石破内閣半年、側近不在で目立つ場当たり的な意思決定…日米首脳会談で一定の成果も商品券問題で「貯金消し飛んだ」

石破内閣は1日で発足から半年を迎えた。側近不在で首相官邸の意思決定の形をいまだ確立できておらず、調整力不足を露呈する政権運営も目立つ。内閣支持率は発足直後から20ポイント下落し、局面転換は急務だが、政策の打ち出しなどで打開を図れるかは見通せない。(山口真史、服部菜摘)
「多くの方々にお支えいただき、ご努力いただき、内閣を続けることができた」
石破首相は31日夕、首相官邸で記者団にこう述べ、半年間の政権運営は楽ではなかったとの思いをにじませた。石破内閣は発足直後こそ支持率は51%に上ったものの、直近では31%まで下落した。自民党内では「内閣への信頼感が下がったことが背景だ」(ベテラン)との声が出ている。
石破内閣では、霞が関の官僚組織ににらみを利かせ、与党の内情を把握した上で首相に意思決定の材料を提供する右腕が不在だ。岸田政権では元経済産業次官の嶋田隆首席首相秘書官と木原誠二官房副長官が、政策や政治的判断の両面で岸田文雄前首相を支えたが、首相が政策、政局双方で頼りにする側近は見当たらない。
「チーム石破」の不在は、場当たり的な意思決定にもつながっている。
患者負担を抑える「高額療養費制度」の見直しを巡っては、首相は一度実施を決めたが、結局は見送りを決断した。患者負担増は参院選に悪影響との与党の声を重視したためだが、当初から見送りを求める声はあり、「官邸は党の本音を把握できていない」(自民幹部)と不満が漏れる。
側近不在で首相が意思決定の前面に出る結果、調整不足の思いつきとも取れる言動も散見される。
内閣発足直後の10月には「(日銀は)追加の利上げをする環境にない」と発言し、株式市場を混乱させた。3月には公明党の斉藤代表との会談で、2025年度予算案の審議中にもかかわらず補正予算編成を示唆する「強力な物価高対策」に言及、謝罪に追い込まれた。
首相は2月のトランプ米大統領との首脳会談で、事前の入念な準備の結果、日米同盟の強化など安全保障面で一定の成果を上げたが、その後は自民党衆院議員への10万円分の商品券配布問題もあり、「貯金は完全に消し飛んだ」(政府高官)との受け止めが広がる。
首相周辺は「政策実現で潮目を変えたい」と語るが、内閣支持率が低迷し、少数与党で首相が政策遂行の主導権を握るのも難しい中、局面を打開できる政策の打ち出しが可能かは不透明だ。

だから「斎藤元彦」「石丸伸二」は誕生した…「想定外の選挙結果」を次々に生んだ「SNS選挙」の本当の問題点

※本稿は、郷原信郎『法が招いた政治不信 裏金・検察不祥事・SNS選挙問題の核心』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
自民党が派閥政治資金パーティーをめぐる「裏金問題」で、国民の厳しい批判を受け、2024年4月の衆議院3補選で全敗(うち2選挙区では公認候補者を立てられず)するなど、大きく支持を落とす状況で行われた7月の東京都知事選では、元安芸高田市長の石丸伸二氏が165万票を超える大量得票で2位となり、
11月の兵庫県知事選では、県議会で不信任決議案が全会一致で可決されて失職した斎藤元彦氏が再選、さらに、名古屋市長選でも、4党相乗りの大塚耕平(おおつかこうへい)氏を破って減税日本の広沢一郎(ひろさわいちろう)氏が当選するなど、予想外の選挙結果となる事例が相次ぎ、その度にSNSが選挙に与える影響が注目された。選挙でのSNSの活用が公選法違反の刑事事件で捜査の対象となる事例も相次いでいる。
兵庫県知事選挙をめぐっては、私と神戸学院大学教授の上脇博之氏による斎藤知事らを被告発人とする買収罪についての告発状が、神戸地方検察庁と兵庫県警察本部に受理され、稲村和美(いなむらかずみ)候補に関して大量のデマ投稿が行われたことについての虚偽事項公表罪等の告発状(被疑者不詳)が兵庫県警に受理されている。
12月2日に提出した告発状で、斎藤知事らについて公選法違反(買収罪)の嫌疑の根拠としたのは、
(1)11月20日に、PR会社の代表取締役社長が、インターネットのブログサイトnoteに行った投稿の内容によれば、PR会社の社長として、同社の社員ともに、斎藤氏の知事選挙においてSNS広報戦略を全面的に任せられてその運用を行ったものと認められること
(2)社長のnote記事投稿の信用性が、投稿前後に斎藤氏の選対の主要メンバーであった市議会議員らのX投稿によって裏付けられていること
(3)斎藤氏に代わって行われた代理人弁護士の会見での、PR会社に対する71万5000円の支払を認めた上での「PR会社にはポスター制作等を依頼しただけでSNS運用を任せておらず、PR会社社長は斎藤氏のPR会社訪問後、個人のボランティアとして選挙に関わっていたとする説明」が不合理であり信用できないこと
の3点であった。
これらにより、代理人弁護士が支払を認めた71万5000円は、PR会社へのSNS運用という選挙運動の対価を含むものと判断したものだった。
このような告発状を提出したことを、オンライン会見を行って公表し、告発状をネットで公表したところ、告発人の私の下に兵庫県民から様々な資料、情報が提供された。それらを逐次、捜査機関側に提供するなどしていた。
それも早期告発受理の一因になったものと考えられるが、さらに、2025年2月7日、神戸地検と兵庫県警がPR会社の複数の関係先に対して家宅捜索を行ったことが報じられた。告発事実についての買収の嫌疑が、強制捜査の実施が相当と考えられるほどに高まっているということだと考えられる。
昨年の一連の選挙を機に、公職選挙においてSNSが大きな影響を与えることが認識され、その実態に即して公職選挙法のルールを改めるべく、法改正に向けての議論が始められている。
公選法改正の議論を適切に進めていくためには、選挙で実際に何が起きていたのか、現行法の罰則ではどの範囲が処罰の対象になり、どのような行為が処罰の対象ではないのか、現行法と現状との間にどのように乖離(かいり)が生じているのかを把握することが重要となる。
兵庫県知事選挙でのSNSに関する公選法違反の告発が契機となって、他の選挙に関しても、同様の問題が表面化している。
2024年10月の衆議院議員選挙徳島2区で当選した自民党公認の山口俊一氏の陣営が選管に提出した選挙運動費用収支報告書で、SNS運用委託費として業者に150万円を支払っていたことが明らかになり、徳島新聞が、業者側の取材の結果から公選法違反の疑いがあることを報じた。
業者側も、山口氏を応援するプラカードを支援者に持ってもらって、写真撮影してインスタグラムに投稿することを企画したり、インスタライブを提案して実行したりしたことを認めており、主体的・裁量的にSNSを運用した疑いがある。
一方、山口氏の事務所では、撮影や編集を一任していたことは認める一方、「動画撮影と加工」「撮影写真のピックアップ(選択)と補正」といった業務を記した指示書を毎日、業者側に渡しており、編集された動画をチェックし、映っている人の顔を消したり、音楽を差し替えたりするよう指示をし、配信も山口事務所側が行っていたことから、裁量権は山口氏側にあったとして、公選法違反を否定している。
毎日、候補者側から業者に対して「指示書」が出されていた事実があり、それが単に、選挙運動への対価支払についての「言い訳」にしようとしただけのものか、実質的に陣営側の主体性・裁量性で行われていたといえるのかが公選法違反の成否に関するポイントとなる。
この件については、本稿執筆の最終段階の3月3日に、私と上脇氏とで、SNS業務委託と報酬支払の当事者等を徳島地方検察庁に公選法違反で告発した。
私も上脇氏も、この件で徳島新聞からの取材を受け、公選法違反の成否についてコメントを行っているが、その取材の過程で知り得た情報から、山口陣営から業者への「指示書」は、具体性を欠き、業者側の主体性・裁量性を否定するものと言えない可能性が高いと考えられる。
山口陣営において本件SNS運用委託を行った背景には、自民党本部から衆院選の各公認候補者に対してSNSを積極的に活用するよう指示があり、その際、公選法違反に問われることを防止するための対策として業者側に対して業務内容の指示を行うよう指導がなされていた事実もあるようだ。
これらからすると、SNS業務委託が公選法違反に該当する可能性は十分に認識されていたと考えられ、同衆院選における他の自民党候補者にも同種の問題がある可能性がある。これらの事情からすると、今後のSNSに関する公選法改正の議論にとっても重要だと考え、山口陣営によるSNS業務委託の問題について告発を行うことにした。
また、2025年2月に入り、週刊文春で、昨年の東京都知事選挙で小池百合子氏に次ぐ2位となり、SNSの活用が注目された石丸伸二氏に関して、投票日の2日前の決起集会のYouTubeチャンネルでライブ配信された映像の撮影と配信を担当した業者に対して、石丸氏側が97万7350円を「ライブ配信機材キャンセル料」の名目で支払っていたことが買収罪に該当する疑いが指摘された。
石丸氏側は、ライブ配信はキャンセルしたが、業者側がボランティアで行ったと説明している。しかし、一応契約はキャンセルしたとしても、実際に、映像の撮影と配信が行われたのであれば、キャンセル料の支払が、その対価ではないかが問題になる。
「キャンセル料」の金額が、事前に合意されていて、ライブ配信を行っても行わなくても、契約上支払は免れないという場合でなければ、実質的にライブ配信の対価に該当し買収罪が成立する可能性がある(すでに、市民団体と上脇氏が、公選法違反で刑事告発を行っている)。
このように、選挙でのSNSの活用をめぐって、様々な事例が問題となり、それが刑事事件として捜査処分の対象となって、事例が積み重なっていくことで、SNS運用に関する公選法改正の議論が深まっていくことになる。
公選法は、選挙運動の自由、表現の自由の保障との関係から、選挙に関する発言や表現の内容自体に対しては基本的に寛大である一方、選挙運動に関する金銭、利益のやり取りに対しては、「選挙運動ボランティアの原則」から厳しい態度で臨んでいる。
本来、選挙運動は、候補者本人と、その候補者を支持・支援する選挙運動者によって行われるものである。選挙運動にとって不可欠なポスター、チラシの制作等が公費負担の対象とされ、選挙カーの運転、ポスターの掲示等の機械的労務や、車上運動員(ウグイス嬢、手話通訳者)に対する所定の金額の範囲内での報酬支払が認められているが、それ以外は、選挙運動はボランティアで行うのが原則である。
判例上、買収罪との関係において、「選挙運動」は、「当選を得しめるため投票を得若しくは得しめる目的を以て、直接または間接に必要かつ有利な周旋、勧誘若しくは誘導その他諸般の行為をなすこと」とされている。
その定義によれば、特定の候補者の当選を目的として主体的・裁量的に行う(自分の判断で主体性を持って行っている)行為はすべて「選挙運動」であり、それに対して報酬を支払えば、告示の前後を問わず、上記例外を除いて、すべて、買収罪が成立する。
選挙運動は立候補届出前に行ってはならないという「事前運動」の規制との関係では、立候補予定者等が選挙準備として行う行為は、それを行わなければ立候補すること自体が困難なので、主体的・裁量的に行う行為であっても、「事前運動」の規制の対象にはならないが、それに対して対価を支払えば買収となる(逐条解説公職選挙法改訂版〈中〉129条〈事前運動の禁止〉)。
このように、選挙運動に対する対価の支払に対しては、現行法は極めて厳格であり、現行法上は、選挙コンサルタントやPR会社などが、有償で「業務として選挙に関わること」は、その実態が明らかになれば、大半が違法ということにならざるを得ない。
このような状況を受けての公選法の運用や立法論に関して重要となるのが、SNSを含めた選挙戦略に関わる選挙コンサルタントやPR会社に対する報酬の支払の事態である。それらのうちどの範囲が選挙運動の対価に当たり買収罪が成立するのかが問題となる。
投票の秘密が保障されて自由に投票できるのが選挙人の権利であるのと並んで、特定の候補者への支持を外形的に表現する選挙運動を行うことも国民の権利である。しかし、投票や選挙運動という権利は、誰からも利益を得ることなく行うことが大前提であり、それを有償で行うことは禁止されるというのが公選法上のルールであり、特定の候補者を当選させるための選挙運動を「業務として」行うことには、公選法上、大きな制約がある。
選挙コンサルタントというのは、「候補者に適した選挙キャンペーンのプランニング、アドバイス等を行うことで有権者の支持を拡大し、当選を果たすための、合理的な選挙戦略の策定をサポートする仕事」であり、それは、まさに「業務として選挙に関与し報酬を得る」という職業である。
それが、公職選挙に立候補しようとする者自身に対する助言・指導だけではなく、候補者の当選のため、選挙陣営内部に入り込んで、選挙全般にわたって、選挙参謀的に関わるようになると、選挙運動に限りなく近くなり、報酬の支払が買収罪に当たる可能性が生じる。PR会社が公職選挙における広報戦略を担う場合も同様だ。
選挙コンサルタントの活動に対する公選法違反の疑いが表面化したのが、2022年2月の長崎県知事選挙であり、前述したとおり24年11月の兵庫県知事選挙ではPR会社の選挙への関与が公選法違反の問題となった。
従前は、選挙コンサルタントは、「告示後は報酬を受け取れば公職選挙法違反になるので、告示前までは政治活動へのアドバイスに対する報酬」「告示後はすべてボランティア」という説明で通してきた。しかし、活動全体がボランティアというのであればともかく、候補者の当選をめざす一連の活動を、「告示前の選挙準備活動は有償」「告示後はボランティア」と切り離せるものではない。告示後の選挙期間中も選挙運動に直接関わることを前提に、告示前に報酬を支払ったのであれば、選挙運動者にその対価を供与したことになり、買収罪が成立する。
だからこそ、従前は、選挙コンサルタントの活動は、基本的に表に出ない形で候補者自身に対する直接の助言・指導が中心で、特に、告示後の選挙運動には直接関わらないのが鉄則だった。証拠が残らないようにすれば、「選挙運動には当たらない“告示前の活動”に対する報酬しか受け取っていない」と主張することができるからだ。それが、選挙を“生業(なりわい)”とする選挙コンサルタントの常識であり、身を守る術すべでもあった。
ところが、2つの知事選挙では、選挙コンサルタントやPR会社社長などが、業務としてSNSを含む選挙戦略の策定・実行に関わって候補者を当選に導いたことを公言し、それによって、公選法違反疑惑が表面化することになった。
かつては選挙のやり方は、選挙広報、法定の範囲内でのポスター、チラシ、街頭演説、選挙カーによる連呼、地縁・血縁を使った投票依頼など、限られたものでしかなかった。そうした中で、金銭を提供して有権者に投票依頼する「投票買収」を摘発・処罰することが、選挙違反の取締りの中心だった。
インターネット選挙が解禁されて10年あまり、選挙で有権者の支持を得る手段が多様化し、その中でSNSなどの活用が特に重要な手段になるのに伴って、そのような業務を専業とする業者が活動する余地が広がり、そのためのノウハウ、スキルを持つ業者の付加価値も大きくなっていく。それに対して有形無形に支払われる対価が大きなものになっていくのは必然だ。
そのような事態を放置すれば、専門業者に多額の報酬を支払えるかどうかで、選挙の勝敗が決することになり、公職選挙の目的を阻害することになりかねない。「業として選挙に関わること」を野放しにすることができない理由はそこにある。
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(郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原 信郎)

中井やまゆり園でまた虐待が発覚 侮辱的な発言や引きずり行為

神奈川県は31日、県立知的障害者施設「中井やまゆり園」(中井町)で、50代の男性職員2人が30代男性入所者の尊厳を傷つける発言をするなど三つの行為が虐待として認定されたと発表した。園では過去にも虐待が相次ぎ、外部アドバイザーを入れて支援の改善を図っていた。
県によると、2月12日午前、50代男性職員が、入所者が頻繁にトイレに向かう様子を見て「(犬などがする)マーキングなんてやめてよ」と発言。さらに別の50代男性職員と一緒に入所者の手足を持ち、居室の方へ約10メートル引きずった。その際に下着などがずれ落ち、下半身が露出したが放置して立ち去った。
目撃した職員から上司に報告され、園が障害者虐待防止法に基づき入所者が元々住んでいた自治体に通報。3月27日にこれら三つの行為が心理的・身体的虐待、ネグレクトと認定されたという。
記者会見した井上一園長は「(行為は)人権上問題がある。利用者を人間として見られていない状況だったと認識している」と述べた。
園では利用者を汚い環境で生活させたり、利用者の肛門にナットが入っていたりしたことなどが明るみに出て、2022年4月から利用者支援の改善に当たっている。【蓬田正志】

大阪では”名門高の定員割れ”や”貧相な給食”に悲鳴…「無償化は特効薬にならない」各地の施策が示す現実

3月下旬。大学入試の季節も終わり、おおよその結果が出揃ったところに、聞き捨てならない話を耳にした。
「東京都の高校授業料無償化の延長で学費が無償となった都立大で、教員たちは『さぞかし志願者が殺到し、倍率も爆増するのだろう』と今冬の入試に身構えていたのですが、無償化の認知不足や立地、専攻マッチングの問題もあってか、全体の志願者の伸びは例年の1.2倍強程度で、爆発的な人気とはならなかったんです」
えっ。無償で大学へ通えると聞いたら、そりゃ志願者殺到に違いなかろうと思うのが人情というものだが、学生たちはそうは判断しなかった、ということなのだ。もちろん無償化初年度ということで、倍率急増を警戒し敬遠したということも十分に考えられる。
だが「ワンチャン」的な腕試しでも志願しなかったというのは、そもそも受験する子どもの絶対数が圧倒的に少ない時代ならではなのかもしれない。
そうなのだ、現代の大学受験は、40代や50代以上が経験した受験戦争のような「落とすための試験」だらけのラットレースには、もうならない。つまりそれだけ「子どもがいない」のだ。
いま日本で議論される社会問題が、少なからず急激な少子化による社会変容の影響した結果であることは言うまでもない。そして出生率の低下や少子化の原因の一つとして「子育てコストへの心理的抵抗が大きな障壁となっている」は定説である。
これを受けて、公立校の給食無償化や私立高校の授業料無償化など、教育関連費の無償化トレンドが国レベルでも地方レベルでも急激に広がった。これらは現役子育て中の家庭から大いに歓迎され、特に東京都でいち早く教育関連費の無償化を進めた小池百合子知事などは磐石の支持を得ており、それは昨夏以降の選挙結果で火を見るより明らかだ。
しかし一方で、それは東京都のような北欧一国の予算規模に相当する巨大なメトロポリタンであるがゆえに可能な施策であり、地方とは条件が違うとの指摘もある。財政基盤が比較的弱い自治体では理想と現実のギャップを埋めるための痛み、副作用も生じている。
例えばもともと公立高のレベルが非常に高く、私立高は角度の違うニーズを埋めるものとして発展した大阪では、家庭の所得レベルを問わずに一律で私立高の学費が無償化されたことで、府立高離れ、定員割れが生じた。その一つである大阪府立寝屋川高校は私の卒業校であり、学区では難易度で2位にある伝統進学校でもあるため、大阪ではショックが広がっている。
授業料以外に、給食費の無償化でも大阪は悪名高い。もちろん地域や学校によって状況はさまざまではあるのだが、年間予算が一定なのに急激なインフレ局面にある現在、材料費高騰で非常に乏しい給食内容へ陥ってしまうケースが多々報告され、「子どもたちがおなかをすかせて帰ってくる」「こんなことなら無償じゃなくていい」と保護者たちから不安不満の声が上がる。安くてお腹いっぱい食べられるのが誇りである食い倒れの街、大阪ならではとも言えようか、幼い子らに食べ物の恨みを植え付けてしまうのは望ましくない。
都立大の「肩すかし」や、地方高校の競争力低下などの事例が示唆するのは、子育て層や子どもたちは無償であることに感謝はするものの、どうやら進路や住む場所などの意思決定は「無償」だけでは動かされないということだ。
そしてこれは出産の意思決定にも通じる。女性は、医療費やその後の教育費が無償ですよと聞いて子どもを産むだろうか。二人目以降の出産、つまり1を2に、2を3にする安心材料の大きな一つにはなりうるけれども、ゼロを1にするかというと難しい。
筆者自身も、無償化によって子育て層の経済負担が軽くなることには大賛成だけれど、果たして無償化が子育て関連の社会問題を全て解決する特効薬かというと少々疑問なのだ。
人手不足倒産が続出、失われた30年の末の賃金伸び悩み、そこに世界的なインフレトレンドで物価高。日本の消費者を取り巻く現在は踏んだり蹴ったりだ。子育て層にとって教育関連費の無償化が大歓迎であることに疑いはない。だが膨らむ財政的持続可能性の問題、そして無償化だけでは解決しない教育の質や魅力の問題がある。
教育無償化は子育て世帯への直接的支援としてもちろん有効だけれど、少子化問題の根本解決には、若者の所得向上、働き方改革、価値観の変化など多面的なアプローチが必要だ。
特に教育無償化政策は、「一度導入すると政治的に撤回が困難である」という不可逆的な性質を持つ。いったん無料になったものにまたお金を出してくださいと言われた時の消費者の抵抗は、ラーメン屋の替え玉無料がなくなった時の顧客の嘆き悲しみようと怒りっぷりをSNSで検索すれば一目瞭然である。
まあそれはだいぶ卑近な例ではあるけれど、有権者感情としては切実だ。無償化を推し進める政治家には「ここから先、永遠に無償」を約束しなきゃいけないくらいの厳しい覚悟が問われていることに、本人たちは気づいているだろうか。
この前提の下で持続可能な制度設計を考えるなら、「無償化」という看板は維持しながらも、その内実を微調整していく方策が現実的なのだろう。
具体的には、「基礎的な教育費」の定義見直しや、地域・民間との連携強化、放課後の特別活動・専門性の高い選択科目・特別なキャリア支援プログラムなど付加価値サービスの有料化が考えられる。修学旅行や特別活動費などは所得に応じて補助する方式にしても受け入れられやすいだろう。並行して、少子化に合わせて教育関連コストを最適化するための学校統廃合や教員の兼務、デジタル化による教材費削減も避けられない。
財政面の専門家からは、目的税や特定財源の創設、給付と負担の再設計、成果連動型の予算配分、段階的な支援対象の優先順位付けなども挙げられている。これらの方策を複合的に組み合わせることで、財政負担を抑えつつ教育の質を維持・向上させる道筋が見えてくるのだという。
令和の「少ない子どもたち」のために、おそらく学校の定義、概念自体が変わるのだろう、それは人数だけはやたらといた上の世代が考えるものとは別物になっていくのだろう、と筆者などは予感している。
教育無償化の持続可能性を追求する過程で、「学校で提供すべきサービスとは何か」を考えなければいけなくなるからだ。教育のコア機能と付加的機能を切り分け、付加的な要素に関しては統廃合やアウトソースを進めていく。今まで当然学校にあるはずだったものがなくなってスリムになり、その一方で、今までの学校にはなかった機能がいっぱい付け加えられるかもしれない。
例えば教員の過労問題解決のため、部活動の地域移管や外部委託が進み、学校の垣根を越えた活動が増加している。筆者が先日話をした、長野県出身だという20代後半の若者は、「実家に帰ったら、中学の野球部が解散してなくなってたんですよ」とぼやいた。「地元の連れもみんな、寂しいなぁって。でも中学自体がもう、1学年1クラスで5人くらいで、激減なんですよ。それで隣町の中学と統合して、部活は両校合わせたサークルみたいになって」
伝統的な「うちの学校の野球部」といった帰属意識から、「地域の野球チーム」という新たなアイデンティティーへの転換。子どもは少ないが高齢者は多いということで、高齢者の集う場所としての機能が学校建築に付加されることも想像に難くない。地方では特に、維持管理の難しい児童館や図書館などと、保育園や高齢者のデイケア、そして学校や子ども食堂が1箇所に固められた、「巨大な多世帯同居住宅」みたいな新しい地域のハコモノが誕生していくのではなかろうか。
こうした変化は、学校や生徒、教員、保護者、そして地域のアイデンティティーに関わる大きなパラダイムシフトを確実にもたらす。それが、教育が時代に合わせて変わるということなのだ。
この変革を円滑に進めるためには、教員の専門性の再評価も重要になる。「先生とは、どこからどこまで、何をする人なのか」という再定義。ということは、それを補う存在や、分野横断的に働くプレーヤーとして、今は存在しない新しい職業がいくつも生まれるかもしれない。
世界の国々の中でも先陣を切って少子高齢化の道を驀進する日本、それは一つの社会実験場だ。子どもがいない国の学校は、もう今までの学校でありうるはずがない。地域産業や自治体、地域住民など多様なステークホルダーが参画する、独自の配合の教育ガバナンスへと進化していかなければならない。
少子化と財政制約という二重の課題に直面する日本の教育機関は、教育機会の平等性や社会的一体性といった日本社会の価値観と調和した「日本型」とも呼べる新たな教育モデルを生み出す可能性がある、と考えれば、日本の教育って実はいま最高に面白い分野なんじゃないだろうか?
知日家の外国人や、海外で暮らした経験のある日本人が痛感すること、それは「日本らしさや日本人らしさとは、日本の教育のたまもの」だということである。世界で称賛される日本の豊かな味覚と食センス、そして日本特有の礼儀正しく丁寧で、良くも悪くも協調性にあふれた思考やサービスは、日本の教育で大事に培われるものなのだ。
義務教育に続く高校の無償化や給食の無償化で、そういった「丁寧な食」や「丁寧な物腰と共感・協調力」を教える日本的教育が国家のブランドとして強化され、日本型モデルとして認識されて世界の人々を惹きつけていくのは、今後の日本が生き残るすべとなるはずだ。
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(コラムニスト 河崎 環)

【大雪情報】東京都心は冷たい雨 内陸部は積雪のおそれ 本当に4月なの? 凍える寒さ〈”春”というより”真冬”〉【雪はいつ?どこで降る?】雨と雪のシミュレーション4月1日(火)~4月3日(木)/ 週間予報

【大雪に関する気象情報】発表
関東甲信地方の上空約1500メートルには山地で雪の目安となる〈-3℃以下〉の寒気が流れ込んでいます。
関東甲信地方では、気圧の谷や上空の寒気の影響で、山沿いや山地では大雪となり、平地でも積雪となる所があるでしょう。《雨と雪のシミュレーション4月1日(火)~3日(木)》は画像で掲載しています。
きょうから4月ですが〈凍てつく寒さ〉予想気温は?
きょう4月1日(火)の予想最高気温は〈東京8℃〉〈横浜8℃〉〈さいたま7℃〉など、真冬の頃を思わせる、厳しい寒さになりそうです。ただ、きょうが寒さのピークで、今週後半には寒さが緩むでしょう。都・県ごとに予想最低最高気温、週間予報を画像で掲載しています。
雨と雪のシミュレーション4月1日(火)~4月3日(木)
多摩地方の山沿いや山地を中心に〈雪〉が降り、多摩西部では山地を中心に〈大雪〉となる所があるでしょう、東京23区では〈冷たい雨〉が降り〈雪〉にはならない見込みです。その後は、次第に気温が上昇するため、〈雪〉が〈雨〉に変わり、3日(木)にかけて降り続くでしょう。画像で確認できます。

中学校教諭が残業時間「80時間超」で勤務表提出…管理職から「このままだと産業医と面談」言われ土日の出勤記録削除と訴え 学校側は指示を否定

兵庫県の公立中学校の教諭が残業時間を少なく書き換えた勤務表を提出せざるをえない状況に追い込まれたと訴えました。
兵庫県の教員らでつくる団体によりますと、姫路市の市立中学校の男性教諭(30代)は、おととし5月の残業時間が「過労死ライン」の80時間を超えましたが、勤務表を提出する際に管理職から「このまま提出すると産業医と面談することになる」などと言われ、土日の出勤記録を削除したということです。
(男性教諭)「部活動の業務に従事したという時間の記録もつけていたが、記録簿に載せないでほしいと」
学校側は取材に対し書き換えの指示を否定しています。
この団体は3月31日に他の学校でも同様の指示がなかったか県に調査を求めたということです。

愛知・一宮市の民家クローゼットから女性遺体、都内の16歳女子高生か…21歳男を遺棄容疑で逮捕

愛知県一宮市の自宅クローゼットに女性の遺体を遺棄したとして、県警は1日、同市、無職の男(21)を死体遺棄容疑で緊急逮捕したと発表した。遺体は東京都内の高校に通う女子生徒(16)の可能性があり、首や肩に複数の刺し傷があった。県警が身元や死因などを調べている。
警視庁幹部によると、女子生徒は先月28日、「インターネットゲームで知り合った愛知の友人のところに行ってくる」と母親に伝え、東京駅から新幹線に乗車。翌日午後から連絡が取れなくなり、母親から同庁に行方不明者届が出されていた。
女子生徒の捜索を進める中で、男が関係先として浮上。一宮署員が同31日夜に室内を調べたところ、2階のクローゼット内で布にくるまれた遺体を見つけた。男は遺棄したことを認めており、県警は女性が死亡した経緯なども調べる。
現場は名鉄名古屋本線新木曽川駅から南東約1・5キロで、住宅と農地が混在する地域。

「お前、どこ町だ?」と買い物中の男子中学生に因縁をつけ…3人を暴行の疑い 49歳男を逮捕 新潟・村上市

新潟県村上市のドラッグストアの店舗内で3月26日、買い物中の男子中学生3人を暴行した疑いで、49歳の男が逮捕されました。
暴行の疑いで逮捕されたのは、村上市上片町に住む無職の男(49)です。 警察によりますと、男は3月26日午後3時ごろ、村上市内のドラッグストアで買い物中だった男子中学生に対し、「お前、どこ町だ?」などと因縁をつけたうえ、男子中学生の胸ぐらをつかみ、商品棚に押し付ける暴行を加えた疑いが持たれています。 その後、止めに入った別の男子中学生に対しても、同様に胸ぐらをつかんで商品棚に押し付けたほか、別の男子中学生が「警察に通報する」などと言ったところ、この中学生に対しても商品棚に押し付ける暴行を加えた疑いが持たれています。 男子中学生は4人でドラッグストアで買い物をしていたということで、駐在所に被害を訴えたということです。 警察の調べに対し、男は「2人に対して服をつかみ棚に押し付けたことは間違いない」などと話しているということで、警察は当時のいきさつや犯行の動機などを調べています。

オカヤドカリ千匹所持か、沖縄 台湾籍2人逮捕、ペットで人気

国の天然記念物、オカヤドカリ998匹を無許可で所持したとして、沖縄県警宮古島署は1日までに、文化財保護法違反の疑いで、いずれも台湾籍で自称グラフィックデザイナー、林柏亨容疑者(29)と自称会社員、黄皓天容疑者(29)を逮捕した。逮捕は3月31日付。中国などではペットとしても人気だといい、転売目的だった可能性もあるとみて捜査する。
逮捕容疑は3月31日午前、宮古島市内で文化庁の許可を受けずに所持し、天然記念物の現状を変更した疑い。容疑を一部否認している。署によると、運送業者が30日、エックス線検査で発見し通報した。段ボール4箱に入っていた。

消防署から救急車盗まれる…20分後事故を起こしているのを発見、運転席には負傷した若い女性が

和歌山県の那賀消防組合は3月31日、岩出市の中消防署の車庫に駐車していた救急車が盗まれたと発表した。
発表では、被害に遭ったのは同日午前3時頃。約20分後、同市内の路上で自損事故を起こしているのが見つかった。運転席にいた若い女性が負傷しており、同組合が救急搬送した。
車内に鍵があり、誰でも動かせる状態だったといい、木下修消防長は「再発防止策を講じたうえで、職員に指導を徹底する」などとするコメントを出した。