大阪府のインフルエンザが「警報レベル」突破 2010年以降で最速ペース

大阪府は20日、インフルエンザの発生状況が「警報レベル」入りしたことを発表した。2025年第46週(11月10日から16日)の府内における定点あたりの患者報告数が「31・57」となり、過去15シーズン(2010年/2011年シーズン以降)と比較して、最も早く警報レベル開始基準値「30」を超え、感染が急速に拡大。昨年度より約1か月早いペースとなっている。
大阪府は「全国的に例年より早く流行しています。高齢者や基礎疾患のある方は重症化することがあり、小児では急性脳症を起こすことがあります。手洗い、咳エチケット、換気などの基本的な感染対策を心がけましょう。また、重症化を防ぐために、早めに医療機関に相談の上、ワクチン接種もご検討ください」と呼びかけた。

虐待など100件以上を防犯カメラで確認 田川市の松原保育園が報告書 園児の口に箸を突っ込む様子も

福岡県田川市の私立保育園で保育士10人が園児の虐待などに関わっていた事案で、園は不適切な行為が100件以上あったと明らかにしました。
田川市の松原保育園は、ことし7月から8月にかけて、保育士10人による虐待などがあったとして、10月に県と市から改善勧告を受けていました。
20日に園側が提出した報告書によりますと、ことし6月からの2か月間で、100件以上の不適切な行為が防犯カメラに記録されていました。
食べ物をほおばった園児の口に箸を突っ込んで飲み込ませようとする虐待もあったということです。
松原保育園をめぐっては元保育士の中村麗奈容疑者が園児への傷害と暴行の容疑で逮捕され、20日に送検されています。
園は報告書で、不適切な保育の原因として保育士の退職による人手不足などを挙げていて、新たな保育士の採用や2人以上でクラスを担当するなどして再発防止をはかるとしています。

「自分をなげうつ」果てにあった自暴自棄 山上被告の10~20代 被告人質問1回目詳報

令和4年7月の安倍晋三元首相銃撃事件で、殺人などの罪に問われた山上徹也被告(45)の裁判員裁判は、20日に初めての被告人質問が行われた。この日は弁護側が質問し、主に10~20代の出来事について述べた。語られたエピソードから浮かび上がったのは、人のために「自分をなげうつ」ことを選ぶという被告の行動原理。ただそれは「自暴自棄」と表裏一体のものでもあった。
黒のトレーナーに茶色のズボンで出廷した被告。裁判長から証言台に座るよう促されると、背中を丸めながらゆっくりと移動し、表情を変えずに着席した。「自分が45歳まで生きていると思っていたか」。冒頭で弁護側からこう問われると、とつとつと話し始めた。
「生きているべきではなかったと思う。このような結果になり、大変ご迷惑をおかけしていますので」
公判ではこれまでに、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に傾倒した被告の母親が入信などの経緯を証言し、妹は「宗教2世」としての苦しみを語った。弁護側はまず、これらの証言を聞いた感想を被告に尋ねた。
弁護人「母親の証言を聞いてどう思った」
被告「相変わらずだなと思った。非常にマイペースというか」
弁護人「証人として出廷したことについては」
被告「非常に辛い立場に立たせてしまった。母の信仰を理由として事件を起こしているので、責任を母も感じるところはあると思う」
弁護人「どんな母親だった」
被告「基本的には悪い人間ではないが、統一教会に関することでは理解しがたい面が多々あった」
弁護人「母親の入信についてどう思う」
被告「あれほど多くの献金さえなければよかったと思う」
弁護人「妹が出廷したことは」
被告「非常につらい思いをさせた」
祖父は包丁を持ち出し
母親が入信したのは、被告が10歳の小学6年の時。父親は4歳の時に自殺しており、母方の祖父と母親、兄、妹との5人で暮らしていた。母親は入信から約7カ月で計5千万円を教団に献金。被告が中学2年の時に、こうした状況が家族に明らかになり、「順調だった」生活は一変した。
弁護人「祖父はどういっていたか」
被告「『いずれは財産を全て持っていってしまうぞ』と」
弁護人「母親が脱会しないことでどうなったか」
被告「家族会議で祖父は包丁を持ち出し、母を殺害して自分も死ぬといったことがあった。(自分は)どうしていいか分からなかった」
弁護人「ほかには」
被告「母が入れないように祖父が家の鍵を閉め、『これからは母抜きでやっていく』といわれた」
弁護人「その後どうなった」
被告「夜暗くなってから玄関ドアの近くにいると、母が『開けてくれ』というので、つい開けてしまうことがあった」
弁護人「祖父に『母を助けるなんて、お前も統一教会員か』といわれたことがあった」
被告「あったかもしれない」
祖父からは「出ていってくれ」と土下座されることもあり、いっそ児童養護施設に入れられる方が悩まずに済むと考えていた日々。自身も「人生や考え方が根本的なところで変わってしまった」という。その中でも高校は奈良県内屈指の公立進学校に進んだ。
応援団「忍耐の訓練になる」
弁護人「部活は」
被告「非常に珍しいが応援団に入っていた」
弁護人「なぜ」
被告「イメージとして上下関係が理不尽。忍耐の訓練になると思った」
弁護人「なぜ理不尽への忍耐力を」
被告「家庭環境が理不尽に思えたから」
弁護人「振り返ると、どんな高校生活だった」
被告「野球部が甲子園に行き、そこで応援団として活動した。応援団はやめようと思っていたが、やめられず流された。自分のために有効に使えなかった時間だった」
弁護人「卒業アルバムに何と書いたか」
被告「『石ころ』と書いた」
弁護人「どういう思いで書いたか」
被告「ろくなことはないという思い」
祖父や兄が母親の信仰に強く反発する一方、ただただ「家庭が元通りに」と願っていた被告。そんな思いとは裏腹に高校3年の時に祖父が死去すると、母親は自宅を売却して全額を献金した。ただ献金したことは被告らには隠していた。
被告は勧められるまま、母親と韓国の教団施設を訪れたり、国内施設で教義を一通り学んだりしたことも。今から振り返ると、10代の頃に祖父や兄と協力し、母親に強い態度を取らなかったことが「解決を妨げた」という思いもあるという。
弁護人「(経済的理由で進学を断念し)高校卒業後はどんな仕事に就きたかった」
被告「特段強い希望はなかったが、消防士になろうと思った」
弁護人「どうして」
被告「応援団とも通じるが、何かのために自分の存在をなげうつ最たるものに思えた」
経済支援に不満「家族として助けるしかない」
結局消防士にはなれず、21歳だった14年に「消防士に似ている仕事もある」という理由で海上自衛隊に入隊した。
弁護人「入隊して収入を得られる。自分の役割をどう思った」
被告「祖父が死んで、(実家の)経済状態が続かないと思っていた。母を助けなければと思ったが、統一教会に対する反発があった」
弁護人「経済的に支援することをどう思っていた」
被告「非常に不満があった。母からも兄からも親族からも自分が利用された。なぜ自分がそんなことをしないといけないのか不満だった。だが、こういう状況になれば家族として助けるしかない」
当初は母親の求めに応じて金を渡していたが、次第に応じないように。その中で母親から、被告が入隊した年に破産していたことを聞かされた。
弁護人「それを聞いてどう思った」
被告「統一教会の教義に照らすと、神のために献金していれば、最後は救われる。裏切られたというか、母が破産の事実にショックを受けているのは感じた」
弁護人「(被告は17年に)自殺未遂をした。破産と関係はあるか」
被告「統一教会とは関係なく、自衛隊の生活がうまくいっていない。家族から望んでいない役割を押しつけられることにも嫌気がさした。(6千万円の保険金を残して自殺した)父のように役割を果たせば、それでいいと思った」
弁護人「保険の受取人は」
被告「兄と妹のどちらかだと思う」
質問に対し、数秒間回答を考えるような場面もあったが、終始感情を見せることなく、淡々と言葉をつないだ被告。この日の被告人質問は1時間15分ほどで終了した。

被告側は殺人罪の起訴内容を認めており、主な争点は量刑。被告の生い立ちが動機形成にどれだけ影響を与えたかが焦点となる。被告人質問は12月4日まで5回に分けて実施され、次回は11月25日午後に行われる。

交際相手にかみつくなどしてけがさせたか 逃走中だったとみられる無職の男(23)を三重県で逮捕 3年前からトラブルの相談も

先月、佐賀県唐津市で同居していた交際相手の女性(20代)にかみつくなどの暴行を加え、全治1か月のけがをさせたとして無職の男(23)が逮捕されました。
傷害の疑いで逮捕されたのは、住居不定・無職の伊藤諒容疑者(23)です。
伊藤容疑者は先月12日、唐津市肥前町大浦の当時の自宅で、同居していた交際相手の女性(20代)にかみついたり身体を殴ったりするなどの暴行を加え、全治1か月のけがをさせた疑いが持たれています。
事件翌日、伊藤容疑者が「彼女とけんかして彼女が家から出て行った」と警察に通報。
その後の捜査で傷害事件が発覚し、伊藤容疑者の関与が浮上したため、警察が指名手配をして捜索し、11月19日に三重県熊野市で逮捕したということです。
警察の取り調べに対し、伊藤容疑者は「何も話したくありません」と黙秘しているということです。
伊藤容疑者と女性については、2022年の7月から、男女間トラブルの相談が7件確認されていて、警察は今回も2人の間に何らかのトラブルがあったとみて捜査を進めています。

イベント中止も「返金不可」 被害起きても「自己責任」…トラブル多発〝強欲規約〟に注意

予約後は一切キャンセル不可、返金はしません-。イベントなどのチケットを巡り、業者側のこうした利用規約が原因でトラブルになるケースが後を絶たない。購入者が一方的に不利益を受けるような規定は消費者契約法上無効だが、実際の返金にはつながらず、泣き寝入りを強いられることもある。被害救済に取り組む弁護士は「主催者が過去に問題を起こしていないか調べた上で、契約の判断をしてほしい」と警鐘を鳴らす。
強風は「天災」?
「イベントが中止になったのに、代金の返還を拒否された」
消費生活センターにこんな苦情が寄せられたのは令和3年12月下旬のことだった。その月の17~19日に大阪市住之江区の会場で予定されていた夜空にLEDのランタンを飛ばすクリスマスイベント。強風を理由に一部日程が中止されていた。
主催者は神戸市のイベント運営会社で、全国各地で同様のイベントを開催している。同社がチケット代金の返還に応じなかったのは、購入者が同意した規約に「天災、感染症拡大、その他の非常事態による中止は返金しない」という定めがあったからだ。強風は「天災」もしくは「非常事態」にあたるというのが会社側の主張だった。
このため、当事者に代わって特定適格消費者団体である「消費者支援機構関西」が会社側を相手取り、代金返還義務の確認訴訟を大阪地裁に提起。今年11月の地裁判決は規約の「天災」に強風は例示されておらず、また非常事態にも該当しないとして、会社側に代金相当額の支払い義務があると認めた。
運営会社は団体から提訴された後、規約を一部変更。「中止までに生じた費用などに相当する額の返金を受けられない」と規定した。しかし、団体側は、費用負担のリスクを消費者側に全面的に押し付けるものだとして改定後の内容も消費者契約法に違反すると主張。差し止めを求めて大阪地裁に再び提訴し、現在も係争中だ。
一切返金不可といった規約は、消費者契約法上の「不当な契約条項」に当たる可能性がある。消費者庁によると①消費者の利益を一方的に害する②契約解除の際に平均的損害を超えて代金を徴収する-といった内容はこの不当条項に該当し、無効とされる。
不当条項、訴訟通じ改善も
これまでに各地の団体が起こした訴訟を通じ、裁判所が無効と判断したり、内容が改善されたりした事例も多い。
「期限までに入校辞退の申し出をしなければ授業料は一切返金しない」。九州地方のある大学受験予備校は、年間授業料を前納していた入学者に対し、中途退学時の学費返還は原則行わないとする規定を設けていた。
しかし大分地裁は平成26年、適格消費者団体が起こした訴訟の判決で、中途退学者がいたとしても「別の人の入学を受け入れるといった対応が可能で、前納した全額分の損害は受けない」と指摘。平均的損害を超える条項だとして、無効と認定した。
別の訴訟では、大阪市の旅行業者がイベント参加者に「生命・身体や財産に対して被害が生じた場合は、(業者の)故意や過失による場合を除き全て自己責任とする」とした同意書の提出を求めたことを巡り、兵庫県の団体が同意書の一部差し止めなどを請求。30年に神戸地裁で和解が成立し、業者側の免責事項が削除された。
ほかにも、不動産の賃貸借契約を巡り、修繕費用やクリーニング代を賃借人に過剰に請求したり、賃借人の破産などを理由に一方的に契約解除したりする規約も問題視され、各地の団体が起こした訴訟で改善された。
消費者支援機構関西の専門委員で、ランタンのイベント運営会社に対する訴訟の原告側代理人を務める松尾善紀弁護士は、不当な契約条項への対応について「契約時に規約の内容に不満があっても、事業者に訂正させるのは事実上困難」としつつ、不審に思った場合は「過去に行政処分を受けていないかなど、事前に評判を調べて判断すべきだ」と訴える。(喜田あゆみ)

東京で5.1℃ 今季最低気温タイ 関東など本州で冷え込む

今日21日(金)朝は関東以西で穏やかに晴れています。放射冷却現象が強まり、関東甲信の内陸部を中心に冷え込んでいます。

東京の最低気温は5.1℃で、19日(水)に観測した今季これまでで一番低い気温に並びました。
関東平野でも一部で氷点下の冷え込みに
今朝7時までに全国で最も気温が下がったのは長野県野辺山で、-6.8℃を観測しています。また栃木県土呂部で-5.1℃、群馬県沼田で-3.1℃など、関東の一部でも氷点下まで冷え込んでいます。

今朝は100地点(7時までの集計)で最低気温が0℃未満の冬日になりました。

東京都心では5時13分に5.1℃まで気温が下がり、今季最低気温タイとなりました。また、横浜(6.6℃)、さいたま(1.0℃)、甲府(1.0℃)、静岡(5.9℃)などで今季最低気温を更新しています。
東京 昼間は日差しの温もり
今日21日(金)は冬型の気圧配置となり上空の寒気が南下します。北日本では昼間でも気温が上がらず、厳しい寒さになる予想です。

札幌の予想最高気温は8℃ですが、これは日付が変わった直後の気温。気温は右肩下がりで夜は朝よりもさらに冷え込む予想です。
東京の予想最高気温は平年並みの17℃です。朝晩は冷え込んでも昼間は日差しの温もりが感じられます。体感の変化が大きくなるので服装で上手に調節してください。

子育て世帯に「応援手当」=1人2万円、来春支給―こども家庭庁

こども家庭庁は21日、総合経済対策の柱となる「物価高対応子育て応援手当」をはじめとした支援策を発表した。0~18歳の子どもがいる全世帯を対象に、子1人当たり2万円を支給する。市町村を通じて来春ごろ、児童手当の支給口座に振り込む方針。このほか、低所得世帯への支援拡充や、保育士の処遇改善にも取り組む。
ひとり親を含む低所得の子育て世帯への支援では、市町村が「重点支援地方交付金」を活用し、応援手当とは別の現金給付もできるようメニューを充実させる。子ども食堂の運営や保護者の就労に対するサポートも強化する。 [時事通信社]

“愛子さまが一緒だからこそ”実現した、雅子さま「6年ぶりの2泊3日」ご公務に強い母娘の絆

11月9日、三重県で行われた「第44回全国豊かな海づくり大会」に臨席された天皇、皇后両陛下。これをもって、今年も「四大行幸啓」の行事をすべて滞りなく終えられた。
「海づくり大会は両陛下が特に重要視されている4つの地方公務である四大行幸啓の一つです。おふたりは大会に先立って前日から三重県入り。8日は鳥羽市の『鳥羽水族館』に足を運ばれました。ラッコに笑顔でお手振りをされる姿がSNS上で話題を呼び、中には9万件ものいいねが寄せられた投稿も。2日間のご動向に終始注目が集まりました」(皇室担当記者、以下同)
両陛下にとって6年ぶりの三重県ご訪問とあって、現地では熱い歓迎を受けられた一方、日程には疑問の声も。
愛子さまが同行した長崎では2泊に!
「三重県といえば、皇室の祖先神とされる天照大御神を祀っている伊勢神宮があります。皇室の方々にとっては、節目ごとに参拝のため足を運ばれる特別な場所です。海づくり大会が開催された志摩市から伊勢神宮までは車で40分ほどの距離。そのため、大会の前後の日取りで参拝されるのではと見られていましたが、立ち寄ることなく帰京されています」
上皇ご夫妻は在位中、地方行幸啓に臨まれる際は2泊3日の日程が組まれることがほとんどだった。一方、今の両陛下が地方を訪問される際には、ほぼ1泊2日の日程が組まれている。その背景には雅子さまが抱える“2泊の壁”があるという。
「雅子さまは’02年に適応障害を公表されており、20年以上が過ぎた今もご体調には波がおありといいます。四大行幸啓は両陛下にとって欠かすことのできない公務です。雅子さまのお身体になるべく負担をかけずに、年4度の地方公務をこなすには1泊2日の日程が限界なのでしょう。今回、海づくり大会に合わせて伊勢神宮を参拝されるのであれば、さらにもう1泊しなければならず、それは難しいとの判断に至ったのでは」(宮内庁関係者、以下同)
それでも今年、1度だけ地方公務の“2泊の壁”を打ち破られたことがあった。
「9月に『国民文化祭』ご臨席と戦後80年の慰霊のため、長崎県を訪問された際は2泊3日の日程が組まれたのです。雅子さまが地方訪問で2泊されたのは’19年以来、6年ぶりのこと。このときはお代替わりに伴う行事に参列されるため、特例的に2泊の日程が組まれました」
今年の長崎県ご訪問で、6年ぶりの2泊が実現したのには納得の理由がある。
「長崎県を陛下と訪問された際は、愛子さまも同行なさったのです。雅子さまと愛子さまはとても仲がよろしいことで知られています。夏になると両陛下は葉山や那須で静養をされますが、愛子さまは社会人になってからも両陛下と休息のひと時を過ごされています。体調の優れない日もある雅子さまに、愛子さまは幼少期から寄り添ってきました。そんな愛子さまとご一緒だったからこそ、長崎では“2泊の壁”を乗り越えられたのでは」
母娘の絆が、皇后としての雅子さまをこれからも支え続けるだろう──。

母介護で学校行けず読み書き計算できなかった青年 夜間中学から定時制進学で簿記3級取得

病気で寝たきりの母親を幼い頃から介護していた友山幸(ともやま・こう)さん(26)=仮名=は、小学校にもほとんど通えず、読み書き計算などの基礎学力を身につけることができなかった。19歳で京都市立洛友中学校夜間部(夜間学級)に入学。3年間で学びの土台を築き、進学した京都府立桃山高校定時制課程(商業科)では簿記の資格も取得した。取り戻した学びを糧に来春、社会へと巣立つ。

10月のある日、桃山高校定時制課程の3、4限目の授業は、1週間後に迫った文化祭の準備にあてられた。朗読劇に出演する友山さんは、発表の舞台となる体育館の壇上に立ち、先生から照明器具の扱い方を教わっている級友らに「ライト、こっちにくれ」「もう少し右に」などと声をかける。
最終学年の今年は初めてオリジナルの台本も手がけた。友山さんが演じるセールスレディーから、煩わしいことを入力するだけでなかったことにできるアプリ「神スキップ」をプレゼントされた男子生徒は、文化祭やテスト、ついには友達まで消してしまう…。現代的なブラックユーモアで、際限のない人間の欲望を描き出した作品だ。
「ふだんから思いついたことを文章にしている」と笑顔で話す友山さん。7年前には、こんな自分の姿は想像できなかった。

漢字の読み書きができない。計算できるのは簡単な足し算、引き算だけー。平成31年4月、夜間中学に入学した友山さんには基礎学力が欠けていた。
母子家庭で育ち、寝たきりになった母親の代わりに、年の離れた姉と兄が働き、幼い友山さんが母親を介護した。通学できたのは小学1年の半ば頃までで、学校との縁が切れたまま学齢期が過ぎた。家庭状況が変わり、学び直せる場だと知った夜間中学の門をくぐる。先生は漢字の意味や書き順、計算方法などを一から教えてくれた。一人で電車に乗って登校し、生徒会長も務めるなど、いくつもの「初めて」を経験した。
3年余り前の取材で友山さんは、「人生の分岐点」という夜間中学時代を、生い立ちを、目を赤くして語った。「自分の名前もまともに漢字で書けなかった」という彼が今、台本を創作し、自分の思いを文章にしたためている。「見ますか?」と言って差し出されたタブレット端末には、人生についての考察が書かれていた。

夜間中学を卒業した後は働くつもりだったが、周囲の勧めで高校に進学した。
「高校の勉強は難しいと思っていたので、初めてのテストで高得点を取れたときは驚きました。洛友で学んだことが生きて、高校でもちゃんと通用する学力がついていた。すごくうれしかったです」と振り返る。その後の日々も、夜間中学で築いた土台に、高校で深めた学びを積み上げている実感があるという。
新たな経験を重ねたことは自信につながった。その代表が簿記資格の取得だ。当初は「どうせ無理」とあきらめていたが、簿記の授業や部活の簿記部で勉強を続けるうちに手応えを感じるようになり、検定試験の受験を決意。昨年、3級の資格を取得した。近々、パソコン検定2級にも挑戦するという。
「先生たちは親身になって教えてくれ、困っていると相談に乗ってくれる。洛友のように、ここも温かい学校です」
新たな友達もできた一方で、夜間中学で出会った「相方」と呼ぶ親友の男性(32)とは高校でも机を並べ、絆は一層強まった。卒業後、働く友山さんと進学する男性の道は分かれるが、二人は「これからもつき合いは続く」と口をそろえる。
友山さんの就職先はまだ決まっていないが、仕事への意識は変わった。「以前は学力がなくてもできる仕事を、とだけ考えていましたが、今は学力がついていろんな分野に目がいくようになり、選択肢が広がりました。コツコツと作業をするのが好きなので、自分に合う仕事を見つけたい」と未来を語る声は明るい。

文化祭当日、スポットライトを浴びて熱演する友山さんと相方に、観客から大きな拍手が送られた。「達成感があります」と話す友山さん。「高校に行ってよかった。洛友で学んだことを生かせたのもうれしいし、まだまだ足りなかったことを学べたこともうれしい。ここは、自分にとって絶対に来るべき重要な場所でした」
二つの学校での学びを、これからの人生に生かしていく。
友山幸さん(仮名)のこれまでの記事はこちら
「夜間中学はいま」の本が好評発売中
連載「夜間中学はいま」をまとめた本が好評発売中です。複雑な背景を持つ生徒たちが、学びを求めてたどりついた夜間中学の「いま」がわかる一冊。関西を拠点にした優れた報道活動に贈られる第27回坂田記念ジャーナリズム賞受賞作などを収録しています。A4判オールカラー140ページ。漢字にはふりがな付き。1800円(税込み、送料別途200円)。
【購入予約】郵便番号、住所、名前、電話番号、希望冊数を明記し、はがき(〒556-8666、住所不要)▽FAX(06・6633・2709)▽電子メール([email protected])―のいずれかで「夜間中学はいま」係へ。後日、申し込み方法などを記したご案内をお送りします。
【問い合わせ】産経新聞開発(06・6633・6062)平日午前10時~午後5時。
★産経iDでも申し込みいただけます(https://id.sankei.com/ev/21420-2/)

高市首相のいらん答弁で中国の怒りエスカレート…トンデモ政権が農水産業生産者と庶民を“見殺し”に

事態はどんどん悪化している。高市首相の国会答弁に端を発した中国との対立はエスカレートの一途だ。習近平指導部は19日、日本産水産物の輸入停止を通告。石破政権下の6月に「輸入即時再開」の吉報を受けたばかりの水産業者の落胆は計り知れない。米価高騰対策として8月に打ち出されたコメ増産への転換についても、高市政権は撤回。コメ農家をア然とさせている。農水産業者も庶民も見殺しだ。
◇ ◇ ◇
昨年の自民党総裁選に出馬した高市首相のキャッチフレーズは「日本列島を、強く豊かに。サナエあれば、憂いなし。」だった。あれから1年あまり。高市首相はスタートダッシュから真逆の方向へ突っ走り、「台湾有事は『存立危機事態』になり得る」と国会答弁。サナエが国難そのものとなっている。
高市首相のいらん答弁、在大阪総領事の「汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやる」と息巻いたSNS投稿、総領事に対する与党の国外退去要求、日本への渡航自粛呼びかけ、外務省局長協議の優劣演出、国連総会の関連会合での「日本は安保理常任理事国入りを求める資格は全くない」との猛批判──。首脳会談の実施で花を持たせた高市首相から肘鉄を食らった格好の中国は、矢継ぎ早に対抗措置を講じている。
日本産水産物は4年以上にわたって両国の懸案事項だ。
菅政権が2021年4月に原発処理水の海洋放出を決定すると、中国が反発。岸田政権が23年8月に放出開始にGOサインを出したため、中国はすぐさま輸入を全面停止。石破政権下の今年5月に両国が輸入再開に向けた手続き開始で合意し、今月上旬にホタテが船便で中国へ出荷されたばかりだった。そして再びの禁輸である。
サナエで憂いばっかり
中国外務省の毛寧報道局長は19日の会見で、高市答弁が中国国民の「強烈な怒り」を招いたと指摘。
「現在の情勢下で日本産水産物が中国に輸出されても、市場は存在しないだろう」とも言った。ぐうの音も出ない。
日本産牛肉の輸出再開に向けた政府間協議も中止になった。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言う。
「高市政権発足以降、何もかもおかしくなった。国際標準化などと言って、自衛隊の階級呼称を旧日本軍のものに戻そうという動きに、中国外務省は歴史を持ち出して非難している。そうなると、韓国も黙ってはいられなくなる。高市氏のプライド死守や人気取りのために、農水産業の生産者ばかりでなく、国民全体が多大な犠牲を強いられています。自民党政調会長や経済安保相を歴任してはいますが、やっていることは安全保障ごっこ。国家安保も経済安保も食料安保も台無しです」
中国の嫌がらせはバラエティーに富む。人民日報系の環球時報(19日付)は沖縄県をめぐる歴史的経緯を引っ張り、日本への帰属を疑問視する社説を掲載。また沖縄独立をあおってきそうな雰囲気である。そうでなくても、対立国の物品を片っ端から締め出すのは常套手段。
尖閣諸島沖で10年に中国漁船衝突事件が発生した際には、レアアース(希土類)の対日輸出を停止した。日本の中国依存度は低下しているとはいえ、また繰り出されたら産業界もガタガタだ。
振り返れば、日中関係の改善は日本の政権交代とセットだった。高市首相が政権に居座る限り、展望は見えない。「高い位置に日本を押し上げる」なんて無理筋にも過ぎる。
◇ ◇ ◇
中国との関係は今後どうなるのか。【もっと読む】【さらに読む】で詳しく報じている。