東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に対して25日から5月11日まで緊急事態宣言が発令されることについて、日本医科大特任教授の北村義浩氏は「なぜこんなに遅れたのか、なぜ4都府県で同じ対応になったのか」と疑問を呈した。
酒類を提供する飲食店や大型施設への休業要請、イベントの無観客要請など、前回の宣言より厳格化された内容になるが、北村氏は「世界はもっと強い対策を打っているし、私の知る限り、弱い対策(まん延防止等重点措置)から強い対策に移行するくらい後手後手の国は日本くらいのもの」と政府の対応を批判。「事態は新幹線のようなスピードで進んでいるのに、まるで自転車でもこいでいるかのような認識でした。5メートル先に小さな子供(危機)が飛び出して来ても間に合うと思っていたわけですけど、新幹線だから急ブレーキを踏んでもムリなんです」。スピード感の欠如を指摘した。
さらに、4都府県で期間や内容が統一されていることを問題視。「変異株の流行も含めて、大阪と東京では全く状況や感染特性が異なります。画一的な対応になったことで、大阪への発令は遅れた」
期間は17日間だが、政府分科会の尾身茂会長は「最低でも3週間」と進言している。北村氏は「今こそ専門家の意見に従うべき局面。やりすぎでは、と言われるくらいでいいはずです」とし、解除日の設定を長く取るべきとの考えを明かした。
ゴールデンウィーク期間を挟む今回の宣言では、プロ野球も無観客・延期などの対応を取る可能性が高まっている。「人の流れを抑える意味では必要。野球ファンの方は自宅でのテレビ観戦をしてほしい」。2週間後には東京でも感染者が2000人を超えるとの見方もあり、連休期間中の外出自粛の必要性を強く訴えていた。
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未払い賃金支払い命じる 無罪女性の慰謝料請求認めず 佐賀地裁
佐賀県嬉野(うれしの)市にある養護老人ホームで入所者の胃ろう用カテーテルを抜いたとして傷害罪に問われ、無罪が確定した30代女性が、犯人と決めつけられ精神的苦痛を受けて体調を崩したとして、施設側に損害賠償を求めた訴訟の判決が23日、佐賀地裁であった。達野ゆき裁判長(三井教匡裁判長代読)は、施設への慰謝料請求は認めず、未払い賃金の約55万円の支払いを施設側に命じた。
達野裁判長は、施設側がビデオ映像などから女性に疑いがあると認識したことは「不合理ではない」と指摘。施設側が自宅待機命令や市に通報、警察に相談したことも「過失があったとはいえない」とした。
一方、施設側が休職中に立て替えた社会保険料については女性の未払いを認定し、全額の約127万円を支払うよう女性に命じた。
判決などによると、2014年11~12月ごろ、施設内で入所者のカテーテルが抜ける事故が14回発生。女性が傷害罪で起訴されたが、佐賀地裁は17年12月に「故意に抜いたとするには合理的な疑いが残る」と無罪を言い渡し、確定した。また、女性の体調不良は業務が原因として、既に労災認定もされている。【高橋広之】
大阪の重症病床使用率「100%超」、宣言に府幹部「開始前から延長含み」
25日からの緊急事態宣言の発令で、大阪、京都、兵庫の3府県で一斉に酒類を提供する飲食店への休業要請などが実施される。大阪、兵庫両府県は発令後の対策を政府と協議してきたが、思惑通りにいかなかった部分も残った。地域によって発令への受け止めに温度差もある。
大阪府の吉村洋文知事は23日、政府が示した対策について「提案は、ほぼ受け入れていただいた」と話した。
特に重視していたのが百貨店、テーマパークなど集客施設への休業要請だ。1日から飲食店への営業時間短縮要請を府内全域に拡大したが、感染者数が減少しなかったためだ。
飲食店対策は「酒類の提供中止、午後8時までの時短」に落ち着いた。府は政府に「全面休業」を含む3案を提示しており、府幹部は「重要な部分は認められた」と受け止める。日中から営業する店での「昼飲み」を防げ、居酒屋なども営業が難しくなる。この幹部は「休業を選ぶ店も多いはず」とみる。
大きく要望と異なったのは宣言の期間だ。
吉村知事は「3週間から1か月が必要」としていたが、政府は短期集中を求めた東京都の案に沿い、5月11日までの17日間にした。
大阪府では重症病床使用率が実質的に100%超となり、感染者数が減少に転じても、医療提供体制が改善するには時間がかかる。
吉村知事は「5月11日まで対策の徹底をお願いしたい」と述べるにとどめたが、府幹部は「明らかに短い。開始前から延長含みだ」と話した。
兵庫県は、飲食店への時短要請などを、感染状況に応じて地域差をつけられるよう政府に要望したが、認められなかった。
県内では神戸市など直近1週間の人口10万人あたりの感染者数が、国の指標で最も深刻な「ステージ4」(25人)の水準を大幅に上回るが、日本海側は10人未満にとどまる。しかし政府は過去2回の宣言時と同様、「県内一円の対策が望ましい」と伝えてきたという。
県北部の飲食店業界などからは「今の状況で県南部と同じ対策を求められるのは死活問題」との声もあり、井戸敏三知事は記者会見で「感染者が少ない地域も増加傾向が目立っており、政府の考えを覆す根拠がなくなった」と釈明した。
京都府の西脇隆俊知事は「京都だけが宣言対象外になると『京都は安全』という誤ったメッセージを送ることになる」と大阪、兵庫両府県とともに宣言発令を要請した理由を説明した。
ただし直近1週間の人口10万人あたりの新規感染者数は23日時点で33人。「ステージ4」の水準だが、大阪府の89人より大幅に低い。
飲食店主らの受け止めは複雑で京都市で日本料理店「逸品さかい」を営む酒井宅さん(47)は「感染拡大を防ぐためには仕方がない」と理解を示したが、同市内でバーなど6店を経営する安田昌章さん(46)は「1年前から時短を繰り返してきたが、今後の展望が全く見えない」と不満を口にした。
「総裁選前の衆院解散考える」 首相発言、時期巡り臆測
菅義偉首相は23日夜の記者会見で、9月30日の自民党総裁の任期満了を踏まえ「総裁としての任期の中で機会を見て衆院解散・総選挙を考えないといけない」と述べた。10月21日には衆院議員の任期満了を迎えるため、衆院選のタイミングに臆測が広がりそうだ。
首相は会見で、首脳会談を終えたばかりのバイデン米大統領と長く付き合うため、総裁選に立候補する意思があるかどうかを問われ、質問にはなかった解散・総選挙に自ら触れた。同時に「新型コロナウイルスの感染拡大防止が最優先」と繰り返した。
首相は今月6日にも総裁選に先立つ解散の可能性に言及した。自民党ベテランは「無派閥で党内基盤の弱い首相だが『解散政局の主導権は誰にも渡さない』との心の表れではないか」との見方を示した。
乗客「コロナ怖かった」 JR鹿児島線、停電でダイヤ大混乱
23日午後0時40分ごろ、JR鹿児島線の海老津(福岡県岡垣町)―東郷(同県宗像市)間の上り線で停電が発生し、走行していた特急ソニック23号(7両編成)と区間快速(6両編成)が立ち往生した。JR九州が周辺を調べたところ、海老津―教育大前(宗像市)の2カ所で架線が切れているのを発見した。鹿児島線は一部で運行を見合わせ、上りの折尾(北九州市八幡西区)―福間(福岡県福津市)間は約8時間40分にわたって不通となった。午後9時23分ごろから運行が再開されたが、約5万人に影響が出た。
この停電で特急と普通の計105本が運休し、計98本に遅れが出た。JR九州によると、架線の切断のうち1カ所は城山トンネルの出入り口付近で見つかったという。また、停車したソニックの4両目の右側窓ガラスが1枚割れているのを確認。窓は二重ガラスで、外側のみが割れたため車内への破片飛散はなかった。JR九州は停電との関連を調べている。
停車したソニックと区間快速の乗客計約250人は最長約3時間にわたって車内から出られなくなったが、JR側の誘導で線路伝いに歩いてバスなどに乗り換えた。停電で空調機器が使えなくなったが、けが人や不調を訴える人はいなかったという。
停車した区間快速に乗っていた福岡市東区の男性会社員(38)によると、車内は窓や扉も開かず、温度も上昇したため、上着を脱いで蒸し暑さをしのぐ乗客が目立ったという。男性は「密閉された空間で、新型コロナウイルスの感染も怖かった。原因や見通しなどについてアナウンスがほとんどなく、もっと情報がほしかった」と話した。
JR鹿児島線で発生した停電による運転見合わせは、会社員や学生らの帰宅時間を直撃。博多駅(福岡市博多区)や小倉駅(北九州市小倉北区)は帰宅手段を失った人たちで大混乱となった。
小倉駅から羽犬塚(はいぬづか)駅(福岡県筑後市)まで帰ろうとしていた専門学校生の男性(19)は「運転再開があまり遅くなるようだったらどうすればいいのか……。新幹線を使うほどお金を持っていないので困っています。こんなことは初めてです」と立ち尽くした。
大分市の男性会社員(20)は福岡市内で新入社員研修を受けて博多駅から帰ろうとしたところ、乗車予定のソニックが運休に。「バスで帰ることにしたが、何時間かかるのか」。北九州市小倉北区の男性(79)は人出が多い連休を避けて福岡市の親族に会った帰りだったが、乗っていた電車が途中で止まったという。車内で3時間待たされた後に博多駅に戻ったが、「車内では停電が起きたというアナウンスが繰り返されるばかり。くたくたです」と疲れた表情で語った。【中里顕、成松秋穂、吉川雄策、浅野翔太郎、平川昌範】
大阪市職員の1000人超が多人数や深夜会食 市長が陳謝
大阪市の松井一郎市長は23日、1000人を超える市職員が、3~4月に市職員同士で、5人以上または深夜まで会食をしていたと明らかにした。市民に自粛を求めている最中の行為に、松井市長は「市民の皆様に本当に申し訳ない。全て厳重に対処する」と陳謝した。
職員同士の会食で新型コロナウイルス感染者が相次いだことから、市が調査していた。非常勤などを除く約2万人を対象に、3月1日~4月4日の期間中、「5人以上」または「午後9時以降」の会食の有無を聞き取った。
緊急事態宣言が解除された3月以降、市は市民に対し、少人数での会食などを呼び掛けていた。【野田樹】
小池都知事「危惧される感染爆発抑え込む」 小規模施設にも休業要請 協力金支給を発表
東京都の小池百合子知事(68)は23日の新型コロナウイルス対策本部会議で、緊急事態宣言発令の正式決定に伴い、都独自の対応として生活必需品関連販売を除く1000平方メートルを下回る施設や店舗に対しても休業の協力を依頼することを明らかにした。応じた中小企業や個人事業主には都独自の協力金34万円を支給する。
小池氏は「今後危惧される感染爆発を抑え込んで、都民の命を守るために人流抑制、急所対策の戦略的強化、備えの強化の3本柱の対策を集中して強化していく必要がある」と述べ、「都民や事業者、行政が今一度一体となってこの難局に立ち向かっていきましょう」訴えた。
都は、3度目の宣言が発令される今月25日~来月11日の間、1000平方メートルを上回る規模の百貨店や映画館、パチンコ店など生活必需品関連販売を除いた施設に休業要請する。休業要請に応じた大規模施設には340万円、施設内の各テナントには34万円の協力金を支給する。また、劇場や野球場、テーマパークなどには無観客開催を求める。
飲食店やナイトクラブなどに対しては、酒類やカラオケ設備を提供する店舗に対しては休業要請し、それらを提供しない店舗に対しては午後8時までの時短営業を要請する。応じた事業者には規模に応じた協力金を支給する方針。
東京都は23日、新型コロナウイルスの感染者が新たに759人確認されたと発表した。金曜日として1日当たりの新規感染者数が700人を上回るのは、1月29日(871人)以来、約3か月ぶり。新規感染者の7日間平均は697・3人となり、前週(542・0人)の128・7%と増加傾向が続いている。重症者数は前日から4人増の52人となった。
全国で新たに5109人の感染確認 3日連続5000人超
新型コロナウイルスの感染者は23日、全国で新たに5109人確認された。1日あたりの感染者が5000人を超えるのは3日連続。死者は52人増えて計9880人となった。重症者は前日より11人多い816人。
緊急事態宣言の発令が決まった4都府県では、大阪で1162人の感染が確認され、4日連続で1日あたり1000人を超えた。東京は前週の金曜より92人多い759人の感染が確認された。兵庫は567人、京都は130人だった。
過去の感染者について、奈良県で3人、宮城、兵庫両県で各1人の取り下げがあった。【まとめ・金森崇之】
首相「再び多くの皆さまにご迷惑、心からおわび」…緊急事態宣言
菅首相は23日夜、首相官邸で記者会見し、新型コロナウイルス対策として東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に緊急事態宣言の発令を決めたことについて、「再び多くの皆さまにご迷惑をおかけすることになり、心からおわび申し上げる」と陳謝した。
新型コロナワクチンの65歳以上の高齢者向け接種を巡っては、「7月末を念頭に、各自治体が2回の接種を終えられるよう取り組んでいく」と強調した。
「多くの方々に速やかに受けてもらうため、できることは全てやる覚悟で取り組んでいく」とも述べ、接種を担う人材を確保するため、歯科医師による接種も可能とする考えを示した。
大分・佐伯市の副市長を逮捕 市長選で職員に投票依頼した疑い
大分県警は23日、11日に投開票された佐伯(さいき)市長選の告示前に市職員に特定候補への投票や集票を依頼したとして、副市長の菅隆久(かんたかひさ)容疑者(61)=佐伯市戸穴=を公職選挙法違反(公務員の地位利用、事前運動)容疑で逮捕した。捜査関係者によると、容疑を認めているという。
逮捕容疑は、市長選告示前の3月中旬、特定候補を当選させるために職務上の地位を利用し、市役所内で職員に投票や票のとりまとめなどを依頼したとしている。市長選には4人が立候補し、現職の田中利明氏が再選を果たした。
市などによると、菅容疑者は元市職員。商工振興課長や上浦振興局長などを経て、2019年に副市長になった。
県警は23日、市役所内を捜索して資料などを押収。記者会見を開いた田中市長は「市民の皆様に心配をかけて申し訳なく思っている」と謝罪したうえで、関与については「私は知らない」と否定した。【辻本知大、河慧琳】