デブリ全量回収ほど遠く 東京電力福島第1原発事故から14年

東京電力福島第1原発事故からまもなく14年。最難関とされる溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の回収に初めて成功し、工程は転換点を迎えた。しかし、1~3号機で約880トンあるとされる燃料デブリの全量回収にはほど遠く、廃炉完了への道筋は描けていない。
作業阻む高線量
1月中旬、福島第1原発の構内に記者が入った。処理水をためるタンク群が、至るところで目に入った。一部のタンクは2023年に始まった処理水の海洋放出で空になり、2月の初解体を控えていた。空いた敷地には燃料デブリの取り出し関連施設が建設される。タンクが林立する構内の景色は、徐々に変わろうとしていた。
燃料デブリを回収する最大の障壁が、高い放射線量だ。2号機で24年に初めて実施した試験取り出しの作業も、高線量に阻まれた。着手する直前、釣りざお式の取り出し装置を押し込むパイプの接続ミスが発覚した。作業現場は原子炉建屋内で、毎時数ミリシーベルトある。被ばくを防ぐ重装備をした上で数十分間で作業を終えなければならず、パイプの接続順を十分に確認できなかった。燃料デブリをつかむ直前にも、高線量の影響で装置先端のカメラが映らなくなり、カメラの交換を余儀なくされた。
2号機では20年代後半から段階的に取り出し規模を拡大する。それには開発中のロボットアームが不可欠だ。釣りざお式装置に比べ、アームは遠隔で操作でき、作業員の被ばくを防げる。原子炉内を自在に動かせ、線量計なども搭載できるため、燃料デブリの状況が詳しく調べられる。東電は25年度後半の使用を目指すが、アームのケーブルが劣化で断線するなどの問題が発覚。開発から6年以上たっても調整が続く。
大規模取り出し2工法
次に燃料デブリを回収するのは3号機だ。30年代初頭に初めて大規模取り出しをする。燃料プール内の使用済み核燃料の取り出しが完了しており、作業環境が整えやすいと判断された。
取り出しには、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の小委員会の提案に沿い、二つの工法を組み合わせる案を検討している。水をかけ流しながら空気中で取り出す「気中工法」と、燃料デブリを充(じゅうてん)材で固めて取る「充固化工法」で、建屋の上部か横に穴を開けて取り出す。
ほかの工法に比べて工事規模が小さいなどの利点はあるが、建屋に水を張って放射線を遮蔽(しゃへい)できない。放射性物質の飛散や、充材の汚染による廃棄物の増加が課題となる。原子炉のふたも大量の放射性物質で汚染されており、遠隔による難工事が予想される。
取り出しに向けた格納容器の内部調査は2回しか行っておらず、1~3号機で最も少ない。格納容器内の水位が最も高く、建屋内には水素爆発によるがれきが散乱し、調査の障壁になっている。17年の水中ロボットによる調査では、燃料デブリとみられる堆積(たいせき)物がつらら状や塊状で部分的に見つかったが、全体像は見渡せていない。24年末には、原子炉を支える土台(ペデスタル)へ通じる穴の周辺の調査が終わり、ペデスタル内の調査や回収に利用できるかを検討している。
分布や性状いまだ不明
燃料デブリの回収時期が最も見通せないのは1号機だ。ペデスタルへ通じる穴付近の線量は毎時630ミリシーベルト(17年公表)で、2、3号機に比べて2桁も高い。まず燃料プール内にある使用済み核燃料の取り出しを27~28年度に始め、完了した後に燃料デブリを回収する。3号機の大規模取り出しの後になる見通しだ。
24年までのドローンや水中ロボットによる調査で、ペデスタルの広範囲に燃料デブリとみられる堆積物が確認された。さらに、ペデスタルの壁が約1メートルの高さまでほぼ全周で消失していることもわかった。燃料デブリの熱でコンクリートが溶けた可能性があり、中の鉄筋までむき出しになっていた。
1~3号機とも燃料デブリの分布や量、性状はわかっておらず、とくに圧力容器内の調査はほぼ手つかずだ。東電は25年以降、ドローンなどを使ってさらに詳しく調べる方針を示しているが、具体的な時期は定めていない。
政府と東電の工程表では、燃料デブリの試験取り出しを受けて最終盤の第3期に入った。最長40年とする廃炉完了まで、燃料デブリの回収のほか、保管や処分の問題も待ち構える。燃料デブリにどう対峙(たいじ)するか、いまだ見通せないままだ。

「地方がどんどん壊される」本当の”原因”は何か 木下斉vs永谷亜矢子対談【前編】

訪日外国人の数は2024年に3686万人を超え、過去最高を記録。盛り上がる観光業界をして「今後の日本を背負う成長産業」と期待する向きも多い。
だが、その前に解決しなければならない課題が山積みだと考える有識者がいる。
忖度なしの論説で“地方創生界の狂犬”の異名をとり『地方創生大全』がロングセラーになっている木下斉氏と、地方創生における観光分野の専門家で『観光“未”立国~ニッポンの現状~』を上梓した立教大学客員教授・永谷亜矢子氏だ。
ともに地方創生のリアルな現場に立つ2人だからこそ見えている「日本の観光業界」、ひいては「地方創生」について、存分に語ってもらった。
*この記事の続き:「日本が観光で復活する”秘策”は…」”補助金”よりも大事な”今やるべきこと”
「行政の価値観」が追いついていない観光業界
木下:今のインバウンド政策は、いわば“観光ビザばらまき”政策。大前提として人が来ないことには観光は成り立たないので、外国人の誘致は大切です。しかし、観光はどこまでいっても客商売。当然、稼げる地域と稼げない地域が出てきます。
【写真で見る】「地方がどんどん壊される」本当の”原因”を解き明かす木下斉・永谷亜矢子両氏の素顔
しかもこのご時世、主な情報源はネット。もしくは口コミです。
必然的に、もともと外国人に人気の地域や大手資本がグリップしているホテルなどのある地域がリーチしやすくなる。地域格差は広がっていくばかりです。
永谷:ネット検索からSNS検索、AI検索と時代は進んでいるのに、行政の価値観が追いついておらず、現実に即していないことがとても多いですよね。
いまだに紙のパンフレットを作ったり、看板を新しくしたり。
そんなことを相談されるたび、「パンフレットを旅先に置いても意味ないのに、なぜ?」と不思議で仕方がありません。プロモーションするなら、旅行を計画している「旅マエ」に知ってもらわないといけないじゃないですか。
木下:そもそもパンフレットは海外まで届きませんからね。あれはもう、禁止にしたほうがいいレベル(笑)。
永谷:デジタルをうまく使えばいいのに、なかなかそうはなっていません。
観光協会や観光事業者のWebサイトがどうなっているのかというと、間違った情報やもうなくなったお店が掲載されているとか、今どきスマホに対応していないとか、予約機能がないとか。SNSもアカウントがあったとしても、更新されずに野ざらしになっているとか。

【裁判詳報】小西優花被告と内田梨瑚被告の関係性は「舎弟」凄惨な犯行明らかに 弁護側は「従属的な関与」 旭川高校生殺人

北海道旭川市で2024年4月、17歳の女子高校生が橋から落とされ殺害された事件で、殺人などの罪で起訴された当時19歳だった女の初公判が、2025年2月27日に開かれました。
殺人などの罪に問われているのは、当時19歳だった小西優花被告(20)です。
起訴状などによりますと、小西被告は2024年4月、旭川市神居町神居古潭で、留萌市の女子高校生(当時17)を橋の欄干に座らせて川に転落させ、殺害したなどの罪に問われています。
冒頭陳述で検察側は、小西被告は、ともに殺人などの罪で起訴されている内田梨瑚被告に「恩義を感じ仲間意識を持っていた」、犯行において「中核的に実行し、内田被告と同等の役割を主体的に果たした」と主張しました。
検察の主張は以下の通りです。
被害者に示談金要求の内田被告に対し「足りますか?50万で」
【内田被告との関係性】
▼小西被告は内田被告と数年前に知り合い、2024年に偶然再会して親しくなった。
▼2024年4月16日ごろから内田被告の「舎弟」になり、荷物持ちや買い物をしていた。
▼元交際相手とのトラブルの仲裁などをした内田被告に恩義を感じて慕っていた。
▼小西被告は被害者の女子高校生(当時17)と面識なし。
【犯行に至る経緯】
▼2024年4月18日午後8時31分~、被害者が内田被告が写った画像を内田被告の許可を得ずにSNSに投稿。
▼被害者は内田被告の要求に従って電話をかけ謝罪。
▼内田被告は被害者に対し、示談金名目で50万円を要求。
▼同日午後9時28分~、内田被告は小西被告に「50万つませるわ」とメッセージを送る。小西被告は「足りますか?50万で」と内田被告に返信。
被害者がコンビニで「助けてください」…馬乗りになって暴行
【監禁の犯行状況(コンビニ到着まで)】
▼同日午後11時37分~、内田被告と少年(当時16)が「道の駅るもい」で被害者を発見。内田被告は被害者に「お前黙って乗ってろよ。バッタバタ(暴力を振るってボコボコにする意味)にしてやるから」と言い、車の助手席に乗せて旭川方面へ移動、監禁開始。
▼内田被告は被害者の携帯電話を取り上げ、車内から逃げようとしたのを暴行を加えて阻止。
▼内田被告は小西被告に対し、被害者を旭川まで連行する旨を伝え、口止めに使う誓約書の作成を指示。
▼4月19日午前0時15分~、小西被告は「契約書 書類 書き方 謝罪」で検索。手書きで誓約書を作成し、その後、内田被告らと合流。
▼小西被告は被害者に対し、無断で画像を使用したことなどを厳しい口調で責め立てた。
【監禁の犯行状況(コンビニ到着後)】
▼同日午前3時7分~、小西被告はトイレに行きたがった被害者の手をつかんでコンビニに入店。
▼被害者はトイレから出て、カウンターにいた従業員に「すいません、助けてください、通報してください」と助けを求める。
▼小西被告は走って出入口まで移動、被害者の逃げ道をふさぎ、カウンターにしがみついていた被害者を店外に引きずり出そうとした。
▼内田被告は、被害者のQRコード決済サービスでタバコなどを購入し、従業員にうその説明をして口止め。
▼小西被告と内田被告は、必死に抵抗していた被害者を無理やり店外に引きずり出した。
▼小西被告は被害者を店舗裏手まで引きずって連行し、馬乗りになって顔面を複数回殴打。
▼同日午前3時29分、小西被告と内田被告は被害者を神居古潭まで連行し監禁終了。
被害者の衣服などを投棄…「死ねや」何度も怒鳴る
【殺人・不同意わいせつ致死の犯行状況】
▼同日午前3時29分~、小西被告と内田被告は被害者を車内で全裸にさせた。神居古潭の気温は6℃に満たず雨が降っていた。
▼小西被告と内田被告は、被害者が脱いだ衣服や靴を全て神居古潭の草むらに投棄。
▼小西被告は被害者に対し、地面に土下座して謝罪させ、これを動画撮影したあと、神居大橋へ連行。
▼内田被告と少年(当時16)がビデオ通話を開始。
▼小西被告は被害者に対し、神居大橋で馬乗りになって顔面を拳で複数回殴打、両手で首絞め。内田被告もビデオ通話しながら、被害者の腰を蹴るなどの暴行。
▼同日午前3時41分~、小西被告と内田被告は、被害者を橋の欄干に座らせ、再び謝罪させた。内田被告は被害者が謝罪している状況を動画撮影。小西被告は被害者の両ひざを持ち上げて橋から落下させる素振り。(被害者が欄干から床板上に飛び降りたため、橋から落下せず)
▼小西被告と内田被告は、被害者に対し殺意をもって、再度欄干上に座らせ、「落ちろ」「死ねや」などと何度も怒鳴るなどして、被害者を神居大橋から石狩川に落下させた。
【犯行後の証拠隠滅行為など】
▼同日午前3時48分~、小西被告と内田被告は神居古潭の駐車帯にとめた車まで戻り、被害者の携帯電話のデータを削除し、車でひいて損壊、旭川市街地を流れる川に投棄。
▼小西被告と内田被告は被害者に関するメッセージを削除し、別々の場所にいるかのように装う内容のメッセージを送り合う。被害者を殺害したことを警察に話さない旨の口裏合わせ。
▼小西被告と内田被告は、被害者が神居大橋から落下したことについて、一切通報せず。
「日常的に顔色を見ながら行動」弁護側の主張
一方、弁護側は「大半は内田被告の意に沿うように行動していた」「積極的ではなく、従属的な関与だった」と情状酌量を求めました。
弁護側の主張は以下の通りです。
▼客観的事実はすべて認める。共謀の成立や各犯罪の故意も認める。ただ、積極的ではなく従属的な関与だった。
▼結果の重大性を認識して生涯罪を償っていく覚悟だ。
▼他の人との関係は検察の説明通りで、内田の「舎弟」と呼ばれる関係だった。
▼小西被告は2024年4月に仕事をやめて、SNSに「仕事ありませんか」と載せたところ、内田被告から「りこの舎弟」というコメントがあり「内田さんの舎弟ならなってもいいかな」と返信した。でも、女なのになんで弟という字が入っているんだろうと思っていたぐらいだった。
▼小西被告は内田被告に対し、恐怖心があって、理不尽な行動を押しつけられたりした。なので日常的に顔色を見ながら行動していた。
▼小西被告は従属的な立場で各場面、大半は内田被告の指示、意に添うように行動していて、主犯とは負うべき刑の重さにおのずと差が出る。
▼罪を認め遺族と謝罪の気持ちを持ち続けている。
▼まだ若年で更生できる。実名報道で社会的制裁を受けている。
【犯行について】
▼内田被告が映った画像データの件で、内田被告が怒ったことに関して小西被告は関与していない。
▼小西被告は内田被告の指示で誓約書を用意した。小西被告は内田被告が迎えにきた時に内田被告が怒っていたことはわかったが、被害者がかなりの暴行を受けていたことはわからなかった。
▼小西被告は被害者を「大人しい子だな」と思っていた。
▼(コンビニで小西被告が、被害者が逃げないように)手をつないだのは内田被告に指示されたからだ。
▼小西被告は、被害者が逃げようとした時も、店のドアの前に呆然と立ち尽くしていた。
▼小西被告は、被害者が必死に助けを求めた時は怒りの気持ちが出た。でも殴ったのは平手で、拳ではない。「警察沙汰になって自分も捕まるかしれない」と思った。
▼小西被告は、内田被告がどこに行こうとしているかわからなかった。防犯カメラが現場にないことは、知らなかった。
▼服を脱ぐように命じたのは内田被告だが、目の前のことについていくのが精いっぱいだったので、止められなかった。
▼小西被告が服を脱がせて、服を付近の草むらに捨てたことなどから、故意があったことは認める。付近で殴ったのは平手、馬乗りで首を絞めたのも否定しない。
▼小西被告は被害者が転落した際、とっさにひっぱり上げようとした。
▼神居古潭から帰宅後、内田被告は「余裕。大丈夫だ。捜索願も何も出てない」と小西被告にメッセージを送る。小西被告は「了解です」と返信。
また、2月28日に開かれた2回目の裁判員裁判では、犯行当時、被告らが撮影していた動画が裁判員に公開され、女子高校生が全裸で橋の欄干に座り「嫌だ」などと叫ぶ様子が明らかになりました。
また、女子高校生の母親の「生きて返してほしい」「犯人には極刑を望みます」などといった心境を検察が読み上げました。
次の裁判は3月3日で、内田被告の証人尋問が予定されています。

大阪万博閉幕後に起きる建物の処理という大問題…35年前の花博「いのちの塔」は閉鎖・放置で雨漏りがひどい

※本稿は、朝日新聞取材班『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
2024年10月31日。大阪メトロ中央線の「夢洲(ゆめしま)駅」が初めて報道陣に公開された。
内装を手がけた大阪港トランスポートシステム(大阪市の第三セクター)の鉄道事業部長・森川一弘は、誇らしげに話した。
「夢洲は万博やIRの予定地でもあり、世界各国から利用客が訪れる。わくわくして地上に出られるよう、設計した」
夢洲駅(地下2階建て)は隣の人工島・咲洲(さきしま)にある終点駅「コスモスクエア駅」から3.2キロを延伸して建てられた。大阪市が800億円超を負担するなど、総額で約1000億円に上る見込みのプロジェクトが実を結んだ。
2001年に着工したが、大阪への五輪誘致の失敗で工事が止まった時期もあり、完成まで四半世紀ほどかかった。
地下1階の改札階(幅17メートル、長さ190メートル)には16基の改札がずらりと並び、壁面の大型サイネージ(幅約55メートル、高さ約3メートル)が目を引く。災害時などに多くの人がとどまれるよう、柱はほとんどなくした。年齢や性別にかかわらず使える「オールジェンダートイレ」も設けた。
地下2階のホーム階(ホーム幅10メートル、長さ160メートル)の中央には門の形をした照明をいくつも設け、光のゲートを進むような演出を施した。天井はアルミニウムの素材を使って、運行ダイヤ図を「折り紙風」に表現している。
近未来を感じさせる夢洲駅は万博の会期中、フル稼働が見込まれる。来場者のピーク時には、1日あたり約13.3万人が使う想定となっている。
だが万博が終わった後は、利用者がぐんと減る可能性が高そうだ。IRの開業が30年秋ごろまでずれ込んだ結果、「空白の5年間」が生じるからだ。
万博とIRの二兎を追った計画が想定通りに進まなかった余波は、万博中のIR工事中断要請にとどまらず、夢洲駅の今後にも及んでいた。
府市大阪港湾局の担当者は、市議会常任委員会(24年3月)で説明した。
「(夢洲の)物流施設の従業員は約300人。その従業員に加え、1日に数千人規模のIR工事作業員の来訪が見込まれており、鉄道の利用も見込める」
一方、大阪メトロは「空白の5年間」の利用者数を算出していないという(24年11月時点)。広報担当者はこう話した。
「たしかに万博後の数年は利用者が少ない時期はあるだろう。ただ20年という長期で見れば、全体で黒字化できる」
IRを生かした「国際観光拠点」をめざす夢洲の開発は、どう進むのか。
府市はコンテナターミナルなどを除いた夢洲の中心部を「観光・産業エリア」としている。北から「1期」(70ヘクタール)、「2期」(50ヘクタール)、「3期」(40ヘクタール)に分けて、開発の計画をつくっている。IR予定地が「1期」のほとんどを占め、万博会場の中心部が「2期」にあたる。
府市が2期開発について23年に市場調査をすると、サーキット場、野外ライブ会場、ホテル、商業施設といった提案が計11事業者から寄せられた。その結果も踏まえて、2期開発の方向性を示す「マスタープラン」を万博の開幕前に公表する考えだ。
万博の跡地に関する議論で注目されるのが、大屋根リングだ。
万博協会がリングの利活用法を24年2月に募ると、自治体や大手ゼネコン、木材加工メーカーなど20者から提案があった。このうち有力とみた13者に聞き取りをして、建材として再利用が見込めるのは、全体の約2割(約6000立方メートル)と試算した。価格については、「ほぼ無料」との声が多かったという。
「リングは圧倒的な存在感ですから、おそらく来場される方は『これは残すべきだ』ってなると思う。いろいろ課題はあるけれど、一部を残してレガシー(遺産)にしていく方がいいんじゃないか」
府知事の吉村(洋文)は4月、出演したテレビ番組でそう語った。
リングを完全に残すなら、防火対策などで「300億円程度かかる」(関係者)という声も出ている。それは現実的ではないとして、リングの一部をモニュメントとして残す案も万博関係者らから聞かれる。
大阪市の担当者は「リングをすべて残すなら、関係機関とさらなる調整も必要になる。マスタープランで、リングの活用案をどこまで書き込めるか分からない」と話した。
市は万博が終わる頃、2期開発を担う事業者を募り始め、27年春には万博会場の跡地を引き渡したい考えだ。だが、ある幹部は不安も口にする。
「事業者が見つかるかどうかも、課題になるかもしれない」
会場中心部に約1500本の木を植える「静けさの森」についても、保存を望む声が上がった。来場者の憩いの場となり、弁当を食べても良いという。完成が近づくにつれて多くのトンボが飛ぶなど、生物たちも森に集い始めていた。
静けさの森をデザインした忽那(くつな)裕樹は24年10月11日、夢洲で報道陣に語った。
「万博協会との約束事としては、(閉幕後に)更地にして返すという話だったが、『そんなことやったら、いのち輝かへんやろ』と。個人的にはこの森をレガシーとして残して、緑が真ん中にある街の未来を描いていくべきだと思っている」
ただ、過去の万博のレガシーを残す試みは、成功したとは言いがたい。
1990年に国際花と緑の博覧会(花博)が開かれた鶴見緑地(大阪市鶴見区・守口市)では、展望台を備えた「いのちの塔」(高さ約90メートル)が、緑地運営の「お荷物」になってきた。いのちの塔は2010年、採算が取れずに閉鎖して、その後は放置されている。内部は雨漏りがひどく、エレベーターも故障で動かない。
20年度から公園の管理を請け負う大和リースなどによると、解体には約4億円かかるという。委託した大阪市も「耐震性に問題はないので……」と対応の先送りを続ける。
いのちの塔のそばには、松下電器産業(現パナソニック)の創業者・松下幸之助が花博後に市に寄贈した国際陳列館(花博記念ホール)も残っている。
だがホールの近年の稼働率は、3割に満たない。22年度は25.6%、23年度も29.8%で、ボクシングの試合や地元のカラオケ大会で使われたという。
古くなった空調の設備などは修理しないといけないが、30年以上前につくられた機材なので、部品が手に入らない。機材を交換するには壁やドアを壊す必要もあり、コストは約2億円に上るとされる。
数年前には、国際園芸博を27年に開く横浜市の担当者が視察に来て、花博のレガシー遺構の現状などを尋ねて帰ったという。応対した大和リースの社員は「花博後に残った施設には、将来の用途や老朽化対策への考慮が甘かったものもある」と話す。
24年7月に鶴見緑地を訪れた奈良県の男性は印象をこう述べた。
「いくつかの建物は廃墟のようだ。放置期間が長引けば、修理費もかさむ。イベント後の建物の処理は、来年の万博でも問題になるだろう」
大阪市によると、鶴見緑地には花博のレガシー遺構が八つある。産官学でつくる「懇話会」が、花博の開幕直後に保存を市に提言したという。
だが市は社会のニーズの変化などを踏まえ、いのちの塔や花博記念ホールなど6施設について、「利活用が困難な場合は撤去もやむをえない」とする報告書を19年にまとめている。
市はレガシー遺構を含めた鶴見緑地の管理委託料として、年6億円余りを大和リースなどに払っている。事実上、緑地の維持費だ。
大和リースなどは新たな店舗を誘致するなどの集客策で収支の黒字化を狙うが、22年度は約4600万円、23年度も、新設した施設に絡む汚染土の処理費用がかさんで約2億円の赤字に終わった。
(朝日新聞取材班)

自公維の「高校無償化」に慶応女子高の保護者が動揺? なぜだ?

【永田町番外地】#15
高校の授業料が公立・私立を問わず、来年4月の入学分から全国一律に無償化される。額にして年間45.7万円。低所得者層にとっては朗報であろう。だが、いま現在、子どもを私立に通わせている親や、私立受験をめざしている親の思いは複雑である。とりわけ、名門校と呼ばれ、ブランド力をウリにする女子校の保護者にとって私立無償化に不安、不満が渦巻く。
「保護者会でも話題になっていますが、失礼ながらいくら学力があっても、低所得層の家庭環境に育ったお子さまがクラスメートになる可能性があるわけですよね。親御さんも含めて教育環境や校風に馴染めるのかしら。親同士のお付き合いもありますしね」
とは、都内屈指の難易度とブランド力を誇る慶応女子高の保護者の声だ。
ちなみに慶応女子高の授業料は年間69万円、初年度の納付金は入学金、教育充実費など合計で124万3000円なり。これにプラスして難関校受験は塾通いが必須となるから、授業料の無償化くらいではあまり影響なし。
「確かに校風の乱れやブランド力の低下を懸念する保護者はいらっしゃいますね。ですが、そもそも難関校は学費以前に入りたくても入れない狭き門ですから、ご懸念無用かと」
ある大手進学塾のスタッフは私立無償化の影響をこう語るが、無償化で浮いた教育費が塾代に回ってくるせいか、余裕の表情だ。
■深刻なのは学習院、東洋英和、共立のお嬢さま校
「むしろ無償化による教育の質、ブランド力の低下、つまりは悪い意味の私立の公立化が懸念されるのは、男女を問わず、受験生のボリュームゾーンと重なる、偏差値でいえば50~60台前半の2番手、3番手校あたりでしょう。そこそこブランド力はあっても少子化で学生の獲得競争が熾烈ですから、学費は上げられず、入試レベルも落とさないと生き残れない」
その言を借りれば、さしずめ都内では学習院、東洋英和、共立、品川など、お嬢さま系女子校は“要注意”といったところか。
自公政権の2025年度予算案への賛成と引き換えに高校無償化を求めた日本維新の会。その目的を「すべての子どもが家庭の経済状況に左右されることなく、希望する教育を受けられること」だと胸を張る。しかし、しばらくは維新の“成果”なんかより、もっぱら「私学ブランドの低下」が大きな話題になりそうだ。 (特命記者X)

日本のほとんどのタワマンがいずれ中国人所有になる…相続税がなく膨張する中国人マネーが“占領”「日本人は一生賃貸」の地獄絵図

過去最高であったコロナ禍前の2019年を超えた昨年の訪日客数。年々、増加するインバウンドだが、それによりマンションをはじめとする不動産価格も上がり続けている。なぜ外国人のあいだで日本の不動産の関心が高まっているのか、またその問題点はいったい何なのか。
【画像】所有者には中国人投資家も、3割は居住実態が確認できない日本のマンション群
増える日本不動産の外国人所有、その意外な理由とは…
「そう遠くない将来、都心部のタワマンのほとんどは、中国人のものになるかもしれない」
こう語るのは、ある外国人富裕層に詳しい税理士だ。
2024年、東京23区で売り出された新築マンションの平均価格は1億1000万円オーバーだった。2年連続の1億円超えで、「今のところ、好立地では値段が下がる要素は全くない」(不動産関係者)という。
この需要を支えているのが、円安を背景とした旺盛な外国人の投資にあることも間違いない。例えば、東京・中央区にある晴海フラッグの3割は居住実態が確認できず、その多くが中国人投資家の所有と言われる。
中国事情に詳しいジャーナリストの北上行夫氏が言う。
「中国人の不動産所有の6割は在日中国人と言われますが、残りの4割は中国本土や香港の投資家です。彼らはもちろん投資目的もありますが、最大の目的は資産保全です。とにかく海外に安全な資産を置いておきたい。日本は距離的に近く、賃料の利回りも中国本土よりよく、うってつけなのです」
しかし、日本の不動産を外国人が次々と所有していく理由はほかにもある。それが、外国の相続税や贈与税の問題だ。
実は相続税やそれに類する贈与税がない国がある。代表的なところでは、中国やインド、マレーシア、シンガポールやオーストラリアだ。アメリカは相続税があるが、基礎控除が15億円以上と事実上、ないに等しい。
言うまでもなく、相続税のない国の富裕層は世代を超えても資産は減らず、むしろ複利効果で増えていく。
その結果、日本の不動産市場に内外無差別で海外富裕層を受け入れてしまうと、3代で資産がほぼ無くなるほど高い相続税により、資産売却を迫られる日本人では勝負にならず、いずれは資産性の高い不動産は、特に海外資産を持ちたい中国人や相続税のない国に住む華僑を中心勢力とした海外富裕層の手に渡ってしまうというわけだ。
「もっとも、外国籍でも日本居住者であれば相続税は発生しますし、非居住者であっても日本国内にある不動産に相続が発生した場合は、その不動産のみを課税対象として相続税納税の義務があります。
ただ、海外法人名義の所有であった場合は、相続税は事実上、課税できません。個人名義であっても、非居住者の外国人が高齢になった段階で売却すればいい。
当然ですが、海外投資家は亡くなったタイミングで日本の不動産を所有していなければ、日本に相続税の納税義務はありません。相続税納税のため、不動産売却を迫られる日本人とは圧倒的に条件が違うのです。
相続税がない国は贈与税もないので、そのような国に住む海外投資家は、親が高齢になった段階で日本のタワマンを売って、その売却額を譲り受けた子が別の日本のタワマンを買うことができます。
このケースの場合、購入したタワマンが贈与税の課税対象になる可能性がありますが、海外在住の外国人に子のタワマンの購入代金が親のタワマン売却代金を充てた贈与であることの因果関係を国税が立証するのは難しい」(前出の税理士)
しかも、問題は相続税だけではない。
インバウンドで景気回復どころではなく、資本流出の危機に
相続税・贈与税がない国では不動産売却で売却益が出た場合の譲渡所得税の回避スキームも存在するという。
この点も一度、相続税がない国の外国人の手に不動産が渡ったら日本側には戻ってこない理由と言えそうだ。
前出の北上氏が解説する。
「例えば、母国で贈与税がかからない在日中国人が不動産を売却しようとするとします。仮に1億円で買ったタワマンが3年で1億5000万円に値上がりした後に売ろうとした場合どうするか。税務署から贈与と判断されないぎりぎりの値段、例えば買った値段の1億円で資産を渡したい相手と売買契約を結びます。
そして差額の5000万円分を中国国内の人民元で“決済”すれば、本来日本で発生するはずの2000万円(5年以内の売却は約40%)の不動産譲渡所得税の納税義務が回避できるのです。
もちろんグレーですが、これは日本の税務当局は追えないでしょう。実際、在日中国人は売却益が出そうな場合に日本人に売ってしまうと納税義務が発生するので、中国国内にある程度の資産を持つ中国人の買い手を見つけて売ろうとするそうです。
日本人に売って税金を払うことを考えれば、中国人なら多少安く売っても、売り手、買い手ともにウィンウィンですから」
このように、今後、日本の好立地や投資用の不動産は中国人をはじめとした、外国人の手に渡ってしまい、日本人はそこに賃貸で住むことになるかもしれない。となれば、その家賃も海外に渡り、資本流出となってしまう。これではインバウンドで景気回復どころではない。
元財務官僚で元国会議員の桜内文城氏が言う。
「そもそも、非居住者の外国人に日本の不動産が日本人と同価格で買われている時点で、政治の怠慢だと思います。
例えばシンガポールでは、永住権のない外国人が住宅を購入する際の加算印紙税(ABSD)税率30%から60%への引き上げを23年に実施しています。課税逃れを防ぐため、法人や信託を利用する場合の税率も35%から65%にしています。
また、外国人の不動産取得に国際法上の相互主義を適用することも重要でしょう。中国のように、外国人による土地や建物の入手が禁止されている国の人に、日本の土地や建物を自由に購入することを認めるべきではありません。
すでに購入されてしまった不動産は、現金ではなく、国が交付国債で買い上げることで、適切に徴税していくという考えもあります。
日本では不動産取得にあたって外国人に追加で税金をかけることはありませんが、国益に直結する土地や不動産の管理は徹底するべきです。
また、居住目的のタワマンには法人登記を許さないというルールを開発認可時に設けてもよいでしょう。いずれにせよ、日本国民が不利益を被るような現状が放置されるべきではありません」
政府が「インバウンド政策」を推し進める、怪しい関係
政府が無策のせいで、すでに日本人は自国にもかかわらず立地のいい不動産を買えなくなっている。拍車をかけているのは、もちろんインバウンド政策だ。
不動産関係者が言う。
「都心部でのマンション価格高騰の背景には、候補用地の高騰も大きな要因のうちの一つです。マンションに適したそれなりの広さの駅前好立地は、ホテル用地の需要と大きくかぶります。
もちろんホテルにしたほうが収益率が高いので、マンション事業者は買い負けて供給が減少し、結果、価格が高騰してしまいます。
また、都市部の賃貸マンションも、外国人が一棟買い上げて民泊にしようとするため、賃料を大幅に引き上げて住民を追い出すような事例も報じられています。国民の住宅環境がインバウンド政策に脅かされているとも言えます」
この一番の問題としては、前出の桜内氏が指摘するように政治や行政がこうしたインバウンド政策の負の面を問題視するどころか、むしろお構いなしに推進しているところだろう。
この背景の一つに挙げられるのが、政治・行政と業界との強い結びつきだ。
旅行業界で言えば、「GoToトラベルキャンペーン」事業を含む補正予算が閣議決定された2020年には、観光関連14団体から自民党元幹事長だった二階俊博氏はじめ、自民党議員37名に約4200万円献金されたことが「週刊文春」で報じられている。
安倍政権時代からインバウンド政策を主導した菅義偉氏も、首相時代、二階氏を幹事長に起用するなど近しい。
その二階氏が会長を務める「全国旅行業協会」の専務理事は国交省OBで、同会規定によると、月額報酬は92万円で期末特別手当も付く。もう一つの大手業界団体である「日本旅行業協会」理事長も国交省OBで、こちらの月額報酬は115万円。同様に期末手当もある。
これらの団体の運営は加盟する旅行会社からの多額の会費収入で賄われており、業界が国交省OBや政治家を通じて政策に影響を与えられると言われても仕方のない構図だ。
日本人がどんどん貧しい思いをしても、政治は企業の味方なのか。そんな日本の政治の姿勢が利用され、日本の不動産はどんどん外国人のものになっていくことになる。
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取材・文/九戸山昌信

栃木・壬生町でコンビニ強盗 はさみ突きつけたばこ2箱奪った男(46)逮捕 店員にけがなし

きのう深夜、栃木県壬生町のコンビニで店員にはさみを突きつけ、たばこ2箱を奪ったとして男が逮捕されました。
きのう午後11時50分ごろ、栃木県壬生町のコンビニエンスストアで、買い物客を装ってきた男がいきなり、カウンター越しにはさみを突きつけて「金を出せ」などと脅し、たばこ2箱を奪って車で逃げました。
駆けつけた警察官がおよそ3時間半後、近くにいた住所不定・無職の関谷拓郎容疑者(46)を見つけ、強盗の疑いで緊急逮捕しました。
関谷容疑者は「全く身に覚えがない」と容疑を否認しています。

20代女性「男に襲われた」 不同意わいせつの疑いで男の行方を追う 札幌市

2025年3月2日、札幌市で、女性が背後から近付いてきた男に襲われる不同意わいせつ事件が発生しました。警察が男の行方を追っています。
警察によりますと、男は3月2日午前1時40分ごろ、札幌市中央区南10条西23丁目の歩道で、帰宅途中だった20代の女性の背後から近付き、上半身を手で触った不同意わいせつの疑いがもたれています。女性が「男に襲われた」と通報しました。
男は40代から50代ほどで、身長170センチぐらい、黒のコートを着て黒のズボンをはいていたということです。
男は現場から徒歩で立ち去っていて、警察が行方を追っています。

早春恒例の山焼き、濃霧で燃え広がらず取りやめ…「早起きして見に来たのに」1200人ガックリ

国内最大級のカルスト台地・秋吉台(山口県美祢市)で1日、早春恒例の山焼きが行われた。しかし濃霧で火が燃え広がらず、点火から約1時間半で取りやめとなった。見学に訪れた約1200人(主催者発表)は肩を落とした。改めて実施するかどうかは未定という。
新芽の成長を促し、景観を守るために、美祢市や住民らでつくる協議会が年に一度、約1140ヘクタールを一斉に焼いている。
秋吉台はこの日、早朝から霧が立ちこめ、一帯が真っ白に。人々が不安そうに見守る中、午前9時半、地元住民らが枯れ草に点火。しかし火はいっこうに燃え広がらなかった。
初めての山焼き見学を楽しみにしていたという宇部市の女性(26)は「早起きして来たのに残念。来年こそは見たい」と話した。
今年は当初、2月16日の予定だったが、雨や強風により延期が続いていた。協議会の担当者は「ここまで燃えないのは珍しい。遠くから来る人も多いのに、申し訳ない思いだ」と話した。

陰部をハンマーて殴り、食器用洗剤を飲ませ、肛門に鉄の棒を…“踏切自殺”事件の容疑者3人が”異例の4回目逮捕”となった理由

異例の4回目の逮捕だ。
東京都内の踏切で2023年末に、自殺に見せかけて当時56歳の男性が殺害された疑いのある事件。警視庁捜査一課は2月19日、男性をハンマーで殴るなどしたとして傷害などの疑いで、元同僚の塗装工事会社代表取締役の佐々木学容疑者(39)、社員の島畑明仁容疑者(34)と岩出篤哉容疑者(30)の3人を再逮捕した。
「3人の再逮捕容疑は23年7~9月、出張先の静岡県富士宮市の駐車場に止めた車の中で、亡くなった髙野修さんの陰部や顔をハンマーで殴ったなど凄惨なものです」(警視庁担当記者)
佐々木が経営する会社の社員だった髙野さん。佐々木と島畑は、20年8月、髙野さんの自宅で髙野さんの後ろから熱湯をかけて火傷を負わせた嫌疑もかけられている。
陰部をハンマーで殴り、食器用洗剤を飲ませ、肛門に鉄の棒を…
「髙野さんは病院を受診した際に『シャワーで間違って熱湯がかかった』などと説明しており、これも佐々木らの圧力でそう説明させられたと捜査一課はみています」(同前)
昨年12月から始まった佐々木らの連続逮捕。逮捕容疑を時系列に並べただけでも、その凄惨ないじめが浮かんでくる。
髙野さんが佐々木のもとで働き始めたのは15年。まず20年8月に、前述の熱湯事件が起きる。22年7月、ホテルでプロレス技をかけられ、23年6~9月には陰部をハンマーで殴られたり、食器用洗剤を飲まされたほか、複数回にわたって自宅などで肛門に鉄の棒などを突っ込まれる。また、頭からベッドに落とすプロレス技をかけられた。
「『やめて』と懇願する髙野さんを尻目に笑う佐々木らの動画も残っていました」(同前)
「殺人にだけ関与しないのはおかしい」
そして同年末、髙野さんは車に監禁された後、踏切で電車にはねられて亡くなる。その様子を近くで見ていたとされる島畑と同社社員の野﨑俊太被告(39)は殺人で起訴されたが、佐々木と岩出は殺人については処分保留となっている。
捜査関係者が打ち明ける。
「殺人容疑で逮捕したときは全員を殺人で起訴するのは難しいという見通しもあったが、島畑らは殺人でも起訴された。ほとんどのいじめに関与しながら『殺人にだけ関与しないのはおかしい』という論理で佐々木と岩出も殺人で起訴できると踏んでいる」
今回の逮捕で注目されるのは、熱湯事件だけ発生時期が他と離れていることだ。事件には佐々木のほかに殺人で起訴された島畑も関わっている。
「熱湯事件は次の逮捕に回すこともできたはず。あえて逮捕容疑に加えたということは、これが最後の大勝負で、あとは検察の判断待ちということだろう」と警察OBは読む。
事件はいよいよ大詰めだ。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年3月6日号)