【独自】研究成果の海外流出対策へ2拠点 文科省、大学に助言や人材育成

大学が持つ重要な研究成果やデータの海外流出を防ぐため、文部科学省が国内2大学にリスク管理の支援拠点を設置する方針を固めたことが25日、分かった。国際共同研究への参加者や資金提供元のリスク評価、データ管理の仕方などについて各地の大学に助言するほか、研修を通じて専門人材の育成も図る。拠点は公募し、来年6月ごろまでに体制を整備する。
国際連携や研究成果・データの共有は科学の発展につながる一方、外国政府や軍の干渉により意図しない形で情報が流出すれば安全保障上の脅威になるとして、各国で対策が進んでいる。
文科省は既に相談窓口を置き、内閣府は対策の手順書の策定を進めている。一方、多くの大学では専門知識を持つスタッフが不足しており、大学ごとに対応にばらつきが出ることや、負担が増すことが懸念されている。
新たに設置する拠点は、国際連携や海外研究者を招聘する際の法務、契約にまつわる支援を担う1カ所と、データの不正流出を防ぐ学内規定や留学生対応について相談を受ける1カ所。それぞれに担当教員や支援員ら数人を置く想定だ。

小泉防衛相「トップセールスを強化していきたい」…横須賀基地を視察し防衛装備品の海外移転に意欲

小泉防衛相は25日、海上自衛隊横須賀基地(神奈川県横須賀市)で護衛艦「くまの」を視察し、防衛装備品の海外移転に積極的に取り組む考えを示した。
オーストラリア政府は8月、くまのと同じ「もがみ型」の改良型護衛艦の導入を決定した。小泉氏は視察後、防衛装備品の海外移転について「我が国にとって望ましい安全保障環境を創出するためにも重要な政策的手段だ。トップセールスを強化していきたい」と記者団に述べた。この日は、航空自衛隊横田基地(東京都福生市など)にある航空総隊司令部も視察した。

米国籍放棄の小野田紀美大臣は「外国人と日本人の境界を分かっている方」外国人共生担当相として期待の声

大阪・ABCテレビのニュース情報番組「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」(土曜・前9時30分)が25日、生放送され、高市早苗首相の内閣発足を取り上げ、経済安全保障相(「外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣」を兼務)として初入閣した参議院議員の小野田紀美氏についてトークを展開した。
政治ジャーナリストの青山和弘氏は、まず以下のように解説した。
「前回の参議院選挙で参政党が『日本人ファースト』というのを掲げて躍進したのは、外国人問題に対して、今まで自民党がちゃんと取り組んでこなかったというところがあった(のも一因)。ここを高市さんがやるということで(党内でも)最も保守派で、ある意味、外国人問題に対して意識の高い小野田さんを、まさにこの担当につけた」
つまり有権者の関心が高い外国人問題に関して、失った保守層の支持を回復させるための切り札として、小野田氏を起用したのだと分析した。
一方で参院選当選2回で42歳という若さ。政治的手腕は未知数だ。青山氏は、このようにまとめた。
「外国人問題っていうのは、決して法務省だけでも警察庁だけでもなくて、いろいろ(省庁を)またがるんですね。この調整をやるというところに、小野田さんみたいな、いわゆる(思想的に)最も強い(人を登用した)。ただ、まだ当選2回で若いですから。政治的な実力は、じゃあどこまでの調整力があるのか、未知数なんですね。ただ、非常にメッセージ性を強く出した人事だと思います」
続いて京大大学院教授の藤井聡氏が以下のように述べた。
「まず、経済安保と外国人共生担当大臣というと、ちょっと関係なさそうに見えますけども、経済安保っていうと、外国からのある種のインベージョン(侵略)…影響というものを排除して、日本の国益を守るっていう話ですから、似てるんですよね。だから、広い意味で安保の外国人問題バージョンと経済バージョンということで、この両者はすごく重なっている。この2つが重なっていると、すごくいいと思います」
小野田氏が兼務する“両輪”の類似性を語って、高市首相の人事をたたえた。
「さらに小野田さんはアメリカ生まれ。お母さんが日本人で、お父さんがアメリカ人。ある時まで、アメリカ国籍と日本国籍(の両方)を持たれてたんですよね。これ『国会議員としてどうやねん』という議論になったときに、小野田さんは『分かりました』ということで、アメリカの国籍を放棄されて、フェイスブックに『自分の国籍、こうですよ』ということを出された。外国人と日本人の境界をしっかり分かっている方なんですよ。外国人とは何か、日本人とは何かって、その形式に基づいて、この安保、外国人問題を含んでやるっていうのは、非常に期待できると思います」
小野田氏に関しては、2016年の参院選での初当選と前後し、二重国籍問題が浮上。その後、米国籍放棄の手続きを進め、翌17年、自身のSNSに「アメリカ国籍喪失証明書」の画像を投稿した。

機動隊員、米大使館近くでアキレス腱切る重傷…刃物4本所持の男「気象庁が意図的に気候変動させている」

東京都港区の在日米国大使館近くの路上で刃物を持った男が逮捕された事件で、男が包丁やのこぎりなど計4本の刃物を所持していたことが警視庁幹部への取材でわかった。
同庁幹部によると、男は住所・職業不詳の男(38)。24日午後2時半頃、港区虎ノ門の路上で、職務質問した警察官に包丁と果物ナイフを向けた公務執行妨害容疑で現行犯逮捕された。リュックサックからは、折りたたみ式ののこぎりとはさみも見つかった。
調べに「気象庁と警察庁に恨みがあった。気象庁が意図的に気候変動させている」と供述しており、警視庁が詳しい経緯を調べている。
男を取り押さえる際にけがをした男性機動隊員(26)は、包丁で右足のアキレス腱(けん)を切る重傷だという。同庁は26日、男を傷害や銃刀法違反などの容疑で東京地検に送検する。

特殊詐欺拠点で1.6億円発見 「加担したかも」受け子相談で発覚

警察官を装ってうその電話をかける特殊詐欺に関与したとして、警視庁滝野川署は25日、中国籍で住居・職業不詳の呉衍曦容疑者(38)を詐欺と窃盗容疑で逮捕したと発表した。詐欺の「受け子」からの相談で発覚し、グループが拠点にするビルから現金1億6300万円を押収した。詐欺の被害金とみられる多額の現金が見つかるのは珍しい。
逮捕容疑は仲間と共謀して8月4~12日、兵庫県警を装って群馬県の70代男性に「あなたの個人情報が盗まれた」とうその電話をかけて通帳とキャッシュカードをだまし取り、口座から現金500万円を引き出したとしている。「知らない」と容疑を否認しているという。
警視庁によると、9月に滝野川署を訪れた中国籍の女性から「中国の公安警察をかたる人物から『あなたの口座が不正に利用されて逮捕状が出た。財産を確認するので金を振り込め』と言われた」と相談があった。女性は指示に従い現金を振り込んで2500万円をだまし取られたが、一方で「君も協力しないとだめだ」などと言われ、受け子をしていたという。
「犯罪に加担したかもしれない」と悔やんでいた女性は泣きながら事件への関与を自供し、詐欺容疑で逮捕された。女性の供述に基づいて、だまし取った金の届け先だった東京・池袋の雑居ビルに捜査員が向かったところ、中にいたのが呉容疑者だった。室内のリュックサックからは現金1億6300万円が見つかり、防犯カメラには女性から現金を受け取る呉容疑者が映っていたという。
警視庁は、他に指示役や電話のかけ子役もいるとみて、グループの実態解明を進める。【長屋美乃里】

無秩序メガソーラー 「猛反対」の高市首相が規制強化方針 外国製パネルが国土埋め尽くし

大規模太陽光発電所(メガソーラー)の法的規制強化を打ち出す高市早苗内閣が発足した。太陽光発電施設は全国で急速に広がっており、各自治体は自然景観保護や防災の観点から設置規制の動きを加速させている。だが、地域の対応の指針となる国の法整備が追いついておらず、無秩序な開発に歯止めがかかっていない。再生可能エネルギーの開発推進を掲げる高市政権には、他の電源とバランスを取りながら実効性のある対策が求められる。
「私たちの美しい国土を外国製の太陽光パネルで埋め尽くすことには猛反対だ」。高市氏は9月19日、自民党総裁選への出馬会見でこう述べ、22日には太陽光などの補助金制度の見直しを主張した。
政権発足にあたり、自民と日本維新の会は今月20日に交わした連立政権合意書で「わが国に優位性のある再生可能エネルギーの開発を推進する」とし、地熱発電の推進を明記。環境相に就任した石原宏高氏は「自然破壊、土砂崩れにつながる『悪い太陽光』は規制していかなくてはいけない」と述べた。
さらに高市氏は、環境副大臣に、太陽光パネルの廃棄問題など再エネの「負の部分」を訴えてきた青山繁晴氏を起用するなど、メガソーラーの規制を強化する姿勢を鮮明にしている。
太陽光発電は、再エネで発電した電気を電力会社が一定の価格で買い取る「固定価格買い取り制度(FIT)」が2012年度に始まったことを機に急激に増殖し、各自治体が対策に追われている。
全国に先駆け14年に条例を制定した大分県由布市の担当者は「自然豊かな景観の中で広範囲に人工物が見えることを危惧した」と説明する。
一般財団法人「地方自治研究機構」(東京)によると、条例制定は16年以降、毎年2桁に上る。今年6月末時点で323自治体が制定している。
北海道では、釧路湿原国立公園の周辺で相次ぐメガソーラーの建設に歯止めをかける釧路市の規制条例が今月1日、施行された。禁止区域のほか、国の特別天然記念物のタンチョウなどが生息する可能性が高い地域を「特別保全区域」に指定。同区域では、事業者が事前に市長に事業計画を届け出て協議することなどを義務付けた。
同市は違反に対する罰金も検討したが、少額では抑止力にならないとして見送り、事業者名公表の仕組みを導入した。
一方、比較的日照時間が長く降水量も少ないなど、太陽光発電施設の適地が多いとされる和歌山県は18年6月、「太陽光発電事業の実施に関する条例」を施行した。出力50キロワット以上の太陽光発電事業計画には知事の認定を必要とし、事前に県や市町村との協議や、計画案の地元自治会への説明を義務付けている。
条例制定後の認定は67件、不認定は4件、事業計画取り下げは2件。条例の実効性を高めるため、認定を受けずに事業を行った事業者への勧告や命令、氏名の公表を行うとしているが、これまでに一連の措置が取られたことはないという。
条例を設けていない自治体からは国主導による規制強化を求める声が上がる。釧路湿原の周辺自治体の一つである北海道標茶(しべちゃ)町は「国の法律に基づいて建設を計画する事業者に対し、自治体が規制をかけるのは難しい」とし、9月に景観や希少動物を守るための法整備を環境省に要請した。
政府は9月24日にメガソーラーの規制強化などを検討する関係省庁連絡会議を発足させ、対応に乗り出している。初会合では釧路湿原周辺をはじめ、地域との共生に課題がある事例を共有し、関係法令による規制の強化など対応を検討することを確認した。
高市氏は、再エネの比重を上げすぎると電力の安定供給が難しくなるとの見解も示しており、火力発電などとバランスのとれた太陽光発電のあり方を探ることになる。
具体的な再エネ目標示せ 法政大・茅野恒秀教授
北海道釧路市のメガソーラーは、国立公園のそばで開発ができてしまう制度上の問題がある。ただ、一律で開発を規制する制度をつくればいいかというと、すでに観光地として開発されている地域では適さないケースもあり対応は難しい。
メガソーラー規制条例をつくる自治体が増えているが、慎重に考えるべきだ。ある自治体が規制をつくったことを受け、近隣自治体に事業者が駆け込みで設置を進めるような事例も起きている。
メガソーラーだけ規制する法的根拠が十分ではないという問題もある。太陽光発電に限らず、蓄電所やほかのエネルギーでも設置による地域とのトラブルは起こりうる。
重要なのは事業者と地域住民、自治体との合意形成と、事業計画の早い段階でのコミュニケーションだ。国が地域の開発に関するルールをつくり、再生可能エネルギーを国内にどの程度整備するのか具体的な目標を示すべきだ。

日米、造船能力拡大へ協力覚書 トランプ大統領来日に合わせ

日米両政府が、27日からのトランプ米大統領の来日に合わせ、造船能力拡大に向けた協力覚書を締結する方向で調整していることが分かった。造船産業を、海事分野の経済安全保障や産業の回復力にとって「極めて重要だ」と明記。日米で造船作業部会を設置し、米国に対する投資促進や技術革新など5分野で連携を強化する内容だ。複数の日米政府筋が25日、明らかにした。
両政府は人工知能(AI)や次世代通信など科学技術の協力覚書も交換する予定。日本側には、安全保障を巡る日米の役割が片務的だとするトランプ氏の不満を和らげる狙いもある。
関係者によると、造船協力覚書は金子恭之国土交通相とグラス駐日米大使が交わす予定だ。
覚書には米国の海事産業基盤への投資促進が記載される。造船分野で圧倒的な世界シェアを誇る中国を念頭に「造船能力の拡大に共通の関心を有する」と言及する見通しだ。
今後の協力内容として、日本に強みがある砕氷船の技術提供などが想定されている。
科技分野に関する覚書は、小野田紀美経済安全保障担当相と米政府高官が28日に交わす。

「上を向いて歩こう」ディレクター 草野浩二さん死去

坂本九さんの世界的大ヒット曲「上を向いて歩こう」のディレクターを務めた草野浩二(くさの・こうじ)さんが17日午後1時30分ごろ、心不全のため都内で死去した。87歳。東京都出身。葬儀は密葬で行った。

1960年、東京芝浦電気レコード事業部(現ユニバーサルミュージック)に入社しディレクターとして活躍。入社2年目の10月に発売された「上を向いて歩こう」を国内ランキング1位に導いた。

米国での発売予定はなかったが、ワシントン州のラジオ局でリスナーの要望により坂本さんの歌声が流れるとリクエストが殺到。評判の高さからレコード発売が決まり、ビルボード週間チャートで1位を記録する大ヒットとなった。日本人がディレクターを務めた曲が日米のチャートで1位になったのは、60年以上たった今もこの曲のみ。草野さんは生前「戦争終わって20年たってないのに敵国だった日本語の歌がアメリカで売れるわけがないし“え、なんで?”と思ってましたね」と振り返っていた。

草野さんは坂本さんとタッグを組んで「見上げてごらん夜の星を」「明日があるさ」なども世に送り出した。兄の昌一さんは漣健児(さざなみ・けんじ)のペンネームで中尾ミエの「可愛いベイビー」などを訳詞したことで知られる。

高市首相の自維連立はいつまで続くか…船出したばかりの新政権が抱える「重すぎる足枷」

平成史のカセットテープを、「逆向きに再生」するような形で、高市早苗氏が初の女性首相に就いた。
高市氏の初当選は、自民党を下野させたことで歴史に残る1993年の衆院選。当時は無所属で、リベラルを名乗っていた。同じ選挙でのデビュー組には、後に平成の政治を動かす人が多く、首相も安倍晋三・野田佳彦(初当選時は日本新党)・岸田文雄に続く4人目になる。
実はこの総選挙、宮澤喜一首相の自民党は必ずしも「負けて」おらず、公示前からむしろ1議席増やしてさえいた。それでも政権を失うことになったのは、新生党・新党さきがけの2つの新党が、選挙前に分離してしまったためだ。
後に総理大臣になる小泉純一郎は、結果を見てすぐ、日本新党を率いる細川護熙を「自民が首相に推す」形の連立を思いついた。細川がもとは自民党の参院議員だったためだが、このときは新生党の小沢一郎の手腕がまさり、細川は「非自民連立」の首班となる。
今回も、公明党が連立を離脱したことで自民党が窮地に立ち、一時は「立憲・国民・維新」(ないしさらに公明)での非自民政権の噂が立った。実現すれば選挙を挟まないだけで、まさしく1993年の再来だった。
しかし高市自民党はあっさり日本維新の会を取り込み、新たな連立での政権維持を決めた。その意味で令和の政治はこれから、「平成」とは逆の向きに走り出すことになる。
なぜ今回、細川政権のような形で「非自民」は手を組めなかったか。大義名分がなかったからだ。1993年には「政治改革」、つまり選挙制度の抜本改正が、どの勢力でも乗れる時代のムードになっていたが、それに相当するものがない。
当時、自民党にも「政治改革」の支持者は多く、下野した後に離党して非自民政権に駆け込む人が続出した。高市氏が後に夫となる山本拓氏らの離党組と組んで、自由党(柿澤自由党)を作ったのは1994年4月だ。
だがせっかく参画した羽田孜内閣は2カ月の短命で、自民党が想定外の形で政権を取り戻し(自社さ連立)、彼らは野党になってしまう。別のルートで自民党を離れ、「改革の会」として羽田政権に加わっていた石破茂氏も、同じ運命を味わった。
柿澤自由党で高市氏と同僚だった議員に、新井将敬がいる。もとは自民党きっての「若手改革派」として知られ、TVの政治番組の常連として視聴者の人気を得ていた。やがて石破・高市の両氏も、総理の座を狙って占めることになるポジションを、先取りした人だった。
奇しくも総裁選と同じ今月4日に、その新井の軌跡をTBSが記事にしている(「平成事件史の舞台裏(28)」)。新井は自民党復党後の1998年2月、金銭問題での逮捕を前に自殺した。当時の政界としては小さな汚職だったが、しかし「クリーンな改革派」のキャラで売ってきた自分には、致命傷になると思いつめてのことかもしれなかった。
TBSの記事は、生前の新井との思い出をふり返る、石破前首相のブログ(2010年4月)を引用している。
新井・石破・高市の3人は、小沢一郎が結成した新進党(1994~97年)で自民党打倒をめざすも、小沢氏と対立しむしろ自民党に戻った点で共通する。自社さ連立と対峙した新進党は、社会党と組み出した自民党よりも「タカ派」な姿勢を看板にしていた。ちょうどいまの日本保守党みたいなノリだ。
世襲でもなく、アメリカ帰りの若くモダンな女性として政界入りした高市氏が、「超保守派の女傑」として名を上げだすのは、まさにこの新進党時代。戦後50年だった1995年3月16日の衆院外務委員会では、駐米大使が戦争の反省を語り継ぐ必要を説いた穏当な会見まで槍玉にあげ、国会での不戦決議に反対した。
自民党に移った当初は、変節への批判も多く、2003年の衆院選に落選する。ところが2005年の郵政解散では、かつてと別の選挙区から「刺客」に立って脚光を浴び、返り咲く。
当時の小泉純一郎首相は「毎年」の靖国神社参拝(日にちは年により異なる)で、世論を二分していたが、続く安倍晋三内閣(第1次)で初入閣すると、2007年の終戦記念日には安倍氏らが自重したにもかかわらず、閣僚で唯一参拝。
この頃から熱烈なファンがつき、「右」の看板を下ろそうにも、にわかに下ろせない政治家になる。自民党の中でも、石破氏に「安倍にモノ申す政治家」のキャラが立ち始めるのと、同じ時期だった。
官邸を去る前首相の石破氏の心に刻まれた、平成前半の盟友・新井将敬の「遺言」。いまいっそう強く、同じものを思い出すのは、新たに宰相となる高市氏かもしれない。
長く続いた第2次以降の「安倍時代」(2012~20年)の下で、党内野党として奮闘する石破氏をマスコミは持ち上げた。しかしその分、24年に首相になってからのハンデは大きい。
かつての安倍ファンには裏切り者と謗られ、一方で「結局は古い自民党だ」と見切ったリベラル層も去り、孤立無援で執政した1年間だった。
公明党から連立離脱を告げられた際、高市氏は思わず、「総裁が私でなかったら」違うのかと問いかけたという(10月10日付、毎日新聞)。右翼で超タカ派、昭和の戦争も反省しない。そんな自分のキャラがネックになったかと、気にせずにはいられなかったのだ。
公明側は「誰が選ばれていても同じだ」と否定したが、文字どおりに取る国民は少ない。だが同党代表の斉藤鉄夫氏は、実は高市氏と同じ「1993年デビュー組」。
決裂をいじるワイドショーでも、斉藤氏はむしろ往時を懐かしみ、配慮を見せた。
「私、高市さんとは実は三十数年前、あの方は元々新進党にいらっしゃって、私も新進党」とかつては同じ党に所属していたことを紹介。そして「もちろん携帯番号の交換をして時々お話しをしております。個人的には大変尊敬している方です。信念のある方です」と明かした。
さらに「私と信条が違うところはもちろんあります。それは政党も違うし政治が違う。ですから当然のこととして、そういうことを率直に話し合える仲」と加えた。(10月12日付「スポーツ報知」)
劇的な非自民連立で始まり、TVを追いかけてSNSやYouTubeも政治の主役になった平成は、「メディアで見せる顔」が文字どおりアドバルーンのように、広告用の虚像となって膨らむ時代だった。それは世論どころか、やがて本人さえも、振りまわし始める。
総裁選で高市氏を推し上げた、誰よりも「安倍晋三を継ぐ女」のイメージは、たしかに岩盤の支持層を連れてくる。だが、同じものがアンチも生み出すし、なにより今後のハードルを上げる。
いまは「これがウケる」といったステレオタイプに合わせて、あるときメディアに持ち上げられると、時代が動いてもその仮面を剥がせない。10月17日、新進党時代に彼女が激しく攻撃した、村山富市元首相(社民党)の逝去を受けての高市氏のコメントには、そんな素顔も少しにじむ。
市場での公正な競争をうたい、利権化した「古い自民党」を批判して伸びた維新の原点は、往年の新進党にも近い。裏金疑惑の追及をおざなりにして、自民との連立にひた走る姿に「変わった」と失望の声があるのと同様、高市氏もあの頃から大きく変わっている。
政治家の裁量が大きい積極財政で、政府がどんどん産業を丸抱えして育てるのが「強い国家」だ――。アベノミクスをより財政依存にして受け継いだ、令和の高市氏が醸すオーラは、平成初頭に彼女が憧れた「小さな政府」のサッチャー英首相とは、正反対の場所まで来てしまった。
誰しも覚えのあることだが、一度「このキャラで行く」とベットした(賭けた)イメージを、自力で動かすのはかなり難しい。他人の目線が怖くてイメチェンできないか、場の空気に釣られるグダグダなキャラ変になるかで、終わりがちだ。
だから多くの人は、進学や転職といった「周りにいる人が入れ替わる」タイミングまで、新たなキャラでの再デビューを待つ。唯一そういかないのが政治家で、新党づくりや政界再編でリセットを繰り返しても、有権者に刻まれたイメージはついて回る。
むしろ互いの違いを前提に、率直にたしなめあえる相手がいるときにこそ、「友人に言われまして」として適切にキャラを動かせる。そうした一目置きあう関係がどれほどあるかが、政党や連立も含めて、地に足のついた組織の強さを決める。
メディアがポピュリズムを煽り立て、ぶれの大きい漂流の時代になったとされる平成。ちょうどその「逆再生」のように発足する高市政権を、虚像が暴走しないよう現実につなぎとめる同僚は、はたして彼女の周りにいまいるのだろうか。
見送りの歓声のなか、霧のような不安に包まれて、女船長の下で出航する令和政治の船出である。
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(評論家 與那覇 潤)

通勤手当「不正受給」で八王子市が108人の大量処分…バス申請し徒歩通勤など不正は総額915万円

東京都八王子市の市職員通勤手当の不正受給問題で、市は23日、関与した職員97人、監督責任のある管理職11人の計108人の大量処分を発表した。初宿(しやけ)和夫市長には今年9月まで報告されておらず、長く報告や公表しなかった経緯を第三者による検討会が調べる方針だ。(長谷部耕二)
発表によると、2019年4月~24年9月の期間で、不正受給の総額は915万円だった。都市整備担当部長兼開発・建築担当部長(59)を停職1か月(23日付で依願退職)、男性課長(58)ら10人を戒告の懲戒処分としたほか、19人を訓告、58人を口頭での厳重注意とした。
監督責任については、植原康浩副市長を厳重注意として給料10分の3(3か月)を自主返納、中邑仁志副市長も厳重注意で給料10分の1(1か月)を自主返納する。総務部長ら部長3人、課長6人を厳重注意とした。
記者会見した初宿市長は「市民の信頼を大きく損なう事態となり、心からおわび申し上げる」と陳謝し、副市長らと深々と頭を下げた。
停職の部長は、24年9月まで4年以上にわたり、計37万3556円を不正に受け取った。期間と金額が最大だった男性主査(60)は24年9月までの約5年半で、49万1778円を受給。いずれもバス通勤を申請したにもかかわらず、徒歩で通勤していた。
すでに退職した職員9人のうち、2人は戒告相当、2人は訓告相当、5人を厳重注意相当とした。
この問題をめぐっては、市は昨年10~11月に調査し、同12月に職員97人がバスや電車の定期代計1671万円を返納したが、市は「調査が続いている」として公表せず、初宿市長には今年9月まで報告されなかったという。初宿市長は会見で「返納の事実について、隠蔽(いんぺい)の疑いがある」と指摘した。
弁護士や大学教授らによる第三者検討会が来月に発足し、庁内での隠蔽行為の有無や不正受給の経緯を調べ、来年3月までに再発防止策を含めて結果を公表する。
市によると、08年以降、通勤・住居・扶養手当の不正受給で懲戒処分を受けた職員はゼロだった。初宿市長は「懲戒処分の判断基準に疑義があったので、不正期間の長短などを加えて基準を作り直した」と説明した。住居・扶養手当も不正が認定されれば処分する。
地方自治に詳しい木寺元・明治大学教授(政治学)の話
「八王子市役所の組織統治に問題があり、深刻な機能不全に陥っている。管理職も不正に手を染めており、内部チェックが働いていない。副市長が市長に伝えなかったのも問題だ。行政の信頼失墜につながるため、返納の事実を速やかに公開するべきだった。報道機関の情報公開請求がなければ、隠蔽を続けた可能性もある。住宅手当や扶養手当の不正受給でも、しっかりした対応をとらないと、信頼の回復は見込めないだろう」