なからずあるのである。日系の航空会社が使用している薬品名を公表しないのは、こうした事情が絡んでいるからなのかもしれない。

◆船会社は全てを公開しているのだが……

だが、同じ交通機関でも船会社の取り組みは異なる。株式会社商船三井のグループ会社である「株式会社フェリーさんふらわあ」は国内3航路を持つ貨客輸送のフェリー会社だ。この会社の感染症対策は徹底している。

ダイキン株式会社製の空気清浄機「パワフル光クリエール」を設置し、船内の抗菌・抗ウイルス施工に株式会社YOOコーポレーションの無光触媒「エコキメラ」を使用。そして、清掃除菌作業に株式会社UNISonsの技術を利用している。このUNISons社は、昨年の感染者が多数出たダイヤモンドプリンセス号の感染対策と消毒を行った専門集団でもある。

「フェリーさんふらわあ」広報担当の森氏によると「薬機法を確認したうえで製造、サービス提供会社にロゴも含めたホームページへの掲載許可を取っています」とのことである。

日系エアラインの見せ方が悪いという訳ではない。ただ、利用者はコロナ禍が長くなれば感染症対策の知識は増えていく訳であり、それに応える企業姿勢が大事なのではいだろうか。実際に機内でどのような除菌液を使用して、どのように除菌、感染症予防対策をしているかを事前に告知をすることで、より安心、安全に航空機で運航できるのではないだろうか。<文/北島幸司>

【北島幸司】
航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。YouTube チャンネル「そらオヤジ組」のほか、ブログ「あびあんうぃんぐ」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。
Facebook avian.wing twitter@avianjune instagram@kitajimaavianwing

留学中にわいせつ、被告に有罪判決 カナダで男児に 千葉地裁

カナダ留学中に同国籍の男児にわいせつ行為をしたなどとして、強制わいせつ罪などに問われた元英会話講師の中上慶之輔被告(29)に、千葉地裁(谷口吉伸裁判官)は22日、懲役3年、保護観察付き執行猶予4年(求刑・懲役4年)の判決を言い渡した。
判決などによると、中上被告は2017年10月、カナダ西部ブリティッシュコロンビア州で、男児(当時9歳)の下半身を触るなどのわいせつな行為をし、動画を撮影するなどした。千葉県警が現地警察当局に協力を求め証拠などを集め、刑法の国外犯規定で摘発した。【秋丸生帆】

「第3子に1000万円支給を」高所得者が子育て支援から外される”罰ゲーム”はなぜ続くのか

現在の児童手当は、中学校卒業までの子ども1人につき原則月1万円(第1子・第2子は3歳未満、第3子以後は小学校卒業まで月1万5000円)が支給されます。
ただし所得制限があり、「夫婦のうち高い方の年収」が960万円程度を上回る世帯には児童手当は支給されず、代わりに「特例給付」として年齢・人数にかかわらず子ども1人につき月5000円が支給されています。
ところが、2022年10月の支給分から、「夫婦のうち高い方の年収」が1200万円程度を上回る世帯には、この「特例給付」を廃止することが閣議決定されました。
待機児童解消に向け、2021年度から2024年度までの4年間で約14万人分の保育の受け皿を整備することを目指していることから、そのために必要な安定的な財源の確保策において、今回この「特例給付」を廃止し財源にする見込みのようです。
※実際には所得額で判定されますが、サラリーマン世帯が多いため、わかりやすく年収ベースで紹介しています。所得額は家族構成やその他の所得区分の有無、所得控除等で変わります。
富裕層や高所得層の間で、この改正案がとにかく大ブーイングとなっているのですが、私も同感です。
ではなぜ大ブーイングかというと、「手当てがもらえないから」などという矮小な発想からではありません。彼らはその程度の金額で一喜一憂するほど金銭的に困っているわけではありません。
そうではなく、改正の論拠に論理性がないこと、優先順位の不透明さ、説得力のなさ、思慮の浅さが透けて見える議論に異を唱えているのです。もっとはっきり言うと、「もうちょっとまともに考えられないの?」というわけです。
そもそも子育て世帯を支援する制度は非常に充実しつつあり、そのおかげで夫婦共働きが実現しているという側面があります。
そしてその結果として高所得になったという人や家庭もあるはずで、政府は良い仕事をしていると思います。いろいろ課題はありますが、その点は肯定的に評価します。
そして高所得者は、所得税、住民税、社会保険料をふんだんに払っています。特に所得税と社会保険料は収入に連動するため、その貢献度は大きいと言えるでしょう。その一方で高所得世帯は、現状でも子育て関連ではほぼすべての制度で所得制限に引っかかり、補助金・助成金などは対象外です(そういえばわが家も以前、長男の保育料が月7万円、次男の保育料が2人目半額で3万5000円で月10万円を払っていた時期がありましたが、児童手当は二人で月3万円ではなく1万円でした)。
そもそも富の再分配機能としては、彼らは納税した時点ですでに貢献しているにもかかわらず、これでは追加で罰ゲームを与えられているようなものでしょう。
民間ではたくさんお金を払えばより高付加価値なサービスが受けられるのが一般的ですが、行政サービスはむしろ逆で、納税すればするほど冷遇される状況です。
「高所得者は余裕があるからいいだろう」などという発想があるとしても、それは子育て関連ではなく別の分野に適用すればいいだけでしょう。本気で少子化対策を考えているなら、出産・子育てへのモチベーションを下げる施策に何の意味があるのかと疑問に思います。
「もらえるものがもらえなくなる」という不満からではなく、わざわざここをターゲットにして小銭を浮かせて不評を買うくらいなら、「ほかにもっと削れるところがあるだろう」というのが私の周囲の共通した意見です。
それに、片方が年収1200万円なら支給停止となるのに、夫婦ともに年収1000万で世帯年収2000万あっても停止とならないというチグハグ感。これが制度の理念にマッチしているのか非常に疑問です。
おそらく「夫が外でフルタイムで働き、妻はパート」といういまだ昭和の固定観念を引きずる人たちが抱く家庭観に基づいているのでしょう。
さらに、「高所得者から税金を取る」「高所得者の優遇をやめる」のは庶民からの反発が少なくスムーズに採用できるだろうという姑息(こそく)な発想を感じるのは私だけでしょうか。
高所得者は納税という点ですでに義務を果たしているのだから、そこで終わりにしてあげて、本気で少子化対策を考えるなら子育て環境こそ平等にしてあげればいいと思います。そもそも子に罪はないのに、たまたま生まれてきた親の収入の影響を、政府が余計に大きくしてどうするのか、とも思います。
そういえば消費税が10%になる際、これまでの高齢者中心から、子育て世代にも拡大する財源にするという名目で増税されました。
新たに加わった消費税の使途は、
1.幼児教育・保育の無償化 2.待機児童の解消 3.高等教育の無償化
などで、ここに「待機児童の解消」も含まれています。
ならば公約通り、消費税できっちり予算確保しろよ、と言いたくなります。マスコミはこういうところを指摘してほしいものですが、JOC元会長の女性差別発言がどうこうなどと、ゴシップにしか目が行かないようです。もはや現代のメディアには、政策のチェック機能を求めるのはムリなのかもしれません。
平成30年度の合計特殊出生率は1.42%ですが、夫婦の完結出生児数(最終的な出生子ども数の平均値)は、1.94人。
また、未婚者の平均希望子ども数(男性1.91人、女性2.02人)、夫婦の平均理想子ども数(理想子ども数2.32人、予定子ども数2.01人)ともに2人前後という調査結果が出ています。
ということは、多くの夫婦は、2人程度は子を持つということなので、単純化すれば「とりあえず結婚さえすれば出生率は上がる」可能性を示しています(もちろん、子どもを持たない夫婦、子は一人だけの夫婦も増えていますが、一般的にという意味で)。
なので、少子化対策の1点目は、やはり結婚を促すということになるでしょう。
独身者への調査では、いずれは結婚しようと考える未婚者の割合は、男性85.7%(前回86.3%)、女性89.3%(同89.4%)で、高い水準にあると言えます。
つまり、積極的に独身を選ぶ人は少数派で、環境さえ整えば結婚へ促すことはできるということを示しています。
むろん、「結婚という圧力をかけるのか」「独身者の肩身が狭くなる」「個人の自由な生き方を損なうのか」「差別だ、人権侵害だ」などという声は出てくると思います。しかしキリスト教のような宗教的背景を持たず、「家」「血縁」を重視する日本人には養子や里親を普及させるのは容易ではありません。
つまり少子化対策には結婚が必要であり、結婚を促すには、やはり結婚は良いものだという空気を醸成する必要があるでしょう。同時に、婚活事業者への支援を手厚くする方法もあるでしょう(実際、補助金が出る自治体も数多くあります)。
2点目は、経済的インセンティブです。
たとえば、3人目には1000万円を給付するという方法です。
ほとんどの夫婦は何もしなくても2人くらいは産むものの、その先にある壁が第3子。
しかし200万や300万のような小さい金額ではさほどモチベーションにはならないし、無償化も負担がないというだけで、やはりおトク感を実感しにくい。
しかし1000万円はインパクトがあります。多くの人は1年後の110万円よりも目先の100万円に飛びつくと言われる通り、目先に大きなニンジンをぶら下げるのは効果ありそうです。
もちろんその1000万円欲しさに、養育の意志や能力に欠ける人までもが子を増やし、虐待やネグレクトの温床となる危険性はあるものの、1000万円ももらえるなら、「3人目は無理かなあ、2人で十分かなあ」と思っていた夫婦が、じゃあ第3子もいいかなと考える可能性は小さくないと思います。
第3子以上の出生は年間約16万人。第3子に1000万円を給付すると予算は1.6兆円かかります。とはいえ医療や年金がそれぞれ12兆円ずつかかっているのを考えても、決して不可能ではない数字に思えてきます。
それに、生まれた瞬間に1000万円も貯金が増えるのだから、たとえば幼児教育を無償化するほどの大盤振る舞いをしなくても、ちょっとくらい負担してもらってもいいでしょう。
医療費も12歳まで無償という自治体もありますが、これも1回あたり100~200円くらい負担してもらっても大きな違和感はないはずです。
そして子どもが増えれば、将来の納税者も増えることになります。少子化対策を本気で考えるのならば、高額納税者の児童手当を削るという発想をしている場合ではないのです。
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(米国公認会計士 午堂 登紀雄)

暴力団幹部宅を市が1900万円で買い取り、「利益供与にはあたらない」と説明

兵庫県尼崎市で昨年11月、特定抗争指定暴力団「山口組」系組織の幹部宅に銃弾が撃ち込まれた事件を受け、市は22日、幹部宅を1900万円で買い取ると発表した。暴力団に利用されるのを防ぐためで、今後、第三者に売却する。
市は「市民の安全を優先した。適正な価格で暴力団への利益供与にはあたらない」と説明している。
市によると、暴力団排除のために自治体が組事務所を買い取ったケースはあるが、事務所ではない建物を買い取るのは全国初という。幹部宅は同市南武庫之荘にある3階建てで、敷地面積72平方メートル。

花見「自粛or容認」で対応割れる自治体 対策講じて「推奨」の山梨には共感の声も

桜の開花宣言が各地で相次いでいる。政府は1都3県への緊急事態宣言を解除したが、2月26日の事務連絡で歓送迎会や飲酒につながる花見などの自粛を求めている。一方で、山梨県知事は十分な対策を前提に花見を推奨している。どちらの言い分に理があるのか──。ジャーナリストの山田稔氏がリポートする。 * * * 1都3県に出されていた緊急事態宣言は3月21日に解除されたが、その決定が明らかになった直後の週末、3月20日に桜の名所で知られる東京の井の頭恩賜公園を訪れた。 吉祥寺駅南口から井の頭公園に向かう路地は多くの人々が行き交う。人気の飲食店には行列ができ、テラス席でビールやワインを楽しむ人々も。公園に入ると案内図の横に立て看板が設置されていた。 「新型コロナウィルス感染症拡大防止のため宴会行為及びシートを広げての飲食を禁止します」 井の頭公園の花見客は「マナー良好」 公園内を歩くと「花見客の多い区域は立ち入りを制限します」の表示があり、ネットで一帯が閉鎖されている。桜の木が立ち並ぶ池の畔一帯が閉鎖されているため、池の前のベンチに座ることもできない。仕方なく欄干に腰かけて飲み物を飲んでいる人が多い。 人波は途切れることなく続いている。人出はそれなりにあるが、それでもコロナ禍前の一昨年あたりの花見シーズンに比べると、7、8割ぐらいだろうか。スムーズに歩くことができる。 桜は三分咲きといったところだが、開花した木の周りには人々が群がり、スマホやデジカメで撮影に夢中だ。 全般に人々のマナーは良好だ。マスクを着用し、歩きながら桜を眺めている。立ち入り禁止エリアに入り込んでいる人は皆無だし、酒盛りをしているグループも見当たらない。閉鎖されていない場所にあるベンチでランチを楽しむ人々を見ても、アルコールを飲んでいる人はひと握りだ。感染防止意識が高いのだろう。 井の頭公園は広く、競技場や野球場、動物園などさまざまな施設が併設されている。普段はマイカー利用者も多いが、今の時期は駐車場も閉鎖されている。 競技場近くの桜の木の下ではいくつかのグループがシートを広げてランチを楽しんでいたが、宴会という雰囲気には程遠い。総じて、静かな花見が行われている感じだった。池の周囲を歩いていたカップルの女性が、「シートを広げて騒ぐだけが花見じゃないものね。歩きながら花を愛でるのもいいかも」と話していたのが印象的だった。 「山梨県知事の花見発言にクギ」の加藤官房長官
桜の開花宣言が各地で相次いでいる。政府は1都3県への緊急事態宣言を解除したが、2月26日の事務連絡で歓送迎会や飲酒につながる花見などの自粛を求めている。一方で、山梨県知事は十分な対策を前提に花見を推奨している。どちらの言い分に理があるのか──。ジャーナリストの山田稔氏がリポートする。
* * * 1都3県に出されていた緊急事態宣言は3月21日に解除されたが、その決定が明らかになった直後の週末、3月20日に桜の名所で知られる東京の井の頭恩賜公園を訪れた。
吉祥寺駅南口から井の頭公園に向かう路地は多くの人々が行き交う。人気の飲食店には行列ができ、テラス席でビールやワインを楽しむ人々も。公園に入ると案内図の横に立て看板が設置されていた。
「新型コロナウィルス感染症拡大防止のため宴会行為及びシートを広げての飲食を禁止します」
井の頭公園の花見客は「マナー良好」
公園内を歩くと「花見客の多い区域は立ち入りを制限します」の表示があり、ネットで一帯が閉鎖されている。桜の木が立ち並ぶ池の畔一帯が閉鎖されているため、池の前のベンチに座ることもできない。仕方なく欄干に腰かけて飲み物を飲んでいる人が多い。
人波は途切れることなく続いている。人出はそれなりにあるが、それでもコロナ禍前の一昨年あたりの花見シーズンに比べると、7、8割ぐらいだろうか。スムーズに歩くことができる。
桜は三分咲きといったところだが、開花した木の周りには人々が群がり、スマホやデジカメで撮影に夢中だ。
全般に人々のマナーは良好だ。マスクを着用し、歩きながら桜を眺めている。立ち入り禁止エリアに入り込んでいる人は皆無だし、酒盛りをしているグループも見当たらない。閉鎖されていない場所にあるベンチでランチを楽しむ人々を見ても、アルコールを飲んでいる人はひと握りだ。感染防止意識が高いのだろう。
井の頭公園は広く、競技場や野球場、動物園などさまざまな施設が併設されている。普段はマイカー利用者も多いが、今の時期は駐車場も閉鎖されている。
競技場近くの桜の木の下ではいくつかのグループがシートを広げてランチを楽しんでいたが、宴会という雰囲気には程遠い。総じて、静かな花見が行われている感じだった。池の周囲を歩いていたカップルの女性が、「シートを広げて騒ぐだけが花見じゃないものね。歩きながら花を愛でるのもいいかも」と話していたのが印象的だった。
「山梨県知事の花見発言にクギ」の加藤官房長官

4月中に全選挙区にワクチンを!「全国平等配布」は5月総選挙に備える自民党の政略だ

菅義偉・首相は1都3県の緊急事態宣言を解除し、表面上は「コロナ第3波は収束した」かのような解放感が広がった。解除初日の羽田空港には、春休みを楽しもうとスーツケースを携えた旅行者が殺到し、宣言中に比べて3倍近い人でごった返した。政府は医療支援や感染防止策、休業支援が不十分だという声をほとんど無視して宣言解除を断行しただけだから、近いうちに「第4波」に火が付くことは間違いないだろう。 東京都では直近の2週間、新規感染者が増え続けており、すでに第4波の兆しが見えている。理由は主に2つ考えられる。ひとつは都民の「自粛慣れ」「自粛疲れ」で、繁華街の人出はじわじわと増え続けていた。上記のように宣言解除で人心は一気に緩んでいるから、今後は感染リスクがさらに高まるだろう。もうひとつの理由は変異株ウイルスである。東京都は、医療崩壊を恐れているものと見えて、あえて新規感染者にどれくらい変異株感染者がいるかを大規模には調査していない。しかし、積極的に調べている兵庫県などではすでに半数以上が変異株に感染しており、首都圏でも埼玉県や神奈川県は東京より多くの感染者が見つかっている。東京だけ変異株がないなどということは考えられないから、このところの感染者増加は、感染力の強い変異株が蔓延していることの証拠だろう。 東京都の感染者は宣言解除直前は1日300人台の日が多かったが、これは第3波が始まった昨年11月中旬とほぼ同じ水準だ。そこから約1か月で新規感染者は800人台まで増加し、今年1月には2500人に達した(1月7日)。その後は2か月半の緊急事態宣言によって今の水準まで下がったわけだが、すでに底を打って上昇に転じているのだから、どんなに楽観的なシナリオを描いても、これから第3波と同じ経過をたどることを覚悟しなければならない。変異株の感染力を考慮すれば、もっと増加ペースは早まる可能性が高い。 日本のワクチン接種は先進国で最も遅れている。これまでに接種を受けたのは医療従事者55万人程度にすぎず、4段階の1段目である「医療従事者480万人」の接種さえ、まだ1割強というありさまなのだ。2段目の「高齢者3600万人」の接種が始まるのが4月12日の予定だが、その時点では東京は「第4波」に突入して1日の新規感染者は再び1000人超になっているかもしれない。 ワクチンの輸入と配布は予定よりさらに遅れるおそれがある。これまで国内に到着したワクチンは230万回分(115万人分)しかなく、医療従事者への接種さえ滞っているのはワクチンそのものがないからである。これで本当に4月から高齢者接種が始められるのかははなはだ疑問がある。しかも政府の計画では、4月4週目までに各自治体に発送する高齢者用のワクチンは110万回分(55万人分)しか決まっていない。これは高齢者の1.5%分だから、おそらく4月末の時点でも、ほぼすべての高齢者が未接種のまま放置されていることになる。そこに第3波を上回る可能性が高い第4波のピークが重なれば、今度こそ医療崩壊と大量の死者を出すことは避けられない。
菅義偉・首相は1都3県の緊急事態宣言を解除し、表面上は「コロナ第3波は収束した」かのような解放感が広がった。解除初日の羽田空港には、春休みを楽しもうとスーツケースを携えた旅行者が殺到し、宣言中に比べて3倍近い人でごった返した。政府は医療支援や感染防止策、休業支援が不十分だという声をほとんど無視して宣言解除を断行しただけだから、近いうちに「第4波」に火が付くことは間違いないだろう。
東京都では直近の2週間、新規感染者が増え続けており、すでに第4波の兆しが見えている。理由は主に2つ考えられる。ひとつは都民の「自粛慣れ」「自粛疲れ」で、繁華街の人出はじわじわと増え続けていた。上記のように宣言解除で人心は一気に緩んでいるから、今後は感染リスクがさらに高まるだろう。もうひとつの理由は変異株ウイルスである。東京都は、医療崩壊を恐れているものと見えて、あえて新規感染者にどれくらい変異株感染者がいるかを大規模には調査していない。しかし、積極的に調べている兵庫県などではすでに半数以上が変異株に感染しており、首都圏でも埼玉県や神奈川県は東京より多くの感染者が見つかっている。東京だけ変異株がないなどということは考えられないから、このところの感染者増加は、感染力の強い変異株が蔓延していることの証拠だろう。
東京都の感染者は宣言解除直前は1日300人台の日が多かったが、これは第3波が始まった昨年11月中旬とほぼ同じ水準だ。そこから約1か月で新規感染者は800人台まで増加し、今年1月には2500人に達した(1月7日)。その後は2か月半の緊急事態宣言によって今の水準まで下がったわけだが、すでに底を打って上昇に転じているのだから、どんなに楽観的なシナリオを描いても、これから第3波と同じ経過をたどることを覚悟しなければならない。変異株の感染力を考慮すれば、もっと増加ペースは早まる可能性が高い。
日本のワクチン接種は先進国で最も遅れている。これまでに接種を受けたのは医療従事者55万人程度にすぎず、4段階の1段目である「医療従事者480万人」の接種さえ、まだ1割強というありさまなのだ。2段目の「高齢者3600万人」の接種が始まるのが4月12日の予定だが、その時点では東京は「第4波」に突入して1日の新規感染者は再び1000人超になっているかもしれない。
ワクチンの輸入と配布は予定よりさらに遅れるおそれがある。これまで国内に到着したワクチンは230万回分(115万人分)しかなく、医療従事者への接種さえ滞っているのはワクチンそのものがないからである。これで本当に4月から高齢者接種が始められるのかははなはだ疑問がある。しかも政府の計画では、4月4週目までに各自治体に発送する高齢者用のワクチンは110万回分(55万人分)しか決まっていない。これは高齢者の1.5%分だから、おそらく4月末の時点でも、ほぼすべての高齢者が未接種のまま放置されていることになる。そこに第3波を上回る可能性が高い第4波のピークが重なれば、今度こそ医療崩壊と大量の死者を出すことは避けられない。

使い捨てスプーン有料化に進む小泉進次郎氏は「令和の徳川綱吉」か

小泉進次郎・環境相が、昨年のレジ袋有料化に続き新たな施策を打ち出した。コンビニでもらえる使い捨てフォーク・スプーンの有料化だ。3月9日に閣議決定されたプラスチックごみのリサイクル強化や削減に向けた新法案についての会見で、進次郎氏は無料での配布をなくす見通しを示した上で、「自分でスプーンを持ち歩く人が増えていく。こうしたことでライフスタイルを変化させていきたい」と自信満々。
だが、この先進的な取り組みに、専門家からは否定的な意見が相次いでいる。流通ジャーナリスト・渡辺広明氏は言う。
「コンビニではパスタやプリンなどのデザート類など、フォークやスプーンを使う商品の売り上げが落ちる可能性がある。レジ袋に加えて『スプーンは有料ですがお付けしますか?』という店員の負担も増す。せめてコンビニにどれくらいスプーンやフォークを使用する商品があり、どれぐらい持ち帰っているのかを調査した上で判断すべきではないでしょうか」
衛生面からの批判もある。長野保健医療大学看護学部の塚田ゆみ子・助教は、「スプーンはお箸より舐めたりする分、口の中に入っている時間が長いので、清潔に使用する意識が大切。公衆衛生の面からはマイスプーンより使い捨てのほうがよいでしょう」と指摘する。
政界からも「あまり目立てていないという焦りがあるのではないか」(政治ジャーナリスト・有馬晴海氏)とも言われる進次郎氏だが、この件ではネット上でも否定的な意見が多く、「レジ袋につづいてプラスプーン有料化のやつ。『え、よりによっていま政府がそれやる必要ある!?』というか、生類憐れみの令が発布された時の江戸の民の気持ちが少し分かった」というツイートが拡散された。
さながら「令和の徳川綱吉」。だが、悪名高かった生類憐れみの令には近年、「世界初の動物愛護法」として再評価の兆しもある。“犬公方”ならぬ“プラ公方”として、進次郎氏も350年後ぐらいに再評価されるのか。
※週刊ポスト2021年4月2日号

女性国会議員悩ます「女のくせに」 政府目標「不十分」が7割

国連が定めた「国際女性デー」(3月8日)に合わせて共同通信は全女性国会議員にアンケートを実施した。政府が掲げる「国政選挙の女性候補者割合を2025年までに35%とする」目標に関し、回答した61人のうち72%が「不十分」「どちらかといえば不十分」と考えていることが分かった。「政治は男性の仕事」「女のくせに」―。心ない言葉を投げかけられ、固定観念の壁に苦悩する姿が浮かんだ。(共同通信=三田村俊哉、高砂しおみ)
※女性候補者割合の目標は、政府が昨年末に策定した5年間の女性政策に関する「第5次男女共同参画基本計画」に盛り込まれた。共同通信は1月中旬~2月中旬、衆参両院の全女性国会議員101人を対象に調査した。
▽世界166位
どうやって女性議員を増やすかの方策(複数回答)を聞いたところ、候補者の一定比率を女性にする「クオータ制(人数割当制)導入」が70%と突出して多かった。
実際の国政選挙の候補者に占める女性の割合は低迷が続き、17年の衆院選は18%。当選者はさらに少なく、全衆院議員のうち女性は10%しかいない。各国の議会でつくる「列国議会同盟」によると、日本のこの数字は世界で166位と極めて低い。25年までに今年の衆院選をはじめ国政選挙は少なくとも4回ある。女性をどう増やしていくのか。各党の取り組みが問われることになる。

▽増やす方策
女性議員を増やす方策では、クオータ制に続いて「政党による選挙費用などの支援」が41%、「比例名簿の上位に女性候補を登載」が39%、「女性候補の比率が高い政党に政党交付金を優遇」が34%。女性候補者数の目標設定を政党の努力義務としている「政治分野の男女共同参画推進法」を改正して罰則付きで義務付けることは、16%にとどまった。

政府目標を不十分とした理由では「人口の男女比から見ても半分は女性候補者を立てることが自然」(自民・野田聖子氏)や「50%にすべきだ」(立憲民主・辻元清美氏)との意見が多く聞かれた。「多様な声を国政に反映させるためには不十分」(共産・本村伸子氏)との指摘もあった。
これに対して「十分」「どちらかといえば十分」との回答は合わせて26%。「女性国会議員、候補者の割合が低い現状を踏まえれば適切」(自民・高市早苗氏)、目標の35%は「(17年の)衆院選の女性候補者のほぼ倍に当たり、現実的な目標としては妥当」(公明・伊藤孝江氏)など「条件付き」での支持が多い。
▽政治は男性のもの?
女性が立候補や政治活動を行うには男性の場合より厚い壁が立ちはだかる。自身の経験を踏まえて尋ねたところ(複数回答)、「政治は男性のもの」など根強い固定観念が66%、「家庭・子育てとの両立」が61%で目立った。セクハラ被害は34%、女性差別は33%、家族の理解は31%だった。
政府目標の実現可能性については「達成できる」が26%なのに対し「困難」は倍以上の66%に上った。残りは「どちらとも言えない」や無回答。
達成困難とする理由には「全国的に選挙区支部長の席がほぼ埋まっている。男性であることを理由に現候補者を女性に差し替えるのは困難」(自民・加藤鮎子氏)、「国会が女性で志のある人にとって行きたい場所になっていない」(公明・高瀬弘美氏)、「クオータ制を設けていないから」(立民・早稲田夕季氏)などが挙がった。
達成できるとした理由を見ると、「実現可能となるよう各党が努力するから。自民党の女性議員も実現に向け努力している」(自民・永岡桂子)、「本気で取り組みさえすれば可能」(立民・岡本章子氏)など、前向きな取り組みを前提としたものが多い。
市民団体(左側)から女性議員増を求める署名を受け取る自民党の野田聖子幹事長代行(中央)ら=2020年10月、東京・永田町の党本部
▽「あるべき像」に苦悩
アンケートには、政治参加で感じた「壁」についての声が相次いだ。コメントをテーマごとにまとめた。
【固定観念】
「政治は男性の仕事」という意識の壁(自民・野田聖子氏)
女性に何ができるのかという視線を感じる(国民民主・矢田稚子氏)
男性議員は妻子が地元にいてもそれが当たり前と思われるが、女性議員が子どもを地元に残せば「子どもを捨てて仕事をしている」となる(無所属・寺田静氏)
小さな子どもを抱えての候補者活動に「子どもがかわいそう」と党内や女性からも言われた。それがお父さんなら言われない、というのがおかしい(共産・高橋千鶴子氏)
私は独身だが、そのために、女性から「子育てをしていないから女性の気持ちはわからない」と言われた(自民・本田顕子氏)
【家庭との両立】
出産した議員にとって選挙活動や地元と国会を行き来する議員活動は過酷(公明・古屋範子氏)
子、親の病気、介護で休めない(共産・倉林明子氏)
飲酒を含めた夜の会食が政治活動の中心となっており子育てや介護中の女性が参加しづらい(コロナ禍以前)(立民・田島麻衣子氏)
出産・育児の期間はどうしても選挙活動が手薄になる。活動しなければ有権者との接点が減り、そのまま選挙結果に響く(自民・加藤鮎子氏)
【セクハラ、差別】
子育て支援について質問した際、「自分が産め」とやじがあった。「女のくせに」という言葉は当たり前のようにぶつけられた(立民・金子恵美氏)
若い頃は「○○の愛人」といった事実ではない下品な怪文書を選挙区内で配布され、精神的につらかった(自民・高市早苗氏)
マスコミの男女ネタの捏造によるセクハラ報道(自民・佐藤ゆかり氏)
票ハラ=投票をちらつかせたハラスメント=などの行為が見られる(立民・田島麻衣子氏)
障害者の女性は、そもそも大人として見られていない(れいわ新選組・木村英子氏)
【家族の理解】
知事選挙の立候補の時、特に配偶者の家族から「政治に出るなら離縁」と言われ、結果として離婚することになった(無所属・嘉田由紀子氏)
【その他】
厳しい選挙区やワンポイントの「捨て玉」に女性を充てることが多いと感じる(立民・池田真紀氏)
政治活動のスタイルが体力的にもハードでホルモンバランスなどを崩しやすい(立民・岸真紀子氏)
女性の立候補には暗黙の年齢制限があると言われた。年齢で女性の可能性を判断する社会自体が壁であると感じる(日本維新の会・石井苗子氏)
男性の意識を変えるだけでなく、女性自身の意識を変える必要がある(立民・菊田真紀子氏)
女性参政権運動の象徴とされる白い上着を着て、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言などに抗議の意を示す野党の女性議員ら=2月

滋賀県警の男性警視がセクハラ 同僚女性が抑うつ状態に、公務災害認定

滋賀県警の男性警視(23日付で彦根署長)が警察庁に出向中、元同僚の女性が男性警視からセクハラや女性蔑視の発言を繰り返し受け抑うつ状態になったとして、警察庁が国家公務員災害補償法に基づく公務災害に認定していたことが22日までに分かった。女性は男性警視を相手取り損害賠償を求めて東京地裁に提訴し22日、本人尋問が行われた。男性警視は女性側の主張を否定した。
訴状によると、男性警視は滋賀県警から警察庁に出向していた2014年4月~15年1月、同じ部署になった女性に対し、カラオケ店で下着を脱いだ尻を突き出して踊ったり、職場で卑猥(ひわい)な言動を繰り返したりしたほか、「女らしゅうしとったらええんや」などと何度も発言。女性は精神的な苦痛で2015年3月に体調を崩し、通院や時短勤務を余儀なくされた、としている。
男性警視は本人尋問でセクハラや女性蔑視発言の事実関係を問われ「ありません」と答えた。証人尋問で出廷した2人の元同僚の警察官3人も事実に反すると証言した。
一方、女性は「私の人生は6年間止まったままで大きく変わった。謝罪も反省もなく絶対に許せない」と述べた。
男性警視の言動については、警察庁が2017年3月、セクハラによって女性が抑うつ状態になったとして、労働者の労災に相当する公務災害と認定している。
滋賀県警監察官室は「個人訴訟で係争中と聞いておりコメントは差し控える。男性警視が帰任後、全職員に対してハラスメントについての研修を徹底している」としている。
人事院は公務災害認定について、当該省庁だけでなく人事院も審査に関わり、公正を期している、としている。