八木秀次 突破する日本 おぼつかない「石破外交」選挙に弱い政権は国際社会に軽んじられる 「本格政権でないと…」安倍元首相は持久戦を覚悟

自公連立政権は10月の衆院選の結果、衆院では過半数に満たない少数与党に転落した。
その国の外交力は、内政における国民の信任度に依拠するとの大原則があるとされる。時の政権がどれだけ選挙に強いかということだ。国民に支持されない政権や指導者は国際社会では軽んじられる。いつまで持つか、いつ辞めるか分からない政権や指導者を相手にしてもしようがないからだ。
以下は、元・朝日新聞主筆の船橋洋一氏が書いた『宿命の子』(文藝春秋)に紹介されていることだが、2013年12月、安倍晋三首相(当時)は靖国神社に参拝した。これに駐日米国大使館から「失望」が表明された。ジョー・バイデン副大統領(現大統領)の意向が反映されていた。米国には安倍氏を戦後の国際秩序を見直す「歴史修正主義者」との評価があった。
中国と韓国も反発した。とりわけ中国は、対日歴史戦の格好の戦場として靖国神社参拝と慰安婦問題に照準を合わせ、韓国と共闘しようとしていた。そこに安倍氏が参拝した。
事態を打開するために安倍氏は中国との関係改善を図ろうとした。それに向けて米国やG7(先進7カ国)同志国、オーストラリア、東南アジア、ロシア、その他の国々と安全保障のネットワークを構築し、「対中抑止力」を高めようとした。中国に日本との関係を安定させようと思うよう仕向ける作戦だ。
安倍氏は持久戦を覚悟した。それには、安定政権と長期政権を目指さなければならない。衆院選に勝って国内基盤を固めれば、相手も無視しにくくなるはずだ。
すでに13年夏の参院選で勝利を収めたことで中国の見る目が随分変わってきたことを感じていた。14年暮れの衆院選で大勝したことで中国の対応が実際に変わってきた。
米国も同様だった。衆院選後、バラク・オバマ大統領が安倍氏に電話をしてきて、「これだけの大勝ですから、安倍さんももう少し、この勝利の喜びを味わってください」と珍しくエールを送ってきた。
安倍氏は「本格政権でないと、そしてそう思われないと、外交も本格的に扱ってもらえない」と思ったという。
石破茂首相は、ドナルド・トランプ次期米大統領に会えていない。
安倍氏は16年秋、トランプ氏の1期目当選直後、米国に駆け付け、会談した。これが政治経験のないトランプ氏を、国際政治のコミュニティーに誘うことになった。このことにトランプ氏は感謝している。
トランプ氏が安倍氏に教えを請うたのも、その年の参院選でも大勝し、盤石の政治基盤を得ていたからだ。
「石破外交」ではおぼつかない。
■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院政治学研究科博士後期課程研究指導認定退学。専攻は憲法学。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学教授。山本七平賞選考委員など。安倍・菅内閣で首相諮問機関・教育再生実行会議の有識者委員を務めた。法務省・法制審議会民法(相続関係)部会委員、フジテレビジョン番組審議委員も歴任。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)など多数。

TikTokの「スーパーマンチャレンジ」をまねて中学生が骨折 どんな遊びなのか? 沖縄の学校でけが続発

動画投稿アプリTikTok(ティックトック)を通じて「スーパーマンチャレンジ」と呼ばれる遊びが広まり、沖縄県内の学校現場などで複数のけが人が出ていることが26日、分かった。本島南部の中学校では今月上旬に1人が左手首を骨折。中部でもけがが複数あった。県教育庁の呼びかけもあり、各学校が校内集会や保護者向けのLINEなどで注意喚起している。(南部報道部・平島夏実)
「スーパーマンチャレンジ」では、1人がスーパーマンの体勢で飛び込み、他の複数人が受け止めてトランポリンのようにはね返す。受け止めきれずに落下したり、受け止めた際の強い衝撃がけがにつながったりする。はね返した後に天井へぶつかる例や、着地に失敗して体を強打する例もある。
本島南部の中学校で起きた事故では、4~5人が受け止めてはね返した後、うまく着地できずに骨折したという。県教育庁島尻教育事務所には管内から複数のけがの報告があり、23日付で各教育委員会宛てに文書を出した。

事故が起きた自治体の教育委員会は文書を受け取ってから骨折事案を把握。25日までに全小中学校で注意喚起した。「スーパーマンチャレンジ」という言葉を子どもたちが検索する恐れがあるとして、小学校を中心に一部の学校では「危険な遊び」と言い換えたという。
本島中部の教育委員会も9日付で注意を呼びかけた。
TikTokでは過去に、首にベルトを巻くなどして自ら失神し、意識を取り戻す様子を投稿する「失神チャレンジ」が広がり問題化した。
モバイルプリンスさん(スマートフォンアドバイザー)の話
若者に人気のSNSでは「○○チャレンジ」と題した動画が定期的に流行する。昭和の子どもたちがテレビで見たプロレス技やアイドルの髪形をまねた心理と、本質的には変わらないだろう。
だが、SNS上の「チャレンジ」には極めて危険なものもある。過去には薬物を過剰摂取する「ベナドリルチャレンジ」で死者が出た例もあり、決して軽視できない問題だ。周囲の大人が危険性を丁寧に伝えていくしかない。
ただし、その際に重要なのは子どもとの信頼関係だ。注意する大人が子どもにとって「反発する対象」の場合、逆効果になりかねない。禁止されることで、その行為に「価値」があると勘違いする子どももいるだろう。
SNSの大きな問題点の一つに「アテンションエコノミー」がある。閲覧数などの数字を重視する現象で、多少のリスクがあっても過激なコンテンツで注目を集めようとする。
こういうビジネスモデルになっている以上、今回の「スーパーマンチャレンジ」も未成年者の「自己責任」で片付けるべき話ではない。SNSの運営側は未成年に配慮した対応が必要だ。同時に、家庭や学校でのメディアリテラシー教育も重要になるだろう。(談)

日本海側は大雪のおそれ 北陸を中心に雪強まる 夜からは西日本も雪に 晴れる所も北風冷たく

きょうは強い寒気が流れ込んでくるため、日本海側では雪の範囲が広がっていき、北陸を中心に雪の降り方が強まりそうです。夜からあすにかけては西日本でも雪の降る所があるでしょう。帰省ラッシュと重なるため、交通機関への影響などにご注意ください。冷たい風が強まり、各地で寒さが厳しくなりそうです。
冬型の気圧配置が強まって、日本海側を中心に雪の範囲が広がる見込みです。北陸周辺には発達した雪雲が流れ込みやすく、山沿いを中心に短い時間で一気に積雪が増えるおそれがあります。風も強く、ふぶく所もあるので、見通しの悪化にもお気をつけください。
夜遅くなると、山陰や九州北部など西日本でも雪が降る範囲が広がっていきそうです。あす朝にかけて予想される降雪量は多い所で、北陸で70センチなどとなっています。積雪や路面の凍結にお気をつけください。太平洋側は冬晴れとなり、空気の乾燥が続くでしょう。
日中の気温は全国的にきのうより低くなり、日本海側や北日本は朝からほとんど上がらず、厳しい寒さとなるでしょう。関東から西の太平洋側も10℃を少し超えるくらいで、日差しがあっても北風が冷たく感じられそうです。
あすは九州北部や中国地方など西日本でも山地を中心に大雪となる所があり、平地でも雪の積もる所がありそうです。北陸や北日本は日曜日にかけて大雪となる所があるでしょう。大みそかも荒れた天気となるおそれがあります。最新の気象情報と交通情報もご確認ください。

福岡市立中で生徒が個人情報流出させる…教員用フォルダーに不正アクセス、別の生徒ら12人に送信

福岡市教育委員会は26日、市立中学校の教員が授業で投影したパソコン画面に誤って教員用フォルダーを開ける「コード」を表示し、生徒2人が不正にアクセスして、うち1人が同校生徒らの個人情報を撮影していたと発表した。49人分の病気や長期欠席などの情報で、この生徒は画像を友人らに流出させていたという。
発表によると、教員は5月、パソコン画面をプロジェクターで投影した際、数十秒間、コードを映し出してしまった。教員が7月に同フォルダーで作業をしていると、途中で生徒1人がアクセスしたことを確認し、コードを変更した。
その後、コードのメモを取っていた生徒2人が、自身の学習用端末からフォルダーに約2か月間で計36回アクセスしていたと判明した。1人は中学3年生49人分の病気やアレルギーといった健康上の情報のほか、学習や長期欠席など生徒指導上の情報をスクリーンショットで撮影。画像は別の生徒や保護者計12人に送信されるなどして流出した。
11月、画像を見た保護者からの情報提供で発覚。学校は画像を保存していた人に削除を要請し、情報を流出された生徒に謝罪した。流出させた生徒は聞き取りに「興味本位でやってしまった」と話しているという。

手術中にドリルで誤って神経損傷、重度の障害負わせる…赤穂市民病院の執刀医を在宅起訴へ

兵庫県赤穂市の市民病院で2020年1月、手術中に適切な処置を怠り、患者に重度の障害を負わせたとして書類送検された40歳代の執刀医について、神戸地検姫路支部は近く業務上過失傷害罪で在宅起訴する方針を固めた。複数の関係者への取材でわかった。医師が医療行為で起訴されるのは極めて異例。
執刀医は20年1月、同病院で70歳代の女性患者の腰椎の手術時、患部を見やすくするための十分な止血などを怠り、ドリルで腰椎を削り取った際に誤って神経を損傷させたとして、今年7月、県警に書類送検された。女性患者は両足にまひが残る重度の後遺障害を負った。
捜査関係者によると、執刀医は県警の調べに容疑を否認していたという。
手術は録画されており、同支部は、複数の医師に映像の確認を依頼。結果、明らかに不適切な施術だとする意見が得られた。上級庁とも協議し、刑事責任を問えるだけの過失があると判断したとみられる。
一方、手術助手を務め、執刀医と共に書類送検された科長の医師については、同支部は起訴を見送る方針。
女性患者とその家族は、執刀医と市を相手取り、神戸地裁姫路支部に損害賠償請求訴訟を起こし、係争中。執刀医は訴訟の証人尋問で、神経を傷付けた原因を問われ、「私の手術がつたなかったと思っている」と述べ、謝罪した。一方で「手術をやってはいけないほどの技量ではない」とも述べた。
市民病院によると、執刀医が19年9月~20年2月に担当した手術では、女性患者を含め8件の医療事故が発生した。同病院は女性患者の手術について医療過誤と認定。執刀医は21年8月、市民病院を依願退職した。

不要不急の119番を1400回、偽計業務妨害容疑で男逮捕…救急要請に計22回出動も

神奈川県警伊勢佐木署は25日、横浜市中区、無職の男(40)を偽計業務妨害容疑で逮捕した。
発表によると、男は8~10日、携帯電話で約1400回にわたり119番し、無言電話や不要不急の救急要請を繰り返して市消防局の業務を妨害した疑い。調べに対し、黙秘しているという。
同署によると、11月18日~12月10日、男の「頭が痛い」などの救急要請に対応するため、計22回出動したという。8日に中消防署から同署に被害の相談があった。

【速報】秋田市の“居座り”クマ捕獲 この後搬出へ

【LIVE】捕獲したクマの搬出現場から
26日からクマが居座っている秋田市の自動車整備工場で、捕獲用のおりにクマが入っているのを秋田市の職員が目視で確認しました。この後関係機関が集まって、クマの搬出に向けた作業に入る予定です。
現場は秋田市仁井田蕗見町の国道13号沿いにある自動車整備工場です。
秋田市と警察によりますと26日朝、従業員が工場の中に入り込んでいくクマを防犯カメラで確認。クマは体長約1メートルでそのまま工場の中に居座っていました。
秋田市は自動車整備工場の中に捕獲用のおりと遠隔で確認できるカメラを設置。
26日夜、そのカメラに反応がありクマが入る様子が映っていたということです。
27日午前8時半には市の職員が捕獲用のおりに入っているクマを目視でも確認しました。
この後関係機関が集まってクマの搬出に向けた作業に入る予定です。

マンション1階通路に血を流し倒れた男性 搬送先で死亡 埼玉・所沢

26日午後9時40分ごろ、埼玉県所沢市東住吉のマンションの1階通路で、20~30代くらいの男性が血を流して倒れているのを通行人の男性が発見し、110番。男性は意識不明の重体で病院に搬送され、約2時間後に死亡が確認された。県警は男性が事件に巻き込まれた可能性もあるとみて調べている。
現場は西武鉄道・所沢駅から南に約500メートルの住宅街。県警所沢署によると、マンションは4階建てで、1階部分にオートロックは無かった。【加藤佑輔】

陛下と”天皇の歴史”を学んでいる…「愛子さまには皇室の将来を背負う覚悟がある」とわかる”意外な行動”

令和6年(2024年)は、天皇、皇后両陛下のご長女、敬宮(としのみや)(愛子内親王)殿下ご自身の人生にとって大きな節目となった。これまで学んでこられた学習院大学を卒業され、皇族としてのご公務を本格化される一方で、日本赤十字社の嘱託職員としてご就職になられた。
学生時代の日本文学へのご熱心な打ち込みぶりが伝わる中で、大学院へのご進学や海外留学という進路を予想する声が、少なくなかった。
しかし敬宮殿下はまったく違う決断をされた。
学習院大学のご卒業に際しての「文書回答」は以下のおことばで締めくくられていた。
敬宮殿下は、皇族にとって少しでも青春を謳歌できる貴重な大学時代の多くを、コロナ禍によって奪われる不運な巡り合わせだった。にもかかわらず、ご卒業後ただちに「公務と仕事の両立に努め」られるという献身的な選択をされた。
敬宮殿下は日本赤十字社へのご就職に際しても「文書回答」を公表されている。そこには、殿下ご自身の明確な“皇室像”が語られていた。
「皇室の役目の基本は『国民と苦楽を共にしながら務めを果たす』ことであり、それはすなわち『困難な道を歩まれている方々に心を寄せる』ことでもあると認識するに至りました」と。
ここでは、直系の皇女として平成から令和に受け継がれた「皇室の役目の基本」をしっかりと踏まえられながら、さらに“困難な道を歩む国民に心を寄せる”という、皇室の役目の核心についてのご自身なりの「認識」も、率直に述べておられる。
その認識に立って、いわば皇室の役目をそのまま延長する形で、「公務以外でも、様々な困難を抱えている方の力になれる仕事ができればと考えるようになり」日本赤十字社へのご就職を希望されたことを、同じ「回答」の中で吐露された。
日本赤十字社が取り組んでいる人道支援活動への敬宮殿下のご関心は、並々ならぬものがあった。そのことは、昨年(令和5年[2023年])10月2日に両陛下とご一緒に日本赤十字本社を訪れられ、開催中だった関東大震災100年企画展をご覧になった時のご様子からも、うかがえる。
その時、解説に当たった職員に対して、殿下の方から「トリアージ」について話題にされ、重ねて質問された。
トリアージとは、災害が発生して多数の傷病者が出た時に、それぞれの緊急度や重症度に応じて治療の優先順位を決定すること。これは、限られた医療資源を最大限に有効活用し、少しでも多くの人命を救うために欠かせない手順だ。しかし一方では、命のランク付けと言える厳しい側面も、否定できないだろう。
綺麗ごとだけでは対処できない救援活動の苛酷な現実と、真剣に向き合おうとされているご姿勢が伝わる。担当の解説者も、殿下がデリケートな部分にまで目を届かせておられるご理解の深さに、感銘を受けていた。
敬宮殿下の単独での初めてのご公務は、5月11日の国立公文書館(東京・千代田区)で開催された特別展「夢みる光源氏―公文書館で平安文学ナナメ読み!」へのお出ましだった。卒業論文のテーマに古典文学を選ばれた殿下にピッタリのご公務デビューだった。
とても初めてのご公務とは思えない、緊張感や気負いの無さに、取材に当たった記者たちは驚いたようだ。古典文学がお好きな殿下は、興味が尽きないご様子で、いかにも楽しげに展示をご鑑賞になられたという。
当日、ご説明に当たった同館の星瑞穂調査員はテレビ局の取材に対して、終始笑顔で飾らない気さくなお人柄という印象を受けたと語っていた。
その一方で、展示してある源氏物語の注釈書『窺原抄(きげんしょう)』の説明をした時に、殿下は「江戸時代といえば『湖月抄(こげつしょう)』という注釈書がありますね。それとの関係性は?」という極めて専門的なご質問を、さらりとされた。星調査員は「修士大学院生以上の知識があるのではないかなと拝察いたしました」という感想を述べている。
お帰りになる際には、館長が「またおいで下さい」と申し上げたのに対し、「はい、近くですのでシュッとこれます」と明るくお応えになり、その場にいた皆を笑顔にされたようだ。敬宮殿下らしいご公務のスタートを切られた。
テレビ局の取材に星氏も終始笑顔で応じていたので、「殿下の笑顔が伝わっていく」とテレビ局の記者が解説していた。その解説をした記者本人も嬉しそうな笑顔だった。さらに、そのニュースを見た視聴者の多くも、同じように笑顔になったのではないだろうか。敬宮殿下の温かなほほ笑みは、次々と連鎖するらしい。
そのような笑顔の連鎖をあらためて感じさせたのは、初めての地方での単独のご公務の時だ。
敬宮殿下は10月11日から12日にかけて、佐賀県で開催された国民スポーツ大会にお出ましになった。この時に、現地で敬宮殿下と間近に接した人たちがどのような印象を持ったか。共同通信の大木賢一記者が丁寧な取材記事を書いている(47NEWS、11月29日公開)。
それによると、案内役として最も長く時間を共にした佐賀県の山口祥義知事は、次のように述べている。
佐賀城歴史館を案内した七田忠昭館長も「(一瞬で人の緊張を解いてしまわれる)陛下も愛子さまも、何か魔法でも持っているかのようです」と語っている。
大木記者自身が皇太子時代の天皇陛下と接した時も、「とても緊張していたはずなのに、終わってみるとやたらと楽しかったことしか覚えていない」そうだ。
敬宮殿下は、そのような天皇陛下の「魔法」めいた力を、そのまま受け継がれたのだろう。
敬宮殿下が現地で「紙すき」の体験をされた時に、補助役をしたのは工房「名尾手すき和紙」の職人、田中ももさんだった。年齢は殿下と近い25歳という若さ。紙すき体験について、敬宮殿下は「水の冷たさとか、流れる音とか、紙の感触とか、そういうのが新鮮で心地いいですね」という趣旨のご感想を述べられた。田中さんにとって、このご感想が本当に嬉しかったようだ。
「そうなんです! そうなんです! って、嬉しくなってしまいました。(紙すきの作業に対して自分自身が)大変さを上回る楽しさとかやりがいを持っているので、大変ですねって言われるよりは、そういう風に言ってもらった方が、そうなんですよっていうふうになってしまいます」
このように語る田中さんの満面の笑みが目に浮かぶ。
国民スポーツ大会のロイヤルボックスで、敬宮殿下に柔道競技の解説をしたのは全日本柔道連盟の西田孝宏副会長だった。西田副会長は後日、自分が解説していた時の写真を見て「自分はこんなに笑顔を見せていたのか」とびっくりしたという。「振り返ると自分の笑顔も(敬宮殿下によって)引き出されていたかのようです。不自然な背伸びのようなものが何もなくて、本当に自然体の方でした」という感想を述べている。
現地で、殿下と接した10人ほどの人々から取材をした大木記者は、記事の最後に次のように書いていた。
殿下に接した誰もが喜び笑顔になり、その笑顔はその周囲の人たちにも連鎖したに違いない。
敬宮殿下の地方での初のご公務は、もともと能登半島地震で大きな被害を受けた石川県志賀町と七尾市へのお見舞いが、9月に予定されていた。しかし、記録的な豪雨被害のために、やむなく直前に取りやめとなった。
これは、地震による深刻な被害に心を痛められた、殿下ご自身のご希望だったことが伝えられている。まさに「困難な道を歩まれている方々に心を寄せる」という殿下が自らつかみ取られた皇室の役目を、実践されようとされていたのだった。しかし残念ながら、やむを得ない事情のためにそれはひとまず中止になった。
だが12月17日には、天皇、皇后両陛下が豪雨による被害を受けた輪島市をお見舞いになられた。輪島市には、去る3月22日に能登半島地震の被災地として、珠洲市とともにすでに1度訪れておられた。石川県にはこれで年内に3度目のお見舞いになる。
これだけの短期間に天皇陛下が同じ被災地を訪れられるというのは、異例のご対応と言える。
これは、震災の後に豪雨によってさらに被害を受けたという特別な事情によるものだが、現地の苦しみに陛下がそれだけお心を砕いておられることの表れだろう。そこには、敬宮殿下のお気持ちも重なっていたと拝察できる。
天皇陛下から敬宮殿下への受け継ぎという点で、見逃せない事実がある。それは、過去の天皇のご事蹟を陛下とご一緒に学ばれていることだ。
皇室では、毎年恒例の祭祀が多く行われている。その他に大切な臨時の祭祀もある。その中に、「式年祭」と呼ばれるものがある。式年祭は、天皇が亡くなられてから決まった年ごとに、亡くなられた日にあたる日(崩御相当日)に執り行われる。今年は「懿徳(いとく)天皇二千五百年」(10月1日)、「平城天皇千二百年」(8月9日)、「後宇多天皇七百年」(7月24日)、「後亀山天皇六百年」(5月19日)の式年祭が行われた。
敬宮殿下はそれらすべての祭祀に参列されたばかりか、式年祭の前に行われるそれぞれの天皇のご事蹟についての歴史学者による天皇陛下へのご進講にも、ほとんど陪席されていた。
これは意外だった。普通なら皇女であられても、このようなご進講の場にご一緒されることはないからだ。
現に、最初の後亀山天皇の時(5月10日、皇學館大学教授・岡野友彦氏によるご進講)は天皇、皇后両陛下だけで、敬宮殿下のご陪席はなかった。ところが、その次からは毎回、陪席されている。
「天皇の歴史」を学ぶことは皇位継承者の必須知識として、天皇陛下がまだ浩宮(ひろのみや)殿下と呼ばれていた頃から、上皇陛下がその必要性について述べておられた(昭和51年[1976年]12月17日の上皇陛下の43歳のお誕生日を控えての記者会見など)。
式年祭前のご進講に敬宮殿下が陪席されることになった経緯は、つまびらかにしない。天皇陛下が敬宮殿下を誘われたのか。それとも敬宮殿下から希望されたのか。
いずれにしても、敬宮殿下ご自身に皇室の将来を背負おうとされる前向きなお気持ちがなければ、天皇陛下のためのご進講にわざわざ陪席されることは、なかったのではないだろうか。
敬宮殿下が人生の節目を迎えられた今年は、天皇陛下から「魔法」の力を受け継がれ、人々に喜びの輪を広げる殿下の輝きが、国民により強く印象づけられた1年になった。
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(神道学者、皇室研究者 高森 明勅)

合計9820万円を外に置いた女性、何者かに回収される…「紙幣番号を調べる必要」と電話で指示

山形県警組織犯罪対策課などは26日、山形市の70歳代団体職員女性が特殊詐欺で現金9820万円をだまし取られたと発表した。警察官や検察官をかたって電話をかけ、女性の不安に乗じて現金を自宅駐車場脇に置かせ、回収する手口だった。今年の県内の詐欺被害では、「SNS型」の被害を含めても最高額だった。
発表によると、9月11日、女性のスマートフォンや自宅の固定電話に、実在しない「東京中央署」の警察官や、実在しない「東京中央検察庁」の検事を名乗る男から着信があった。2人は、容疑者を逮捕したら女性名義の通帳400通や携帯電話を持っており、女性に400万円を渡したと供述している、などと述べた。
「口座にあるお金の紙幣番号を調べる必要がある」と言われた女性は、指示通りに同25日から毎日、1日の出金限度額分の現金をATM(現金自動預け払い機)で下ろし続け、手元で管理した。
10月以降、現金を自宅駐車場出入り口の脇に置くよう指示され、女性は6回にわたり計9820万円を紙袋に入れて置いた。いずれも、何者かに回収された。
その後、12月16日を最後に男たちと連絡が取れなくなったことから、山形署に相談した。それまで、電話は毎日のようにかかってきて、女性は世間話をしたり、口座の残高を教えたりしていた。
県内の特殊詐欺被害では、統計が残る2004年以降で、18年の1億10万円に次ぐ2番目の被害規模。
県内では警察官などを装い、事件の解決名目で金銭を要求する詐欺の被害件数が、昨年の1件から今年(1~11月)は18件と急増している。