養父の立場を悪用して性的虐待を加えたとして、準強制わいせつ罪などに問われた林業作業員の男(47)に対し、松山地裁は23日、求刑通り懲役8年の実刑判決を言い渡した。高杉昌希裁判長は「心情、尊厳を無視する卑劣な犯行」と述べた。
判決によると、男は養父の立場を悪用し、被害者が中学1年の頃から性的虐待を繰り返し、抵抗できない精神状態にさせ、2019年5月~20年2月、自宅で性的暴行を加えるなどした。
高杉裁判長は「家庭内という閉鎖的な環境で実の母親の助けも得られず、被害者の絶望や屈辱など精神的苦痛は察するに余りある」と指摘し、「被告は問題の本質や自身の責任の重さを真に理解しているとは到底認め難い」と述べた。
地裁は被害者の特定を防ぐため、被害者だけでなく被告も匿名にするなどして審理を進めた。
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コロナ便乗犯罪、45件摘発 目立つ高額転売
警察庁は25日、2020年中の生活経済事件の摘発状況を公表した。マスクや消毒用アルコールの高額転売など新型コロナウイルス感染拡大に乗じた犯罪の摘発は45件、87人に上った。警察庁幹部は「コロナ禍での社会不安につけ込んだ事件が今後も懸念される」と警戒している。
警察庁によると、高額転売による国民生活安定緊急措置法違反が19件、25人で最多。コロナへの効能をうたい未承認薬を広告するといった医薬品医療機器法違反が14件、28人で続いた。他は、コロナ禍で資金繰りが苦しくなった飲食店経営者に法定利息を大幅に上回る貸し付けをするなどヤミ金が5件、23人など。
刑務所内で窓ガラス割り刑務官にかみつく…受刑者「注意に腹が立った」
山形刑務所は23日、40歳代の受刑者の男を、器物損壊と公務執行妨害、傷害の各容疑で山形地検に書類送検したと発表した。
発表によると、男は昨年12月14日夜、同刑務所の共同室内で、扉の窓ガラス1枚(縦約60センチ、横約15センチ)を殴って割り、30歳代の男性刑務官にかみついた疑い。刑務官は軽傷を負った。
男は就寝時間にもかかわらず洗面台にいて、刑務官から注意を受けた。調べに対し、男は「注意に腹が立った」などと述べ、容疑を認めているという。
河井被告、「突然の議員辞職」にひそむ権謀術数 強い広島県民の反発、自民党への逆風回避狙う
2019年7月の参院選をめぐる大規模買収事件で、公職選挙法違反に問われて公判中の元法相・河井克行被告が3月23日、買収を全面的に認めるとともに議員辞職を表明した。 河井被告はこれまでの公判で無罪を主張し、徹底抗戦を続けてきた。突然買収を認めて議員辞職を表明したのは、「自民党執行部の圧力が背景にある」(立憲民主幹部)とみる向きが多い。 河井被告と共に逮捕・起訴された妻・案里元被告は、2月に一審の有罪判決が確定して参院議員を辞職した。これを受け、買収事件の舞台となった参院広島選挙区では、4月25日の衆参統一補欠選挙と合わせて案里元被告の失職による再選挙が実施される。 ■政局絡みで注目の「4・25トリプル選挙」 今回の河井被告の議員辞職表明には「再選挙での自民党候補への逆風回避の思惑」(同)がにじむ。 河井被告が議員辞職すれば、自民党政権を揺るがせた巨額買収事件は新たな局面を迎え、河井夫妻はそろって国政の舞台から姿を消す。河井被告が議席を持っていた衆院広島3区の補選は、公選法の規定から10月までに実施される衆院選に吸収される。 河井夫妻は2020年6月の通常国会閉幕直後に東京地検に逮捕・起訴されたが、国民の激しい批判を受けても議員は辞職せず、説明責任も果たさないまま公判で無罪を主張していた。ただ、2020年秋に河井被告が突然弁護団を解任したことで、同被告の公判は案里元被告とは分離され、同被告の公判日程は大幅に遅れていた。 政局絡みで注目される「4・25トリプル選挙」は、立憲民主党参院幹事長だった羽田雄一郎氏の死去に伴う参院長野選挙区補選と参院広島選挙区再選挙が4月8日に、続いて吉川貴盛元農水相の鶏卵汚職事件での議員辞職に伴う衆院北海道2区補選が13日にそれぞれ告示となり、選挙戦がスタートする。 菅義偉政権発足後初の国政選挙で「次期衆院選や政権の前途を占う重要な選挙」(自民長老)であり、与野党とも総力戦で臨む。ただ、自民党は北海道2区では候補を擁立せず、参院長野も羽田氏実弟の弔い選挙となるため、野党優勢とみられている。 一方、2人区の参院広島は、残る現職が立憲民主党所属で「改選をにらむと野党側は戦いにくい」(自民選対)ことに加え、広島は圧倒的な保守地盤でもある。当初は「自民党に勝機がある」との見方もあったが、主要野党が女性の統一候補の擁立を決めたことで、自民党内には「情勢は五分五分」との危機感が広がる。
2019年7月の参院選をめぐる大規模買収事件で、公職選挙法違反に問われて公判中の元法相・河井克行被告が3月23日、買収を全面的に認めるとともに議員辞職を表明した。
河井被告はこれまでの公判で無罪を主張し、徹底抗戦を続けてきた。突然買収を認めて議員辞職を表明したのは、「自民党執行部の圧力が背景にある」(立憲民主幹部)とみる向きが多い。
河井被告と共に逮捕・起訴された妻・案里元被告は、2月に一審の有罪判決が確定して参院議員を辞職した。これを受け、買収事件の舞台となった参院広島選挙区では、4月25日の衆参統一補欠選挙と合わせて案里元被告の失職による再選挙が実施される。
■政局絡みで注目の「4・25トリプル選挙」
今回の河井被告の議員辞職表明には「再選挙での自民党候補への逆風回避の思惑」(同)がにじむ。
河井被告が議員辞職すれば、自民党政権を揺るがせた巨額買収事件は新たな局面を迎え、河井夫妻はそろって国政の舞台から姿を消す。河井被告が議席を持っていた衆院広島3区の補選は、公選法の規定から10月までに実施される衆院選に吸収される。
河井夫妻は2020年6月の通常国会閉幕直後に東京地検に逮捕・起訴されたが、国民の激しい批判を受けても議員は辞職せず、説明責任も果たさないまま公判で無罪を主張していた。ただ、2020年秋に河井被告が突然弁護団を解任したことで、同被告の公判は案里元被告とは分離され、同被告の公判日程は大幅に遅れていた。
政局絡みで注目される「4・25トリプル選挙」は、立憲民主党参院幹事長だった羽田雄一郎氏の死去に伴う参院長野選挙区補選と参院広島選挙区再選挙が4月8日に、続いて吉川貴盛元農水相の鶏卵汚職事件での議員辞職に伴う衆院北海道2区補選が13日にそれぞれ告示となり、選挙戦がスタートする。
菅義偉政権発足後初の国政選挙で「次期衆院選や政権の前途を占う重要な選挙」(自民長老)であり、与野党とも総力戦で臨む。ただ、自民党は北海道2区では候補を擁立せず、参院長野も羽田氏実弟の弔い選挙となるため、野党優勢とみられている。
一方、2人区の参院広島は、残る現職が立憲民主党所属で「改選をにらむと野党側は戦いにくい」(自民選対)ことに加え、広島は圧倒的な保守地盤でもある。当初は「自民党に勝機がある」との見方もあったが、主要野党が女性の統一候補の擁立を決めたことで、自民党内には「情勢は五分五分」との危機感が広がる。
風邪ウイルス、10歳未満で感染率が2倍以上に コロナ流行以降
新型コロナウイルスの流行下で、風邪の原因となる「ライノウイルス」の感染リスクが10歳未満の子どもの間で例年の2倍以上に上昇したと、河岡義裕・東京大医科学研究所教授(ウイルス学)らの研究チームが発表した。コロナ対策でインフルエンザの感染が減ったことが影響したと考えられるという。
ライノウイルスは、鼻や喉などの上気道に炎症を起こすウイルス。肺炎などの合併症で重症化する場合もある。
研究チームは2018年1月~20年9月、横浜市内の医療機関で採取された新型コロナ以外の呼吸器疾患患者2244人(うち10歳未満1119人)の検体を解析し、呼吸器疾患を起こすウイルスについて調べた。
その結果、横浜市で20年2月に新型コロナの感染者が報告されて以降、10歳未満の子どもからインフルエンザウイルスはほとんど検出されなかったが、ライノウイルスの検出率は例年の2倍以上だった。10歳以上ではいずれのウイルスも検出率が低下した。
一般的に、あるウイルスに感染すると、免疫が活性化して別のウイルスに感染しづらくなるため、インフルエンザ流行時期にはライノウイルス感染が少ない傾向がある。チームの高下恵美・国立感染症研究所主任研究官(ウイルス学)は「新型コロナ感染対策によってインフルエンザが流行しにくくなり、結果的にライノウイルスに感染しやすい環境が整った。特に幼い子どもはライノウイルスへの免疫がないために、感染しやすいと考えられる」としている。
新型コロナやインフルエンザはウイルスの表面に「エンベロープ」と呼ばれる脂質でできた膜があり、アルコール消毒液などで壊れて不活化しやすいが、ライノウイルスはエンベロープを持たず、アルコール液が効きにくいという。高下主任研究官は「せっけんを使った手洗いはライノウイルスにも有効だ。子どもを感染から守るためにも、アルコール消毒に加えて十分な手洗いを心がけてほしい」と話す。【岩崎歩】
高3女子を連れ回した疑い 神戸の男2人逮捕、兵庫
会員制交流サイト(SNS)で知り合った高校3年の女子生徒を未成年と知りながら連れ回したとして、兵庫県警生田署は25日、未成年者誘拐の疑いで、建設作業員中島いおり容疑者(23)=神戸市中央区=と無職浜一輝容疑者(20)=同=を逮捕した。
逮捕容疑は18日午後0時50分ごろ、女子生徒(18)を東京駅に誘い出して兵庫県まで連れ去り、24日午後10時半ごろまで誘拐した疑い。
署によると、中島容疑者は「誘いはしたが誘拐したつもりはない」と一部容疑を否認し、浜容疑者は認めている。
24日になって生徒が両容疑者の住居付近にいるとの情報が寄せられ、同日夜に保護した。
コロナ救急、4割が受け入れ拒否 現場滞在時間も通常の倍 山形
2020年4月以降、新型コロナウイルスの感染疑いがある患者の救急搬送が山形県内で延べ152件あり、そのうち59件で医療機関から受け入れを断られていたことが県のまとめで判明した。県消防救急課によると、保健所への連絡、調整などから現場の滞在時間も通常の倍程度になっているという。
県消防救急課によると、新型コロナに感染している可能性がある患者の救急搬送(20年4月~21年1月)は152件あった。このうち保健所に連絡をした件数は地域別に、村山65件▽最上2件▽置賜16件▽庄内10件――だった。医療機関から断られた59件を地域別でみると、村山53件▽置賜4件▽庄内2件。最上はなかった。
保健所に連絡をした救急隊の現場での平均滞在時間は34分で、医療機関に搬送を断られるケースでは、さらに5・5分長くなる傾向がみられた。村山地域では、現場での滞在時間が70分を超えたケースもあった。
同課によると、病院までの所要時間が通常よりかかったことが原因で容体が急変したり悪化したりしたケースの報告はないという。
各消防本部から県に報告された新型コロナの陽性患者搬送件数は36件(搬送後判明分も含む、21年2月15日現在)だった。【野呂賢治】
入管が押しつける「偽名」。強制送還もされず、「仮放免」と「収容」の繰り返しに苦しむスリランカ人
スリランカ大使館が「間違いなく本人である」と証明しているのに、「他人である」として、日本の入管収容施設に長期収容されてきたスリランカ人・ダヌカさんが起こした「ダヌカはダヌカである」ことを認定する裁判が3月3日、裁判長の突然の「結審宣言」で終わった。これは、筋書きが初めから決まっていたのだろうか?
◆スリランカ大使館は、ダヌカさん本人だと認めている
スリランカ人男性のダヌカさん(38歳)は、入管から「ダヌカなる人間はダヌカではない。チャミンダである」として長期収容を強いられてきた。
ただしその背景の一つとして、ダヌカさんが10代のときの1998年、ブローカーから「未成年者では日本のビザを取れない」と吹聴され、「チャミンダ」名義の偽パスポートで来日した過去があるのは事実だ。10年後、ダヌカさんは不法滞在が発覚して帰国する。
帰国後に貿易会社を設立したダヌカさんは、2年後の2010年、今度は正式なダヌカ名義のパスポートで商談のために来日した。ところが滞在中に、入管が「ダヌカ名義の偽パスポートでチャミンダが入国した」と判断して逮捕。ダヌカさんは出入国管理法違反により横浜刑務所で2年間服役した。
風向きが変わったのは、その収監中にダヌカさんの要請に基づいて調査を行った在日スリランカ大使館が「ダヌカは間違いなくスリランカ国民のダヌカである」との証明書を発行したことだ。
これで2013年3月の出所後にダヌカさんは晴れて帰国できるはずだった。ところが入管は、出所と同時にやはり「別人である」として、ダヌカさんを入管収容施設に収容した。ダヌカさんは、8か月後の11月に「仮放免」(収容を一時的に解く措置)される。
◆本名のパスポートでは出国できない!?
収容も仮放免も「退去強制令書(帰国命令書)を出された者が、帰国の準備が整うまで」の暫定措置である。ところが困ったのは、ダヌカさんが帰国を望んだとしても、ダヌカ名義のパスポートでは出国させてもらえないし、スリランカ大使館が他者であるチャミンダ名義のパスポートを発行するはずもないので、入管による強制送還すらできないことだ。
仮放免中、ダヌカさんはその後の心の支えとなる日本人婚約者のAさんと出会う。だが、1~2か月ごとに行う仮放免の更新で、2017年7月にダヌカさんは理由も告げられずに再収容された。以後、2年半という長期収容生活を送ることになる。
詳細は割愛するが、「一生出られないのか」との不安からダヌカさんはうつ病と拒食症を発症し、水すら吐くようになる。70Kgあった体重が46Kgに落ち、Aさんも支援者も筆者も「このままでは死ぬ」と心配していた。
2019年末、ダヌカさんはまさに死の寸前になってようやく仮放免された。その日は、歩くこともできなくなったので車いすで姿を現した。
◆「ダヌカはダヌカである」との認定を求めて提訴
ダヌカさんは収容中に、入管の退去強制令書の発布の撤回を求める裁判を起こしていた。つまり、裁判所に「ダヌカはダヌカである」との認定を求めたのだ。
仮放免直後の2020年2月25日、ダヌカさんは第5回口頭弁論に出廷。初めて法廷で「私はダヌカだ」との意見陳述を行った。だが直後、鎌野真敬裁判長が突然「審理は尽くした」と結審を宣言。ダヌカさんの代理人・指宿昭一弁護士は「本人である証拠を収集中。結審は許されない」として「裁判官忌避」を申し立てた。裁判官忌避をすると結審は延びる……はずだった。
だが後日、ダヌカさんから「7月3日に判決が決まった」との連絡が入る。当日「結審はされていない」として、指宿弁護士は出席を拒否。ダヌカさんも傍聴席のほうに座った。無人の原告席に向かい、鎌野裁判長はダヌカさんの撤回請求を「却下する」と告げ、10秒後に退廷した。
筆者は判決文を読んだが「ずるい」と捉えたのは、裁判所はスリランカ大使館がダヌカさんを本人と認めている点に触れていないことだ。
◆控訴審でも本人尋問はなし
当然、ダヌカさんはこれを控訴した。その控訴審が3月3日に開催されたのだった。
まずダヌカさんが意見陳述に立つ。それは、収容中に職員たちから「チャミンダと呼ばれたら返事をしろ」と強要されるなどの屈辱や、うつ病や拒食症に苦しんだ日々をつづったものだった。
だがこの直後、ここでも村上正敏裁判長は突然「原告から(被告が持っている本人証明となる)文書提出命令の申し立てや本人尋問の申し出がありましたが、合議の結果『必要性なし』と判断し却下することにしました。判決は、4月21日の午後1時30分で指定します」と終結宣言したのだ。
次の瞬間、指宿弁護士が立ち上がり「ダメです。一審でも尋問は行われていないんです!と訴えた。
「必要性なしとの判断です」
「おかしくないですか。民事裁判で原告の話を聞かないで判断するのは!」
そう抗議している間に、裁判長は会釈の挨拶もなしに扉の向こうへと消えた。だまし討ちのような展開に、ダヌカさんはその後も「頭が真っ白です」と多くを語らなかった。
◆このままでは、ダヌカさんは一生「仮放免」か「収容」で過ごすしかない
確かに裁判長の言いぶりでは、あらかじめこの日の結審は既定路線だったと思われる。あとは敗訴の判決を出すのだろう……。指宿弁護士は「即時抗告すると同時に、今回裁判所が原告の文書提出命令を却下したことで、これについては異議を出して認められたら裁判再開もあり得るのでトライする」とのこと。
「民事訴訟で当事者の意見も聞かないで判決が出るのは、あってはならないことです」(指宿弁護士)
もし同様の事例が欧米であれば、司法はこんな判断はしないだろう。また、市民も関心を寄せるだろう。「では英語で情報発信をしようか」と支援者が裁判後に話し合ったが、それもアリだと思う。ある意味での外圧は、この国には必要だ。
一つだけ言えるのは、このままでは、ダヌカさんは強制送還すらされず、一生を就労禁止の「仮放免」か「収容」のどちらかで過ごすしかないということだ。人の血が通った行政ならここまでのことはしない。だが、入管はそれをしてしまう……。
ダヌカさんと婚約者は今、機会さえあれば絶対に第三国で暮らそうと決めている。
<文・写真/樫田秀樹>
【樫田秀樹】
かしだひでき●Twitter ID:@kashidahideki。フリージャーナリスト。社会問題や環境問題、リニア中央新幹線などを精力的に取材している。『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』(旬報社)で2015年度JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞を受賞。
木造2階住宅が全焼、焼け跡から男女3人の遺体発見
25日午前1時50分頃、宮城県塩釜市野田、職業不詳沼田忠さん(79)方から出火、木造2階住宅を全焼し、焼け跡から男性1人、女性2人の遺体が見つかった。
塩釜署によると、沼田さんは70歳代の妻、40歳代の娘と3人暮らし。同署は遺体は3人とみて身元確認を進めている。現場はJR塩釜駅から南に約300メートルの住宅街。
5歳餓死、児相は兄2人の健康状況を指標に判断…「生活保護受給で安心した面も」
福岡県
篠栗
( ささぐり ) 町で昨年4月、5歳の
碇翔士郎
( いかりしょうじろう ) ちゃんが餓死し、母親と知人の女が保護責任者遺棄致死容疑で逮捕、起訴された事件は、福岡児童相談所や町が5か月前から一家の見守りを続けてきたが、幼い命を救うことはできなかった。背景を探ると、異変の兆候が見過ごされ、児相がリスクを十分に把握できていなかった実態が浮かび上がる。(村上喬亮、佐藤陽)
2019年9月。夏休み明けに幼稚園に来た翔士郎ちゃんの顔色は悪かった。小学生の兄2人も痩せ細り、園や学校の身体測定では3人とも体重が減っていた。園などは町に連絡し、同11月から、児相や町でつくる「要保護児童対策地域協議会」が見守りを始めた。
ただ、翔士郎ちゃんは同月を最後に登園しなくなり、翌20年1月に退園。このため協議会は、学校で毎月体重を測定し、生活状況を細かく聞き取っていた兄2人の健康状況を兄弟3人を見守る「指標」にした。結果的に翔士郎ちゃんは、見過ごされる格好になった。
協議会関係者によると、給食のおかわりなどで体重を増やした兄2人と対照的に、幼稚園で食事の機会を失った翔士郎ちゃんは痩せていった。関係機関による最後の体重測定は、退園前の19年10月。この時は15キロ程度で平均を下回っていたが、異常なほど痩せてはいなかった。
この半年後、翔士郎ちゃんの体重は1歳半健診と同じ約10キロにまで落ち込み、死亡した。この間、児相は職権で体重を測ることもできたが、「兄らの状態から切迫した状況とは思わなかった」として踏み込まなかった。
見守りが始まった19年11月、一家は生活保護の受給を開始。関係機関の担当者は一様に「生活費が支給され、少なくとも食べるのに困ることはないと安心した面はあった」と話した。
しかし、起訴状によると、翔士郎ちゃんはこの頃には母親の碇利恵(39)、知人の赤堀恵美子(48)両被告から十分に食事を与えられていなかったとされる。赤堀被告は、自分が提供する食事だけで暮らすように碇被告に指示し、生活保護費などをだまし取った。赤堀被告は否認している。
捜査関係者などによると、一家の暮らしは困窮し、電気やガスが止められた。「子どもが一人で外にいる」など虐待を疑わせる通報もあり、県警は育児放棄などの疑いで児相に通告した。
児相は20年1月と3月の2回家庭訪問し、3月11日には翔士郎ちゃんに会い、目視のみで身体的虐待はないと判断。ただ、赤堀被告とみられる女が「母親は1か月体調不良だ」と面会を断ったため、碇被告に会わないまま虐待リスクは低いとした。3ランクのうち、児相主体で定期的に面会するA、Bではなく、町など他機関に見守りを任せるCとした。
同12日には、翔士郎ちゃんの祖母が一家の安否確認を児相に依頼。相談は亡くなる10日前まで続いたが、児相が新たな対応を取ることはなかった。福岡児相の森本浩所長は「いずれかの時点で体重を測るべきだった。そこは足りなかった。母親に早期に面会できれば、リスクをキャッチできたのではないかと思っている」と語った。
町は一家に30回以上接触を試みたが、赤堀被告が「(母親は)対人恐怖症」などと介入を拒み、碇被告に会えないことが多かった。ただ、赤堀被告の存在が協議会で問題になることはなかった。町関係者は「見守る児童は130人程度いて、細かい対応の話は出にくい」と明かす。
県警が20年に児童虐待の疑いで児相に通告した件数は約5900件で、16年の約3・6倍。全国の警察でも昨年、初めて10万件を超えた。国は虐待に対応する児童福祉司を21年度末までに17年度比で約2000人増員し、5200人態勢にする。児相と市町村の連携も進めているが、餓死を防ぐことはできなかった。
元児相職員で家庭問題カウンセラーの山脇由貴子さんは「今回は身体的虐待ではなく育児放棄が疑われていた。母親が病気という情報がある時点で、深刻化していることがうかがえる。他機関との連携は大事だが、専門機関である児相の調査が必須だった」と指摘する。
県は児相の一連の対応について、第三者でつくる部会で検証する。