高市総理カタログギフト配布は「例外的なこと」今後は慎む考え示す

高市総理側が自民党議員にカタログギフトを贈っていたことをめぐり、高市総理は国会答弁で、「批判を受けるのであれば慎みたい」と述べました。
高市総理 「そういったことが批判を受けるのであればですね、これ法律には抵触をしないものではございますけれども、慎みたいなと思っております」
高市総理は午前の衆議院予算委員会の答弁で、衆院選の当選祝いに1人分およそ3万円のカタログギフトを自民党議員315人に贈っていたことをめぐり、「私なりのねぎらいの気持ちでかなり例外的なことをした」と述べました。
そのうえで高市総理は「そういったことが批判を受けるのであれば、法律に抵触をしないものではあるが、慎みたいと思っている」と述べました。

暗号資産で送金指示、前年の10倍に 現役世代も標的…仮想空間のカネの流れ、どう追跡?

暗号資産(仮想通貨)を送金させる手口の特殊詐欺被害が急増している。警察庁のまとめによると、令和7年の全国の認知件数は1千件を超え、前年から約10倍に増加。被害額も200億円近くに上った。特殊詐欺の送金のやりとりが従来の手交や振り込み型から、一部で匿名性の高い仮想空間に移行しているとみられ、捜査当局はカネの流れの追跡に総力を挙げる。
副業支援の「保証金」として
「スマホで手軽に始められる」
副業を探していた東京都内居住の20代女性の目に昨年、ある副業支援サイトのこんな文言が留まった。口コミを調べたが、評判は悪くなさそう-。サイトからLINEでのやりとりに移行し、110万円のサポートプランに申し込んだ。
女性はその後、業者から「収益を得たら、(利用者と)連絡がとれなくなることがある。保証金を預けてほしい」「保証金は暗号資産に換えて、カギをかける必要がある」などといわれ、「保証会社」として紹介された消費者金融から50万円を借り、仮想通貨に換えて送金した。
だが、この業者は、副業支援名目で現金をだまし取る詐欺集団だった。警視庁特別捜査課は今年2月、詐欺容疑で、この副業支援サイトを運営するなどしていたグループのメンバーら10人以上を逮捕。同様の手口で6年6月以降、46都道府県の10~70代の男女450人以上から計7億円超を詐取していたとみて、全容解明を進めている。
現役世代がターゲットに
警察庁の統計によると、7年に全国で認知した特殊詐欺事件2万7758件を送金の方法別でみると、銀行口座などに現金を振り込ませる従来の「振り込み型」が1万6862件で全体の約6割を占める一方、仮想通貨で振り込ませる手口が前年から急増。認知件数は前年の123件から1213件に、被害額は34億円から195億7千万円に増加した。
仮想通貨で送金したケースを年代別でみると、50代以下の現役世代が過半数を占め、20代、30代もそれぞれ1割以上を占めるなど若年層への広がりも目立った。
捜査関係者によると、警視庁が摘発した事件では、仮想通貨を使ったことのない被害者に対し、SNSの画面共有機能などを用いて、暗号資産の口座開設の操作を教え、送金させたケースもあったという。
仮想空間から再び「リアル」へ
現金と比べて取引の匿名性が高く、追跡が難しいとされる仮想通貨。捜査当局が着目するのが、詐欺グループが詐取金を利用するために引き出す「現金化」のタイミングだ。ある捜査幹部は「詐取金を仮想通貨に換える以上、必ず、その先には現金化する人間がいる」と説明。摘発に力を入れる。
正規の取引所を経由しない違法な仮想通貨取引で犯罪収益を現金化したり、資金洗浄したりする業者は、「相対屋(あいたいや)」と呼ばれる。特捜課は1月、特殊詐欺の詐取金や、闇バイト強盗に関与した「ルフィ」グループの被害金の資金洗浄に絡み、仮想通貨を現金化していた「相対屋」の男を摘発した。ただ、捜査幹部は「ほかにも複数の『相対屋グループ』が存在している」とみており、警戒を緩めていない。
仮想通貨は匿名性が高い一方、取引履歴がブロックチェーンと呼ばれる台帳に記録されるため、「理論上、追跡は可能」(捜査幹部)とされる。ただ、ハードルとなっているのが、日本からの情報の照会が難しい海外の取引所を経由するケースだ。
仮想通貨も悪用した犯罪収益の流れの解明は、暗躍する匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)の解体に欠かせない「至上命題」となっている。警察当局は、警視庁を中心とした情報と捜査力の統合や、警察庁のサイバー特別捜査部などの解析技術の活用により、実態解明を急ぐ。(海野慎介)

ペルシャ湾に新たに入域しないよう日本船主協会に注意喚起=官房長官

Ami Miyazaki
[東京 3日 ロイター] – 木原稔官房長官は3日午前の会見で、イスラエルと米国によるイラン攻撃とイランの報復措置によってホルムズ海峡付近の情勢が緊迫化していることを受け、日本船主協会に対し、ペルシャ湾付近を航行する船舶に新たに湾内に入域しないよう、また湾内の船舶には安全な場所で停泊するよう注意喚起していると述べた。
木原官房長官は「現在ホルムズ海峡以西のペルシャ湾内の日本関係船舶に被害がないことを確認している」とした上で、ホルムズ海峡を巡る情勢に関し「事実関係について情報収集を続けているところであり、引き続き動向を注視していく」と述べた。
イランの精鋭部隊「イスラム革命防衛隊(IRGC)」の司令官は2日、エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡を閉鎖したと明らかにした一方で、米中央軍がFOXニュースで、ホルムズ海峡は閉鎖されていないと述べるなど、情報が錯綜している。

日本政府、きょうにもイラン滞在の日本人を陸路で国外退避へ バスで隣国アゼルバイジャンへ移送か

日本政府はイランに滞在する日本人について、きょう(3日)にも陸路で退避させるため準備を進めていることが分かりました。
関係者によりますと、早ければ日本時間のきょう午前中にも、イランに滞在する日本人のうち希望する数人の退避を実施する予定だということです。
イランでは去年6月にも、外務省が手配したバスで現地の日本人が隣国アゼルバイジャンに退避していて、今回も同じオペレーションになるものとみられます。
現在、イランにはおよそ200人の日本人が滞在していますが、現時点で日本人の被害は確認されていません。
2日にはイスラエルから日本人5人が陸路で隣国ヨルダンに退避したばかりで、日本政府は引き続き、周辺の国も含めた日本人の退避支援について検討しています。

北海道八雲町の約40億円新庁舎が白紙で建築家がコメント、町民は「設計費1.9億円」使用に怒り心頭

北海道八雲町で進められていた新庁舎の建設計画が、白紙撤回されることになった。設計を担当した世界的建築家・隈研吾氏の事務所は、この決定を疑問視するコメントを発表。しかし、世間の反応はなぜか計画中止に賛同する声が多いようだ。
新国立競技場なども手掛けた隈研吾氏
現在の八雲町役場は昭和36年に建てられたもので、老朽化が問題になっている。そこで新庁舎の建設計画が進められ、公募により新国立競技場なども手掛けた隈研吾氏の設計が選出。木造の大屋根が特徴的な建物で、当初の予定では2027年度完成だった。
「隈氏が設計した時点での建設予定額は、33億円ほどでした。しかしその後、資材費の高騰などがあり追加で9億円が必要となると判明。その後、入札が2回あったものの参加した事業者はゼロでした」(地方紙記者)
八雲町では1月23日に住民説明会を開催。計画の白紙撤回に賛成する町民は多いものの、設計費の1.9億円を無駄にすることに怒りの声もあがった。萬谷俊美町長は《税金を納めている方に申し訳ないと思っています。少しでもシンプルに安く建てたいという思いですから、今回こうやって立ち止まってやり直そうという方向性を切りたいというのが、私の思いでございます》と話す。
町民からは
《税金を1.9億円もドブに捨てたのか》
《豪雪地帯なのになんで雪が積もるような大屋根なんだ?》
《こういう雪の多いところだから、雪にも強い地元の建築会社さん、設計する人。そういう人を使ってほしい》
などの声が出ている。
「そもそも計画がスタートしたのは、2022年の前町長時代でした。当時も建設費用が高すぎると物議を醸しており、1回目の入札は不調に。その後、2025年10月に前町長は引退しています」(前出・地方紙記者)
白紙撤回を受け、隈氏の事務所は予算と施工者の積算額が折り合わない事例は各地であるとしたうえで、《その場合は予算に合うように、建築の仕様等を変更しながら減額し、予算に合わせていく手順を無償で必ず行うようにしています。今回はそのような機会のお声がけがなく、突然の白紙撤回となり、とても不思議に感じています》とコメントを出した。
賛同の声が多数
その一方で《長期的な維持管理を考えたら止めて良かったと思う》《この人の建築物は木材がボロボロになるからね》《公共施設は使いやすさやメンテナンスが重要。有名な建築家は使わないほうが無難だよ》《建設が始まる前に気付けてよかったよね》《私は英断だと思います》と賛同する声が多く聞かれた。
実際、隈氏が設計し2000年に開館した栃木県の那珂川町馬頭広重美術館では、建物の老朽化が大きな問題となった。
地元の杉を使ったルーバー(羽板)で覆われた特徴的なデザインだったのだが、風雨にさらされ腐食が進み改修が必要に。改修設計を隈氏の事務所に依頼したものの、木製ルーバーでは耐用年数が短く費用も高額になると判明。最終的に木目調のアルミ素材で代用し、改修費用は約2.5億円となった。
北海道八雲町の今回の判断。設計費用の1.9億円をドブに捨てたのか、それとも白紙撤回は英断だったのか。今後を見守りたい。

安易なSNS投稿に注意を いじめ動画拡散受け、文科省が新教材作成

いじめや暴行の動画が学校などで撮影され、相次いでSNSに投稿・拡散されている問題を受け、文部科学省は3日、安易な投稿に注意を促す動画の教材を新たに作成したと発表した。オンラインで公開するとともに全国の教育委員会に通知を出し、学校での活用を促す。
いじめ動画の投稿には告発という意図も考えられる一方、事実関係があいまいな場合もある上、個人への中傷を招きかねない。名誉毀損(きそん)など犯罪に該当する恐れもあるほか、動画に映っている被害者が拡散を望んでいないケースも想定され、何気ない投稿が2次的な被害を生む恐れがある。
こうした点を踏まえ、文科省は弁護士や大学の教授がSNSでの投稿・拡散に関するリスクを説明する約15分の動画を作成。主に中学・高校の授業で、情報モラルを取り扱う際の活用を想定している。
松本洋平文科相は3日の閣議後記者会見で「いじめが犯罪につながるものであることを伝えるとともに、情報モラル教育の観点から留意すべき事項等について解説をしている。安全安心な学校教育を守るべく、引き続き関係省庁と連携して対応を進めたい」と述べた。
文科省は情報モラル教育の充実を進めるとともに、生徒指導担当教員やスクールカウンセラーなど専門職の増員を通じたいじめの早期発見と対応、相談窓口の周知、必要に応じた警察との連携などを各地の教委や学校に呼びかけている。【斎藤文太郎】

イラン報復攻撃、震える周辺国の邦人…街中から人影消え航空機も欠航「今後どうなってしまうのか」

米国とイスラエルの攻撃を受けたイランの報復攻撃は米軍施設を抱える湾岸諸国にまで広がり、現地で暮らす日本人は不安を募らせる。日本と行き来する航空機の欠航も続き、暮らしやビジネスにも影響が出始めた。
生活やビジネス 影響
「こんなに緊張感が高まったのは初めてだ」
ペルシャ湾を挟んでイランの対岸に位置するアラブ首長国連邦(UAE)。主要都市であるドバイに住んで3年という会社員の金崎柊歩(しゅうほ)さん(27)は2日、読売新聞の取材に応じ、そう声を震わせた。
2月28日夕、ドーンと激しい爆発音が鳴り響いたという。深夜には避難を促す携帯電話の警報音がとどろき、マンション地下駐車場の自家用車の中に逃げ込んだ。その夜は2~3時間しか眠れなかった。爆発音は翌3月1日夜まで断続的に続いた。「今後どうなってしまうのか」と不安を募らせる。
イランによる報復攻撃が始まった直後から、街中からは人影が消え、車の往来もめっきり減った。水や食料の買いだめを控えるよう、テレビ報道で呼びかけがあった。
ドバイ中心部の日本人学校にも大きな爆発音が届き、校舎からは白い煙が立ち上るのが見えたという。同校は生徒の安全に配慮し、2日からオンラインでの授業に切り替えた。教頭を務める近藤聖一さん(54)は「大きな音がするたびに緊張感が走る」と身をこわばらせる。
1週間後に卒業式を控える中、日本での受験のために一時帰国したまま戻ってこられない生徒が数人いることも気がかりだ。国際的なハブ(拠点)空港のドバイ国際空港では航空便の欠航が相次ぎ、日本と現地を結ぶエミレーツ航空がドバイ発着便の運航を取りやめているためで、近藤さんは「早く落ち着いた日常に戻ってほしい」と祈るように言った。
自動車部品の輸出入を手がける日系企業の50歳代の男性会社員は、「日本から製品の輸入が止まることになり、顧客への説明に追われている」と疲れた様子で話した。花火のような爆発音を何度も聞きながら、ドバイの事務所内で仕事を続けてきた。だが、米軍の攻撃が5週間程度続く可能性があることを報道で知って大規模な報復が怖くなり、日本にいったん帰国する考えという。
イランによる報復攻撃はUAEのほか、カタール、バーレーンなども標的となった。陸路でUAEを出た後、航空機で日本に向かう経路を検討しているというが、「無事に移動できる保証はない。仕事も生活もどうなってしまうか分からない」と途方に暮れた様子で話した。

これ以上、習近平の好き勝手にはさせない…自衛隊でも公安でも外交官でもない「日本を守る最強組織」の名前

高市早苗首相率いる自民党が衆議院で3分の2の議席を獲得したことで、通常国会では重要法案が次々に成立していく可能性が高い。
そのうちの「国家情報局」設立法案は地味ではあるが、わが国の行く末を決めることになる最重要法案だ。
日本ではここ数年、「情報(インテリジェンス)」という言葉が急に生活の近くに降りてきたように感じる。以前なら、情報機関といえば映画の中のスパイや、どこか遠い国の話だった。
しかし今では、サイバー攻撃や経済安全保障、中国やロシアなど外国勢力による政治工作、SNSを通じた世論操作など、日常のニュースの中に当たり前のように登場する。もはや「情報(インテリジェンス)」は専門家だけのものではなく、社会全体の安全に直結するテーマになっている。
こうした状況を受けて、政府が「国家情報局」創設法案を提出するという話題が注目を集めている。同法案は、現状の内閣情報調査室を強化し、政府内部のインテリジェンス情報を一元化するための法案である。
ただし、いずれ創設が想定される「対外情報機関」を念頭に置いた組織となることは明らかであり、国家情報局がいかなる内容になるかによって、日本の外交安全保障能力は大きく飛躍する、または制約されることになるだろう。
そして、どの省庁が主導して国家情報局を作り上げるかによって、その組織の性格はまったく別物になる。情報機関というのは、単に情報を集めるだけではなく、集めた情報をどう扱い、どう判断し、どう行動につなげるかが本質だからだ。
国家情報局設立にあたって、各省庁が縄張り争いをしているというメディア情報も散見されるが、やはりベストな体制を作り上げることが国益にかなうものと思う。
本稿では、国家情報局は警察主導で構築されるべきだという立場から、その理由をできるだけ平易に、肩肘張らずに述べていきたい。外務省、公安調査庁、防衛省が過度な影響力を持つべきではない理由についても、具体例を交えながら説明していく。
まず、警察が主導すべき最大の理由は、国内情報の扱いにおいて圧倒的な実働能力を持っている点に尽きる。国家情報局が扱うべき情報の多くは、外国勢力の政治工作、サイバー攻撃、テロの兆候、経済安全保障上の脅威など、国内の人物や団体、企業、インフラに直接関わる。つまり、情報を集めるだけではなく、必要に応じて捜査し、監視し、場合によっては強制力を伴う措置を取らなければならない。
たとえば、外国企業を装った投資ファンドが日本の大学研究者に接触し、最先端技術を流出させようとするケースを想定しよう。こうした事案では、資金の流れを追い、関係者の通信記録を分析し、必要に応じて事情聴取を行う必要がある。これを実行できるのは警察だけだ。外務省には捜査権限がなく、防衛省は国内の民間研究者を監視する立場にない。公安調査庁は情報収集はできても、強制捜査ができない。
また、外国勢力による政治工作の問題も深刻だ。海外では、政治家への資金提供や、シンクタンク・大学への寄付を通じた影響力獲得が問題になっている。特定国の関係者が政治家に資金提供していた事例や、外国政府系団体が学術界に資金を提供し、研究テーマに影響を与えようとした事例が報じられている。産業スパイも同様だ。
こうした問題に対処するには、資金の流れを追跡し、関係者の接触状況を把握し、必要に応じて強制捜査を行う能力が不可欠だ。金融庁との連携も警察には一日の長がある。
さらに、サイバー攻撃の分野でも警察の役割は大きい。令和7年上半期の警察庁サイバー警察局の報告によると、全国で116件のランサムウェア被害が報告されており、同局が捜査と被害拡大防止にあたった。攻撃元は海外の犯罪組織と見られたものの、国家情報局がサイバー情報を扱うなら、こうした現場の実働部隊と密接に連携できる警察が中心になるのは自然だ。具体的な対処能力と経験を持つ組織が対応することで、インシデント発生時に適切な判断を行うことができる。
では、外務省、防衛省、公安調査庁が主導する場合はどうか。ここにはそれぞれ固有の問題がある。
外務省は外交交渉を担う組織である以上、外国政府との関係維持が最優先になる。たとえば、ある国の外交官が日本国内でスパイ活動を行っている疑いがあったとしても、外務省はその国との関係悪化を恐れて強く出られない可能性がある。外交的配慮が必要な組織に、国内の政治工作やスパイ活動への対処を任せるのは難しい。
さらに、将来的に対外諜報活動を行う機関を創設する場合、外務省には違法になり得るギリギリの活動を担わせるわけにはいかない。あくまでも外務省は国の外交の顔であり、泥臭い情報の世界に全面的に関わることは望ましくない。米国で国務省とCIAが別組織になっている理由でもある。
防衛省・自衛隊は軍事情報の収集に優れているが、国内情報の扱いには慎重であるべきだ。軍事組織が国内の市民社会を監視することへの懸念は根強く、文民統制の観点からも制約が大きい。たとえば、米国のNSA(国家安全保障局)が国内通信を監視していた問題が発覚した際、強い批判が起きた。日本で同じことが起きれば、社会的な反発は避けられないだろう。また、やはり将来的な対外情報活動の観点から考えても、防衛省は駐在武官を通じた軍人としての情報収集を行う立場上、外務省と同様の観点から一定の距離があることが望ましい。
公安調査庁は、戦後の制約の中で「捜査権限を持たない情報機関」として設計されたため、強制力を伴う行動ができない。たとえば、オウム真理教の動向を追っていた時期、公安調査庁は情報を集めることはできても、強制捜査は警察に頼らざるを得なかった。国家情報局が実効性を持つためには、捜査権限と全国的な組織網が不可欠であり、公安調査庁を中核に据えるのは現実的ではない。
また、公安調査庁は関与を否定しているものの、中国が公安調査庁との接触を理由に同国内で逮捕事案に踏み切った事例もあり、過去の実績ベースで国家情報局の中核を担うには時期尚早と言えるかもしれない。
こうした事情を踏まえると、国家情報局をどこが主導すべきかという問いに対して、警察を中心に据えるという答えは、決して突飛なものではない。むしろ、最も現実的で、最も実効性が高い選択肢だと言える。そして実際、現在の内閣情報調査室の人事も警察主導となっている。
警察主導の国家情報局が実現すれば、国内情報の一元化が進み、情報の断片化という日本の長年の弱点を克服できる。たとえば、都道府県警察が持つ情報を国家レベルで統合し、サイバー攻撃への即応体制を強化し、外国勢力の政治工作に対する捜査と分析を連携させることで、情報から対処までの流れが格段にスムーズになる。
制度設計としては、国家情報局が担うものとして国内情報、対外情報、サイバー情報の三本柱を設置し、独自の情報を交えた分析と調整に特化する。省庁間の情報独占を禁止し、国家情報局が最終的な分析を担うことで、情報の断片化を防ぐ。国会による監視機能を強化し、民主的統制を確保することも重要だ。国家情報局の局長は能力本位で選ばれるべきだが、現状では情報の取り扱いや情報活動に知悉した警察庁出身者を充てるのが妥当であろう。
国家情報局の創設は、日本の安全保障体制を大きく変える歴史的な改革になる。その成否は、どの省庁が主導権を握るかにかかっている。国内情報の蓄積と実働能力、外国勢力の政治工作への対抗、組織文化の適合性、そして外務省・公安調査庁・防衛省の構造的限界を総合すれば、国家情報局は警察主導で構築されるべきだという結論は揺るがない。
外務省、公安調査庁、防衛省は重要な協力者であるが、主導権を持つべきではない。国家の安全を守るためには、国内情報と実働能力を兼ね備えた警察を中心に据え、真に統合された情報機関を構築することが不可欠である。これは最も自然で、最も現実的な選択肢だと言えるだろう。
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(早稲田大学公共政策研究所 招聘研究員 渡瀬 裕哉)

躍進の「チームみらい」 金融・コンサル経営者や若者だけでなく「消費減税反対」に共鳴した地方の高齢者まで…「都市型エリート政党」にとどまらない支持層の広がり

自民党の圧勝、そして立憲民主党・公明党が合流した中道改革連合の惨敗という結果となった先の総選挙にあって、異色の存在感を見せたのが「チームみらい」だ。議席ゼロから11議席を獲得する躍進を見せた新興政党に票を投じたのはどのような人々だったのか。リベラル勢力が消滅の危機を迎えるなか、この党は何をなそうとしているのか。ノンフィクション作家の広野真嗣氏がレポートする。【前後編の前編】
候補者14人中5人が東大卒
「不正選挙だと思ってますよ。みらいのポスターや街宣だってこっちじゃ見なかったんだから」
福島県で暮らす30代の元参政党員の男性に2月8日の衆議院選挙の話を聞いていた時、「チームみらい」の話題になると、電話代を気にしていたそれまでのか細い声から、口調は一変した。
筆者はこの主張に同意できないが、驚きの結果だったことは間違いない。
結党1年に満たない政党が28歳の学校職員・林拓海氏を東北ブロックの比例単独候補として発表したのは公示前日の1月26日で、党首の安野貴博氏(35)は公示後、一度も東北入りしていない。
だが投票日から一夜明けると、林氏は当選。運動員ですら「まさか」の展開だった。
しかも全国でじつに381万票を集めて目標の倍以上の11議席に到達。結党2か月で安野氏の1議席を確保した昨年の参院選の得票(151万票)からしても、2倍以上を得たことになる。
朝日新聞の出口調査によれば無党派層の比例投票先でみらいは自民党(23%)に次ぐ2位(14%)。中道改革連合や国民民主党の13%を上回っていた。
なぜそこまでの集票につながったのか。
他の全党の公約が消費減税に傾くなか、「今は消費減税よりも社会保険料の引き下げを優先すべき」という主張が寄与したと、安野氏は2月19日の記者会見で総括した。外国人や高齢者も恩恵を受ける消費減税より、現役世代の重荷を軽くすることが先だという訴えが響いたというのである。
安野氏は名門・開成中高から東大工学部に入り、学部ではAI研究の第一人者、松尾豊教授の研究室に所属。ボストンコンサルティンググループを経て数社の経営にも携わったほか、東京都の外郭団体のアドバイザーを任され、行政のAI活用やブロードリスニング(多様な声を収集・分析して政策に反映する仕組み)に取り組んだ経験も持つ。
「右でも左でもなく未来」を掲げる安野氏の下に集まった平均39歳の党の候補者14人中5人が東大卒。起業家やコンサルなど経歴は多様だが、イデオロギーを脱臭したようなこのエリート集団が、巨大与党が主導する国会で存在感を高めている。
衰退への危機感が強い地域で高齢者も応援

マンガワン問題で小学館は何をして、何を“しなかった”? 2度の声明文を経ても沈黙が続く「問題の核心」とは

2026年2月20日、札幌地方裁判所で1つの判決が言い渡された。北海道の高校でデッサン講師を務めていた50代の男性が、教え子への性的虐待を理由に1100万円の損害賠償を命じられた。被害者は在学中の15歳から3年間にわたり性的虐待を受け、重度のPTSDと解離性同一性障害を発症した。加害者の男はのちに人気漫画アプリ「マンガワン」(小学館)で『堕天作戦』を連載していた漫画家・山本章一(本名・栗田和明)であることが判明する。
判決から1週間も経たないうちに、この事件は漫画業界を揺るがすスキャンダルへと発展した。筆者は長らくマンガ業界についての取材を重ねてきた経験から、2024年の「セクシー田中さん問題」と同様、本件も出版社の不作為が問題であると指摘したい。
2020年2月、栗田氏は児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)により逮捕・略式起訴され、罰金30万円の処分を受けた。このとき『堕天作戦』は休載することになるが、逮捕からわずか数日後の2月28日、『堕天作戦』の公式Xアカウントは「3月4日より連載を再開できることとなりました」とアナウンスしている。休載理由は、説明されることはなかった。
そして2022年10月、『堕天作戦』は「マンガワン」での掲載を正式に終了することになる。このとき作者の栗田氏はXの公式アカウントで「現在も継続中の私的なトラブルによるもの」「小学館とマンガワン編集部には感謝している」とコメントを発表している。その2カ月後の2022年12月、栗田氏は「一路一」という別名義の「原作者」として、新連載『常人仮面』を「マンガワン」でスタートさせた。
編集部が隠蔽に加担しようとした意図があったと解釈されても…
栗田氏が漫画家としてではなく、漫画原作者としてリスタートを図った点に注目したい。漫画という表現形式には、他のジャンルにはない特徴がある。作家をもっとも端的に同定するのが「絵柄」だ。文章であれば文体を変えることで別人を装うことはある程度可能だが、長年にわたって培われた漫画家の絵柄はその作家固有の指紋であり、同業者であれば一目でわかる。
漫画制作において原作者と作画担当を分業する形式は一般的だが、今回の選択がもたらした効果は明白だ。絵を描かない「原作者」として起用することで、もっとも個人を同定しやすい「絵柄」を表に出さずに済む。正体を隠して活動を再開できる、というわけだ。
もちろん栗田氏が『堕天作戦』を個人出版で継続する意向があり、それとの同時執筆が難しいという実務的な理由もあるだろう。だが、わざわざペンネームを変えているのだから、「同一作者と認識されることを避ける」意図があったのは疑いようがない。
では、栗田氏と直接やりとりをしてきた担当編集者はどこまで知っていたのか。これが1つの争点となる。ペンネーム変更が誰の指示かによっても、責任の所在は大きく変わってくる。
見過ごせないのは、担当編集者が示談交渉の場に加わっていた事実だ。「産経新聞」の報道によると、担当編集者は2021年5月、栗田氏と被害者女性が和解を協議していたLINEグループに参加し、示談金の支払い、連載再開の中止要求の撤回、そして「性加害について口外禁止」という3条件を盛り込んだ公正証書の作成を提案したとされる。「口外禁止」条件の提案は、編集部が問題の隠蔽に加担しようとした意図があったと解釈されても、反論が難しい。
さらに言えば、出版社には本名と住所が著述者登録されているため、編集部が「一路一」と「山本章一」が同一人物であることを知らなかったとも考えにくい。
出版社だけではない。学校側の責任もまた、問われなければならない。
札幌地裁での裁判で原告代理人を務めた河邉優子弁護士は判決後の会見で、本件被害者女性より以前に同様の手口で被告から性的被害を受けた生徒が学校へ相談していたにもかかわらず、何ら対応が取られなかったと主張した。また他の教員がSNSに「今日もJKとLINE交換した」「今日は生徒と肩を組んだ」などと投稿していたとも述べ、組織として機能不全に陥っていた実態を明らかにした。
裁判所は「被告は原告の年齢相応の両親への葛藤や自己肯定感の低さにつけ込み、自らが優位に立つ関係を意図的に形成した」と認定。被害者は陳述書で、行為中に意識を遠ざけることを繰り返すうちに「自分の心から自分を追い出すことが癖になり、乖離状態になるようになった」と述べた。加害者が巧みに「漫画の話」という入り口を使って接近したことも裁判所は認定しており、被害者にとって漫画は加害の道具として使われたのである。
学校側は裁判を通じて一貫して「合意に基づく交際関係」と主張し、判決後も謝罪はないとされている。使用者責任は法的に棄却されたが、事前に相談を受けながら動かなかった道義的責任は、法廷の外で問われ続けるべき問題として残っている。
裁かれたのは児童ポルノ禁止法違反の部分だけ
ここで、なぜ刑事責任を問えないのかという点を整理しておきたい。栗田氏が2020年に問われたのは、児童ポルノ禁止法違反(製造)の一点のみだった。つまり、犯行中に撮影した画像を所持していた、ということだ。3年間にわたる性的虐待・暴行という行為そのものは、刑事的にまったく裁かれていない。性加害は証拠の不足や「同意」に関する司法判断のハードルの高さが理由で、刑事事件化しにくいという実態がある。
この構図は、かつてジャニー喜多川氏による性加害問題が問われた際と重なる。ジャニー氏の性加害もまた刑事事件として立証されることなく、2004年に決着した「週刊文春」との名誉毀損裁判という民事手続きの中で「事実」と司法に認定された。刑事では裁けない性犯罪が、民事という場でようやく認定される今回もその構図だ。
なお、ジャニー氏はすでに死亡しており本人への法的追及が不可能だったのに対し、栗田氏は存命であり、今後の法的手続きの可能性は残されている。
2月27日(金)の夕方、マンガワン編集部が声明を発表した。一路一と山本章一が同一人物であること、別名義での起用が「本来すべきではなかった」こと、編集者が示談交渉の場に関与したことを認め、謝罪した。
しかしこの声明への不満から、「マンガワン」に作品を掲載する作家たちが次々と声を上げた。週末を挟む金曜夕方という発表のタイミングへの不信感も重なったのだろう。翌28日、小学館が「会社として管理監督責任を問われる重大な事案であり、人権・コンプライアンス意識の欠如があった」として本体名義の声明を発表した。作家たちの声が組織を動かしたのである。
誰が何をどこまで知っていたのか
だがどちらの声明も、問題の核心については沈黙したままだ。担当編集者の処分への言及はなく、当時の編集長・和田裕樹氏の責任への言及もない。『常人仮面』の連載開始時の編集長は豆野文俊氏であり、和田氏と豆野氏の両者が本件を「知り得る立場」にいた可能性があるが、この点についても触れていない。
現在の編集長・星野氏は2025年10月の就任であり、当時の判断に直接関与できなかった点は付記する。
小学館の声明では「弁護士を加えた調査委員会を立ち上げる」としているが、その構成と独立性は曖昧なままだ。調査対象が編集部内部の意思決定過程である以上、内部調査では利益相反が生じる。小学館は2024年の「セクシー田中さん」問題で90ページに及ぶ調査報告書を公表した前例があるが、このときは第三者委員会は設置されなかった。
声明発表後、多くの作家たちがみずからのキャリアリスクを負って抗議に踏み切った。大童澄瞳氏(『映像研には手を出すな!』)、こざき亜衣氏(『あさひなぐ』など)などをはじめ、「マンガワン」での掲載中止を申請したり、態度を表明した作家は、筆者が観測した限りにおいてすでに100名以上にのぼる。
また、現在では高橋留美子作品(『らんま1/2』『めぞん一刻』)や『葬送のフリーレン』(原作:山田鐘人、作画:アベツカサ)までも「この作品は掲載終了いたしました」と表示され、作品の閲覧ができなくなっている。一連の騒動が続くなかでのタイミングであり、本件と無関係とは言い難い。すでに漫画・アニメ関連の海外ニュースでも取り上げられ、小学館のIPの海外進出にも影響を及ぼしかねない状況だ。
漫画家たちからすれば、編集部から何の説明もされず、係争中の被告人と組まされる可能性があり、場合によっては連載作品が頓挫する危険性があるのだから他人事ではない。いち早くnoteで詳細な告発を行った江野朱美氏(「マンガワン」にて『アフターゴッド』連載中)はこう記している。「被害者が命を懸けて告発した勇気と比べれば、その些末な不安(※編集サイドから逆恨みされる可能性)になんの価値もなんの意味もない」と。正当な抗議を行った作家が仕事を失うことがあってはならない。
本件は、作家たちが声を上げなければ、ここまで表面化することはなかったと考えられる。一方で、センセーショナルな扱いには慎重であるべきだ。本記事においても、被害者のプライバシー保護のため、具体的な被害内容の記述は最小限にとどめた。被害者が現時点でどのような対応・支援を望んでいるか、外部には知るすべがない。代理人弁護士を通じた発言以上のことを第三者が代弁することは、かえって被害者の意向を損なう恐れがある。
小学館に誠実な対応を求め、組織としての説明責任を果たさせること。それが結果として被害者への最低限の敬意になると考える。
小学館は「楯となって情報発信」することができたのか
4年近くにわたる裁判闘争を経て被害者がこの問題を社会に知らしめ、作家たちがリスクを負って声を上げた。その勇気に応えるためには「不適切な対応でした」という1行の謝罪では到底足りない。学校側も出版社側も「知っていた」あるいは「知り得た」立場にありながら動かなかった。その責任を問うための情報が、まだ十分に開示されていない。
別名義の採用、原作者という起用形態、訴訟継続中というタイミングこれらの「偶然の一致」についても、編集部はいまだ明確な説明を行っていない。
小学館が2024年に公表した「セクシー田中さん問題」の調査報告書は、改善策の最後をこう結んでいた。
「万が一にも、作家や編集者がSNSによる論争の矢面に立つようなことが生じた場合は、作家や編集者が孤立しないように、事案に応じて、会社が楯となって情報発信することを検討することが望ましい」
今回、SNSで声を上げた作家たちが矢面に立つなか、小学館が「楯となって情報発信」したと言えるのだろうか。自社の報告書に記された言葉が、同じ組織で活かされなかった。
3月2日夕方、小学館はあらたに「マンガワンにおける新たな原作者起用問題と第三者委員会設置について」との声明を発表した。ここでは本件以外にも有罪判決を受けた作家がペンネームを変えて活動している事実の公表と、第三者委員会の設置を検討している旨が発表された。
調査委員会の具体的な構成と独立性を速やかに明示すること。担当編集者・当時の編集長の処遇を明らかにすること。そして編集部内での情報伝達の内容すなわち組織が何をどこまで把握していたかを解明すること。これらが示されない限り、小学館が「人権・コンプライアンス意識の欠如があった」と認めた言葉は、説明責任を果たしたことにはならない。
(加山 竜司)