【中継】煙突折れ崩落…日本製紙八代工場 5人死亡、4人安否不明…捜索活動続く

一時11人が閉じ込められた八代市の日本製紙の工場では、5人の死亡が確認され、いまも4人の安否が分かっていません。現場から中継です。
現在も警察と消防による懸命な活動が続けられています。
私の左手奥に崩落した煙突が確認できます。目を凝らしますと、先の方は折れた痕がみてとれます。ただ折れた先はこちらからは確認できず、下に落ちているものとみられます。
28日午後、八代市の日本製紙八代工場では煙突が折れて崩落しました。上空からの映像では、折れた煙突がプラントの上に落下している様子が確認できます。
崩落した煙突の巻き添えとなったのか、熊本県などによりますと、一時11人が閉じ込められたということです。このうち7人が救助されましたが、5人の死亡が確認されました。2人は中等症で、いまも4人の安否がわかっていません。
11人がどこで閉じ込められたかなど詳細については明らかにされていませんが、消防車両が並んでいて現在、懸命な捜索活動が続けられています。
ただ29日も日中は立っているだけでも汗ばむ暑さとなっていて、取り残された方の体調が案じられます。

住民「命の危険感じた」=神社拝殿は倒壊、名勝も木片飛散―熊本県八代市

震度6強の揺れに襲われた熊本県八代市では、神社や名勝の建物も崩れるなどした。住民らは「命の危険を感じた」「立っていられないくらいだった」と口々に語った。
安否不明者の捜索が続く日本製紙八代工場近くで商店を営む松岡俊英さん(71)と妻の明美さん(68)は、工場から避難してきた従業員らに店の飲料水やアイスクリームを振る舞った。これまでも多くの従業員に利用してもらっていたといい、「生きていてほしい。助かってほしい」と祈った。
国の名勝「松浜軒」は、建物の外壁が剥がれ落ち、周囲にガラスや木片が飛び散った。近所に住む男性(78)は2016年4月の熊本地震を思い起こして「10年前は耐えていた」と唇をかみ、「前回の地震よりも大きな揺れに感じた」と話した。
「余震が続いていたので、家にいる方が心配だった」。主婦の長瀬邑緋さん(26)は、3人の子どもと庭園の近くの駐車場で車中泊した。「子どもが泣いたりしてうるさくなるかなと思った」と避難所には行かなかった。慣れない環境に「体が痛くて寝られなかった」と語った。
自宅マンションが被災し、夫(87)と車中泊した女性(87)は「(食器棚などが倒れ)足の踏み場もなかった。命の危険を感じた」と回想した。
市役所の近くの神社「八代宮」の禰宜(ねぎ)竹原正崇さん(49)は、拝殿が崩壊する瞬間を目の当たりにし、「柱が傾いて、スライドするように崩れた」と振り返った。16年の熊本地震からの復興が進む中、「またかという気持ちだ」と肩を落とした。
八代市で生まれ育った鷲山和史さん(48)は、変わり果てた八代宮を見ながら「感情もない。元に戻るのだろうか」と言葉を詰まらせた。「毎年、参拝に来ていたので残念」と無念な思いを明かす一方、「今は自分より大変な状況の人もいる。これから友人の職場の片付けを手伝いに行く」と力を込めた。 [時事通信社]

「必要な支援いつでも」 熊本地震、25の国・地域などお見舞い

熊本県で28日に最大震度7を観測した地震を受け、少なくとも25の国・地域と国際機関が日本政府にお見舞いのメッセージを送った。外務省が29日午後1時時点で集計した。6月の地震で5000人以上の死者を出し、日本から医師らが派遣された南米ベネズエラからもお見舞いがあった。
お見舞いを送ったのは米英独加豪印、フィリピン、トルコ、エジプトなど計23カ国・地域と、国連などの2機関。イタリアのメローニ首相はX(ツイッター)で「日本国民に深い連帯を表する。災害に遭った皆様と懸命に救援活動に取り組む皆様に心を寄せている」と投稿した。
台湾の頼清徳総統もXで「台湾と日本は苦難を共に乗り越えてきた真の友人だ。必要な支援があればいつでも協力する」と、日本語と中国語で呼びかけた。
外務省幹部は「多くの国などから温かい言葉や申し出があるのはありがたいの一言に尽きる」と感謝した。【田所柳子】

冷房のある教室を避難所に=文科省が自治体に通知、活用促す―熊本震度7

文部科学省は29日、熊本県内で最大震度7を観測した地震を受け、冷房設備のある普通教室を避難所として活用するよう自治体などに求める通知を出した。主な避難所となる体育館に冷房が設置されていない学校が多いことを踏まえ、避難者が熱中症にならないよう対応を促す。
同省の2026年度の調査では、避難所に指定されている公立小中学校で、冷房が付いている体育館や武道場の割合は全国で33.1%、熊本県では20.9%にとどまった。一方、普通教室の冷房設置率は高く、同年度に全国で99.6%、熊本県では100%だった。 [時事通信社]

警察庁、熊本地震に便乗した詐欺に注意喚起 義援金名目で電子マネーなどだまし取る手口

警察庁は7月29日、令和8年熊本地震に便乗した「悪質事犯」への注意をXで呼び掛けた。不審な電話やSNS、訪問に警戒するよう促し、寄付先が不透明な募金は詐欺の可能性があるとしている。
警察庁が特に懸念するのが、被災に関連した詐欺だ。公的機関や災害支援団体などをかたり、義援金の募集を名目に現金や電子マネー、暗号資産をだまし取る手口を挙げた。被災者の身内や友人を装って困窮を理由に送金を求めたり、警察官を装って震災に関連した理由で送金を求めたりする詐欺にも警戒を促している。
こうした手口以外でも「怪しい」と思ったら、最寄りの警察本部や警察署、警察相談専用電話「#9110」に相談するよう呼び掛けている。

「プッシュ型」で支援物資を被災地へ…熊本地震、クーラー300台を自衛隊機で空輸計画

熊本県を震源とする地震の発生を受け、政府は、被災地からの要請を待たずに支援物資を送る「プッシュ型支援」に注力している。2016年4月の熊本地震の経験をいかしつつ、今回は真夏に起きたことを踏まえ、熱中症対策にも重点を置く。
高市首相は29日、首相官邸での非常災害対策本部会議で「被災者や被災自治体のニーズを的確に把握し、熱中症対策を含めて良好な避難所環境の確保に全力であたってほしい」と要請した。「プッシュ型支援に各省庁の力を結集して取り組んでいる」と強調した。
停電が発生している被災地もあり、被災者や救助活動にあたる人の熱中症対策が急務となっている。政府は、水や食料に加え、クーラーや電源車を送るプッシュ型支援を始めている。小泉防衛相は29日、航空自衛隊機でクーラー約300台を熊本県に空輸したと発表した。車中泊で必要となるガソリンの供給にも万全を期す。
プッシュ型支援は、政府の対策としては16年の熊本地震で初めて実施された。首相周辺は「ノウハウが蓄積されており、円滑に物資を届けられるはずだ」と語る。
自衛隊は約4600人態勢で救助や給水支援にあたっている。小泉氏は防衛省・自衛隊幹部を集めた会議で「できることは全てやるという決意のもと、全力で活動を実施してほしい」と指示した。

イオンモール爆発、なぜ起きた? 専門家「漏れたガスが充満か」

熊本県を襲った地震後に、大型商業施設「イオンモール熊本」(熊本県嘉島町)で起きた爆発。天井や外壁が広範囲にはがれ落ちるほどの爆発が、なぜ起きたのか。
テナントが並ぶ吹き抜けの通路には、崩落した壁の破片やがれきが床一面に散乱していた。
大規模な爆発から一夜明けた29日午前8時半ごろ、熊本県警の警察官がイオンモール熊本の内部に入った。警察庁が公開した約1分間の映像は2階部分とみられるエスカレーター付近の広場から撮影したもので、大きく損傷した天井部分から配線のようなものが何本も垂れ下がる様子が映っていた。
建物の骨組みはむき出しになり、店舗も原形をとどめておらず、爆発の衝撃の大きさを物語っているようだった。
10年前の地震後に大幅改修
イオンモール熊本は2005年10月に開業した大型ショッピング施設。16年の熊本地震でも被災し、18年に大幅に改修した。
地上3階建ての鉄骨造で、延べ床面積は約12万平方メートル。1階と2階に衣料品店や飲食店などのほか、映画館やクリニック、保育園など約200のテナントが入る。イオンによると当時、客が約3000人、テナントを含め従業員が1300~1500人いたという。
爆発はマグニチュード7・1の地震から約1時間20分ほどたった28日午後5時45分ごろ、モールの南側中央部付近で発生した。
木原稔官房長官は29日の記者会見で「(爆発の)原因については詳細を調査中」とした上で、「昨日(28日)の消防、警察による捜索時には建物内でガス臭がしたという報告が入っている」と明らかにした。
バックヤードで漏えい?
茂木俊夫・東京大大学院教授(安全工学)は「何らかのガス設備から漏えいした可燃性ガスが、店内やバックヤードにたまり、何らかの原因で着火して爆発に至ったと考えられる」という見立てを示す。
モール内は、通路やエスカレーターなど客が往来する中央エリアを取り囲むように各店舗が配置され、1階と2階は広大な吹き抜けになっている。
広い空間全体に爆発を起こすだけのガスが充満したとは考えにくく、茂木教授は「従業員が利用するバックヤードにガスが漏えいしたのでは。窓がほとんどない構造なので、内圧が上がって壁を吹き飛ばし、屋外や店舗内に爆風が発生したと考えられる」と語った。東京理科大の桑名一徳教授(火災科学)も「閉鎖空間に可燃性ガスが充満しないと今回のような爆発は起こらない。そこに着火すると、気体が一気に膨張し、壁を吹き飛ばして爆風が伝わっていく。この伝播(でんぱ)は1秒足らずの一瞬で起こる」と解説する。
ガス臭、捜索の妨げにも
では、ガスはどこから漏れたのか。熊本県LPガス協会によれば、現場周辺は都市ガスが通っていない。イオンによると、モールの建物の近くにLPガスを最大9367キログラム貯蔵できるタンクがあり、供給管を通じて館内へガスを運び、調理や空調に使用していた。
イオンによると、損傷が最も激しかった2階南側中央部に飲食店はないが、フードコートなどにつながる供給管は通っていたという。
ただし、地震の揺れで自動的にガス供給を止める遮断弁を、タンク側と飲食店側にそれぞれ設置していた。供給管は16年の熊本地震で被害を受けず、今年3月の自主点検や6月の法定点検でも異常は確認されなかったという。
仮にLPガスが漏れていた場合、茂木教授によれば、LPガスは空気中に2・1~9・5%混ざると燃焼、爆発するという。「火災に至っていないところを見ると、比較的低い濃度だったのでは」とみる。
東京理科大の大宮喜文教授(建物防火工学)は「LPガスは床にたまるので充満しやすい。地震発生後の1時間に相当たまっていたと想定される」と話した。
イオンモール熊本で、警察や消防などは夜通し捜索活動に当たったが、当初は内部にガスが充満しているとの情報があり、2次被害を警戒し本格的な活動ができなかった。夜が明け、ガス臭が収まってきたため、被害の少ない場所から内部に進入できたという。隊員たちは不明者の本格的な捜索に向け、被害状況の把握を進めた。【荒木涼子、阿部絢美、木許はるみ、深津誠】

専門家「新しい気象庁のデータを見ると、活動域が南西方向に広がっている」2つある活断層その関連性は?【熊本で震度7】

きのう(28日)、熊本県で発生した最大震度7の地震について、2016年の熊本地震と比べて、どういった特徴があるのか、TBS災害担当の福島解説委員の解説です。
“相次ぐ倒壊”震源の深さが影響か
井上貴博キャスター: 28日に発生した熊本の地震は、局所的に被害が集中しました。これは「震源が浅かったから」とみられています。
・八代城跡:建物など倒壊 ・JR八代駅:機関車が脱線・横転 ・日本製紙八代工場:煙突が崩落 ・住宅が倒壊など ・高速道路が隆起
地震発生時の様子を聞くと、「縦揺れ(いわゆるドーンと突き上げられる)というよりも、横揺れが続いた」と話す方がいました。
被害の大きい場所では1mの横揺れ、その横揺れが1秒間に10回ほどあったのではないかと考えられ、特に断層の上の市街地が大きな被害を受けたということです。
東京大学地震研究所の笠原順三名誉教授は、「震源の深さ16㎞、比較的浅い場所で発生した地震。大きい横揺れが地上にそのまま伝わったことが考えられ、場所によっては1mほどの揺れ幅だったと考えられる」といいます。
八代市では住宅などが倒壊するなど、断層沿いに被害が集中しています。日本製紙八代工場では煙突が崩落。地上付近と上部で大きく揺れ方にズレがあって持ちこたえられず、煙突が折れたのではないかというのです。
熊本に2つある活断層その関連性は?
井上キャスター: 熊本県のあたりには、「布田川断層帯」と「日奈久断層帯」があり、10年前の2016年に起きた地震もこのあたりに被害が発生しました。
・2016年4月14日:M6.5最大震度7 ・2016年4月16日:M7.3最大震度7 ・2026年7月28日(午後4時27分ごろ):M7.1最大震度7
TBSテレビ福島隆史解説委員: 28日、震度7を観測した地震は、「日奈久断層帯」と呼ばれる、全国でも有数の活断層のすぐそばで起きました。
10年前の2016年も震度7の地震が2回発生しましたが、最初の地震、つまり前震(2016年4月14日)が起きた場所も「日奈久断層帯」が関与したとみられています。
その2日後(2016年4月16日)に起きた本震も最大震度7を観測しましたが、この地震は、「布田川断層帯」が関与したとみられています。
今回、28日に発生した地震は「日奈久断層帯」の南側で起きたということになります。
2016年、大きな「日奈久断層帯」のごく北側の一部が活動しました。一方、南側は比較的静かだった。
地震研究者の間では、南側の地震活動が今後どうなるのかというのが、10年前から注目ポイントだった。
今回、その南側でマグニチュード7という規模の大きい地震が起きた。ここが非常に大きな注目点です。
2016年の地震と関連があるかは、29日の地震調査委員会で議論し、評価されると思います。
井上キャスター: 専門家からすると、今後連動していくのかどうか。
TBSテレビ福島隆史解説委員: 静けさを保っているところが不気味なんです。新しいデータによると、28日夜までは、震度7をもたらした地震活動は、主にこの(日奈久断層帯)北側で起きていたのですが、29日午後1時までの新しい気象庁が出したデータを見ると、この活動域が震度7の地震の南西方向に広がっている。これが特徴として挙げられているため、おそらくこれも地震研究者はものすごく注目していると思います。
活動域が広がっている、しかも心配していた南側に広がっているのが注目ポイントです。
今後30年の地震発生確率最も高いランクにある活断層は全国に36か所も
井上キャスター: 今回、日奈久断層帯の付近で発生した地震は、地震発生確率が最も高い「Sランク」3%以上だったということです。
【今後30年の地震発生確率】 ・Sランク:3%以上 ・Aランク:0.1~3%未満 ・Zランク:0.1%未満 ・Xランク:不明(すぐに地震が起きることが否定できない) (地震調査委員会より)
今後30年の地震発生確率3%以上の、Sランク活断層は全国に36か所もあるということです。(2026年1月時点)
TBSテレビ福島隆史解説委員: 30年で3%と言われても、切迫しているとは思いづらいですが、▼火災の被害に遭う確率は1.1%、▼台風や大雨で被害に遭う確率は0.3%程度といわれていますので、それよりもはるかに高い。そんな高い確率の活断層が全国に36か所もあるのです。
========== <プロフィール> 福島隆史 TBS解説委員(災害担当)長年、気象庁を担当 日本災害学会副会長

熊本の被災地に「水洗トイレカー」を派遣 断水続く地域などで活用へ 大阪府

28日に発生した最大震度7の熊本地震を受け、大阪府は「水洗トイレカー」を熊本県の被災地へ向け派遣しました。 府によりますと、「水洗トイレカー」の府外への派遣は初だということです。29日午後、大阪府庁から熊本県八代市へ向けて出発したのは、府が所有する自走式水洗トイレカー1台と、現地で対応にあたる職員4人です。 大阪府は災害時、断水により避難所などで深刻な課題となるトイレ環境の改善を目的として、2025年から多目的室などを備えた自走式水洗トイレカーを導入しています。 府によりますと、今回の派遣は熊本県八代市からの要請を受けたもので、トイレカーは八代市役所を目指して現地に入り、その後、断水が続く地域に配備されるということです。 トイレカーには、男性用・女性用それぞれが設置されていて、また、おむつ交換台やオストメイト用便器なども備わった多目的室もあるということです。 大阪府は、追加の派遣要請がある可能性をふまえ、同様のトイレカーを導入している市町村に対しても、出動準備を依頼しているということです。

「“睡眠不足”をアピールする危機管理」「もう時代遅れ」とさまざまなツッコミも…高市首相が支持率急落のタイミングで投下した、“それでも家事もこなす私”の狙い

遂に出ました陳述書!
国会閉幕ぎりぎりでようやく提出。ここまで引っ張られた以上、ちゃんと読むのが提出した側への礼儀でしょう。
木下剛志氏の陳述書の中身
これは、高市早苗首相を巡る中傷動画作成・拡散問題について、国会答弁の代わりに提出された地元秘書・木下剛志氏の陳述書である。
全文を読むと、一つ特徴がある。
・「受け身」だった出来事は、比較的具体的に覚えている。
・一方で、「記憶がない」「確証が持てない」という表現が増える。
例えば、
「学者の紹介で会った」
「オンラインミーティングをした」
「提案書を受け取った」
「ネット配信を見て驚き、相手に連絡した」
など、自分が受け身だった出来事は比較的具体的に説明している。
ところが、自分の認識や関与が問われる場面になると、「記憶していません」「記憶がありません」「確証を持てません」が何度も出てくる。
さらに気になったのは「記憶がない」が続く一方で、
「中傷動画は依頼していない」
「暗号資産として発行するという説明は一度も受けていない」
という部分はとても断定的に書かれていることだ。では「記憶がない」と「断定できる」の境界は何なのか。その線引きこそ、本来は国会で直接説明してもらいたかったところだ。
ちなみに、週刊現代でこの問題を追及してきた河野嘉誠氏の質問への回答を読み返すと、陳述書の説明とは時系列が食い違うように思える箇所もあったという。前述した違和感は「何を覚えていたのか」から「いつ覚えていたことになっているのか」という疑問へと広がってきた。
思わず笑ってしまった箇所もある。松井健氏とのオンラインミーティングについて、木下氏はこう書いている。
「後日、ご紹介いただいた方には、『何か具体的にお願いすることはなかった』という趣旨をお伝えした記憶があります」
その記憶はあるんだ!
今度はもう一つの「陳述書」が現れた
ここまで読むと、紙より本人に聞きたくなる。それをやる場所を、たしか国会と呼んでいた。木下秘書は陳述書の最後で、訂正された国会答弁について、「就寝中だった」などと説明している。その程度の確認で国会答弁になってしまうものなのか。
……と思っていたら、今度はもう一つの「陳述書」が現れた。投稿先は国会ではなくX。
高市首相が書いたのは、「寝ていない」という話だった。「0時間~3時間睡眠が常態化」「風呂掃除」「洗濯」「アイロン」「裁縫」。一見すると近況報告のように見える。
この投稿には同情だけでなく、さまざまなツッコミが集まった。
「寝ていない自慢は、もう時代遅れではないか」「本当なら睡眠不足で重要な判断をするほうが心配だ」「働き方改革を掲げる首相の発信として矛盾しているのではないか」「自衛隊の最高指揮官が『寝ていない』と発信するのは危機管理上どうなのか」
どれも納得の指摘に思える。

一方で、こうも言えないか。これは単なる近況報告ではない。一つの「物語」だ。
「国のために身を削り、それでも家事もこなす私」
そんな主人公が、この文章にはいる。
気になったのは、読んでいると「私」という言葉が何度も浮かんでくることだ。私が資料を読む。私がメールを処理する。私が洗濯をする。私が裁縫をする。主人公は、ずっと「私」である。官邸チームや秘書官、官僚の姿はほとんど見えない。語られているのは政策そのものではない。「どれだけ頑張っているか」という物語だ。
近年は「政策」そのものより「誰が語るか」が支持を左右する「物語の政治(ナラティブ)」が語られることがある。今回の投稿も、政治家自身が「物語」を発信する一例のように思えた。
長年こだわってきた国旗損壊罪もそうだ
もう一つ気づいた。この投稿が伝えようとしているのは、「骨太方針で何を変えたか」という政策ではない。最後の「明日から又、頑張れます!」まで含めて、情報より感情が前に出る文章だった。
実は、この「まず感情から入る」という政治スタイルは、今回のXだけではないようにも思える。

例えば、高市首相が長年こだわってきた国旗損壊罪もそうだ。「外国の国旗を損壊すると処罰されるのに、日本の国旗だけ処罰されないのはおかしい」。感情としてはわかりやすい。しかし刑法学者は、外国国旗損壊罪は外交関係を保護するための規定であり、日本国旗とは立法事実が異なると繰り返し指摘してきた。
奈良のシカの発言もそうだった。まずわかりやすい物語があり、その後から事実確認の議論が追いかける。今回のXも、そう読めた。
木下秘書は説明を求められて陳述書を書いた。高市首相は共感を求めてXを書いた。一方では「記憶がありません」が繰り返され、もう一方では生活の細部が驚くほど具体的に語られる。説明を求められることはあまり語らない。共感を集めることは自分の言葉で詳しく語る。その対照は、いまの高市政治を考えるうえで印象的だった。
もちろん、政治には物語も必要だ。支持者には思い入れも必要だろう。しかし、各メディアで支持率が下がっていると報じられた途端、首相のほうからわざわざ「物語」が発信されたことはとても興味深い。
その「物語」を見て、「だから応援したい」と感じる人がまた増えるのか。それとも「これは寝言のようなもの」と一歩引いて眺める人が増えるのか。そのあたりも注目したい。
(プチ鹿島)