立憲民主党の蓮舫参院議員が23日、自身のツイッターを更新した。
蓮舫氏は「4都府県に緊急事態宣言 今月25日から来月11日まで 政府方針」と題したネット記事をアップし「3月の緊急事態宣言解除は、人の動きが多い春を前に「適切ではない」との私たちの声を無視。その直後に五輪聖火リレーでした」とつづった。
さらに「今回の変異株拡大は軽視してはいけません、あまりにも短い宣言期間」とし「解除後にバッハ会長が来日予定。国民のために働くと言う菅総理、ご認識を改めるべきです」と提言していた。
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「ノーマスクピクニック」批判され中止…感染リスク高いイベント、主催者の責任は?
政府は新型コロナウイルスの新規感染者数が増加している東京、大阪、京都、兵庫の4都府県を対象に3度目の緊急事態宣言を発令する方針を固めました。そんな中、「マスクを着けずにピクニックを楽しもう」とうたうイベント「全国同時ノーマスクピクニックデー」を5月1日、2日に地方自治体管理の公園を中心にした全国17カ所で開催すると何者かがネット上で告知し、批判が殺到しました。結局、主催者とみられる人物がイベント中止を告知しましたが、昨年は東京・渋谷の公共の広場で「ノーマスク集会」が開催された事例もあります。
もし、「ノーマスクピクニック」のような、新型コロナウイルスの感染拡大の危険性が高い集会やイベントを不特定多数の人が利用する公共の場所で実施した場合、主催者側は法的責任を問われるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
■無許可開催がそもそも問題
Q.そもそも、地方自治体管理の公園や広場、歩行者天国などの公共の場所で集会やイベントを行う場合、事前に自治体や警察に届ける、もしくは許可を得る必要があるのでしょうか。無届けや無許可で集会やイベントを行った場合、主催者側は法的責任を問われるのでしょうか。
牧野さん「東京都の『集会、集団行進および集団示威運動に関する条例』1条では『道路その他公共の場所で集会もしくは集団行進を行おうとするとき、または場所のいかんを問わず集団示威運動を行おうとするときは、東京都公安委員会の許可を受けなければならない』とされています。無許可で集会やイベントを行った場合、主催者側は1年以下の懲役、もしくは禁錮または30万円以下の罰金に処される可能性があります(5条)。
新型コロナ流行下での、集会を含むイベント開催はさらに厳しく規制されています。例えば、4月12日から、まん延防止等重点措置の対象地域となった東京都では都から事業者に対し、催し物の開催制限(人数上限・収容率など)などの要請が出されています」
Q.「ノーマスクピクニック」は中止が決まりましたが、昨年は渋谷の公共の広場で「ノーマスク集会」が開催された事例もあります。もし、このような、新型コロナウイルスの感染拡大の危険性が高い集会やイベントが無届け、無許可で実施された場合、自治体や警察が集会やイベントを強制的にやめさせることはできるのでしょうか。
牧野さん「先述の東京都の『集会、集団行進および集団示威運動に関する条例』4条では『警視総監は、(条例に反して、無許可で行われた集会の参加者に対して)公共の秩序を保持するため、警告を発しその行為を制止しその他その違反行為を是正するにつき必要な限度において所要の措置をとることができる』と定められています。『強制的にやめさせることができる』とまでは明記していませんが、罰則付きで中止を命令できるのではないかと思います」
Q.新型コロナ流行下で「ノーマスク集会」のような、感染拡大の危険性が高い集会やイベントを公園などの公共の場所で実施した場合、主催者側が感染拡大に関する部分や公衆衛生に関する部分で法的責任を問われる可能性はありますか。
牧野さん「イベントの主催者には、イベント参加者の健康や安全に配慮してイベントを実施すべき『安全配慮義務』があります。例えば、換気を十分したり、発熱した参加者の入場を拒否したりするなど主催者側の十分な感染予防措置を取らなければ、イベント参加者が感染した場合、参加者から、安全配慮義務を怠ったとして損害賠償を請求される可能性があります。ただし、感染した参加者は『イベントに参加したために感染した』という因果関係を証明しなければなりません」
Q.では、感染拡大の危険性が高い集会やイベントを開催後、参加者だけでなく、会場付近の通行人や会場周辺の住民の感染も判明した場合はどうでしょうか。主催者側に賠償責任が生じる可能性はありますか。
牧野さん「民法709条の『不法行為による損害賠償責任』が発生する可能性がありますが、先述した集会やイベントの参加者のケースと同様、主催者の『安全配慮義務』違反や過失(十分な感染防止措置を講じなかった)と発生した損害(感染)との間の因果関係を証明する必要があります。
ただ、新型コロナウイルスは流行がまた拡大しており、感染経路が不明なケースが増えているのが現状です。感染対策をまったく行っていない、あるいは感染対策が不十分な集会やイベントが公共の場所で行われたとき、会場周辺に住んでいたり、会場付近を通り掛かったりして、その後、感染が判明した場合であっても、そのことだけで『集会やイベントが原因で感染した』と証明することは非常に難しいと思います」
オトナンサー編集部
【独自】コロナ入院先見つからず、救急車内に「1日半」…症状悪化し重症病床に
新型コロナウイルスに感染した大阪市内の男性の救急搬送先が見つからず、救急車内で1日半ほど待機していたことが、関係者への取材でわかった。救急隊員が酸素投与などの対応にあたり、最終的に市外の病院が受け入れた。男性の症状は悪化し、重症病床で治療を受けているという。
医療関係者によると、20日朝、感染者の男性から大阪市消防局に救急要請があり、救急車が男性を収容した。入院先を調整する大阪府の「入院フォローアップセンター」が病院を探したが、複数の病院から「余裕がない」などと断られた。
21日になっても入院先は決まらず、隊員が交代しながら徹夜で対応にあたり、同日に病床を増やした市外の病院への受け入れが決まった。男性が搬送されたのは午後5時頃。呼吸機能の状態を示す血中酸素濃度が低下しており、人工呼吸の処置が取られたという。
府内の病床使用率は82・5%(22日)に達し、自宅療養者数は9202人(同)に上る。自宅療養中の患者が救急搬送を要請しても、入院先が見つからないケースが相次いでいる。
実感乏しい緊急事態宣言 3度目の発令に「意味がない」理由
臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、3度目の発令となる緊急事態宣言について。
* * * 政府は4月21日、東京都、大阪府、兵庫県、京都府を対象に緊急事態宣言を発出する方針を固めた。東京都では3度目、4月25日から5月11日までになるらしい。聞こえてくる大方の声が「またか…」であるように、“緊急事態”という実感は乏しい。
12日からまん延防止重点措置が適用されている東京都では、人の流れが減った気がしない。至る所で人波が目立ってきている。夜になると駅周辺の路上や公園には、20時までになった時短要請により立ち飲みや飲み会をする人々が集まっているのを目にする。外とはいえ、要請が逆効果を生んでいると思うほどだ。
このまま行けば、新型コロナウイスルによる死者数は低いものの、感染が収束し立ち直るまでに最も時間がかかる先進国になってしまうのではないだろうか。長々と続いた緊急事態宣言に、それとの区別がよく分からないまん延防止重点措置。「感染症対策を」と言いながらGoToトラベルキャンペーンを行った政権には、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような対応だという批判の声が出ていたが、今度は緊急事態宣言を発令しながら、東京オリンピックパラリンリックの開催準備を進めている。“ダブルスタンダード(二重規範)”のような状態だ。
このような状況下で3度目の緊急事態を宣言されても、どれぐらい緊急なのか、正直なところ判断が難しい。緊急事態宣言の発出目安として、「ステージ4(爆発的感染拡大)を視野に」と言っているが、明確な線引きはされていない。医療が逼迫していると聞いても街には人が出ているし、政権や知事らの言葉や連日メディアで流される状況と肌で感じる感覚とのギャップは、どんどん大きくなっていく。どちらかと言えば、周りの様子や人々の行動の変化から、事態がどれくらい緊急性を帯びてきたのか判断しているようなものだ。
そもそも、「緊急事態」という言葉の定義があやふやという問題がある。緊急事態の範囲も規模も程度も明確なものがないのだ。そのため、緊急に対する度合いの判断は個人の主観に頼るしかない。同じ状況でも、恐怖や不安を強く感じる人にとっては緊急事態となるが、「自分は平気、大丈夫だろう」と思う人は緊急性を低く見積もることになる。
東京電力による緊急時の人間行動特性の研究によると、緊急事態とは、その状況の中にいる人間に、非日常性や結果の重大性、時間切迫性、予想外性、突発性、対処の当事者性のような性質の一部かすべてがあると自覚されている状態を指すという。現状では感染予防対策が日常的になり、ダラダラと続いたことで時間的切迫感が無くなっている。日々の感染者数の推移は見聞きしても、周囲に感染者や重症者がいないと、「自分が感染するかも」という予想外性や突発性、当事者性の意識も薄れてくる。緊急事態において“慣れ”は一番の敵になるのだ。
だからこそ今度の緊急事態宣言は、もっと効果的でより強い措置を取らなければ発令する意味がないだろう。どう行動を変えたらいいのか、変えなければならないのか。ピシッと気持ちが切り換えられる宣言であればいいのだが。
温室育ちの眞子さまが小室佳代さんの虜に 紀子さまは憔悴し顔色優れず
秋篠宮家の長女・眞子さまの結婚問題が新たな局面を迎えた。婚約内定者の小室圭さんが4月8日、母親の佳代さんと元婚約者Aさんとの金銭トラブルについて28枚にも及ぶ文書を公表。「返済の義務はない」という主張を繰り返した。文書発表翌日、秋篠宮家の最側近である皇嗣職大夫は会見で、解決金は支払わないという小室家の基本方針について「眞子さまのご意向が大きかった」と話したが、眞子さまを突き動かしたものはいったい何なのか。 ことは眞子さまと小室さんの交際が初めて報じられた2016年10月に遡る。報じられたのは東京・渋谷と神奈川・横浜をつなぐ東急東横線車内での姿。横浜方面でのデートの帰りとみられた。 「小室さんは佳代さんとみっちり話し合い、デートプランを練っていたそうで、デートの場所は横浜や鎌倉など、小室さんの自宅周辺が多かったといいます。小室さんの自宅に、眞子さまが立ち寄られたこともあるのではないかといわれました」(皇室記者) 早いうちから眞子さまは佳代さんと会われ、その半生における艱難辛苦のストーリーに耳を傾け、心酔されていったのかもしれない。佳代さんの夫・敏勝さんは、2002年に自ら命を絶った。それは、小室さんが10才のとき。さらに、長男の早すぎる死に絶望した小室さんの祖父も、後を追うように自殺した。直後、佳代さんは行動に移した。知人男性を頼り、敏勝さんの実家に遺産の交渉に行かせたのだ。その男性の話。 「佳代さんは当時、“夫の実家に取り合ってもらえない”と涙ながらに私に遺産交渉の代理人になるよう頼んできました。いま思えば、私が過去に暴力団に関係していたという経歴を、利用できると思ったのかもしれません。 身内の相次ぐ死で憔悴しきった敏勝さんの母親との交渉は心苦しいものでしたが、結局、圭くんが相当な額の遺産を相続することになりました。ただ、話し合いが済むと佳代さんは突然、“この件から一切、手を引いてくれ”と私に言ってきた。それ以来、絶交しています」 敏勝さんが亡くなる前から“運命の人”と呼び合い、小室さんに“湘南のパパ”と呼ばせていた男性の存在や、20才ほど年上の彫金師の男性との交際は、すでに報じられている通りだ。その後、佳代さんは外資系メーカーに勤めるAさんと婚約。佳代さんはAさんに、メールなどを通じて金銭的な援助を求めるようになっていく。 「メールの中には、“敏勝さんの遺族年金を受け取っている間、事実婚は誰にも知られたくない”という内容もありました。本来、夫との死別後に別の男性と事実婚でも生計を一にしていれば、遺族年金の受給を止めなければなりません。だから佳代さんは“事実婚をバラさない”という工作を持ちかけたのでしょう。そうして佳代さんは、敏勝さんの遺族年金を受給し続けつつ、Aさんからも援助を受けた」(前出・皇室記者)
秋篠宮家の長女・眞子さまの結婚問題が新たな局面を迎えた。婚約内定者の小室圭さんが4月8日、母親の佳代さんと元婚約者Aさんとの金銭トラブルについて28枚にも及ぶ文書を公表。「返済の義務はない」という主張を繰り返した。文書発表翌日、秋篠宮家の最側近である皇嗣職大夫は会見で、解決金は支払わないという小室家の基本方針について「眞子さまのご意向が大きかった」と話したが、眞子さまを突き動かしたものはいったい何なのか。
ことは眞子さまと小室さんの交際が初めて報じられた2016年10月に遡る。報じられたのは東京・渋谷と神奈川・横浜をつなぐ東急東横線車内での姿。横浜方面でのデートの帰りとみられた。
「小室さんは佳代さんとみっちり話し合い、デートプランを練っていたそうで、デートの場所は横浜や鎌倉など、小室さんの自宅周辺が多かったといいます。小室さんの自宅に、眞子さまが立ち寄られたこともあるのではないかといわれました」(皇室記者)
早いうちから眞子さまは佳代さんと会われ、その半生における艱難辛苦のストーリーに耳を傾け、心酔されていったのかもしれない。佳代さんの夫・敏勝さんは、2002年に自ら命を絶った。それは、小室さんが10才のとき。さらに、長男の早すぎる死に絶望した小室さんの祖父も、後を追うように自殺した。直後、佳代さんは行動に移した。知人男性を頼り、敏勝さんの実家に遺産の交渉に行かせたのだ。その男性の話。
「佳代さんは当時、“夫の実家に取り合ってもらえない”と涙ながらに私に遺産交渉の代理人になるよう頼んできました。いま思えば、私が過去に暴力団に関係していたという経歴を、利用できると思ったのかもしれません。
身内の相次ぐ死で憔悴しきった敏勝さんの母親との交渉は心苦しいものでしたが、結局、圭くんが相当な額の遺産を相続することになりました。ただ、話し合いが済むと佳代さんは突然、“この件から一切、手を引いてくれ”と私に言ってきた。それ以来、絶交しています」
敏勝さんが亡くなる前から“運命の人”と呼び合い、小室さんに“湘南のパパ”と呼ばせていた男性の存在や、20才ほど年上の彫金師の男性との交際は、すでに報じられている通りだ。その後、佳代さんは外資系メーカーに勤めるAさんと婚約。佳代さんはAさんに、メールなどを通じて金銭的な援助を求めるようになっていく。
「メールの中には、“敏勝さんの遺族年金を受け取っている間、事実婚は誰にも知られたくない”という内容もありました。本来、夫との死別後に別の男性と事実婚でも生計を一にしていれば、遺族年金の受給を止めなければなりません。だから佳代さんは“事実婚をバラさない”という工作を持ちかけたのでしょう。そうして佳代さんは、敏勝さんの遺族年金を受給し続けつつ、Aさんからも援助を受けた」(前出・皇室記者)
運転士 追い詰められた末… JR脱線事故16年
「嘘は絶対つくな、再度嘘をついたら運転できないぞ」
「はい」
JR福知山線脱線事故のおよそ1年前。駅の停止位置を行き過ぎるミスをした運転士への「日勤教育」はこんな詰問で始まった。
運転士はミスを知らせる一報の段階で虚偽報告をしていた。「会社の信用問題になる」「社会人として失格」。容赦ない尋問の終わり、運転士は虚偽報告をした理由を告白した。「お客さまに迷惑をかけたから、それに対してどれくらい怒られるか怖かったです」
その翌年、平成17年4月25日午前9時15分。この運転士は伊丹駅(兵庫県伊丹市)の所定の停止位置を72メートルもオーバーランした。乗客106人が犠牲になり、自身も命を落とす脱線事故の、その3分前のことだ。
過半数が事故後入社
「事故後に入社した社員には、『そもそも風化って何?』と思う人もいる」
4月上旬、JR西日本の管理職約50人がテレビ会議システム「Zoom」で意見をぶつけあった。議題は脱線事故のことを若手社員にどう伝えるか-。会議では、風化させてはいけないということから始めるべきだという声もあった。
昨年4月の時点で、事故後に入社した社員が過半数になった。社内調査では、事故の教訓を踏まえて導入された施策の目的を理解していない社員が複数いると判明した。事故の教訓は何か、どう改善されたか、JR西はいま一度冊子にまとめて明確化した。背景にあるのは対策が形骸化していく危機感だ。長谷川一明社長は冊子の冒頭で「安全の羅針盤」の継承を訴え、「今を逃すとできない」と、会社が岐路に立っているとの認識を示した。
「事故の反省と教訓が機能しなくなるのが一つの風化だ」。約160人の運転士が所属する「天王寺電車区」の清水敏生(としお)区長(57)は会議を振り返り、こう気を引き締めた。
運転士らにミスがあった場合、所属する運転区や電車区の区長が必要に応じて実施していた日勤教育。悪名高きこの制度は事故後に廃止されたが、そもそもの趣旨はミスをした乗務員の再教育-つまり安全構築の一環。問題は、安全管理の手段だったはずのルール(日勤教育)が、いつしか一つの懲罰として、それ自体が目的化したことだ。
19年6月に航空・鉄道事故調査委員会(現運輸安全委員会)がまとめた脱線事故の報告書は、事故原因について、運転士が伊丹駅のオーバーランで日勤教育を受けさせられることを懸念し「注意が運転からそれた」可能性を記載した。
VR技術を導入も…
事故の反省を踏まえ、JR西は28年4月から乗務上のヒューマンエラーを懲戒対象から外し、ほかにも仮想現実(VR)技術で危険性を具体的に学べる設備をつくるなどしてきた。
だが、なぜこうした対策を導入したのかについて社員の理解が薄れてしまえば、「安全のため」という言葉だけが、かつての日勤教育のようにまた独り歩きしかねない。前例のない災害が毎年のように起きる時代、決められた対策やルールにどう向き合うかが鍵となる。想定外の状況下では、ルールに縛られず、それを定めた趣旨を理解して臨機応変に対応することが求められるからだ。リスク管理に詳しい立教大の芳賀繁名誉教授は「『安全にルールを破る』ために、その本質を理解することが不可欠」と指摘する。
鉄道輸送に対する目下の脅威は他と同じく新型コロナウイルス。JR西の昨年4~12月の売り上げは前年同期比で44%減、約1620億円の赤字となった。まさに想定外。「安全最優先は変わらない」(長谷川社長)が、収支の悪化が設備投資や事業の取捨選択にどう影響し、それがどう安全管理に跳ね返るか。脱線事故当時は利益重視の姿勢が、過密ダイヤや自動列車停止装置(ATS)の整備遅れといった問題を生んでおり、楽観はできない。
「失敗を過度にとがめる社内風土では社員が萎縮する。社会から何を求められているかを認識し、それを実現するために行動する社員を後押しする必要がある」。芳賀氏は、一人一人が高い職業意識を持つことでしなやかな現場力が培われ、ひいては失敗を防ぐことにもつながるとする。
脱線車両の車掌と司令員の会話
毎年4月25日が近づくとネットで話題になる文書がある。脱線事故の車掌と指令員の通話記録を反訳した事故調査報告書の「付図(ふず)31」。車掌は指令員に事態を説明できず、後続電車の運転士が通話を引き取ったその場面には、簡単に「風化」とは言えないほどの迫真性がある。
指令員「当該列車の運転士はおらんか」/後続運転士「ぼくもさがしてるんですけど」
「いないの」/「いないんですよ。もう電車がグシャグシャで、どこが先頭車両か分からないんですよ」
「あーそ、そんなにひどいの」/「もうグシャグシャです」
「傾いているの」/「いいえ、そういう次元ではなくて」
「何が原因」/「僕が最初に思ったのは、車と衝突したように思うんですけど、どうも、その、ぶつかった相手の車のようなものがないんですよ、回りに何も」
「うん」/「電車の残骸だけが」
「うん」/「散らばっていて」
「うん」/「線路のフェンスが、フェンスが、あの、物が突き破って、車道の方にも電車が飛び出ているんですよ」
◇
JR脱線事故から25日で16年。新型コロナウイルス禍で安全管理と記憶の伝承にかげりはないか。岐路に立つ現状を2回にわけて追う。
【独自】商店会の男性「祭りで1万円頂きまずいと思った」…菅原前経産相に新たな現金提供疑惑
有権者に香典などを渡した公職選挙法違反事件で不起訴(起訴猶予)となり、検察審査会に「起訴相当」と議決された前経済産業相の菅原一秀衆院議員(59)に新たな現金提供疑惑が浮上した。菅原氏には地域行事で数千円~1万円程度を配っていた疑いがあり、行事の主催者らは取材に「ありがたく受け取った」「まずいと思った」などと口々に証言。東京地検特捜部も地元の東京都練馬区に検事らを送り込み、捜査している。
■盆踊りはしご
「車内で浴衣に着替えては、踊りに加わっていた」。後援会幹部の男性は、毎夏、選挙区内で開かれる盆踊りを「はしご」する菅原氏の精力的な姿をそう語る。
ただ、手ぶらで参加していたわけではなかったようだ。菅原氏が2019年頃まで盆踊りなどに参加していたというある町内会の会長は「お菓子や飲み物しか出していないのに、いつも5000円や1万円を置いていった」と証言した。
商店会の男性も「祭りで1万円を頂いた」と証言。「『会費』として受け取ったが、菅原さんはすぐに帰ってしまった。寄付にあたり、まずいと思った」と心境を吐露。例年の夏祭りで「菅原一秀」「会費」と書かれた現金入りの封筒を受け取ったという商店主男性は、「『いけないことだ』と思ったが、お釣りを渡すのは失礼ではないかと考え、できなかった」と気まずそうに話した。
現金を置いていくのは菅原氏に限らないとの声もあった。区西部の商店街で代表者を務める男性は「夏祭りでは、菅原さんだけでなく、都議や区議でも5000円程度の会費を払い、あいさつだけで帰る人もいる。現金提供は選挙のためではなく、地域への愛着からだ」と持論を展開した。
■帳簿提出求める
特捜部は東京第4検察審査会が2月に起訴相当の議決をしたことを受け、改めて刑事処分を行うために再捜査を始めた。関係者によると、特捜部は町内会や商店会、菅原氏と関係が深い団体の代表者らから事情を聞き、帳簿類の提出を求めるなどしているという。
町内会の旅行に例年参加している男性は今月に入り、特捜部から連絡を受けた。訪れた検事には、19年の旅行時に菅原氏から「行けないけど、参加費です」として現金入りの封筒を渡されたことを説明し、菅原氏の名前や日付、参加費を記した出納帳を提出。取材に「お金は町内会の活動費に充て、ありがたかったが、特捜部が来るとは……」と困惑気味に話した。
「こいつら、生きていてもしょうがない」 4年の取材と37回の接見で見えてきた“植松聖死刑囚”の実像とは
植松死刑囚との37回の接見、4年にわたる取材から、犯罪史に残る凶悪犯の実像と、彼を生んだ社会の闇が浮かび上がる……。
神奈川新聞取材班による書籍『 やまゆり園事件 』(幻冬舎)を引用し、植松聖死刑囚の犯した惨劇の実情を紹介する。(全2回の1回目/ 後編 を読む)
※本文中には、殺害の様子など凄惨な場面描写があるほか、植松聖死刑囚による障害者に対する差別的な発言がありますが、事実に即して掲載します。この事件の詳細を正確に伝えるとともに、差別の実態を明らかにするためです。また、登場する方々の敬称は原則、省略します。年齢、肩書きは一部を除き、2020年7月時点のものです。
◆◆◆
「しゃべれるか」確認して襲撃
26日午前2時ごろ、相模原市緑区の津久井やまゆり園。すでに多くの入所者が就寝し、園内は静寂に包まれていた。
東居住棟1階の女性専用「はなホーム」。部屋や廊下の照明は落とされ、非常灯と常夜灯だけがぼんやりと周囲を照らしていた。1時間に1回の巡回のため、夜勤担当の女性職員は支援員室を出た。脱衣所にあった洗濯物を片付け、112号室から順番に部屋を見て回ろうと考えていた。
110号室の前を通りかかった時だった。開いている部屋のドアから、入り口近くに置かれたタンスの前に座っている人影が目に入った。男が膝をついて何か作業をしているように見えた。入所者の男性だろうか。そう思ったのと同時に、部屋の奥の窓ガラスが割れているのに気づいた。フローリングには割れたガラス片が散らばっていた。
「誰?」。そう声をかけると、男は立ち上がって無言のまま近づいてきた。手には刃の細長い包丁が握られていた。侵入したばかりの植松だった。職員の腕をつかんで「騒いだら殺す」と脅し、2本の結束バンドで職員の両手首を縛り上げた。
部屋のベッドに横たわっている美帆さんは身動きせず、眠っているように見えた。植松は小さな声で言った。「こいつはしゃべれるのか」。職員が「しゃべれません」と答えると、植松は布団をはがして中腰のような姿勢で包丁を数回振り下ろした。美帆さんは「うわっ」と苦しそうな声を漏らした。刺し傷は上半身に計5カ所、深さは最大でセンチにも達していた。
植松は110号室から職員を強引に連れ出すと、111号室の前ですぐに立ち止まった。ドアの開いている室内には2人の入所者が寝ているはずだった。植松は部屋の方に視線を向けたまま、「しゃべれるのか」と再度尋ねた。「しゃべれません」。職員がそう答えると、あぐらをかいた状態で座り、上半身を台に預けるような姿勢で寝ていた女性の背中に2回、3回と包丁を振り下ろした。事件後に押収された包丁の1本は先端が欠けており、折れた刃先がこの女性の体内から見つかった。
その後も植松は職員を連れ回して会話ができるかどうかを確認しながら、話せない入所者を狙って次々と襲っていった。職員が「しゃべれます」と答えた部屋は素通りし、次の部屋へと足を向けた。犯行中、植松が「こいつら、生きていてもしょうがない」とつぶやくこともあった。
最後に再び110号室の前に連れ戻された。職員は両手の親指をまとめて結束バンドで縛られ、その間に通したもう1本のバンドで廊下の手すりにくくりつけられた。エプロンのポケットに入れていた職員用の鍵も奪われた。
「俺は昔、ここで働いていたんだよ。監視カメラがあっても、役に立ってないな」。職員を拘束する手は休めずに、植松はそう話した。面識はなかったが、職員の間でうわさになっていた男だと悟った。職員の口をガムテープでふさいだ植松は「つばを飲み込めば苦しくない」と言い残し、奥の支援員室へと姿を消した。
「宇宙から来た植松だ」
隣接する女性専用「にじホーム」の夜勤担当の女性職員は、わずかな異変を肌で感じ取っていた。
午前1時50分ごろ、支援員室でパソコン作業をしていたところ、「はなホーム」の部屋に設置されている集音マイクのスピーカーが人の叫び声や物音を拾った。入所者が騒いでいるのだろう。そう想像してみたが、なだめる職員の声が聞こえてこないのが気になった。
午前2時を回った。見回りに行くために書類や荷物の整理をしていた時だった。人の気配を感じ、ふと顔を上げると見知らぬ男が立っていた。キャップをかぶり、メガネをかけ、大きなバッグを肩にかけていた。
一体誰なのか。職員か、入所者か。全く見当が付かず、混乱する頭のまま椅子から立ち上がった。「親指を出せ」。突然、男は言った。手に血の付いた包丁と結束バンドを持っていた。
その瞬間、「はなホーム」の入所者が刺されたのかもしれないと怖くなった。その後の記憶はあいまいだ。男に抵抗してもみ合いになり、顔面を床に打ち付けた。メガネのフレームは折れ、下の前歯が欠けた。「早くしないと、手を切り落とす」と脅され、結束バンドで手首を縛られた。
植松は「はなホーム」の時と同じように職員を連れ回す手口で話せるかどうかを確認しながら、寝ている入所者を包丁で刺していった。植松の意図に気づいた職員は機転を利かせ、会話ができない人でも「しゃべれます」とうそをついた。何人かが難を逃れた。
不審に思ったのか、しばらくすると植松は職員に確認しなくなった。寝ている入所者に「おはようございます」などと自ら声をかけ、相手の反応をうかがうようになった。
「こいつ、しゃべれないじゃん」。植松はそう言って腕を振り下ろした。当初は心臓を狙うために胸部を刺していた。だが、あばら骨に当たって包丁の刃が曲がったり折れたりしたため、途中から首付近を狙うようになっていた。
「あなたは誰なんですか。どうしてこんなことをするんですか。障害者にも心はあるんだよ」。職員が泣きわめきながらやめるように訴えても、植松は手を止めなかった。
「宇宙から来た植松だ。こんなやつら、生きている意味はない」
入所者名指し「殺さないとな」
カチッ。
午前2時17分ごろだった。東居住棟1階の女性専用「にじホーム」と西居住棟1階の男性専用「つばさホーム」をつなぐ渡り廊下の扉の鍵が開く音が聞こえた。
こんな時間に誰だろう。鍵は職員しか持っていない。確認するために扉の方へ歩いていくと、廊下に伸びる人影がどんどんこちらに近づいてくる。支援員室と庭の外灯の光がわずかに差し込む薄暗さの中で、「つばさホーム」の男性職員は目をこらした。目の前まで来てようやく分かった。5カ月ほど前に園を退職した植松だった。
いつもそうだったように、愛想笑いのような半笑いを浮かべていた。植松は肩にかけていたバッグを下ろし、職員に向かって言った。
「鍛えておけって言ったろ」
はっとした。植松がまだ園で働いていたころ、四肢不自由の入所者の入浴介助を一緒にしたことがあった。その時、植松から「もう少し体を鍛えておいた方がいい」と言われたことを思い出した。
植松は職員の手をつかんで壁際に立たせ、目の前で白くて細い棒状のものを左右に振りながら、「もう殺しているから」と言った。すぐには言葉の意味が理解できなかった。だが、廊下に黒い点がぽつぽつと続いているのが目に入り、植松の足元で途絶えているのを見て全てを察した。
手には包丁が握られていた。「縛るから」。植松がそう言うとすぐに手首をきつく締め付けられる感覚があった。その瞬間、細い棒状のものは結束バンドだったと理解した。職員を手すりに縛り終えると、植松は「これで逃げられたら、君はすごい」と笑った。「自分の塀の中の暮らしはこれから長いと思うけど、まぁお互い、いい思い出にしようよ」と続けた。
その後、植松は近くの部屋を指差し、「ここ誰?どんな人」と聞いた。職員が「目が見えない、耳も聞こえない人です」と答えると、「分かった」と返事をして包丁を握りしめたまま部屋の中に入っていった。すぐに、布団の上に人を落としたような「ばさっ」という音が3回ほど響いた。直後、「うう、うう」という苦しそうなうめき声が聞こえてきた。
「あいつ、どこにいる?わっと怒るやつ。あいつは殺さないとな」。部屋から出てきた植松はそう言って、早足で別の部屋へ向かった。かつて、「つばさホーム」で支援をしていた時期があった。
しばらくして、「うわあ、あー」という悲鳴が何度か聞こえた。不明瞭な発音から植松が名指しした入所者だとすぐに分かった。拘束されている職員のところまで戻ってくると、植松は言った。「よかった、ちゃんといるね。いなかったらどうしようかと思った」
「すぐ来て。やばい」
植松が部屋を回って襲撃を繰り返している隙を見て、職員はポケットにあったスマートフォンから園近くの職員寮に住む同僚にLINEでメッセージを送っていた。
「すぐ来て。やばい」。午前2時21分ごろだった。
職員は緊迫した状況下でSOSのサインを出し続けた。同僚の携帯電話には最初のメッセージから10分後の午前2時分ごろに「わ」、その2分後に「きたかあさはらう」。続けて「てんさく」という意味不明のメッセージが送られてきた。職員は靴と靴下を脱ぎ、床に落としたスマートフォンに足の指で「けいさつ」と打とうとしていた。午前2時38分、異変を感じ取った同僚による最初の110番通報につながった。
どれくらいの時間がたったころだろうか。隣接する男性専用「みのりホーム」の男性職員がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。背後には植松の姿があった。包丁を突き付けられ、同じように結束バンドで手すりに縛り付けられた。「これから厚木とかにも行っちゃうからね」。植松の発した言葉が、身体と知的の重複障害のある人が入所する系列の障害者施設を指していると直感し、思った。そこの入所者も殺すつもりなのだ、と。
植松は支援員室に入り、パソコンを操作して夜勤に入っている職員をチェックした。自分より体格のいい人物がいないことを確認するためだった。その間、わずか数分。植松は階段を使って西居住棟2階の男性専用「いぶきホーム」へ足を向けた。
「こういう人たちっていらないですよね」
午前2時半ごろ、エレベーターホールの出入り口の鍵の開く音がした。支援員室の外にあるベンチで休憩中に携帯電話を眺めていた「いぶきホーム」の男性職員はさほど気に留めなかった。翌朝開かれる職員会議の資料をつくるために他の職員が早めに出勤してきたのだろうと考えたからだ。
少しずつ近づいてくる足音は、目の前で止まった。ポタポタと滴(しずく)が床に落ちる様子が、携帯電話を見つめる視界の端に入った。視線を上げた瞬間、植松だと分かった。一緒のホームで働いたことはなかったが、顔だけは知っていた。
額は汗でぐっしょりとぬれ、肩を大きく上下させて荒い息をつき、にやにやとした薄笑いを浮かべていた。血の付いた包丁を握り、刃先をこちらに向けていた。脳裏に死がちらついた。「動かないでくださいね」。植松は丁寧にそう言って、まず職員の携帯電話を取り上げた。壁に向かい合うように立たせ、結束バンドで廊下の手すりに職員を縛り付けた。
植松はすぐに大股で入所者の部屋に入っていった。扉の開く音に続いてうめき声や叫び声が次々に聞こえてきた。その声は静かなものもあれば、絶叫に近いものもあった。いくつかの部屋を回り、戻ってきた植松は近くの部屋を指さして「この人はしゃべれるんですか」「隣の部屋はどうなんですか」などと矢継ぎ早に尋ねた。職員が「しゃべれません」と答えると、植松は「こういう人たちっていらないですよね」と言いながら背中を向け、その部屋へと歩いていった。その後も扉が開く音とうめき声が交互に繰り返された。
目の前の廊下は一面が真っ赤に染まっていた
5番目に襲われた「いぶきホーム」の死傷者数は計15人。襲撃された6つのホームの中で最も多かった。「それまでに刺した人数があまりに少ないな、と」。裁判の被告人質問で植松はそう語り、手当たり次第襲っていた実態が浮き彫りになった。
植松が最後に向かったのは、「いぶきホーム」に隣接する男性専用「すばるホーム」。夜勤の男性職員が支援員室でパソコン作業をしていると、「いぶきホーム」側の扉が開いた。仮眠を取っていた別の夜勤職員が戻ってきたのだと思い、顔を向けるとキャップをかぶった見知らぬ男が立っていた。血の付いた包丁を手に持ち、「心配ないから」とだけ言った。身の危険を感じた職員は何も答えず、椅子から立ち上がると同時に、開いていた反対側の扉の方に駆け出した。
廊下に飛び出す際に後ろ手で扉を閉めようとしたが、植松に手をかけられ拒まれた。「すばるホーム」の奥へと無我夢中で逃げた。「大丈夫」と声をかけながら、植松がすぐ後ろから迫ってくる。空いている奥の部屋に逃げ込み、中から引き戸の取っ手を必死で押さえた。植松は3回、4回と無理やりこじ開けようとしたが、やがてあきらめたようだった。
「じゃあ、いいや」。引き戸の向こうから、そんな声がした。
持っていた携帯電話で110番通報している間にも、近くの部屋から入所者のうめき声が絶え間なく響いてきた。発信履歴の時刻は午前2時45分だった。しばらくたってから職員が部屋の外の様子をうかがうと、植松が握りしめた引き戸の取っ手には血がこびりつき、目の前の廊下は一面が真っ赤に染まっていた。
犯行終了、ツイッター更新
午前2時48分。園に設置された防犯カメラに、正門から敷地外の路上に向かって歩く植松の姿が記録されていた。園内に侵入した午前1時43分から1時間余りで、入所者19人が殺害され、職員2人を含む26人が重軽傷を負った。犠牲者の大半が首を刺されたことによる失血死だった。持ち込んだ5本の刃物のうち、2本が園内から見つかった。
午前3時5分ごろ、植松は園から東に約7キロ離れた県警津久井署に出頭した。犯行後、自首することは決めていた。「錯乱による犯行ではない」とアピールすることで、「意思疎通のできない障害者は安楽死させるべき」という自身の主張の正当性を社会に訴える狙いがあった。逮捕後の調べに対し、植松は被害者への謝罪を口にすることはなく、障害者への独善的な主張を繰り返した。
《世界が平和になりますように。beautiful Japan!!!!!!》
犯行直後の午前2時50分、植松は自身のツイッターでそうつぶやいた。金髪で、黒のスーツに白いワイシャツ、赤いネクタイ姿。メッセージに添えられていたはにかんだ笑みを浮かべる自撮り写真は、植松が2時間ほど前に用意した画像だった。
計画は完遂された。刃物による殺人事件の犠牲者数としては戦後最悪という結末で。
「ずいぶんイカれてますね」植松死刑囚が獄中で残した奇怪な手記・イラストの数々 へ続く
(神奈川新聞取材班)
新型コロナ検知アプリ「COCOA」の新たな不具合を厚労省が放置していた
新型コロナウイルスの感染再拡大の勢いが収まらない。
そんななか、開催に向けて暗雲が垂れ込めているのが、3ヶ月後に迫った東京オリンピック・パラリンピックだ。すでにスタートしている聖火リレーに対しても賛否両論が渦巻いているが、新型コロナの「第4波」は世間の「五輪不要論」に拍車をかけている。
加えて、開催に向けてネックになりそうなのが、厚生労働省が運用する新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」についての問題である。
COCOAについては、すでに不具合の報告が相次ぐなどトラブルが続出しているが、もう一つ、「スポーツの祭典」の本番を迎えるまでに解消すべき課題も浮き彫りになっている。
厚労省はCOCOAの不具合を4月になってもなお放置
それは、中国企業「華為技術(ファーウェイ)」社が製造するスマートフォンをめぐる問題である。
「Android(アンドロイド)を搭載するファーウェイ社製のスマホにCOCOAがインストールできなくなっているのです。トラブルが明らかになったのは今年2月。アンドロイド版のCOCOAに、新型コロナの陽性登録をしたアプリ利用者と接触したにもかかわらず、検知しないという不具合があることが分かったのです。障害は昨年9月から続いており、実に4ヶ月以上も問題が放置されていました」(全国紙社会部記者)
このトラブルは国会でも問題となり、今年1月21日の衆議院本会議では国民民主党の玉木雄一郎代表が代表質問で取り上げている。
玉木氏は、菅義偉首相に対して、「かねてから指摘しているファーウェイ社のスマホにCOCOAがインストールできないという仕様はいつまでに改善されるのか」と質問を投げかけた。さらにその場では、ファーウェイ社から事態改善への要請を受けながらも、厚労省が一切の対応をしていないことも明らかにされた。
菅首相は、「ファーウェイ社のスマホへの搭載については、技術面を継続して情報収集しつつ、精査してまいります」と述べるにとどめたが、筆者の調べで、驚くことに五輪本番まで3ヶ月に迫った4月の段階でも問題を放置したままであることが明らかになった。
「厚労省は問題を解決する気がないのでは」
「ファーウェイ側は問題が発覚した直後から厚労省に対して技術的な解決策を提示しているが、厚労省側からは今までのところ何の回答も得られていません」
こう明かしたファーウェイの関係者は、厚労省側の無策ぶりについて、さらにこう糾弾する。
「タイミングが悪いことに、この問題が明らかになった後の3月、通信アプリ『LINE』の利用者の個人情報が中国の関連会社からアクセス可能な状態になっているという問題が新聞報道で明るみに出ました。この件で、かねてから中国韓国に忌避感を抱いている層からの風当たりがさらに強まった感はありますが、そもそも暗号化されたデータは厚労省で管理しており、個人情報漏れの懸念が技術的に存在しないことは明白です。そのあたりの事情は、厚労省がきちんとアナウンスすればいいだけの話なのですが、そうした対策を取る気配もない。問題を解決する気がないのでは、と疑わざるを得ない状況です」
厄介なのは、このトラブルが、国内だけの問題に留まらない点だ。ファーウェイ社のスマホは、昨年、世界シェアで1位に躍り出るなど、国内外に多くのユーザーを抱えている。
さらに、COCOAのアプリをダウンロードするためには、アンドロイド端末に標準装備されている米IT大手「Google(グーグル)」が提供するアプリストア「Google Play(グーグル・プレイ)」が必要となるのだが、中国国内はグーグルのサービスエリアから外れているため、ファーウェイ社のみならず、小米科技(シャオミ)など中国メーカーのスマホは軒並みアプリを使えないという事態に直面するというのだ。
ファーウェイ側が解決策提示も厚労省側からは「なしのつぶて」
ただ、前出のファーウェイ関係者によると、ファーウェイ側はすでに同社の端末だけでなく、中国の他のメーカーのスマホでも汎用できる解決策を厚労省に提示しているが、いまだに厚労省側からは「なしのつぶて」の状態が続いているのだという。
この問題を取り上げた国民民主党の玉木氏は、菅首相にこうも問いかけている。
「中国ではシェア4割を占めるファーウェイ社のスマホにCOCOAがインストールできない現状を放置したままでは、安全なオリンピックの開催などできないのではないですか」
一連の問題について、厚労省は文春オンライン編集部の取材に対して、「スマートフォン端末メーカーとは必要に応じて意見交換を行っておりますが、個別の企業との具体的なやりとりについては回答を控えさせていただきます」「我が国において2019年以前に発売された同社(ファーウェイ社)端末では、現時点でも接触確認アプリをご利用いただくことができます」と回答した。
あらわになった怠慢行政の弊害。新型コロナの変異株という新たな脅威も迫るなか、逆風にさらされる「五輪の火」は、いよいよ頼りなげに細く小さく揺らいでいる。
(安藤 海南男)
【独自】火力発電、脱炭素化で縮小加速…10年で原発13基分減少
世界的な脱炭素化の流れを受けて、国内の火力発電所の設備容量は2030年度までに1322万キロ・ワット分減る見通しだ。減少は原子力発電所13基分に相当し、26~30年度の5年間は火力の新設がゼロになる。現在は電気の7割を占める火力への依存度を引き下げるため、原発など代替電源の確保が課題となる。
■8%分
経済産業省が、電力大手などの火力発電所を対象に、新設と廃止に伴う30年度までの発電容量の変化を推計した。21~25年度は操業45年を超えた石油や石炭、天然ガスの計1885万キロ・ワット分が廃止され、比較的二酸化炭素(CO2)排出が少ない天然ガスや石炭の高効率火力が1444万キロ・ワット分導入される。26~30年度は新設予定がなく、881万キロ・ワット分が廃止される計画だ。
廃止から新設を差し引き、減少は今後10年で計1322万キロ・ワット分に達する。20年3月末時点の火力発電容量は約1億7000万キロ・ワットで、今後10年の間に8%分が失われることになる。
欧州の一部では火力発電の全廃を求める意見がある。火力発電から出るCO2を回収する実証実験も進むが、経産省幹部は「新設しづらい傾向が強まり、火力発電はさらに減る可能性がある」と打ち明ける。
■新設を断念
すでに、民間では新設を断念する動きが出ている。
電力大手の電源開発は今後10年で、CO2排出の多い石炭火力の休廃止を進め、発電容量は現在の計800万キロ・ワットから4割少ない500万キロ・ワット程度になると見込む。山口県で計画中だった石炭火力の建設断念を今月発表し、新設計画はなくなった。