宇部市の広範囲でガス漏れが発生したことを受け、都市ガスを供給している山口合同ガスは記者会見を開き陳謝しました。
全面復旧の見込みは現在調査中だということです。
山口合同ガスは4日午後5時から会見を開き、広範囲にわたるガス漏れやそれに伴う火災の発生、そして、1万2500世帯にもガスの供給停止を陳謝しました。
会社の説明によりますと設備に異常が発生したのは4日午前6時前でガバナと呼ばれる設備の異常が発生したということです。
ガバナは高圧で送られてくるガスを一般家庭で使用するレベルまで下げるための設備で市内・琴芝町にあるガバナで通常、一般家庭では2.26キロパスカルに設定されている供給圧力が何らかの不具合により通常の約12倍となる28キロパスカル程度に最高でなっていたと考えられるということです。
(山口合同ガス)
「直近が、2025年の2月5日に分解点検を行いまして、2回の分解点検時は、異常は認められていないというところでございます」
山口合同ガスによりますと現在、復旧に向けた作業を進めていて、病院や学校などについては安全を確認し順次供給を再開していくという事です。
また、一般家庭向けについては点検作業を進めていますが全面復旧の見込みは現在調査中だという事です。
広範囲でガス漏れ 火災22件…生活に大きな影響 “どこにでもある設備”に異常か 山口・宇部市
4日、山口県宇部市で広い範囲でガス漏れが起き、火災が複数発生しました。市内では1万世帯以上でガスの供給を停止していて、生活にも影響が出ています。
山口県宇部市の飲食店。お昼時ですが…
店長
「当店は都市ガスで全くガスが使用できなくて、営業ができない」
4日は臨時休業。
スーパー銭湯も…
「やってない」
銭湯に来た人
「しょうがないから家に帰って体を拭くか。皆さんいま見ていても次から次へと…中で聞いたら、いつ回復するか分からないと」
およそ1万2500件のガス供給が停止している宇部市。冷え込んだ早朝に「ガス漏れをしている」との通報が相次ぎました。
市中心部の広範囲にわたったガス漏れ。これまでに22件の火災が発生、2人がケガをしたといいます。
――家で火が出た
地元住民
「出ました。鍋置くじゃないですか、それからバーッと20センチくらい横にボッと」
至るところで上がった火の手。
地元住民
「この中。この辺まで火が上がった。ぬれた毛布をかけて、このくらいまでになったけど」
――天井近くまで燃えてますね
地元住民
「ガス炊飯器でご飯を炊こうとしたらシューと異常な音が出た」
――点火のスイッチ
地元住民
「入れたらボッと。元栓の閉めるところから出た。ボッとついたから元栓を閉めた」
――それでも
地元住民
「ずっと燃えた」
火は外にある元栓を閉めると消えたといいます。
市内に都市ガスを供給する山口合同ガスによりますと、ガス漏れの原因は、“ガスの圧力異常”。市内に29あるという「ガバナ」という設備の1つに異常が生じたとみられています。
「ガバナ」について、都市ガスを供給する事業者からなる日本ガス協会に聞きました。
日本ガス協会・技術部保安グループ 中澤一哉さん
「ガスの圧力を家庭で使う圧力に下げるため、地区に設置している。ガス機器で使用できる圧力まで下げるのがガバナ」
ガスの圧力をコントロールするもので、どこにでもあるものです。首都圏の場合はおよそ4000か所あるといいます。
日本ガス協会・技術部保安グループ 中澤一哉さん
「通常想定している圧力よりも高い圧力になってしまうと、炎が大きくなったりは考えられる。かなりレアケース」
まさかの事態に見舞われた宇部市では、生活への影響は大きく、都市ガスを使う学校では給食を非常用カレーに変更しました。
先生
「いざという時のためによかったね。給食なしじゃなくて」
さらに、暖房も…
宇部市立見初小学校 校長
「教室のエアコンが全てガスから来ているので、つけてはいけないと」
山口合同ガスは午後5時から会見を開きました。
山口合同ガス担当者
「整圧器(ガバナ)の異常が原因だと考えております。通常の約12倍の圧力がかかったと考えられます」
圧力が高くなった理由は分かっていませんが、今年2月に点検した際には異常はなかったといいます。
山口合同ガス担当者
「全体復旧の見込みは現在、調査中」
山口合同ガスは換気を呼びかけるとともに、従業員が1軒ずつ安全確認を行っているということです。
2年前に東京・池袋の事務所強盗未遂 容疑でトクリュウ指示役の男2人逮捕 関西でも摘発
東京・池袋の会社事務所に侵入し、金品を奪おうとしたとして、警視庁特別捜査課は4日、建造物侵入と強盗未遂の疑いで、住居不定、無職の今井裕治容疑者(38)と、東京都板橋区の職業不詳、大野実容疑者(51)を逮捕した。特捜課は認否を明らかにしていない。
2人は「匿名・流動型犯罪グループ」(トクリュウ)のメンバーで、事件の指示役とみられる。過去に大阪などで発生した「闇バイト」で募集された実行犯による強盗事件などに関与し、令和5~7年に大阪府警や山口県警に摘発されていた。
逮捕容疑は5年8月、他の者と共謀し、東京都豊島区の会社事務所に侵入し、20代男性の顔に催涙スプレーを噴射したり、体を押さえつけて暴行を加えるなどして、金品を奪おうとしたとしている。
「雪を見たらちょっと無理だな」と大雪で営業断念も最強寒気で日本各地に初雪ラッシュ「いろは坂」で“立往生”も
今シーズン一番の寒さとなり、各地で初雪を観測しています。日本海側では大雪となりました。
雪の中を走行する除雪車。山形県では、きのうの夜から雪が降り続き、道路や信号機が白く覆われました。
新潟県湯沢町でも、この積雪。
高柳光希キャスター 「きのうから一晩、雪が降り続き、銀世界へと変わりました。積もった雪の高さを見てみると、30センチほど積もっています」
雪かき作業に追われる住民は…
住民 「(Q.いよいよ冬が始まったという感じしますか?)うん。毎年のことだ。みんな慣れて、準備も終わっているから」
初雪ラッシュとなった日本列島。名古屋市内では、きのう夜11時ごろから、みぞれを観測。「みぞれ」も「雪」と分類されることから、平年より15日早く、昨シーズンよりは31日も早い初雪になりました。
また、岐阜市でも平年より10日早く、昨シーズンより11日早い初雪を観測しました。
能登半島地震の被災地・石川県輪島市でも積雪を観測しました。仮設住宅に暮らす住民からは不安の声も。
仮設住宅で暮らす住民 「(雪かき)大変。雪は慣れていても怖い。仮設だとエンジンをかけていいのか気をつかいますよね」
雪の影響は関東北部でも。栃木県日光市の中禅寺湖。雪が風であおられ、歩行者は身をかがめて歩いています。
観光地・竜頭の滝の近くでは、お茶屋さんが雪の影響で営業を断念。
お茶屋さんオーナー 「ここまで降るとは思わなかったですね。朝の雪見たら、ちょっと無理だなと思って…」
そんななか、雪によるとみられる事故も起きています。
中禅寺湖と日光市街をつなぐ「いろは坂」では午前11時半ごろ、スタッドレスタイヤを装着していなかった乗用車が立往生。後ろから来た路線バスが接触する事故が発生しました。けが人はいませんでした。
東北と北陸の山沿いを中心に大雪となる見込みです。
千葉・船橋市の診療所での男性遺体遺棄事件 新たに20代の男3人を傷害致死の疑いで逮捕 千葉県警
去年8月、千葉県船橋市の診療所に21歳の男性の遺体が遺棄された事件で、警察は男性に暴行を加え死亡させたとして、新たに20代の男3人を逮捕しました。
逮捕されたのは、いずれも無職の山科力輝容疑者(23)、小川峻矢容疑者(22)、野村紘汰容疑者(24)で、去年8月26日未明、船橋市の公園で千葉市若葉区の会社員・三浦未来さん(当時21)の顔を殴るなどの暴行を加え死亡させた疑いがもたれています。
山科容疑者と小川容疑者は、この暴行の前日にも東京・墨田区の公園で三浦さんに殴る蹴るなどの暴行を加えた疑いで逮捕されています。
この事件をめぐっては、去年8月27日に三浦さんの遺体が船橋市夜間休日急病診療所で見つかり、すでに20代の男2人が遺体を遺棄した疑いで逮捕されています。
警察によりますと、亡くなった三浦さんは、逮捕された男5人のいずれとも知人で、暴行を受けてから遺体が遺棄されるまで車で連れ回されていた状況だったとみられるということです。
警察は3人の認否は明らかにしていませんが、何らかのトラブルがあったとみて事件の詳しいいきさつを調べています。
高市首相が「地域未来交付金」の新設表明、地方成長の政策「夏まで」とりまとめ指示
高市首相は4日、首相官邸で開いた地域未来戦略本部の初会合で、地方の成長戦略を後押しするための政策パッケージを来年夏までにとりまとめるよう、黄川田地方創生相に指示した。
首相は、地場産業の付加価値向上や販路開拓を支援する「地域未来交付金」の新設を表明し、「真に地方の活力を最大化することにつながるよう、従来の地方創生施策も含め、見直しを進めてほしい」と語った。
同本部は、石破内閣が設置した地方創生関連の本部を衣替えする形で先月発足したもので、地方への投資呼び込みなど経済政策に重点を置く。
菅義偉氏が回顧録、首相・官房長官の9年間「国民のために」…ワクチン1日100万回接種「全力で取り組むことを促す狙い」
菅義偉・元首相が首相時代の経験などを振り返った著書「菅義偉 官邸の決断」(ダイヤモンド社)が出版された。
菅氏は官房長官を約8年間、首相を約1年間務めた。「全ては、国民のために」との思いで過ごしたと述懐し、安全保障関連法の制定や新型コロナウイルスへの対応など、重要な局面での意思決定に込めた思いなどをつづった。
安倍元首相の突然の辞任に伴う2020年の自民党総裁選に出馬を決意したのは、「『政治の空白』をつくってはならないとの一心だった」と記した。新型コロナのワクチン接種を1日100万回とする目標を掲げた際は、「各省庁が全力で取り組むことを促す狙いがあった」と当時の思いを明かした。
なぜ富山は火災が少ない? 出火率、34年連続で全国最少
総務省消防庁は11月25日、2024年の都道府県別の火災発生・被害状況を発表した。元日の能登半島地震で大規模火災が発生した石川県は、「建物焼損床面積」が前年の3・9倍に激増した。一方、富山県は、人口1万人あたりの出火件数(出火率)が34年連続で全国最少となり、「防火先進県」の地位を守った。【竹中拓実】
消防庁のまとめでは、富山の1年間の出火件数は192件で、出火率は1・88。前年より悪化したが、全国平均2・97を大きく下回った。死者は前年より3人少ない18人だった。
石川は焼損床面積3・9倍に激増
石川は245件で前年より23件少なく、出火率も前年を下回る2・21。ただ、建物焼損床面積は4万2590平方メートルで、前年より4倍近く増えた。最終的に約2万9300平方メートルが焼損した「輪島朝市」火災など、地震発生時の火災の影響が甚大だった。死者も前年の20人から32人に増えた。
福井県は出火件数が前年より15件少ない174件で、出火率は2・11。死者は前年より5人少ない10人。建物焼損床面積は、前年は1万7335平方メートルと3県で一番大きかったが、24年は4621平方メートルと4分の1程度に抑えられ、3県で一番少なかった。
富山の「防火体制」はなぜ全国でも際立っているのか。
明治時代には富山でも大火が相次いだ。富山市は大正時代にアメリカ・ラフランス社の最新鋭消防車を導入。「ラフランス(洋梨)」が「用無し(出動機会なし)」につながるという語呂合わせもあって、「らふらんす」が消防車を指す方言として親しまれた歴史を持つ。
1991年以後、出火率の低さで全国トップを守ってきたことについて、富山県消防課は二つの要因を挙げる。一つは、持ち家率が高いため、賃貸物件への入居率が高い他県より防火意識が高いこと。もう一つは、防火・防災知識を学ぶ「少年消防クラブ」の入団率が高いことがあると分析する。同課の担当者は「子供時代からの活動の影響が大きいのではないか」と話す。
また、富山は24年、47都道府県で唯一、林野の焼失面積がゼロだった。石川は41アール、福井も126アールで、気象条件が似ている新潟県(718アール)と比べても北陸3県の少なさが目立った。
岩手県では今年2月、歴史的な大規模山林火災が発生。温暖化の影響とも考えられる山林火災の多発は世界的に問題となっている。
消防庁は今年、市町村長による「林野火災注意報」発令制度を導入した。気象条件が悪化した際のたき火や喫煙の抑制効果が期待され、同庁は8月、発令の根拠となる条例の改正案を全国の自治体に通知し、導入を促す。
だが、山林火災が多発する春先までに施行が間に合うのか、同庁や北陸3県も自治体の導入の動きを把握しきれていない。富山県の担当者は「各市町村が準備しているはず。ドローンのスピーカーによる入山者への注意喚起などを始めた自治体もある」としている。
輪島朝市火災の教訓、周知進まず
石川県輪島市の朝市火災では、地震で屋内の電気配線が傷つき、ショートして出火した可能性が指摘された。同県はこれを教訓に、震動を感知して通電を遮断する「感震ブレーカー」の設置を進める補助制度を導入した。ただ、周知が進まず、確保した予算を持て余しかねない情勢だ。
県は2025年5月、地震被害想定を改定し、感震ブレーカーの設置が進めば地震火災による死者と全焼棟数を6割低減できると試算した。
7月から、購入・設置費用の2分の1を補助する制度を開始。分電盤に設置するタイプは最大3万円、簡易タイプは同3000円を支給し、町内会単位での利用も勧めていた。
計上した予算は、約1万4000件分の1億円。だが、約5カ月たった11月21日時点で72件の申請にとどまっている。
馳浩知事が記者会見で利用を広く呼び掛けているほか、県もホームページや広報誌、防災イベントなどで制度をアピールしている。
「こんな支払いを認めれば、際限なく買収される」林芳正氏の“公選法違反疑惑”が「きわめて悪質」「捜査を尽くすべき」と断言されてしまうワケ
「手口からして、捜査機関が手を尽くせば大規模な買収事件が明るみに出る可能性がある」
そう語るのは、政治資金に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授だ。
◆◆◆
運動員買収や選挙収支虚偽記入などの疑惑が噴出
昨年の衆院選を巡って林芳正総務相(64)に浮上した運動員買収や選挙収支虚偽記入などの疑惑。「週刊文春」が 11月13日号 と 20日号 で連続で報じた。
「ポスター維持管理費」という名目で陣営から金銭を受け取った地元議員や住民が、実際には「維持管理」はしておらず、「選挙カーから手を振った」「遊説で頭を下げた」「電話作戦をした」などと次々に証言。
自発的かつ無報酬が大原則の選挙運動において、例外的に「労務費」として報酬の支払いが認められる“単純な機械的労務”ではなく、選挙運動をして金を貰っていた――つまり“買収”の疑いが強い事例が、取材に応じた人だけでも12件にも上ったのだ。
「その後、中国新聞も林氏陣営の“ポスター維持管理費”の実態を報道。15日には朝日新聞が、収支報告上は金を受け取ったとされる地元有権者の少なくとも6人が『労務もしていないし金も貰っていない』と証言したとして、実態のない金が選挙収支に含まれている疑惑を社会面トップで報じました」(政治部デスク)
林氏は「ポスター貼付や毀損した場合の貼り替えなどの機械的労務」「公職選挙法上問題のない支出」との弁明を繰り返しているが、証言との食い違いについて説明がない。
「類例のない大規模な買収事件の可能性がある」
小誌の報道当初から本件に関心を持ってきたというのが、冒頭の上脇氏。自民党の裏金告発などを手掛けた政治とカネの専門家だ。
そんな上脇氏が今回、本件について近く「刑事告発をする」と語ったのだ。
「公職選挙法違反罪で告発状を作成しています。捜査機関による実態解明が強く望まれる事案です」(同前)
上脇氏が続ける。
「公示日のポスター貼りに対しての『労務費』支出なら時折あります。ただ、貼ったポスターの“維持管理”という名目での支払いは見たことがない。文春の取材に『(候補者の)応援活動に報酬を払ってはいけないので、労務費として計上している』と漏らした市議もおり、ひょっとすると“維持管理費”の支払いは、ほとんどが選挙運動への対価だったかもしれないわけです」
“維持管理費”は100人以上が受け取った。「類例のない大規模な買収事件の可能性」(同前)があるのだ。
「こんな支払いが認められるのなら…」
上脇氏はこうも指摘する。
「区割りの変更で票の開拓が必要な地域もあったことで、金を配る動機につながった可能性もある。公示日のポスター貼りだけだと数千円しか払えない場合でも、“ポスター維持管理”を一緒に頼めばさらに数日分お金が支払えてしまう。表書き『労務費』という名のもとで、事実上の買収が出来るわけです」
実際、前回選挙から新しく林氏の選挙区に編入された長門市などでは、「名目を知らされず(重廣正美市議)」「初めて“維持管理費”を受け取った(田村大治郎市議)」などと、危うい証言が小誌や中国新聞の取材に続出している。
「こんな支払いが認められるのなら、『毎日ポスターを管理した』とさえ言えば、何万円も、何百人にだって金銭を払えてしまう。公選法を管轄する総務大臣自ら、選挙でのカネ配りがまるで違法でないように装う手法を提示しているようなもので、きわめて悪質です」(上脇氏)
林氏の選挙区は山口3区。告発は近隣で「特別刑事部」のある広島地検に行うことを検討中だという。受理されれば、ついに刑事捜査が始まることになる。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年11月27日号)
台湾有事で「10万人の日本人」が人質に…日本の経営者が理解していない中国版「有事法制」の恐ろしい実態
※本稿は、平井宏治『日本消滅』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
2013年に第7代国家主席に就任した習近平はさらなる経済成長と国力増強に取り掛かり、2015年、李克強国務院総理の名の下に産業政策「中国製造2025」を発表した。
2025年までに中国国内の工業の製造能力を高め、中国の製造業を労働集約型から技術集約型に変え、中国を付加価値の高い製造業強国に発展させることを目的とする産業政策である。
「中国製造2025」は、中華人民共和国建国100年にあたる2049年までに、①半導体など次世代情報通信技術、②高機能NC工作機械とロボット、③航空宇宙設備、④海洋エンジニアリング設備とハイテク船舶、⑤先端的鉄道交通設備、⑥省エネルギー・新エネルギー自動車、⑦電力設備、⑧農業用機材、⑨新素材、⑩バイオ医薬と高性能医療機器、の10の分野で世界のトップとなることを目標としている。つまり、アメリカを追い抜くということだ。
そして、「中国製造2025」と並行して、同時期、中国における産業発展は何のためにあるのかということが明解に打ち出された政策がある。2017年の中央軍民融合発展委員会第1回会議において大々的に宣言された「軍民融合政策」だ。
軍民融合政策とは、軍事分野と民間分野の連携を強化して互いに資源や技術を共有することによって安全保障の確保と経済発展を同時に進めようとする政策であり、現在の中国の国家政策の根幹には常にこれがある。
軍民融合の方針の下では、民間資源はすぐに軍事利用できる状態におかれる。技術はまず軍事のためにあるべきで、それが民間に転用され研究投資を回収する状態が望ましいと考えるのが、現在の中国の産業政策の常識である。習近平が軍民融合をどれだけ重要視しているか、それは、中央軍民融合発展委員会の主任を自ら務めていることからも明らかだ。
「軍民融合政策」が明確に打ち出された背景には、現代の先端技術ならではの特徴がある。前時代の機械的技術には、ある程度わかりやすいかたちで民生技術と軍事技術の区別があった。
それが、半導体技術を考えてみればわかるように、例えば私たちが普段使用している電子機器を構成している技術などはすぐに軍事利用できる状況にある。
そのような状況に対して、中国はとにかく軍事優先で産業政策を展開する、ということを明らかにしているのが「軍民融合政策」なのだ。そして、この「軍民融合政策」は、アメリカを撃破するために中国が案出した「智能化戦争」の実現化のためにある。
智能化戦争という言葉は、2019年の中国人民解放軍国防白書にすでに見えている。白書には「情報化戦争への変化が加速し、智能化戦争が初めて姿を現している」と記された。
中国側は智能化戦争の定義を明らかにはしていないものの、研究者の間では「モノのインターネット(IoT)システムに基づき、智能化した武器装備とそれに対応した作戦方法を利用して、陸・海・空・宇宙・電磁・サイバーおよび認知領域で展開する一体化戦争」を指していると考えられている。
智能化とは、具体的に、「指揮や戦略方針を決定する際に高い演算能力を持つ装置を導入することで、人工知能(AI)や機械学習(AIに反復的にサンプルデータを解析させることで、サンプルの特徴・規則性を見出し、未知のデータに対して予測・解析)などの技術が、相手の正確な意図を分析・判断して指揮官に提供する」ことを指す。この智能化技術の優劣が戦争の全局にわたる帰趨を決することになる。
智能化戦争はこれまでの戦争の形態を大きく変容させる。AIの導入で自律化した武器や装備が広まり、戦場の無人化が進むことが考えられ、中国人民解放軍は現在、智能化戦争に適応するために、軍隊編成、武器装備体系、訓練体系を変化させていると考えられる。
注意しておきたいのは、智能化戦争という言葉こそは2019年に初出するものの、自律化した武器や装備といった特徴をはじめとする新しい戦争の形態に関する概念および思想は中国において20世紀末にすでに登場している、ということだ。「超限戦」という理論がそれである。
「超限戦」理論は、1999年に中国人民解放軍文芸出版社から出版された『超限戦:対全球化時代戦争与戦法的想定』という論文集に基づいている。著者は2人の中国人民解放軍空軍将校、喬亮と王湘穂だ。アメリカとの戦争を想定して書かれた論文集である。
「超限戦」理論の根幹は、「あらゆるものを戦争の手段とし、あらゆる場所を戦場とすべきだ」という考え方にある。戦争の限度を超えよう(超限)ということだ。
論文集『超限戦』には、「一見して戦争とは何の関係もない手段が、最後には『非軍事の戦争行動』になる」と書かれている。
貿易、金融、ハイテク、環境などは、従来ならば軍事の適用範囲から外されていた分野だが、『超限戦』は、これらは利用次第で多大な経済的・社会的損失を国家や地域に与えることができるとしている。
「人類に幸福をもたらすものはすべて人類に災難をもたらすことができる。今日の世界で、兵器にならないものは一つもない」とし、「人為的操作による株価の暴落、コンピュータシステムへのウイルスの侵入、各国の為替レートの異常変動、ネットに暴露される各国首脳のスキャンダルなどは、すべて新しい概念としての兵器である」とする。
そして、『超限戦』は、「人々はある朝、目覚めとともに、昨日まで大人しくて平和的だった事物が突然一定の殺傷力をもって牙を剥き始めたことに気づくだろう」と結ぶ。背筋が寒くなる話だ。
『超限戦』が出版されてから四半世紀が経ち、気がつけば私たちの周囲は大型電化製品や日常的な小型電気製品、コンピュータ機器、電気自動車など、中国製の半導体チップを搭載した製品で溢れかえっている。
中国は経済活動、自由貿易、労働者派遣(移民)すらも武器として利用する。我が国は、当に中国から武器を使わない戦争を仕掛けられている。
智能化戦争は超限戦の現代化に他ならない。中国は智能化戦争をもってアメリカに軍事的勝利を収めるために軍民融合政策をはじめとする産業政策を展開し、「中国製造2025」、「中国標準2035」、「中国製造2049」という具体的目標を掲げているのだ。
そして、さらに注目しておく必要があるのが、一連の産業政策をより確実に推進するために習近平が整備を進めている法律群および規制群である。
西側諸国においてはまず成立しないであろう、一党独裁国家だからこそ実現できる強力な統制型の制度ばかりであり、習近平の時代に入って中国が改革開放路線から規制・統制路線へと完全転換したことは、これを見ても明らかである。
まず、私たちが知っておくべき中国の法律群および規制群を記しておこう。
上記のうち、国防動員法は習近平の国家主席就任前に施行されている。第11期国家副主席に就いていた時代に成立した法律で、中国政府が状況を「有事」と判断したときの国内外の中国人および中国企業の行動義務を規定したものである。
国防動員法が発令されると、国内外の中国人および中国企業は直ちに国の命令下に置かれる。知っておかなければならないのは、国防動員法は中国人・企業だけではなく、中国国内の海外企業も中国政府の命令下に置かれることを規定しているということだ。国防動員法の発令によって日本企業は、次のような深刻な事態に陥ると考えられる。
※中国人社員が人民解放軍に参加したり銃後の業務で欠勤したりする場合、その意向を支持して協力し、任務期間中の賃金や手当、福利厚生の全額を支給しなくてはならない事態(53条)。
※在中資産(工場や事務所、倉庫、車両、製品その他資産、設備、装置、資材など)が、差し押さえや徴用、凍結される事態(54条)。この徴用や凍結の拒否はできない(同55条)。
※物流機能の停止、インターネット等など情報ネットワークの遮断、国際航空便、国内航空便の停止、輸出入貿易の停止、税関規制、交通制限、立ち入り禁止区域の設置、経営活動の停止、勤務時間制限、商業免許停止・剥奪、許認可の取り消し、各種行政規制の発動などが行われ、さらに現地法人の業務が一時的、または長期的に不可能になる事態(63条)。
※中国の銀行口座の凍結や金融資産の接収、売掛金の放棄を強いられる事態(63条)。
※日本企業の日本人経営幹部、駐在員、出張者が一時的ないし長期的に出国できなくなる事態(63条)。
予想されるこれらの事態について、日本の経済界の人間は全くと言っていいほどリスク管理ができていない。
特に国際航空便、国内航空便の停止は日本企業および日本国家そのものに深刻な事態を及ぼす。帝国データバンクの『日本企業の「中国進出」動向調査』によれば、2024年時点で中国に進出している日本企業は1万3034社存在し、前年比で328社増えている。
外務省の調査統計によれば、2024年10月の時点で中国に中長期で在留する日本人の数は9万7538人である。約20年ぶりに10万人を下回ったと報道されていたが、それでも約10万人の日本人が中国に在留し、1万3034社の日本企業が中国で活動し、関係する日本人が行き来している。
国際航空便、国内航空便の停止は、この10万人の日本人が自力で帰国できないことを意味する。自衛隊が乗り込んで10万人を取り戻しに行けるかといえば、物理的にも到底、無理な話だ。
中国には、世界大戦後に徹底して行われてきた根強い反日教育がある。2024年9月18日、広東省にある深セン日本人学校の男児(当時10歳)が登校中に中国人の男に刺殺される事件が起きた。
※「セン」は土へんに川
深セン日本人学校は、翌2025年9月18日を休校にした。中国国内にある他の10校の日本人学校でも、上海の3校、蘇州、杭州、大連、広州の7校は、オンラインで授業を行う。
2025年の夏には中国で「南京写真館」「731」「東極島」の3本の反日プロパガンダ映画が立て続けに公開されて大ヒットを収め、歴史的事実はさて置かれて中国の若年層を中心に改めて反日イデオロギーが常識化されることになった。
台湾有事あるいは沖縄有事はいよいよ現実性を高めて軍事関係者の間で分析が進められている。どこに火の手が上がるにせよ、有事の際には、国防動員法の発令に基づき、中国に取り残された10万人の日本人に対して反日教育で洗脳された14億人の中国人が、手段の違いはあるにせよ一斉に牙を剥くことになる。
以上を考えれば、日本側のとるべき手立ては一つだろう。日本人をできる限り早急に中国から出国させることだ。そのためには喫緊に、日本国内に脱中国企業の受け入れ環境を整備する必要があり、脱中国を促進させるための、かつて安倍政権が案出した脱中国補助金のような制度を整備する必要がある。
そしてそれ以前に、何より必要なのは、未だに中国進出を目論んでやまない日本の企業経営者たちの意識改革だ。国防動員法を見る限り、中国への進出は人命を無視した利益追求活動であるとしか言いようがない。
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(経済安全保障アナリスト 平井 宏治)