東大卒キャリア官僚「勉強ができたからこその悲惨ルート」を嘆く

現在も「東大卒」のブランドは圧倒的だが、東大生を取り巻く環境は大きく変化しているという。東大の「学生生活実態調査」(2018年度)によれば、学部生が最も多く抱える悩みは「将来の進路や生き方」で、「就職」が続く。
かつて「東大→キャリア官僚」はエリートコースの王道だったが、現在は「官僚離れ」が進む。
2020年度の国家公務員総合職(キャリア)試験合格者1717人中、東大卒は249人で、合格者に占める割合はピーク時の32.5%(2010年)から14.5%に激減した。大学ジャーナリストの石渡嶺司氏が指摘する。
「SNSの発達とともに、若手官僚の職場環境が極めて過酷で、労働時間が非常に長いのに年収が低いことが若い世代に知れ渡りました。加えて、事あるごとに不祥事で国民からバッシングされるうえ、天下りが難しくなっている。東大を出て官僚になる“旨味”がなくなったことも官僚離れの要因です」
現実に官僚になった東大卒は疲弊している。
霞が関の中央省庁で課長補佐を務める30代のキャリア官僚A氏は、月の平均残業時間が150時間。国会会期中は答弁作成のため200時間を超えることもある。
肉体的にも精神的にも常に疲弊し、通勤の満員電車で立ったまま気絶したように眠る──。最近になってようやく、そうした労働環境が問題視されるようになったが、これまで残業代はほとんど出ず、入省10年目の年収は650万円だったという。
自身も東大卒のライター・池田渓氏(2002年入学、理II)は、A氏を取材した際にこう打ち明けられた。
〈東大に入らなければ、こんなつらい仕事に就くこともなかったのかな、なんてことはよく考えます。小さい頃からなまじ勉強ができたから、東大なんかに入ってしまい、人生がこんな悲惨なルートにつながってしまった〉
池田氏が指摘する。
「Aさんのような東大卒の官僚は能力が高いだけでなく、責任感が強いので仕事が集中しがちです。こうした状況をよく知る学生は官僚を敬遠するようになり、近年、キャリア官僚につながる東大法学部への進学を希望する学生が減っています」
2019年の東大入試では、それまで文系の国内最高峰であり、法学部に進む学生の多い東大文Iが、合格最高点・最低点、平均点のすべてで東大文IIを下回り、関係者に衝撃を与えた。
最上位層の受験生たちが“いま、東大法学部に行っても幸せになれない”と考えていることが読み取れるのだ。
※週刊ポスト2021年4月9日号

変異型感染者の4割、兵庫と大阪に集中…首都圏などに拡大の可能性も

新型コロナウイルスの「まん延防止等重点措置」の適用が決まった大阪府、兵庫県では、感染力が高いとされる変異ウイルスの報告が増加し、感染の再拡大に影響している。
新型コロナに関する基本的対処方針分科会の尾身茂会長は1日、記者会見で「関西圏で増えた変異ウイルスが他の地域にも広がる懸念がある」と指摘した。西村経済再生相は「不要不急の移動については、ぜひ自粛をお願いしたい」と強調した。
3月31日に開かれた厚生労働省の助言機関に示されたデータでは、兵庫県では3月15~21日の1週間の感染者431人のうち181人に変異ウイルスの検査を行い、128人が陽性だった。852人が感染した大阪府では187人を検査し、52人が該当した。
一方、宮城県では124人を検査して1人、東京都では87人を検査して6人が変異ウイルスと判明した。
国内で確認された変異ウイルスの感染者は累計801人(3月30日時点)で、約4割を兵庫と大阪の感染者が占める。変異ウイルスの9割超が、感染力が高いとされる英国型だ。

宮城知事「大阪よりもひどい状況」…政府、感染食い止めへ知事要請待たず判断

3月31日昼過ぎ、宮城県の村井嘉浩知事に西村経済再生相から1本の電話が入った。「大阪府から、まん延防止等重点措置の要請があります。宮城県はどうでしょうか」
宮城県はそれまで、重点措置の適用に慎重な構えを見せていた。西村氏は村井氏が適用をのむかどうか、感触を探ろうとしていた。
一方、村井氏は電話の直前、この日の県内の新規感染者が過去最多の200人に上ると聞き、衝撃を受けたばかりだった。「大阪府よりもひどい状況です」と西村氏に認めた。直近1週間の10万人あたりの感染者数は全国で最も多かった。
政府は31日のうちに大阪府に加え、兵庫、宮城両県の適用を急きょ決めた。感染を食い止めるため、両県からの正式要請を待たずに重点措置適用の流れをつくるという異例の展開だった。

「腹破らんでくれ!」「のど喰って殺して!」史上最悪の獣害“三毛別羆事件”現場復元地を訪れると…

ヒグマによる人身被害は、春と秋に特に多く発生している。これは、山菜やキノコを採りに来る人間と、冬眠前後に餌を求めて活動するヒグマが、山野で遭遇する確率が高まるためと考えられている。
大正4年の11月下旬……。北海道苫前郡苫前村三毛別にある家々では、軒下に吊るされていたトウキビがヒグマに荒らされる被害にあっていた。当時、クマの出没は珍しいことではなかったため、住民たちはあまり気に留めないでいたという。
窓から屋内に侵入してくるヒグマ
12月9日午前11時半ごろ、開拓者である太田家には当主の妻と、養子として預かっていた子供がいた。そこに、冬眠をしそこなった1頭のヒグマが、窓を破って屋内に侵入し、2人を殺害した。
12月10日夜、2人の通夜を太田宅で行っていると、大きな物音とともにヒグマが乱入。狂乱の中、ひとりが銃を放つとヒグマは逃げていった。
しかし、ヒグマがそのまま山中へ帰ることはなかった。その足で太田宅から500m離れた明景宅を襲ったのだ。ここには大人3人と、子供7人が避難していた。激しい物音と地響きがすると、ヒグマが窓を打ち破り、いろりを飛び越えなだれこんできた。大鍋はひっくり返りランプは消え、たき火は蹴散らされ、逃げまどう人々に次々と襲いかかる……。結果的にこの襲撃で5人が殺害され、3人が重傷を負った。
事件発生後6日目、討伐に加わっていた猟師によってヒグマは射殺された。重さ340kg、体長2.7m、立ち上がった高さは3.5m、推定7~8歳のオスだった。死骸をソリに乗せて運んでいると、それまで晴天だった空が一転して大暴風雪となった。この天候の急変は「羆嵐(くまあらし)」と名付けられ、いまも当地で語り継がれている。
史上最悪の獣害の現場へ
時は変わって2019年夏、私は北海道を旅していた。夕張、赤平などの炭鉱跡がある空知地方と、旭川、美瑛などの観光スポットが多い上川地方を回る予定だ。時間に余裕をもたせ、その日の天気と気分次第で行く場所を当日まで迷っていた。
旭川周辺のスポットを調べていると、苫前町の資料館に、三毛別羆事件の詳しい解説があるらしい。しかも中には、私の好きな剥製やマネキンもあるようだ。
ちょっと行ってみようか。
ちょっととはいえ、旭川から苫前町まで120kmはあるのだが。
どこまでも広がる大地、まっすぐに続く道路、この開放的な景色と爽やかな空気は、何度訪れても感動する。
留萌まで来ると国道232号線、オロロンラインに入る。オロロンラインは小樽から稚内まで日本海の海岸線に沿って走る国道である。壮大な水平線に沈む夕日や、海岸に連なる岬、延々と続く草原地帯など、絶景を眺望できるドライブコースとして有名だ。
ヒグマだらけの町
苫前町に入ると苫前町役場の前に大きなヒグマのオブジェが、訪れる者を歓迎していた。交通安全を訴える旗にもヒグマが描かれており、ヒグマがかなり身近な存在だと思わせる。
苫前町郷土資料館は、昭和3年に建てられた旧村役場を利用した、雰囲気のある建物だ。入り口ではここでも、ヒグマが案内してくれている。
館内に入ると今度は、巨大なヒグマの剥製が出迎えてくれた。館内の展示は、苫前のくらしにまつわるもの、ヒグマの習性と生活、そして三毛別羆事件に関する解説に大きく分けられている。展示の周りには、ヒグマや野生生物の剥製が並び、雰囲気を盛り上げていた。
特に注目したいのはやはり、三毛別羆事件のことだ。ここでは実際に襲撃が起こった現地の写真と地図を使って、時系列や距離感、ヒグマの足取りや位置関係など、どこでなにが起こったのかが、より鮮明に詳しく解説されていた。
大正4年12月9日、ここからおよそ20km山奥へ入った三毛別六線沢に、体長2.7mの巨大なヒグマが出現。冬眠をし損ね空腹だったヒグマは数度に渡り人家を襲い、7名が死亡、3名が重傷を負った。
その中のひとりは、ヒグマに襲われたまま連れ去られ、150m離れた林の中で片足の膝下と、頭の一部が見つかった。また別のひとりは、上半身から食われ始めると、臨月の腹を破られ胎児が引きずり出されたことなど、被害の状況とともに実際に起こった地獄絵図の様子も事細かに記録され、背筋が凍った。
館内に作られた人家の中では、窓から侵入するヒグマと、それに驚く人間の様子を再現。こうして剥製とマネキンを使って解説されていると、より立体的に恐ろしさが伝わってくる。
事件を後世に残すための「三毛別羆事件復元地」
館内を回っていると、目を引くチラシが。1990年7月、不屈の開拓精神と先人の偉業を後世に伝えようと、六線沢の現場付近に周辺住民らの強い熱意によって、「三毛別羆事件復元地」が作られたようだ。
どんなところだろう?と怖いもの見たさの好奇心に駆られ、一路、現地へ向かうことにした。詳しい住所が記されておらず、受付の方に場所を聞く。
「国道の来た道を戻って、橋を渡ったら信号を左、次の信号を右、あとはその道をまっすぐ行けば着きますよ。」
なんて簡単な説明、本当に着くのだろうか。
だいたいの位置をナビに入れて出発。たしかにナビは、橋を渡った信号を左、次の信号を右に案内した。
途中、何度も大きな看板に「ベアーロード 復元地まであと○km」と書かれ、疑念が確信に変わる。
北海道らしい牧歌的な風景を眺めながら、爽快な直線道路をひた走る。前にも後ろにも、対向車線にも車がいない。窓を全開にし、思わずアクセルを踏み込みたくなる。
復元地までの道を示すベアーロードは、迷う隙を与えない一本道なのだが、走っても走ってもなかなかたどり着かず、変わらない景色に時折不安になる。しかしそんな頃、たびたび道路脇の倉庫や建物の壁に、ベアーロードと書かれたかわいいクマのイラストを見つけてはホッとする。その繰り返しだ。
急に表情が変わるクマのイラスト
しかし復元地まで残り10kmほどになったころ、あれだけかわいかったクマのイラストが急に恐ろしくなった。
しかも、正確に道を案内してきたカーナビが、ここに来て突然迷走し始めたのだ。
なんだこれ、怖い。帰りたくなってきた。しかしここまで来たらいまさら引き返すわけにもいかない。
ベアーロードのクマと終わらない道路だけを信じて走ると、残り5km地点に「射止橋」という、ヒグマ射殺の際に最初の被弾地点であった場所を記念して名付けられた橋を通過。いよいよ現地が近くなってきたことを実感し、不安と緊張でハンドルを握る手に力が入る。
ついに復元地まで200m。すると今までキレイに舗装されていた道路が砂利道になり、あたりは鬱蒼とした森へと変化。看板のクマも凶暴化し、牙をむいている。
バタン。
「この付近でヒグマの目撃情報が寄せられております」
車から降りると聞こえてくるのは、鳥のさえずりと草木を揺らす風の音のみ。空は木々に覆われ、昼間だというのに薄暗く、なんとなく気味が悪い。目の前に広がる大自然に圧倒され、畏怖の念を感じた。
ふと、注意喚起の看板が目に入った。
「この付近でヒグマの目撃情報が寄せられております。見学される方は、十分注意されるようお願いします。」
復元しているのは家だけじゃなく、ヒグマまでもリアルに現れるのか。
緊張が走る。
携帯は圏外。
私以外誰もいない。
なにかがあっても助からない。
入り口には、三毛別羆事件についての解説が書かれていた。ヒグマが描かれている横には、明景宅の間取りと被害者の位置関係とともに、ヒグマの足取りが示されている。
解説を読む。
「腹破らんでくれ!」「のど喰って殺して!」
臨月の婦人は「腹破らんでくれ!」「のど喰って殺して!」と絶叫し続けついに意識を失ったのです。
郷土資料館よりさらに細かい描写やリアルな声が追記されていた。
一刻も早くこの場を立ち去りたい。
復元地には手描きされた案内図もあった。石碑や復元された小屋のほか、クマのひっかき傷、クマの穴、クマの足跡まであるようだ。
まずはメインである、明景宅をモデルに復元された小屋を見る。実際の事件現場はここよりさらに100mほど山の中へ入った場所にあるそうだ。
小屋の横には、ものすごい迫力で襲いかかっている巨大なヒグマの像が作られている。実物大だそうだ。想像を遥かに超える大きさに息を呑んだ。こんなヒグマに襲われたら、人間になすすべは無い。いくら像とはいえ、誰もいない自然の中にいると、身震いするほど怖くなる。
小屋の中に入ると、随分簡素な作りに驚く。ここで極寒の冬を耐え忍ぶのか…… ここでヒグマに遭遇したら…… 現地で実際に体感することで、想像が膨らみ、開拓者たちの苦労が偲ばれ、自然と生物への恐怖をより生々しく実感する。
事件の概要を記すパネルや記念スタンプなどが置かれ、落ち着いてじっくり見たいのだが、あたりには蚊やハチも多く、なによりなんらかの生物に遭遇しそうで、気が気でない。
続いて、小屋の周りにあるとされるクマの穴やひっかき傷、足跡を見て回る。とはいえ、クマの穴もひっかき傷も観光客向けに人工的に作られたもので、足跡に至っては落ち葉に埋もれて見つけられず、ゆるい雰囲気に心が和む。
ひと通り見終えると、逃げるように帰路についた。
クマの祟り
三毛別羆事件には後日談がある。
ヒグマは射殺後、解体され村の人々によって煮て食われた。
参加したうちのひとり、鍛冶屋の息子は、その夜から家人に噛み付くなどの乱暴が始まり、その凶暴性は日に日に増していった。彼を寺に連れて行くと、クマの祟りであると告げられた。近親縁者が集まり、一心に祈りを捧げたところ、症状は治まったという。
また別の話も語り継がれている。
三毛別羆事件の際に、自宅が事件対策本部となっていたことから、この事件の一部始終を見聞きしていた少年がいた。
少年は犠牲者のかたきをとるため、のちに猟師となり、生涯にヒグマを100頭以上仕留め、北海道内の獣害防止に大きく貢献した。
1985年12月9日、三毛別羆事件の70回忌の法要が行われた。
その猟師は小学校の講演の壇上に立ち、「えー、みなさん……」と話し始めると同時に倒れ、同日に死去した。酒もたばこもやらず、健康そのもののはずであった。事件の仇討ちとしてヒグマを狩り続けた末、事件同日に急死したことに、周囲の人々はヒグマの因縁を感じずにはいられなかったという。
人間と動物が共生するために
北海道の先住民族、アイヌの人々は古くから、自然界のさまざまなものにカムイ(神)の存在を見出し、ヒグマをキムンカムイ(山の神)と呼び、大切にしてきた。我々には計り知れない力があるのかもしれない。
クマの被害に馴染みのない人にとっては、三毛別羆事件の話を聞いてもなかなか実感がわかないだろう。
しかしこの話は紛れもない実話だ。
事件のヒグマは例外だとしても、ほんの少し、山菜採りに入った登山道で、国道沿いの藪の中で、あるいは市街地でクマに遭遇する可能性はある。
大切なのは、無用な接触を事前に避ける努力をすることと、生態を正しく理解することだ。感謝や尊敬の念を抱きながら、よりよい形で共生していかなければならない。
(あさみん)

恋心を抱いた外国人に1500万円以上騙し取られ…巧妙すぎる「国際ロマンス詐欺」の罠

「被害にあった誰もがそうだと思うんですけど、まさか自分が騙されるとは思わなくて……」
そう話すのは、外国人と思われる男性に1500万円以上も騙し取られた大林千絵さん(30代、仮名)だ。
大林さんが被害にあったのは、“国際ロマンス詐欺”という特殊詐欺のひとつ。出会い系アプリなどで知り合った海外にいる外国人男性が、女性の恋愛感情や親切心につけこんで金銭を詐取するというもの。新型コロナウイルスが蔓延し、出会い系アプリを利用する人が増えているというが、こんな落とし穴が……。
「長いことアメリカで観光業の仕事に従事していたのですが、事故で寝たきりになった母に会いやすいように、日本への異動を申し出て2020年1月に帰国しました。地元は東京なのですが、地方都市に配属されたこともあり、慣れない土地で近くに知り合いがいない寂しさから、話し相手が欲しくて出会い系アプリを利用したんです」
ちょっとした心のスキマを埋めようと始めた出会い系アプリが、彼女を地獄へ引きずり込むキッカケに……。
「日本人と中国人のハーフという男性とメールでのやり取りが始まりました。彼は“マイケル・ケンタロウ・チェン”と名乗るアメリカ人で、今はクウェートの国営石油会社と契約して、採掘作業の現場監督をしていると言っていました。10月に最初のメッセージが届いて、11月にはLINEのような無料通信アプリで直接メッセージのやりとりをするようになったんです。当初は“どこに住んでいるの?”“食べ物は何が好き?”といった、本当に普通の会話をしていただけでした」
思いを寄せるキッカケとなったのが、家族の話だった。
「実父と母は私が小さいころに離婚していますし、母は私が日本に帰ってきて3か月後の昨年の4月に亡くなりました。浮気もすればギャンブルもする奔放な母で、そんな母を一時は憎んだこともありましたが、やっぱり母が好きで、亡くなったときは悲しかった……。彼も父親を事故で、母親をガンで亡くしたと話していて、私の気持ちに寄り添ってくれたんです。そんな彼に、恋心を抱くようになりました」
少しずつ気持ちを寄せ始め、やり取りも頻繁になっていった。
「コロナをキッカケに海外ではアジア人に対する“ヘイトクライム”がひどい状態なんです。私も海外で働いていたので、少なからず差別を経験しました。彼もアジア系のハーフで差別を受けているとのことで“もう疲れた、日本に行きたい”と話していました。私よりも大変な境遇なのに、世界各地で仕事をして頑張って、すごいなって……リスペクトしていました」
11月下旬には、こんな相談を持ち掛けられた。
「石油を掘るための機械が壊れたというのです。彼は新しい採掘機械を購入したいが、自分の使っている会社用PCは機密情報が漏れることを防ぐため、外部のサイトにアクセスすることが制限されているというのです。だから、“僕の代わりに僕の銀行口座にログインして送金してほしい”と……。ちなみに私との直接の電話も仕事の契約上で禁止されていてできないと言われました」
当初は機械を販売している会社への送金を依頼されたが、送金できず。次に大林さんの口座への送金を試したがダメ。最終的に銀行のホームページからサポートデスクに連絡をしてくれ、と言われて従った。
「実際にちゃんとしたホームページもあるトルコの『ZIRAAT UNION OFFSHORE BANK』 という銀行で、彼の口座にログインをすると1億円以上の残高がありました。送金が弾かれてしまうのは、トルコ政府の指針だと銀行のサポートデスクに言われてしまって」
結局、大林さんは’20年11月26日、自身の口座から日本人名義の口座に85万円を振り込むことになる。
「銀行のサポートデスクから、“税金を支払わないと口座のお金は没収する”という連絡があったので、それを彼に伝えると“利子をつけて返済するから、振り込んでほしい”と言われたんです。不安ではありましたが、彼も“こういう仕事は初めてじゃない、中国とも仕事をしたことがある”というので、信用してしまいました。何より、彼に助けを求められて嬉しかった。何か力になってあげたいと思って」
銀行からは日本にいるエージェントに振り込んでほしいと連絡が。《カトウケンジ》という日本人男性の口座だった。
「不審に思いましたが、彼に聞いても、“銀行の指示どおりにするしかない”と言うだけ。本当に大丈夫かな……と思いつつも85万円ならと思って振り込んだんです。ちなみに日本人名の振込先はほかに《ナカジマテツオ》という人もいました」
これで問題も解決……と思いきや再びトラブルが起こり、お金を要求される。
「テロリストではないことを証明する証明書の取得が必要でお金がかかるとか、機械の送料が必要になったなどの連絡があり、再びお金を振り込んでほしいと……」
この金銭の要求にも、巧妙な手口があったという。
「証明書に関しては、本当にあるんです。機械にしても彼が機械の販売元と話をつけ、後払いするから採掘機械を先に送ってもらうことになっていて、その送料分だけを私が建て替えたのです。販売元から荷物を送った旨のメールが届き、荷物の位置がわかる照会URLが記載されていました。ただ、後から調べたら数十ドル払えば誰でも作ることができるサイトだったんです」
大林さんはその後、5回にわたってお金を振り込む。12月3日に327万円、12月7日に362万円、12月11日に684万円、12月14日に232万円、12月24日には85万円を振り込んだ。
「2回目からは金額が一気に上がったので怖くなって……。それでも口座にお金があるのは見えている。きっと返ってくるから大丈夫と、自分に言い聞かせて振り込んでいました。途中からは振り込まなければお金を返してもらえなくなっちゃう……と必死で。亡くなった母の保険金があったので振り込めましたが、途中からは母と再婚した義父にもお金を借りました。小さいころから私を知っている義父は“子どものときから母親のことで苦労したからな……。お前が涙ながらに頼むのなら、しょうがない”と言い、詳しい事情も聞かずに600万円を貸してくれました」
不安を感じた大林さんは、男性にパスポートの写真を送ってもらったり、米国では誰もが持っている社会保障番号を教えてもらっていた。
「社会保障番号をWEB上で検索すると、個人の情報を一部確認することができるのです。確認したら、確かに彼が話したとおりの地域出身であることがわかり、大丈夫だろうと思っていたんです。不安になって、彼に騙してないよね? と連絡をすると“僕だって困っているんだ。こんな状況でも信じてもらえなくてつらい”と逆ギレ。だから疑いつつも、騙されてるワケないって……」
だが、2021年1月に男性と連絡が取れなくなった。
「“会社に携帯を取り上げられるから、連絡は取れなくなる”との知らせはありました。ただ、アプリ上の彼はオンラインになっている。誰かが携帯をいじっているハズなんです。だから私はメッセージを送り続けました。次に連絡が取れたのは2月で、彼は“会社から契約不履行で裁判を起こされた。裁判官が連絡をしてもいいと言うので、連絡できた”と。ただ、私はお金を返してもらいたいだけ。私を騙してるよね? と送ると“騙してると思うの? こっちもつらい状況なのに、君にも責められてつらい”というメッセージが来ただけでした」
再び音信不通に。最後に連絡が来たのは3月3日だった。
「私はずっとメッセージを送っていたのですが、彼からは“何を言っても自分の言葉を信じてもらえない。もう君の好きにしたらいい”という返信が来たのが最後です。3月10日には、アプリ上で相手にブロックされました」
1500万円以上を騙し取られ、黙っているわけにはいかない。大林さんはすぐに警察に駆け込んだが、
「警察も海外と聞くと“英語ができる人はいるけど、多くはないからね……”と及び腰で。日本人名の口座については調査してくれると言ってくれましたが、真剣に対応してくれるようには思えません。FBIにもWEB上から連絡を入れていますが、私だけのために捜査してくれるとも思えないし……」
と、途方に暮れる。
国際ロマンス詐欺などの相談を受ける国際家事相談支援団体『ウーマンズプライド』のスミス美咲代表は、
「私のところへ相談に来る女性は40代から50代の離婚経験のある独身女性がほとんど。子育ても終わり、恋愛から離れていた人が出会い系アプリなどで知り合い、恋に落ちて被害にあっています。軍事基地のない県に住む人に向けて軍人を装うケースも多く、“愛してるよ”などと甘い言葉をかけるのが常套手段。ただ、送られてきた写真を見ると海軍のユニフォームに空軍のバッジがついていたりするなど、詰めの甘い部分も見受けられますね」
騙されないためにはどうすればいいのだろうか。
「本当に基本的なことではありますが、会ったことのない人にはお金を送らない、ということですね。恋は盲目とは言いますが、相手から金銭を要求されたら1度冷静になって疑ってほしい。コロナで外出することもできないため、出会い系アプリの需要は高まり、被害は増えているはず。被害にあっても周囲に相談できず、泣き寝入りしている人はかなりの数がいると思いますよ」(スミス代表)
大林さんも「冷静に考えればおかしなところはあった」と言うが、
「騙されている最中は、本当にまわりが見えなくなっていました。最後は銀行から“お金を振り込めば、彼の口座の現金を指定の住所に送る”と連絡が来て呆れました。現金を郵送する銀行がどこにあるんだろうって……。銀行も、機械を販売する企業も全部“作り物”だったんですよね。パスポートも生年月日の部分が斜めになっている。これも数十ドル払えば作ることができるようです。こんなに手の込んだことをするんだとビックリしました」
遺されたのは、多額の借金だけ。不安な日々が続く。
「今は眠れなくなり、胃潰瘍にもなりました。考えると不安になってガタガタ震えることもあります。恥ずかしくって1度は死ぬことも考えました。私の保険金で義父にお金を返せるんじゃないかって……。でも、考え直して、これから少しずつ返済していくことにしました。自分がしたことですもの。本当にバカですよね」
そう話すと、寂しそうに力なく笑った。

大阪府、飲食店でのマスク着用を事実上義務化…一部に罰則も

政府が大阪府に「まん延防止等重点措置」の適用を決定したことを受け、府は1日、新型コロナウイルス対策本部会議を開き、5日から飲食店などに要請する具体的な感染防止対策を決定した。マスク着用を事実上、義務化する内容が柱で、一部には罰則も設けられる。
措置の対象区域は大阪市で、要請はいずれも改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく。要請に応じず、命令を受け、それでも従わなかった場合、飲食店には20万円以下の過料が科されるケースもある。
応じない場合、過料の対象となるのは、いずれも飲食店に対する要請で「午後8時までの営業時間の短縮」「マスクをしていない客の入店拒否」「飛まつ感染防止のためのアクリル板の設置」など。
大阪府では飲食店に対し、マスクを着用していない客の入店拒否を罰則の対象とすることで、実質的に飲食店でのマスク着用を義務化できるとしている。
一方、同じ事業所に対する要請でも「カラオケ設備の利用自粛」などは過料の対象とはならない。
府民に対しては、「4人以下での『マスク会食』の徹底」「歓送迎会、宴会を伴う花見の自粛」などを求める。府民への要請は、いずれも過料の対象外となっている。
大阪府では、こうした措置に実効性を持たせるため、飲食店の感染対策を認証する独自の制度を創設することを検討している。
同じく重点措置に適用されることになった兵庫県では、対象地域を神戸、西宮、尼崎、芦屋の4市とすることを決定。4市は現在、午後9時までの時短要請が実施されているが、午後8時までに1時間繰り上がる。
その他の要請については、2日の対策本部会議で検討する。

菅グループ、官邸で会合=坂井副長官「今後は控える」

菅義偉首相に近い自民党の無派閥若手議員グループ「ガネーシャの会」は1日、首相官邸で会合を開いた。まとめ役は坂井学官房副長官で、藤井比早之内閣府副大臣や三谷英弘文部科学政務官らが出席した。参加者の1人は「副長官室に入ったことがない人もいるし、坂井氏を囲もうということになった」と説明した。派閥などの会合が官邸で開かれるのは異例だ。
これに関し、坂井氏は衆院議員会館で記者団に「いつもやっているわけではない。今回が初めてだ」と釈明した上で「(不適切だとの)批判もあるということなので、今後は控えたい」と語った。首相自身は官邸で記者団に「私は全く承知していない」と述べた。
[時事通信社]

「秋田からの上京思い出す」…菅首相、新入生や新社会人への激励メッセージ投稿

菅首相は1日、新入生や新社会人を激励するメッセージを出した。コロナ禍でも「安心して学び、働くことができるように、全力を尽くしていきます」と訴えた。
自身のツイッターに投稿したもので、「私も50数年前、希望と不安の入り混じった気持ちで秋田から上京したことを思い出します」と振り返った。マスクや手洗い、3密回避などの徹底も呼びかけた。
加藤官房長官は内閣府の入府式で、56人の新入職員に「変だなと思うことを上司や親しい人にしっかり言える人になってほしい」と訓示した。文部科学省の入省式では、萩生田文科相が「職員全員が生徒会長出身みたいな役所で、争いを好まない体質がある」として、譲れない政策は気概を持って進めるよう発破をかけた。

首相官邸で大人数会合、食事も 坂井官房副長官「問題ない」

坂井学官房副長官は1日、菅義偉首相を支持する自民党の無派閥議員グループ「ガネーシャの会」メンバー約10人と首相官邸で食事を伴う会合を開いた。坂井氏は分かれて弁当を食べたと記者団に説明し「逆に何が問題なのか」と述べた。国会内で記者団の取材に答えた。謝罪の弁はなかった。
同会は衆院当選4回以下の議員で構成され、トップは坂井氏。各派閥の例会がある毎週木曜昼に議員会館に集まっていた。派閥的色彩の強い会合を官邸で開催するのも異例だ。
首相は、会合について官邸で記者団に問われ「全く承知していない。本人が説明すると思う」と述べた。

村井・宮城知事「患者急増、防げなかった」 蔓延防止措置適用

新型コロナウイルスの感染再拡大に伴い、蔓延(まんえん)防止等重点措置の適用が決まったことを受け、宮城県の村井嘉浩知事は1日、報道陣の取材に応じ「(県と仙台市の)緊急事態宣言で、蔓延を防ぎたかったが、患者の急増を抑えられなかった」と述べた上で、「仙台市が感染の起点になっている」として同市を中心に対応する方針を明らかにした。
村井知事は今後の具体的な対応について、2日に市町村長会議を開催し、3日には「県新型コロナウイルス感染症対策本部会議」を開き、具体的な方針を示すとしている。
一方、大阪府の吉村洋文知事が東京五輪の聖火リレーを「大阪市内では中止すべきだ」との考えを示したが、村井知事は「(県内の実施は)6月なので、もう少し様子を見るべきだ」と述べた。