尖閣防衛、日本の「切れ目」狙う中国に警戒せよ 現場の頑張りに頼らず日本全体の備えが必要だ

米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。 独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。 ■中国海警法に対する深刻な懸念 尖閣諸島は歴史的にも国際法上もわが国の領土であり、1951年のサンフランシスコ平和条約で放棄した領土にも含まれない。その尖閣諸島周辺の日本の領海に中国は侵入を繰り返している。 2月1日には中国の海警法が施行された。海警機構の任務や権限を明らかにした法律だが、同法には懸念される点がある。アメリカも認識を共有、3月16日に東京で開かれた日米外務・防衛担当閣僚協議(2+2)で、東シナ海等での「中国の現状変更を試みる一方的行動」を非難し、「海警法に対する深刻な懸念」が表明された。 海警法の問題点の1つは、外国の軍艦・政府公船に対して武器の使用を広く認める点だ。国連海洋法条約は、32条で軍艦・公船に広く主権免除を認める。これは、国家は対等で他国の管轄に服さないという思想に基づく。例外はあり、領海を航行する軍艦が沿岸国による法令遵守の求めに応じない場合には即座の退去を要求できるが、退去要求に従わない軍艦に強制措置を取れるかは国際法上明確ではない。従い、海警法が、軍艦等への強制措置、武器使用を広く認める点は問題だ。 しかし、いちばんの問題は中国の行動だ。「規則違反の改造車で歩行者天国を暴走する」のは許されないが、「規則に従う整備された車で歩行者天国を暴走する」ことも許されない。よしんば海警法が国際法と整合的でも、日本の領海への違法な侵入は許されない。 なお、国連海洋法条約では軍艦、公船を含めて外国船の領海内の「無害通航権」は認めており、領海内に入ることすべてを国際法違反というのは不正確だ。しかし、日本漁船に接近し、また日本の領海で、中国国内法令に基づく法執行活動を行っていると主張する中国海警船の行動は無害通航には該当しない。われわれは「海警法の内容」のみではなく、「海警法」と「行動」が一体となって中国が目指すものを警戒しなければならない。 ■アメリカの懸念 2019年1月に、アメリカのジョン・リチャードソン海軍大将は中国に対し「アメリカ海軍は中国海警の巡視船と海上民兵の船を戦闘用とみなし、彼らの挑発に対しては中国軍の挑発と同様に対応する」と伝えた。

米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。
■中国海警法に対する深刻な懸念
尖閣諸島は歴史的にも国際法上もわが国の領土であり、1951年のサンフランシスコ平和条約で放棄した領土にも含まれない。その尖閣諸島周辺の日本の領海に中国は侵入を繰り返している。
2月1日には中国の海警法が施行された。海警機構の任務や権限を明らかにした法律だが、同法には懸念される点がある。アメリカも認識を共有、3月16日に東京で開かれた日米外務・防衛担当閣僚協議(2+2)で、東シナ海等での「中国の現状変更を試みる一方的行動」を非難し、「海警法に対する深刻な懸念」が表明された。
海警法の問題点の1つは、外国の軍艦・政府公船に対して武器の使用を広く認める点だ。国連海洋法条約は、32条で軍艦・公船に広く主権免除を認める。これは、国家は対等で他国の管轄に服さないという思想に基づく。例外はあり、領海を航行する軍艦が沿岸国による法令遵守の求めに応じない場合には即座の退去を要求できるが、退去要求に従わない軍艦に強制措置を取れるかは国際法上明確ではない。従い、海警法が、軍艦等への強制措置、武器使用を広く認める点は問題だ。
しかし、いちばんの問題は中国の行動だ。「規則違反の改造車で歩行者天国を暴走する」のは許されないが、「規則に従う整備された車で歩行者天国を暴走する」ことも許されない。よしんば海警法が国際法と整合的でも、日本の領海への違法な侵入は許されない。
なお、国連海洋法条約では軍艦、公船を含めて外国船の領海内の「無害通航権」は認めており、領海内に入ることすべてを国際法違反というのは不正確だ。しかし、日本漁船に接近し、また日本の領海で、中国国内法令に基づく法執行活動を行っていると主張する中国海警船の行動は無害通航には該当しない。われわれは「海警法の内容」のみではなく、「海警法」と「行動」が一体となって中国が目指すものを警戒しなければならない。
■アメリカの懸念
2019年1月に、アメリカのジョン・リチャードソン海軍大将は中国に対し「アメリカ海軍は中国海警の巡視船と海上民兵の船を戦闘用とみなし、彼らの挑発に対しては中国軍の挑発と同様に対応する」と伝えた。

住職、女性をボンネットに乗せ1キロ走行「殺そうと思ったわけではない」

茨城県警石岡署は4日、笠間市上郷、住職田代貫章容疑者(78)を殺人未遂の疑いで現行犯逮捕した。
発表によると、田代容疑者は4日午後0時半頃、笠間市泉の国道355号で、坂東市の歯科衛生士の女性(30)を乗用車のボンネットに乗せたまま、約960メートル走行した疑い。女性にけがはなかった。
田代容疑者は「女性をボンネットに乗せて走行したことは間違いないが、殺そうと思ったわけではない」と話しているという。

眞子さまが歌会始で暗示「小室圭さん会見」のXデーは10月末か

2か月の延期を経て3月26日に実施された歌会始。小室圭氏との結婚問題に揺れる眞子内親王がどのような歌を詠むかが注目されていたが、その内容はやはり2人の恋路を想起させる内容だった。
〈烏瓜その実は冴ゆる朱の色に染まりてゆけり深まる秋に〉
宮内庁担当記者が言う。
「昨年も眞子さまは歌に『月』という言葉を用い、婚約発表会見で『月と太陽』とたとえた小室さんとの関係を暗に示しているのではないかと噂された。今回の歌も、秋に悲願の結婚を結実させたいという思いを反映しているのではないかと宮内庁内でも話題になっている」
宮内庁関係者によれば、この秋に大きな動きがある可能性は高いという。
「7月に行なわれるニューヨーク州の弁護士試験の結果が判明するのは10月下旬。ちょうど眞子さまが30歳を迎える誕生日が10月23日ですので、このタイミングで会見が開かれるのではないか。弁護士試験合格となれば世間の目も変わり、国民に祝福される結婚となることも期待されます。
加えて、お父上の皇嗣殿下が昨年11月30日の誕生日に『決して多くの人が納得し喜んでくれる状況ではない』と語られたことも大きい。2年続けて同じ話を皇嗣殿下にさせるわけにはいきません。10月末から11月上旬に、小室家の金銭トラブルと今後の結婚への道筋について説明があるものと思われます」(宮内庁関係者)
試験に合格した場合、小室氏は日本とニューヨークを行き来する生活になると見られている。
「留学に際しては、現在小室氏の取材窓口になっている法律事務所が様々なかたちでサポートしています。まずはこの事務所に籍を置き、米国に進出する日本企業の法務を担当することになるのではないか」(前出・宮内庁担当記者)
“実りの秋”が訪れるか──。
※週刊ポスト2021年4月16・23日号

「五輪までは菅首相支持」の安倍前首相 解散権を封じ後継総理選びへ

「内政、外交について意見交換した。非常に有意義だった」。菅義偉・首相は安倍晋三・前首相との会談(3月29日)の後、議員会館の安倍事務所の前で待ち受けていた30人近い記者たちに囲まれると珍しく機嫌良くそう語った。
菅・安倍会談は首相就任直後の昨年10月以来ほぼ半年ぶり。前回は約10分間だったが、今回は50分近く話し込んだ。
訪米を前に「外交が苦手」とされる首相が安倍氏に外交上のアドバイスを求めたのはわかる。だが、わざわざ「内政」についても話し合ったとリップサービスしたことで、永田町は、すわ解散総選挙かと浮き足立ち、「4月30日解散、5月23日投開票」といった選挙日程が流れている。
もっとも、2人には会談が注目されること自体が計算通りだ。菅首相にとって、退陣後も最大派閥・細田派の実質的なトップで党内に隠然たる勢力を持つ安倍氏の存在は潜在的な脅威だ。それだけに、首相就任以来「疎遠」とみられていた安倍氏と面談したことで、「安倍氏は菅政権を支持している」と党内に印象付けた。
一方、「桜を見る会」をめぐる捜査で政治活動を制限されてきた安倍氏も、首相との会談で「政権への影響力は健在」だとアピールすることができた。
だが、互いの本音は「一枚岩」にはほど遠い。「五輪までは菅ちゃんを支えなきゃな」。安倍氏が側近に漏らしているという言葉には、菅首相への複雑な感情が滲んでいる。側近議員がいう。
「安倍さんは日頃から、『五輪まで』と期限付きで菅さんを支えるという。菅総理は安倍さんの総裁任期の残りを引き継いだ救援投手。だから『オレには支える責任がある』とも語っているが、それは自分が誘致した東京五輪を成功させたいという思い。副総理の麻生(太郎)さんと会った時もよくそんな話をしているそうです」
裏を返せば、“五輪までは菅首相に解散させない”ということだ。
だが、東京五輪・パラリンピックが終われば、すぐ自民党総裁選に突入する。「五輪までの支持」とは、安倍氏が総裁選では「菅続投支持」ではなく、フリーハンドを持つつもりであるという意味まで読み取れる。
それがはっきりわかるのが次の証言だ。
「安倍さんは『麻生さんとも話しているんだが、衆院選を考えると後は誰がいいのかなあ。来年は参院選もあるから』とも語っている。麻生さんとは、菅総理が五輪を花道に退陣することを想定して後継総理の人選について話し合っている。もともと任期1年の救援投手の菅総理には本当の意味での解散権はないという考えでしょう」(同前)
9月5日に閉幕する東京パラリンピックを節目に菅首相は退陣するというのが安倍氏の“期待”しているシナリオなのだ。
菅首相も最近の安倍氏の動きにただならぬものを感じたからこそ、腹を探るために議員会館の事務所に出向いたのだ。
※週刊ポスト2021年4月16・23日号

市のハラスメント担当課長、別の課長の不適切発言を注意せず 部下に「子育てで休み出してほしくない」

滋賀県甲賀市のハラスメント担当の課長が、部下に対する別の課長の不適切な発言を聞きながらその場で注意しなかった上、発言の不適切性を審議する苦情処理委員会に委員の一人として出席していたことが4日分かった。委員会開催も申し立てから4カ月かかっていた。市では元幹部職員のセクハラ調査の長期化が明らかになっており、改めて市の対応の妥当性が問われそうだ。
市によると、昨年4月上旬、セクハラ問題の心労で病気療養していた女性職員の職場復帰に向け、上司の女性課長と話し合いをした。女性職員が育児を理由に2日間の休暇を申し出ると女性課長は「課にはたくさんの女性がいて、子どもがほしくて得られなかった人、子どものいない人もいる。子育てを前面に休みを出してほしくない」などと発言したという。
市の説明では、話し合いにはハラスメント担当の男性課長も同席していたが、注意をしなかった。同月、女性職員による申し立てを受け、市は8月に苦情処理委員会を開き、同課長も委員の一人として出席。委員会は「発言は不適切」と結論付けた。女性職員への決定通知は委員会の1カ月半後で、申し立てから半年近くかかった。
市総務部は「経過については調査中の個別案件にも絡むため言えない。担当の男性課長は関係者として聴取した上での委員会出席であり、中立性は他委員が点検しており、問題ないと判断した」と説明する。
市では元幹部職員のセクハラ調査が長期化したまま3月末で定年退職した問題が明らかになっている。
■中立性損なう恐れ 新川達郎同志社大名誉教授(地方自治論)の話 本来はその場の注意で済む話だ。手続きに載せるならば丁寧に行うのは当然だが、時間をかけ過ぎると問題を大きくするのでバランスが重要だ。問題発言時に同席していた課長は職務上の見逃しをした責任があり、委員として出席するのは結論の中立性を損ないかねない。

あだ名は“ブリキのパンツを穿く男”……両陛下をサポートする新侍従長の素顔

4月1日、天皇皇后両陛下を補佐する側近トップの侍従長に別所浩郎(こうろう)氏(68)が就任した。中学時代の同級生が、重職に就くかつての級友を懐かしそうに語る。
「優秀だけど、それを鼻にかけたりしない、飄々とした男でした。灘高校から東大文Ⅰにトップで合格したらしいと当時話題になっていた。将来は外交官になりたいとその頃から言っていました」
東大法学部卒業後の1975年、外務省に入省。外務審議官、韓国大使、国連大使などを歴任した。
「小泉内閣では総理秘書官を務めました。省内でも名の知れた頭脳明晰な人物で、醜聞や女性問題とも無縁。秘書官時代のあだ名は“ブリキのパンツを穿く男”でした」(政治部デスク)
兵庫県神戸市の出身。小中学校時代をニュージーランドで過ごした。
「父親は三井物産の社員。中2の時に帰国して、あっさり灘高に合格しましたが、勉強漬けだった印象は全然ない。同じ校区には作家の中島らも(故人)がいて高校から同級生だったはず」
こう語る前出の同級生が、秘話を続ける。
「歴史が好きでね。特に関心を寄せていたのが飛鳥時代。中学の時、友達3人で奈良へ旅行に行き、飛鳥や奈良文化ゆかりの場所を訪ね歩いたことがある。薬師寺や唐招提寺、蘇我入鹿の首塚とかね。その時、壬申の乱について熱心に語っていたのを覚えています」
壬申の乱といえば、大化の改新を主導した天智天皇の崩御後、皇弟(後の天武天皇)と皇子が皇位を巡って争った内乱だ。
「諸説ある天智と天武の関係性や系譜の分岐など、中学生とは思えない知識を披露していました」(同前)
別所氏と雅子さまの接点
古代の皇族に思いを馳せたイガグリ頭の少年は、時を経て、天皇皇后両陛下の最側近に。雅子妃は東大法と外務省の後輩にあたる。
「雅子さまが配属された北米局に別所氏もいたことがあります。当時、雅子さまは何度も米国に出張していましたが、それをバックアップしていたのが別所氏だったはず。雅子さまにとっては長年の信頼関係がある、頼れる侍従長なのでは」(政治ジャーナリスト)
昨年1月、別所氏は侍従次長に着任していたが、
「直後、コロナ禍に。『私は行幸啓(天皇皇后の地方お出まし)を一度もしていない』とよくこぼしていました」(宮内庁担当記者)
趣味は能楽。自身も鼓を嗜む。「学究肌で真面目一徹。リスクを取っての目立った功績はなく、良くも悪くも失点をしないタイプ」(外務省関係者)。安倍晋三前首相が「雰囲気的にもピッタリだ」と評した資質を生かして、令和の皇室を支えていく。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年4月8日号)

飼い犬に右腕と左耳かまれ男性意識不明…体長1メートル弱のアメリカンビーグル似雑種 昨年も肘かまれた

4日午前7時55分ごろ、鹿児島県薩摩川内市百次町の農道で、近くに住む無職・鬼塚正市さん(54)が飼い犬にかまれ、血を流して倒れているのを通行人が見付け、119番通報した。鬼塚さんは右腕と左耳をかまれるなどして病院に搬送された。
薩摩川内署によると、鬼塚さんは午前7時30分ごろに、毎朝の習慣である散歩に行くため、犬を連れて自宅を出発。400メートルほど離れた現場で飼い犬にかまれた。偶然近くを通りかかった人に助けを求め、通行人が通報。その後、鬼塚さんは意識不明の重体となった。出血がかなりあり、出血性ショックの可能性もあるという。
犬は、外見はアメリカンビーグルに似た雑種で、体高は約50センチ、体長は1メートル弱の雄。年齢は推定6歳で、元々は保健所にいた保護犬だったものを、4年ほど前に鬼塚さんが譲り受けたものだった。通報時には、鬼塚さんの周囲をウロウロと歩いていたが、消防や警察などが駆けつけて周囲が騒然となったため、現場から逃げ出した。
約1時間後、騒ぎを聞きつけた鬼塚さんの妻が現場付近で犬を捕獲。その後の調べで、昨年も鬼塚さんの肘にかみついたことがあったことが判明した。他の被害は不明という。現場は九州新幹線川内駅から数キロ離れており、農地の中に民家が点在している。

16歳高校生少年、盗難車運転しパトカーに衝突 公務執行妨害容疑で逮捕 京都

運転していた盗難車をパトカーに衝突させたとして、京都府警向日町署は4日、公務執行妨害の疑いで、京都市伏見区の高校生の少年(16)を逮捕した。
同署によると、同日午後4時20分ごろ、京都府向日市内で盗難の申告を受けて乗用車を探していた同署のパトカーが被害車両を発見。制止を求めたが、逃走した。約10分後、少年は京都市伏見区で先回りしていた別のパトカーに車を衝突させたという。
同署によると、少年や警察官にけがはなかった。少年は無免許だったという。

「いじめられた子にも悪いところが…」加害者の“逆ギレ謝罪”を全校放送した顛末

“ユキを愛でる会”グループチャットで行われた女子高生陰湿いじめの実態 から続く
浮気調査や人探しといった本業のかたわら、子供たちの「いじめ調査」を続けているT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚氏。年間約500件もの相談を受けて、いじめ事件の解決に奔走するうちに、いつしか「いじめ探偵」と呼ばれるようになった。これまでに阿部氏が手がけた事件の中から、とくに印象的だった事例について話を聞いた(プライバシーの観点から仮名にして一部フィクションを交えています)。
阿部氏が原案・シナリオ協力をつとめる漫画『 いじめ探偵 』(漫画・榎屋克優)が現在、WEB漫画サイト「やわらかスピリッツ」にて連載中。
【マンガ】『いじめ探偵』第1話を読む
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腹を蹴る、給食にゴミを入れる
阿部氏がいじめ相談を受け始めたばかりの、2010年ごろの話だ。関東エリアに住む小学生の息子ケイタ(10歳・仮名)の母親から、事務所に電話が入った。最初の電話は被害者の母親からかかってくることが多いが、「なんだか最近元気がない」、「いじめられているようで心配だ」という漠然としたものがほとんど。この時もそうだった。
「どこで何をされているか、まずは本人にしっかりと聞き取ってもらえますか?」
数日後、母親から折り返しの連絡があった。外傷が残らないように腹などを何度も殴る、給食に髪の毛やゴミを入れられるといった、具体的な状況が見えてきた。数日後、自宅で母親同席のもと、ケイタ本人から聞き取りを行うことにした。
いじめられていたケイタは、純朴な雰囲気のごく普通な子供だった。最初は落ち着かない様子だったが、阿部氏が名刺を手渡すと、かしこまった様子で目を合わせた。
「本人がちゃんと話をしてくれないと、その後の対策もうまくいきません。相手が子供だと名刺を渡さない人もいますが、一人の人間として僕は君を認めているよ、という意味も込めて私は子供に対しても渡すようにしています」
事なかれ主義の教師たち
いじめられた記憶を掘り起こす過程では、時系列が前後してしまうことが珍しくない。カレンダーやテレビの番組表などを見ながら、大きめの付箋に一つ一つの出来事を記入し、起きた順序通りに並び替えていく。
いきなり殴られたなど不自然な話があれば、その前には何かがあっただろうと問いを投げかけ、点と点をつなげていく。遠足や運動会などの写真を見せてもらい、加害者の顔と名前を特定する。5人の加害者のうち、主犯格は身体が大きくスポーツ万能で、女子からも人気のあるタイプだった。
内ももに何度も蹴りを入れられたり、トイレで陰部に落書きをされるなどのいじめも判明した。だが、多くの被害者はいじめられていることへの恥ずかしさからか、被害レベルを半分程度に過少報告する傾向があるという。
「証拠を残すために、小型の録音機を貸しました。相手の名前を呼びかけたり、何をされているか分かるように、何回か実演指導もします」
十分にケイタへのいじめの証拠が集まったところで、阿部氏は報告書を作成。母親に付き添って学校に提出した。だが、学校側は仕事を増やしたくないためか、まともに取り合わないことが多い。その時も中年女性の校長は、こう言った。
「元気がないのは、家庭環境が原因かもしれない。そもそも、子供同士でいざこざが起きることはありますよ。社会に出てからも人間関係がうまくいかないことはいくらでもあるので、ちゃんと乗り越えないと」
問題に向き合おうとせず、トンチンカンなことを言ってくる教師は少なくない。そこで阿部氏はあえて思いっきり大きな声を出して、ケイタのいじめの証拠となる報告書を読み上げた。腹から声を出して読み続けていると、だんだん喉がキツくなってきたが、異様な雰囲気によって明らかに教師たちの表情が変わった。
動揺し、お茶を飲む手が震える者もいた。非常識に思えるかもしれないが、こうした手段を取らないと、教師たちは動かないのだ。
奇策を打ってトドメを刺す
後日、加害者たちに指導が行われたが、まったく反省していない様子だった。主犯格の親は「うちの子がいじめの濡れ衣を着せられた。こっちのほうがいじめられている」と逆ギレし、周囲にそう吹聴していた。
それでも、形ばかりの「謝罪の会」が開かれることになり、昼休みの時間を使い、被害者であるケイタ、加害者の双方の親と子供が集められた。しかし、加害親子には反省の色は見えず、彼らはこう言った。
“いじめられたって言っている子にも悪いところがあったから、これはお互いさまだね”
“いじめたつもりは全然ないけど、いじめって思わせちゃったみたいでゴメンね”
こうなることを予想していた阿部氏は、事前に策を講じていた。「謝罪の会」が開かれるのは視聴覚室の隣だったので、放送機器をうまく操作すれば、会の様子を全校中に流すことができると考えたのだ。
いじめの実態を知るためにケイタの数人の友人からも聞き取りをしていた阿部氏。視聴覚室で一緒に「謝罪の会」の様子を聞いていたその友人たちにこう言った。
「これ、マイク置いておいたら放送できちゃうんじゃないの?」
まったく悪びれない加害者の様子に怒りを感じていたケイタの友人も乗り気になった。急いで「謝罪の会」の教室に、放送室からコードを延ばしてマイクを設置。放送のスイッチをオンにすると、放送室に鍵をかけて別の教室へと移動した。
加害者親子の本音が校内に露呈した意味は大きかった
“うちの子だけが一方的に悪いとは思っていませんよ!”
“ケイタって、どこかいじめたくなる気持ちにさせるんです”
まったく謝罪する気などなく、自分の行為を正当化するばかりの加害者親子の声が筒抜けになってスピーカーから流れ始めると、学校全体がざわついてパニック状態になった。
「出てきなさい! ドアを開けなさい!」
教師は声を張り上げてドンドンと放送室のドアを叩いたが、なかには誰もいない。十円玉で開けられる簡易式の鍵だったので、間もなくドアは開けられてスイッチが切られた。だが、ほんのわずかな時間でも、加害者親子の本音が校内に露呈した意味は大きかった。
主犯格の生徒はその後、転校。いじめは完全に終結したというが、阿部氏はこのケースをこう振り返る。
「今思うと、全校放送はやり過ぎだったかもしれません……。ただ、そうでもしなければ加害者親子が自分たちがやったことの酷さを理解できなかったのは、残念ながら紛れもない事実です。とはいえ、私もさまざまな事例を経験してきて、もっと違うやり方で加害者に反省させる方法が今ならあると思っています」
(取材・構成:西谷格)
【マンガ】『いじめ探偵』第1話を読む
(阿部 泰尚)

ワクチン接種の遅れ、70%が「不満」…読売世論調査

読売新聞社が2~4日に実施した全国世論調査で、新型コロナウイルスのワクチン接種が米国など他の先進国と比べて遅れていることに不満を感じている人は、「大いに」32%、「多少は」38%を合わせて70%に上った。
新型コロナを巡る政府の対応を「評価する」は35%で、前回(3月5~7日調査)の45%から10ポイント下落した。「評価しない」は59%(前回50%)だった。
大阪、兵庫、宮城の3府県へ適用される「まん延防止等重点措置」が感染拡大防止に効果があると「思わない」人は51%と半数を超え、「思う」は40%だった。