署名偽造、数百万円で請け負いか 事務局「とにかくバイト集めて」

愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)運動を巡る不正署名問題で、署名偽造のアルバイト募集に関与したとされる名古屋市の広告関連会社が、リコール運動事務局から「とにかく人を集めてくれ」と依頼され、数百万円で業務を請け負った疑いがあることが18日、関係者への取材で分かった。
広告関連会社幹部が、事務局から受け取ったとする発注書に金額などが記載されているという。
運動事務局の田中孝博事務局長は記者会見で「発注も依頼もしていない」と関与を否定。一方で、「署名簿の一部が九州で作られたとの情報は確認した」と説明している。

ハブ捕まえずに増えたマングース、「バスターズ」の捕獲活動で激減

環境省は15日、世界自然遺産登録を目指す奄美大島で、特定外来生物マングースの捕獲数が2018年4月に1匹捕獲されて以降、ゼロだったことを明らかにした。同省は、生息密度の低下が進んでいると分析し、「25年度末までの根絶を目指す」としている。
鹿児島県奄美市で開かれた検討会で報告された。同省奄美野生生物保護センター(大和村)によると、わなや探索犬での捕獲例がなかったほか、全島に設置した約400台のセンサーカメラにも映っておらず、約3年にわたって生息が確認されていない。
マングースは、1979年にハブを駆除する目的で沖縄から持ち込まれた。しかし、日中に活動するマングースは夜行性のハブをうまく捕獲できず、ふんから国の特別天然記念物アマミノクロウサギなどの体毛が見つかり、希少動物の脅威となっていることが分かった。ピーク時には約1万匹にまで増えていたとみられる。
同省は00年度に本格的な防除事業を開始し、05年度には捕獲専門チーム「奄美マングースバスターズ」を結成。捕獲数は、06年度の約2700匹から07年度には1000匹を割り、14年度には100匹を下回った。
同センターの阿部慎太郎所長は「根絶を達成するためには、十分なデータを積み重ねることも必要。わなによる継続的な観察や探索犬による全島での作業など計画を進めたい」などと話した。

総務省幹部、音声一部認める=菅首相長男接待問題

放送関連会社に勤務する菅義偉首相の長男による総務省幹部接待問題をめぐり、同省は18日の衆院予算委員会理事会で、週刊文春(電子版)が報じた会食中の音声について、秋本芳徳情報流通行政局長が一部は自身の声だと認めたと報告した。ただ、衛星放送に関する発言があったかは「記憶にないということだった」と説明した。
総務省によると、秋本氏は同省の調査に対し、音声データを確認した上で「BS、CS、スターチャンネル等に関する発言は記憶にありません」と回答。一方、話題に上った自民党議員に対する発言に関しては「私の音声かと思われます」と答えたという。
[時事通信社]

絶滅危惧種ケナガネズミ、交通事故死相次ぐ…「生き物出てくること意識して」

鹿児島県の環境省奄美野生生物保護センターは15日、交通事故でけがをした天然記念物で絶滅危惧種・ケナガネズミの治療を終え、自然に返したと発表した。沖縄県で野生復帰の例はあるが、奄美大島では初めてという。
昨年12月20日午後9時頃、奄美市の国道58号で負傷したケナガネズミを住民が保護し、翌日、市内の動物病院に運び込んだ。前脚と鼻を骨折していたため、治療を続けていた。
その結果、前脚の一部にまひが残るものの、歩行や採食行動に支障がない程度まで回復。同センターは野生への復帰が可能と判断し、今月10日夕、発見場所周辺の森林に放したという。
ケナガネズミは、奄美大島と徳之島、沖縄島北部にのみ生息する体長約60センチの日本最大のネズミ。夜行性で樹上で生活するが、餌を求めて路上に出て、車にはねられることもある。事故死は昨年が4匹、一昨年が過去最多の14匹だった。
同センター・国立公園管理官の早瀬穂奈実さんは「どこを走っていても、生き物が出てくる可能性があるということを意識してほしい。特に夜間は注意をお願いしたい」と話した。

死亡した歩行者、6割に違反 車の前後横断や信号無視

2020年に交通事故で死亡した歩行者は1002人(前年比174人減)で、うち約6割に当たる582人に何らかの法令違反があったことが18日、警察庁のまとめで分かった。同庁はドライバーだけでなく、歩行者にも交通ルールを守るよう呼び掛けている。
違反の内訳は、車が通り過ぎる前後に道路を横断したケースが116人、信号無視が93人、酒に酔って道路に寝そべるなどが92人、横断歩道がない場所での横断が66人など。違反なしは388人だった。
582人のうち、65歳以上の高齢者は7割以上の416人に上る。
年齢層別では、75~79歳の3107人が最も多かった。

平城宮跡に最大級の地下水路 「太政官」関連施設か 奈良

平城宮跡(奈良市)の官庁街・東方官衙(かんが)地区で、同宮跡で確認された遺構としては最大級の地下水路(暗きょ)が見つかり、17日、奈良文化財研究所が発表した。巨石を組んだ堅ろうな造りで、2019年に近くで基壇(土台)が確認された律令制の最高官庁「太政官(だいじょうかん)」とみられる建物の関連施設と考えられる。【加藤佑輔】
20年3月から、「第2次大極殿院」(奈良時代後期)の東側に位置する「東方官衙地区」の一角約780平方メートルを調査していた。発見された地下水路は、全長約7メートル、幅約60センチ、高さ約30センチ。底石、側石、ふた石を組み合わせた頑丈な構造で、ふた石の大きさは幅約90センチ、長さ約50センチあった。調査を担当した大澤正吾研究員は「使用開始時期ははっきりしないが、奈良時代を通じて使われていた可能性がある」としている。
すぐ西側では、平城宮跡の基幹排水路の一つ(幅約6・2~7・3メートル、深さ約1・5メートル)が確認されており、見つかった地下水路はこの基幹排水路に取り付き、官庁街の雨水を集めて流す役割を果たしていたとみられる。
渡辺晃宏・奈良大教授(日本古代史)は「格式が高く立派な建物に見合う水路を周辺に整備したのだろう。この建物がそれだけ重要な役割を担っていたという証拠でもあり、19年に見つかった基壇が『太政官』のものと推定する上でも重要な成果だ」と話している。
現地説明会は実施しない。調査成果はユーチューブの「なぶんけんチャンネル」で公開予定。

玉川徹氏、高級ラウンジ訪問で自民党離党の白須賀貴樹衆院議員に「文春をなめちゃいかんぜよ」

18日放送のテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」(月~金曜・午前8時)で、自民党の白須賀貴樹衆院議員が新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言下の今月10日夜に東京都内の高級会員制ラウンジを訪れていたことを受け、同党に離党届を提出したことを報じた。
白須賀氏のラウンジ訪問は17日に週刊文春の電子版が報じた。白須賀氏は次期衆院選に出馬しないと表明したが議員辞職は否定した。
同党では今月に入り、銀座のクラブをはしごした松本純前国対委員長代理ら3人が離党したばかりだった。
コメンテーターで同局の玉川徹氏は今回の問題に「前回の自民党の銀座トリオの時にコメントしたんですけど、どうぞ夜の会食に行ってください。文春、新潮が張ってますから、それで撮られて国民の審判受けてくださいって言ったんです」と明かし「もちろん皮肉で言ったんです。本当にやる人いるとは思わなかったです。何なんだろう?この危機感のなさ」と呆れていた。
その上で週刊文春の報道で発覚したことに「一生懸命文春の記者とかうわさを集めてやってますから、文春をなめちゃいかんぜよっていう話ですよね」とコメントしていた。

原因は慣れ? 法定刑を超える判決下される…お粗末だが「気を抜くとあり得る」と弁護士が警鐘

東京地検が2月9日、被告人2人に法定刑を超える求刑をし、東京地裁もまた法定刑を超える判決を言い渡したと発表し、波紋を呼んでいる。本来であれば、2年を超える刑罰を科すことができないのに、判決ではそれより半年多い2年6月を言い渡してしまったのだ。 報道によると、1月21日に検察側が求刑し、同28日に地裁が判決を言い渡したという。地検は判決を是正するために、2月9日に控訴した。 刑法は、被告人2人が問われた「わいせつ電磁的記録有償頒布目的所持罪」の罰則について、「2年以下の懲役や250万円以下の罰金」と定めている(175条2項)。法律の条文を確認すれば、この犯罪だけで2年を超える刑罰を科すことができないのは一目瞭然だ。 裁判にかかわった裁判官、検察官、そして弁護人がそろって見逃したことになるが、なぜそのようなことになったのだろうか。また、弁護人があえて見逃すようなことはあり得るのだろうか。刑事事件の弁護人として経験豊富な清水俊弁護士に聞いた。 ●「こうしたミスは正直あり得ると感じた」 あってはならない事態が発生してしまいました。 報道をネットでパッと見たときは、「求刑超えの判決が出た」というたまにある話のように感じたので、まさか「法定刑超えの違法判決」だとは思いませんでした。 検察庁や裁判所といった組織に対し、少なくとも形式面のチェックについてはある種の信頼感がありましたので、判決までいってしまったことには驚きました。 弁護人として、今回のような事態が発生しないよう心がけていることはありますか。 あまり扱ったことがなかったり、久しぶりに扱う事件であれば、弁護人に就く段階で法定刑などは調べています。 ただ、私自身も、(司法試験の)受験生だった頃に比べると、基本書(教科書)や六法を開く機会は圧倒的に減りましたし、「慣れ」もあって、こうしたミスは「正直あり得る」と感じました。 裁判手続きで思わぬ事態に出くわしたことはありますか。 民事事件ですが、本来は家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てなければならないのに、地方裁判所に共有物分割裁判が申し立てられてしまった事案が現にありました。 申し立てた弁護士はもちろん、相手方である私や裁判官も気づかず、判決日を迎える直前に裁判官の調査で最高裁判例があることが判明しました。 こちら側としては却下判決を受ける方が有利だったので取り下げに同意せずに判決をもらうという、結果的には「高等戦術」のような形になってしまいました。 ●被告人から損害賠償請求される可能性も
東京地検が2月9日、被告人2人に法定刑を超える求刑をし、東京地裁もまた法定刑を超える判決を言い渡したと発表し、波紋を呼んでいる。本来であれば、2年を超える刑罰を科すことができないのに、判決ではそれより半年多い2年6月を言い渡してしまったのだ。
報道によると、1月21日に検察側が求刑し、同28日に地裁が判決を言い渡したという。地検は判決を是正するために、2月9日に控訴した。
刑法は、被告人2人が問われた「わいせつ電磁的記録有償頒布目的所持罪」の罰則について、「2年以下の懲役や250万円以下の罰金」と定めている(175条2項)。法律の条文を確認すれば、この犯罪だけで2年を超える刑罰を科すことができないのは一目瞭然だ。
裁判にかかわった裁判官、検察官、そして弁護人がそろって見逃したことになるが、なぜそのようなことになったのだろうか。また、弁護人があえて見逃すようなことはあり得るのだろうか。刑事事件の弁護人として経験豊富な清水俊弁護士に聞いた。
あってはならない事態が発生してしまいました。
報道をネットでパッと見たときは、「求刑超えの判決が出た」というたまにある話のように感じたので、まさか「法定刑超えの違法判決」だとは思いませんでした。
検察庁や裁判所といった組織に対し、少なくとも形式面のチェックについてはある種の信頼感がありましたので、判決までいってしまったことには驚きました。
弁護人として、今回のような事態が発生しないよう心がけていることはありますか。
あまり扱ったことがなかったり、久しぶりに扱う事件であれば、弁護人に就く段階で法定刑などは調べています。
ただ、私自身も、(司法試験の)受験生だった頃に比べると、基本書(教科書)や六法を開く機会は圧倒的に減りましたし、「慣れ」もあって、こうしたミスは「正直あり得る」と感じました。
裁判手続きで思わぬ事態に出くわしたことはありますか。
民事事件ですが、本来は家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てなければならないのに、地方裁判所に共有物分割裁判が申し立てられてしまった事案が現にありました。
申し立てた弁護士はもちろん、相手方である私や裁判官も気づかず、判決日を迎える直前に裁判官の調査で最高裁判例があることが判明しました。
こちら側としては却下判決を受ける方が有利だったので取り下げに同意せずに判決をもらうという、結果的には「高等戦術」のような形になってしまいました。

菅首相にまた大打撃!“盟友”創価学会の大物副会長が退職

ただでさえ、長男の“違法接待”に頭を抱えている菅首相にまた打撃だ。菅首相の力の源泉のひとつとされるのが、公明党の支持母体「創価学会」との良好な関係だが、創価学会との“パイプ役”となってきた大物副会長が定年退職することになったからだ。

退職するのは、佐藤浩副会長。選挙実務を取り仕切り、公明党議員の生殺与奪の権も握っているとされる幹部だ。創価学会の本部職員の定年は60歳。佐藤副会長は、今月、60歳の誕生日を迎える。副会長という肩書は維持されるようだが、政治担当からは外れるとみられている。

「大物副会長の退職には、揣摩臆測が飛んでいます。定年を迎えるのは事実ですが、失脚ではないか、という話も流れています。秘蔵っ子だった遠山清彦前衆院議員が、夜の銀座で遊んでいた責任を取らされたという解説です。もともと、やり手の佐藤副会長には敵も多かった。責任を取らざるを得なかったのではないか、という見方が出ています」(政界関係者)

菅首相と佐藤副会長は「SSライン」と呼ばれる盟友関係。官房長官時代から、選挙協力など重要案件を2人で進めてきたといわれている。それだけに、大物副会長の退職が菅政権に打撃を与えるのは間違いない。

「菅さんは、節目節目で佐藤副会長を頼ってきた。2019年の参院選で、広島選挙区に河井案里を強引に擁立した時も、創価学会に支援を頼んでいます。案里が当選したのは、学会票の力です。菅さんに依頼された佐藤副会長が、剛腕を発揮して組織を動かしてきた。盟友がいなくなれば、菅さんもこれまでのようにはいかないと思う」(自民党事情通)

それだけに、4月25日に行われる、衆院北海道2区、参院長野選挙区、参院広島選挙区の3つの選挙の行方が懸念されている。

「北海道2区については、自民党は候補者を擁立しませんが、参院広島選挙区だけは死守するつもりです。でも、公明党・創価学会が動かないと、まさかの落選もありえる。4・25が3連敗となったら、菅降ろしが再燃しかねません」(前出の自民党事情通)

政権が弱体化すると、次々に悪材料が浮上するものだ。

東日本大震災は「日本で地震が起きる仕組み」を根本から変えてしまった

※本稿は、鎌田浩毅『首都直下地震と南海トラフ』(MdN新書)抜粋の一部を再編集したものです。
東日本大震災の直後から、震源域から何百キロメートルも離れた内陸部で規模の大きな地震が発生しています(図表1)。たとえば、3月12日午前3時59分に長野県北部でM6.7の地震が起きました。
この地震は震源の深さ10キロメートルという浅い地震で、長野県栄村で震度6強を記録し、東北から関西にかけての広い範囲で大きな揺れを観測したのです。また、3月15日午後10時31分には、静岡県東部でM6.4の地震があり、最大震度6強の観測でした。
これらの地震は、典型的な内陸型の直下型地震です。2004年の新潟県中越地震や2007年の新潟県中越沖地震と同じタイプの地震なのです。
海域で巨大地震が発生したあと、遠く離れた内陸部の活断層が活発化した例は、過去にも多数報告されています。
たとえば、1944年に名古屋沖で東南海地震(M7.9)が起きた1カ月後の1945年に、愛知県の内陸で三河(みかわ)地震(M6.8)が発生しました。また、1896年に三陸沖で起きた明治三陸地震(M8.5)の2カ月半後には、秋田・岩手県境で陸羽(りくう)地震(M7.2)が発生しました。
もうおわかりでしょう。このタイプの地震は、海の震源域の内部で起きた「余震」ではなく、新しく別の場所で「誘発」されたものです。東北・関東地方の広範囲にわたり、直下型の誘発地震への警戒が、今、一番備えなければならない最重要の課題となったのです。
こうした内陸型の直下型地震は、時間をおいて突発的に起きます。太平洋プレートと北米プレートの境界で起きる余震とはまったく別個に、内陸の広範囲でM6~7クラスの地震が散発的に誘発されるのです。その結果、東北地方、関東地方、中部地方の東部では、これからも最大震度6弱程度に至る揺れが予想されます。
では、なぜ余震域でないところで地震が起きてしまうのでしょう。こうした内陸性の直下型地震は、東日本の岩盤が東西方向に伸張したことによって起きたものです(図表2)。
地面が引っ張られたことで陥没する「正断層型」の地震が、「3.11」以降に突然発生し始めたのです。なお正断層型と逆断層型の地震については、あとでくわしく述べましょう。
これらは今後も時間をおいて突発的に起きる可能性があります。すなわち、太平洋上のM9の震源域で起きる余震だけではなく、東日本の内陸の広範囲でM6~7クラスの地震が「誘発」される恐れがあるというわけです。
ここでちょっと整理をしておきましょう。地震には大きく分けて、「海で起こる地震」と「陸で起こる地震」の2つがあります。
第1のタイプは太平洋岸の海底で起きる地震で、莫大(ばくだい)なエネルギーを解放する巨大地震です。陸のプレートと海のプレートの境にある深くえぐれた海溝(かいこう)で起きるため、「海溝型地震」とも呼ばれます。このタイプは、M8~9クラスの地震を発生させると予想されています。また、海で起こる地震は、東日本大震災のように津波が伴います。
もう1つのタイプの陸で起こる地震は、文字どおり足もとの直下で発生します。新聞やテレビなどでは「直下型」や「内陸型」などさまざまな表現がありますが、震源地が内陸であると考えれば十分です。
この地震はその後に頻発している新潟県中越沖地震や岩手・宮城内陸地震、さらに熊本地震、大阪北部地震、北海道胆振(いぶり)東部地震のような地震で、1995年に阪神・淡路大震災を起こした兵庫県南部地震もその1つです。これはM7クラスの地震であり、主に活断層が繰り返し動くことで発生します。
こうした直下型地震は震源が比較的近く、かつ浅いところで起きたという特徴があります。また震源地が人が住んでいるところと近いため、発生直後から大きな揺れが襲ってくるので、逃げる暇がほとんどありません。特に、阪神・淡路大震災のように、大都市の近くで短周期地震動をメインとする地震が発生すると、建造物の倒壊など人命を奪う大災害をもたらす非常に厄介な地震です。
いかに巨大なエネルギーを解放する地震でも、そこに人が住んでいなければ、あるいは壊れてくるものがなければ、被害は最小限に抑えられます。しかし、それほど大した地震でなくても、ビルが密集し、また空き地がほとんどない都市では、その被害は甚大なものとなってしまうのです。
実は、誘発地震の直撃する地域の中でも最も心配な場所が、東京を含む首都圏です。首都圏も東北地方と同じ北米プレート上にあるため、活発化した内陸型地震が起こる可能性が十分にあります。ここでM7クラスの直下型地震が突然発生することが、最大の懸念となっています。
かつてこの地域では大被害があったことが記録に残っています。1855年に東京湾北部で安政江戸地震(M6.9)が発生し、4000人を超える死者が出ました。また最近では、2005年7月にM6の直下型地震が発生し、首都東部が震度5強の強い揺れに見舞われ、電車が5時間以上もストップしました。
国の中央防災会議は、首都圏でM7.3の直下型地震が起こった場合の被害を予測しています。1万1000人の死者、全壊および焼失家屋61万棟、95兆円の経済被害が出ると想定しているのです。東日本大震災によって事実上、東日本の内陸部では首都圏も含めて直下型地震が起きる確率が高まった、と考えたほうがよいでしょう。
日本はどの場所も地震から逃れられないことが、いまだに常識となっていません。それを物語るように、私が講演会で地震について話をすると、「地震が来ないところを教えてください」と皆さんが聞いてきます。本当に、日本には安全を約束できる場所はまったくないのです。
たとえば、日本列島には「活断層」が全部で2000本以上もあります。これらはいずれも何回も繰り返して動き、そのたびに地震が発生します。一方、その周期は千年から1万年に1回くらいであり、人間の暮らす尺度と比べると非常に長いのです。
日本列島のどこかで巨大な力が解放されて地震が起きますが、そのどこかは日本の全国土と考えて差し支えありません。
地球上では、断層が1回だけ動いて、あとは全然動かないということはありえないのです。1回動く断層は何千回も動くものであり、これが地球の掟(おきて)です。つまり活断層が見つかったら、そこで過去に何千回も地震が起きていたことを示しているのです。
これまで非常によく動いてきた断層は、これからも頻繁に動く可能性があります。他方、それほど動かなかった断層は、今後もあまり活発には動きません。こうした特徴を個々の断層ごとに研究者は調査します。
国の地震調査委員会は、日本列島に2000本以上存在する活断層の中でも、特に大きな地震災害を引き起こしてきた114本ほどの活断層の動きを注視してきました。
東日本大震災は、東日本が乗っている北米プレート上の地盤のひずみ状態を変えてしまいました。そのために地震発生の形態がまったく変わった、と考える地震学者も少なからずいます。
実際、地震のあとに日本列島は5.3メートルも東側へ移動してしまいました。また太平洋岸に面する地域には地盤が1.6メートルも沈降したところがあるのです。巨視的に、見ると、東北地方全体が東西方向に伸張し、一部が沈降したと言えます(図表2)。つまり、陸地が海側に引っ張られてしまったのですが、これは海の巨大地震が起きたあとに必ず見られる現象です。
では、このことは何を意味するのでしょうか。今まで巨大な力で押されていた東北地方や関東地方が乗っている北米プレートが、今度は思いきり水平方向に引き延ばされたのです。その結果、今までとは違った力が地面に働き出しました。
これまでは、横から押されることによって、地面の弱い部分が耐えきれなくなってせり上がる断層が、内陸で直下型の地震を起こしてきました。私たちは地質調査からこうした断層(「逆断層」といいます)を見つけ、地図に記入してきました。もちろん、そのデータは活断層地域として、専門家でなくとも一般の人々も簡単に手に入れることができます。
ところが今度は、ゴムを伸ばすように大地が引き延ばされたのです。そして地殻の弱いところが断層として動き出します。今度の断層は「正断層」といいますが、困ったことに今まで地震が起きてこなかった場所でも地震が起き始めました。
では、こうした直下型地震は、いつ起きるのでしょうか。結論から言えば、予測はほとんど不可能です。というのは地震を起こす周期は数千年という長いスパンであり、その誤差は数十年から数百年もあるからです。社会が要請するような何月何日に地震が起きるという予知は、もともと無理なのです。
困ったことに、活断層は現在調べられている他にもたくさん存在します。山野に隠れていた未知の活断層が直下型地震を起こした例も少なくありません。たとえば、2000年の鳥取県西部地震や2008年の岩手・宮城内陸地震は、それまで未知であった活断層が動いたものです。
地震の発生後に活断層が発見された報告も珍しいことではないのです。よって、私はどこで新しく活断層が発見されても、またどこで直下型地震が起きてもまったく驚きません。
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(京都大学大学院 人間・環境学研究科教授 鎌田 浩毅)