姫路城の入城料、3月から2500円 2.5倍に 市民は据え置き

世界遺産で国宝の姫路城(兵庫県姫路市本町)で入城料が3月1日、大幅に改定される。これまで18歳以上は一律1000円だったが、市外の人は2・5倍の2500円に値上げする。一方で市民(市内在住者)は据え置き、初めて「二重価格」を採用。18歳未満は一律無料とする。
入城料の値上げは「平成の大修理」を終えた2015年、修理前の600円から現行の1000円にして以来で11年ぶり。市民向け価格の適用を受けるにはデジタルチケット購入時にマイナンバーカードで本人認証するか、入城時に窓口でマイナンバーカードや運転免許証など公的な証明書を提示する必要がある。
値上げに併せ、予約制デジタルチケットを本格運用▽年間パス(5000円)を導入▽子供向けパンフレットを制作▽天守に入る際に脱いだ靴を入れる肩掛け式の袋を配布――など利便性を上げる対策を実施する。
市は値上げの理由として、約400年前の木造建築の維持管理費や石垣の耐震工事など安全対策費の高騰を挙げる。市によると、15年度からの10年間の維持・保存の費用は約145億円。25年度からの10年間は約280億円に膨らむという。値上げによって年間入城者数は約2割減少すると想定するが、収入は24年度比で10億円程度の増収を見込む。
市民向け価格導入について清元秀泰市長は記者会見で「城郭や周囲の景観は市民の協力があって守られている」と説明。18歳未満無料(現行は小学生~高校生300円)については「姫路城は教育施設でもあることを世界に発信したい」と狙いを語った。【村元展也】

高市首相カタログギフトばらまき弁明「昭和の中小企業のオヤジ」もデマカセだった

今年は昭和100年。昭和の日には政府主催の「昭和100年記念式典」が執り行われる。平成後期あたりから「昭和レトロ」がはやり、あの時代は遠くなる中、いや~な絡み方をしているのが高市首相だ。真冬の総選挙で当選した自民党の全議員315人に3万円相当のカタログギフトをバラまいた問題をめぐり、27日の衆院予算委員会で言うに事欠いて「昭和の中小企業のオヤジみたいなところが私にある」と弁明したのだ。
ギフト問題を質問したのは、中道改革連合の小川淳也代表。「政調会長同士だった時に奈良の醤油の小瓶をいただいた。讃岐うどんをお返ししている。ある種の社交なんですよね」と前置きし、「今回の3万円300人、合計1000万円は国民の金銭感覚とはかけ離れている。これは認めて下さい」と追及した。答弁に立った高市首相は違法性を重ねて否定し、「恥ずかしいですが、昭和の中小企業のオヤジ、社長みたいなところが私にはあるのでしょう」と釈明。こう続けた。
「たくさんの国会議員、さまざまなグループの方から小分けにしてでも宴会というんですか、夕食会というんですか。お声がけをいただきました。総裁としてねぎらって欲しい、というような連絡もたくさんいただきました。でも、私はみなさまがご承知の通り、メシ会苦手な女です。ご飯会の方がお金がかかる。私のセキュリティーが確保できる場所で、個室レストランで、何十回にも分けてやるっていったら。セコい話になりますけれども」
会食嫌いだし、身辺警護はおろそかにできない。「でも気持ちはお示ししたい」から「情けない話でございますが、結婚式のご祝儀を参考にしました」とニヤついたのだ。
昭和と言えばバブル景気。華金ともなれば踊るか、飲み会に繰り出すか。「宴会部長」が出世し、福沢諭吉をぴらぴらさせてもタクシーを拾えなかった。中小企業のひきこもり社長じゃ仕事にならなかった時代の上、「いくら好景気でも、従業員に金品をバラまく社長なんてそう聞いたことがない」(経営コンサルタント)という。
「贈答が盛んだったのは、せいぜい2代前まで。景気が悪化した先代からはお中元やお歳暮も絞るようになった。そもそも、取引先にしか贈ってません」(同族経営のメーカー若社長)
総裁は議員の公認権を一手に握るものの、首相は行政府の長で議員は立法府のメンバーだ。高市首相にとって議員は客筋なのか。昭和の便利使いは失敬だろう。
◇ ◇ ◇
熨斗紙には「御祝 高市早苗」と個人名が書かれていた。問題は、高市首相が言い訳に用いた「政党支部」についての認識だが…。関連記事【もっと読む】で詳しく報じている。

「目張りされた軽乗用車から突如燃え始め、車内から遺体が…」武田忠さん(当時60)殺害事件を迷宮入りさせた“大胆な犯行”と“緻密な計画性”【未解決事件のいま】

昨年10月31日、26年前に名古屋市西区のアパートで住人の主婦、高羽奈美子さん(当時32)が殺害され、未解決となっていた事件が急展開を迎えた。被害者の夫の学生時代の同級生だった女が逮捕され、大きな話題となった。【前後編の後編。前編から読む】
「日々、多くの事件が発生する中で警察は人知れず過去の未解決事件も捜査を進めています。東日本大震災が発生した翌年の2012年、宮城県警の管轄下では殺人事件が相次ぎ、うち3件が未解決となっています」(大手紙社会部記者)
その1つが前編で報じた2012年3月30日に発生した岩沼市の長田クニ子さん(当時65)刺殺事件だ。当時の新聞報道などによると、首などを切り付けられた長田さんが、自宅玄関で倒れているところが見つかった。玄関の外には血痕のついたスニーカーの足跡が見つかっているが、途中で途絶えていることから犯人は車で去ったと見られている。
「一見、証拠があるようにも思えますが、長田さんは携帯電話が未契約だったり、交友関係が少なかったりしたことから、県警は生活実態を把握することに難航しました。周囲に防犯カメラも少なく、犯人につながる手がかりが非常に少なかった。
この事件の翌月に発生した武田忠さん(当時60)が殺害された事件も、同様に手がかりが少ない難事件です」(同前)
2012年4月24日午後2時15分ごろ、仙台市泉区の病院の駐車場で軽乗用車が突如、燃え始めた。その車中から武田さんの遺体が発見されたのだ。
「武田さんは、出火した軽自動車の後部座席に倒れた状態で発見されており、運転席窓ガラスを除いて、新聞紙により目張りされた状態でした」(宮城県警)
武田さんの遺体を司法解剖したところ煙を吸っていなかったことから、すでに殺害されており、車内に遺棄されたとみられる。そして、何者かが軽乗用車に火をつけた。
「頸部損傷の疑いがあり、複数回にわたる鈍体(鋭い刃などがついていない物体)の打撲もしくは圧迫によるものと推定されます。しかし素手なのか凶器を使用したのかなどの特定には至っておりません」(同前)
病院には通院などで多くの人が出入りしていた。目撃者がいそうなものだが、決定的な証言はなかったようだ。そして犯行は計画的だった。当時の新聞報道によると、指紋や駐車場への入庫記録を隠すためか、駐車券は残されていなかったという。
「車を覆っていた新聞はスポーツ紙で、事件前日に武田さんが買ったものだったようです。23日昼すぎ、内縁の妻とコンビニの駐車場で弁当などを食べ、この後、武田さんは行方不明になった。帰宅予定の夕方にも帰宅しなかったことや遺体の状況から、この間にすでに事件に巻き込まれたと見られます。

役場の駐車場で車をバック中に女性をはね逃げた疑い 57歳の女を逮捕 愛知・東浦町役場

きのう午後、愛知県の東浦町役場の駐車場で70代の女性を車ではね、そのまま逃げたとして、57歳の女が逮捕されました。
逮捕されたのは、東浦町の無職・鈴木弘恵容疑者(57)です。警察によりますと、鈴木容疑者はきのう午後3時半前、東浦町役場の駐車場で乗用車をバックさせた際に、歩いていた75歳の女性をはねたにもかかわらず、そのまま逃げた疑いがもたれています。女性は右肩の骨を折るけがをしました。
警察の調べに対し、鈴木容疑者は「人にぶつかれば気がつくと思いますが、私の車がぶつかっているのであれば私がやったのかなと思います」と容疑を一部否認しています。警察が当時の状況などを詳しく調べています。

内縁の夫をワインボトルや金づちで殴って殺害か、48歳女「働かずモラハラひどかった」

茨城県潮来市のアパートで同居男性を殺害したとして殺人容疑で逮捕された48歳の女が「夫が働かず、モラハラがひどかった」という趣旨の供述をしていることが24日、捜査関係者への取材で分かった。県警は夫への不満が動機になった可能性があるとみて調べている。
県警によると、女は16日午前1時頃、アパート自室で内縁の夫(52)の頭をワインボトルや金づちで殴り、首をひもで絞めるなどして殺害したとされる。容疑を認めているという。

れいわ・奥田共同代表「子どもたちを絶対に戦争に行かせない」に賛否両論 高市首相「平和のため防衛力の強化」と強調

れいわ新選組の奥田芙美代共同代表の参院本会議での発言をめぐり「代弁してくれてありがとう」という声や「ヤバさが際立つ」という声が上がり賛否両論となっている。
奥田氏は、2025年12月開催の予算委員会で「子どもたちを絶対に戦争に行かせない、そして絶対に戦争に巻き込ませない、今ここで約束してください」と高市早苗首相に訴えた際、「子どもの命を守るために戦う」と言われたと回顧。
26日の本会議で、そのことを引き合いに出し、改めて「戦う?誰と?誰が?……総理には、子どもや平和を守り抜くとおっしゃっていただきたかった。子どもを守るのは、人を殺す武器ではありません」と訴えた。
高市首相は「国民のみなさまのリスクを下げるため、自衛隊員が自らリスクを負います。あらゆる手段でこれらのリスクの低減を図っていくのが政治の責任であり、それこそが私の戦いです」と答えた。
さらに、「これまで進めてきた防衛力の抜本的強化は、わが国の抑止力を高め、相手に攻撃を思いとどまらせ、事態発生そのものの可能性を低下させることにつながる。大切な子どもさん、国民のみなさまの命と平和な暮らしを守り抜くため、防衛力の抜本的強化をこれまで以上のスピード感で進めてまいります」と強調。
終了後、関口昌一議長は「奥田君の発言につきましては、速記録を調査の上、発言中に不穏当な言辞がありますれば適切に措置いたしたい」と述べた。どの発言が不穏当かは言明していない。
奥田氏は昨年7月の参議院議員選挙で初当選した。9月の予算委員会でも、年金の安さについて鋭い弁舌で訴えたことで注目を浴びた。その際も、議題とは異なる質疑・演説となったため、行動や発言に疑問を持つ人も多くいる。
17日には自身のX(旧Twitter)で、れいわ新選組の共同代表になったと明かした。その際に「代表から打診があった際、一瞬で全身火あぶりにされたような心境でした」と心境を吐露。
本議会についても「自民党議員の中にも、奥田ふみよと同じような思いを持ちながら、静かに奥田の声に耳を傾けていた、熱いその眼を私は観た」とポストしている。
リプ欄では「とても良かったです」「戦争を止める正念場が今」「国民の声を代弁してくれてありがとう」などの称賛の声が寄せられた。一方で「不穏当な発言で注意されてたけどな」「れいわのヤバさが際立った」「日本のお母さん代表とかいうのやめて」といった声も上がっている。
文/並河悟志 内外タイムス編集部

「白タク」営業に関与疑いで大阪・貝塚市の運送会社元代表ら逮捕 自家用車に「緑ナンバー」つけて正規の業者装ったか 大阪府警

無許可のタクシー営業、いわゆる「白タク」行為に関与したとして、大阪府貝塚市にある運送業者の元代表の男らが逮捕されていたことがわかりました。男らは雇用関係のないドライバーの自家用車を会社の車と偽って登録し、緑色の事業用ナンバープレートをつけて「白タク」営業をさせることで、正規の運送業者を装っていたということです。
道路運送法違反などの疑いで逮捕されたのは、大阪府貝塚市にある運送会社「宝来」の元代表で、中国籍の劉宣余容疑者(37)ら複数人です。
警察によりますと、劉容疑者らは2025年6月から2026年1月までの間、雇用関係のないドライバーの自家用車を会社の車と偽って登録し、緑色の事業用ナンバープレートをつけて「白タク」営業をさせていた疑いがもたれています。
白タク営業をするドライバーらは主に中国人客を関西空港から観光地まで乗せるなどしていたということです。
劉容疑者らは緑ナンバーを自家用車につけさせることで、白タク営業が発覚しないように装っていて、約100台のドライバーから車両の名義貸し料として1台あたり月10万円ほど、総額にして3500万円以上を受けとっていたとみられています。
劉容疑者は警察の調べに対し、白タク行為への関与は認める一方で、他の容疑者との共謀は否認しているということです。
検察は27日、劉容疑者を略式起訴したと明らかにしました。

ひき逃げか 意識不明の2歳女児死亡 北海道旭川市

27日、北海道旭川市で2歳の女の子が意識のない状態で倒れているのが見つかり、その後搬送先の病院で死亡が確認されました。警察は、ひき逃げの可能性もあるとみて調べています。
女の子が倒れていたのは、旭川市神楽6条9丁目にある駐車場付近です。27日午後6時前、女の子の母親から「娘が車にはねられたかもしれない」と消防に通報がありました。
警察によりますと、女の子は頭部に損傷があり、意識のない状態で病院に搬送され、その後、死亡が確認されたということです。
警察は、女の子をひいたとみられる車が現場付近にないことから、ひき逃げの可能性もあるとみて調べています。

最高裁が認めた異例の「死後再審」 約40年ぶりの公判どうなる?

滋賀県日野町で1984年、酒店経営の女性が殺害された「日野町事件」で、最高裁第2小法廷(岡村和美裁判長)が2月24日付で再審開始を認める決定を出した。強盗殺人罪で無期懲役が確定した阪原弘(ひろむ)さんは服役中の2011年に病死している。いわゆる「死後再審」はどのように進むのか。
通常の刑事裁判では、公判前や公判中に被告が死亡した場合、裁判所が「公訴棄却」を決定するが、刑事訴訟法は再審公判については裁判を打ち切らないと規定。弁護人がいれば、再審公判を開くことができる。
無期懲役の殺人事件の死後再審は今回が初めてとなるが、約40年前に有期の懲役刑で死後再審が開かれた前例がある。1953年に徳島市のラジオ店経営者が自宅で刺殺された「徳島ラジオ商事件」だ。
無罪を主張しながらも58年に殺人罪で懲役13年が確定した元被告の女性は、再審請求中の79年に死亡した。女性の犯人性を補強する証言をした関係者が証言を翻したことで、80年に徳島地裁が再審開始を決定。83年に同地裁で被告不在の再審公判が始まった。
やり直しの初公判では人定質問が省略され、検察官による起訴状朗読後に弁護側が無罪を主張した。検察側は「関係者の証言には信用性がある」として有罪立証を維持し、女性に懲役13年を求刑したが、地裁は判決で信用性を否定し再審無罪を導いた。検察側は控訴せず85年に無罪が確定した。
近年では、23年に開かれた袴田巌さん(89)の再審公判で、心神喪失の状態の袴田さんに代わり、再審請求をした姉の秀子さん(93)が無実を訴え、「無罪」の判決主文も被告席に座って聞いた。
阪原さんの再審公判は、無期懲役を言い渡した確定審の大津地裁で開かれる。弁護側は、23年2月の大阪高裁決定が「無罪を言い渡すべきことが明らかな証拠」とした複数の新証拠を提出するとみられる。
検察側が再審請求審同様に有罪立証を図るのかが焦点となり、有罪立証を維持すれば、再審公判も判決までに一定の時間を要する可能性が高い。ただし、過去に殺人事件の再審で有罪が維持されたことはなく、今回も無罪となる公算が大きい。
山崎学・元東京高裁部総括判事は「客観的な証拠を丁寧に検討し、捜査段階の『自白』に疑問を投げ掛けた大阪高裁決定は筋が通っている。支持した最高裁決定は妥当だ。生きている間の名誉回復が望ましく、死刑・無期懲役の重大事件や被告が高齢の場合は、再審請求から決定までの期間を区切るといった制度の導入も検討すべきではないか」と指摘する。【三上健太郎、安達恒太郎】

負担費増をひた隠す政府と「2年毎の上限額検証・見直し」という卑劣な手法を繰り返す厚労省…2026年度高額療養費制度見直し案をめぐる今後の動きと問題点とは?

〈【高額療養費制度見直し案】各政党の主張を検証する…参政党はマニフェストに一切の記載なし 中道、共産、チームみらいは負担増に危機感〉から続く
先日の衆議院選挙は自民党の圧勝という結果で終わった。2026年度見直し案が、いよいよ国会論戦の場に持ち出されることになる。与党が圧倒的多数を占める中、厚労省は制度利用者の負担増という重要な側面を説明せずに済ませようとしている。果たして政府や厚生労働省のロジック・進め方に問題はないのだろうか? そして「粛々と」見直し案が通されようとしている今、国民は何ができるのだろうか? 事態が大きく動こうとしている今、誰もが利用する可能性のある制度をきちんと考える。
【画像】制度の改悪を防ぐための全国保険医団体連合会によるオンライン署名も始まっている
制度利用者にもたらす負担増の側面を説明しない厚労省
2月8日に投開票が行われた衆議院選挙は自民党の圧勝で終わり、いよいよ国会の論戦がスタートする。
今後のスケジュールは2月18日に特別国会を召集し、首相指名と組閣、施政方針演説などを終えて24~26日に衆参両院の代表質問が行われる予定だ。政府と与党はゴールデンウィーク前に予算を成立させたい考えのようだが、その一方で、高市首相はあくまでも年度内の成立を目指すという報道もある。
いずれにせよ、高額療養費制度の見直し案はすでに閣議決定された2026年度予算案に組み込まれているため、まず衆議院の予算委員会に諮られた後に本会議で採決され、その後に参議院へ回される。
したがって、昨年末に明らかになった今回の自己負担上限額引き上げ幅などの見直しがはたして妥当なのかどうか、という問題は、まず衆議院予算委員会で議論されることになる。
昨年の国会では、衆議院予算委員会で高額療養費の大幅な自己負担上限額が野党議員からの質問で何度も取り上げられ、その様子は反対世論の盛り上がりとともに新聞やテレビでも再三報道された。
この当初見直し案は、2回の修正が施されて自民・公明・維新の賛成でいったん参議院へ回った。だが、参議院でも批判は止まず、結局、見直し案を一時凍結するという2025年3月7日の首相決断を経て3回目の法案修正が行われ、3月31日にぎりぎり年度内の予算案通過を果たした。
このときの通常国会では衆議院全465議席のうち与党(自民・公明)は220、と過半数に満たない状態だった。しかし、先日の衆議院選挙の結果、与党(自民・維新)は365と大幅に議席数を増やしている。
昨年の国会で首相や厚労相へ高額療養費の見直しに関する質問を投げかけた野党議員の中には、先日の選挙で落選して議席をうしなった人も複数いる。一方、議員数で圧倒する与党側は「国民のために一刻も早く予算案を通過させなければならない」という大義名分を掲げて、波風を立てず議論もそこそこに予算案通過を狙ってくるであろうことは明白だ。
与野党の議員数差を考えれば、昨年のように国会の場で高額療養費が熟議される見通しは厳しい、といわざるをえない。
数で劣る野党側が今回の見直し案に関するどのような質問をしたとしても、おそらく高市首相や上野厚労相は柳に風と受け流して、定型句のような回答に終始する姿が、今から目に見えるようだ。
その定型句の内容はおそらく、2月10日に上野厚労相が閣議後記者会見で述べた言葉のようになるのではないかと思われる。このときの記者会見で、高額療養費の自己負担上限額引き上げをとりやめる意志の有無について記者から訊ねられた際に、上野厚労相は以下のように答えている。
「見直しに当たっては、患者団体の方にも参画いただいた専門委員会において、丁寧な議論を行ってまいりました。多数回該当の金額維持や、年間上限の仕組み、これは患者団体の方からも特に強い要望があったものですが、これを新設することにしています。また、年収200万円未満の課税世帯の多数回該当の金額を引き下げるなど、特に治療にかかる経済的負担が厳しいと考えられる長期療養者や所得の低い方に対するセーフティネット機能については強化しているところですので、引き続き、このような制度見直しの趣旨を丁寧に説明していくことが必要だと考えています」 (全文は厚労省サイト「厚生労働大臣記者会見概要」(2月10日)を参照)
だが、この言葉からは、今回の見直し案が制度利用者にもたらす負担増の側面がすっぽりと抜け落ちている。圧倒的多数の制度利用者が負担増になることや、疾患や大ケガによって収入が減少した状態で制度を利用すると破滅的医療支出に陥る可能性が高いこと、そして、低所得者層の金額引き下げはあくまでも多数回該当のみで、低所得層の自己負担上限額は悪名高い2024年凍結案よりも高い引き上げ幅になっていること等々。
これらの問題について、もちろん政権側は自分たちから言及しようとしない。おそらく、これから始まる国会論戦でも、高市首相や上野厚労相は上記の引用文のような回答を繰り返せば野党の追及をかわし切れると考えているだろう。「丁寧に説明する」という彼らの常套句は、「意見や反論に聞く耳を持たない」ということの言い換えに過ぎないのだから。
厚労省が再び行おうとしている、卑劣な「後出しじゃんけん」
今回の〈見直し〉案関連では、さらにひとつ、あらたな問題が明らかになった。衆院選のさなかに共同通信が配信した「2年ごとの上限額検証/見直しを盛り込んだ法案を厚労省が進めている」というニュースだ。これがSNSを中心に一気に広がり、大きな不安と反発を招いた。
このニュースによると、政府が検討中の医療保険制度改革関連法案では「患者負担額を少なくとも2年ごとに検証する規定を創設する」とされている。
制度を2年ごとに見直すという規定は、厚労省の社会保障審議会医療保険部会や、一時凍結後に患者団体代表を加えて設置された高額療養費制度の在り方に関する専門委員会でも、まったく議論の俎上に載ったことがない。専門委員会に参加していた委員たちには寝耳に水の情報だっただろうし、それは専門委員会と医療保険部会をずっと傍聴してきた筆者にとっても同様だった。
あれだけ大きな批判を受けて昨年3月に一時凍結に至った末に、仕切り直しで慎重な議論を行う場として設けられた専門委員会で、「2年ごとの検証/見直し」という案はひとことも話題になっていなかった。
「2年ごとの検証/見直し」その規定が、誰にも知られないまま法案に盛り込まれているのであれば、厚労省はまたしても卑怯な後出しじゃんけんをしている、というそしりを免れないだろう。
またしても、と述べたのは、このような後出しじゃんけん的手法を彼らは過去にも行っているからだ。
そもそもの発端となった2024年当初案(2025年3月に一時凍結)の議論を進める過程では、厚労省は上限額の引き上げの金額をあらかじめ審議委員に提示していなかった。
「+5%、+7.5%、+10%、+12.5%、+15%」といった割合の概要やざっくりとしたイメージ図を示すのみで、これらの説明を厚労省から受けた国会議員たちも、後に金額が明らかになった際には、説明に反して75%を超える引き上げ幅だったことを知って一様に驚いたという。
このやりかたに対しては、同省OBも「盗塁的手法」と手厳しい批判をしているという。
だが、今回の見直し案でも事態の進展は同様だった。
引き上げの可否や是非を議論する際に、厚労省担当者は常に「仮に引き上げるとした場合に……」と言うのみで、引き上げ率や金額例などの提示を事前には一切行っていない。
具体的な金額は、2026年度予算案が閣議決定された翌日(12月25日)に、医療保険部会と専門委員会を合同開催して、そこでようやく明らかになった。
この段取りは、「盗塁的手法」と批判された前年の進め方とまったく同じである。ここからわかるのは、厚労省は自己負担上限額の引き上げ幅や金額の妥当性は議論にはかることではなく自分たちが決定権を持つ専権事項である、と考えているのだろうということだ。
このような経緯があるだけに、専門委員会や医療保険部会の議論をなし崩しにしかねない「2年ごとの検証/見直し」という法案の規定も、議論に諮らずとも自分たちが裁量権を持つ、と厚労省が考えていたとしても不思議ではない。
この、2年ごとの検証を法案に盛り込む件について、2月13日の閣議後記者会見で上野厚労相は記者からの質問に以下のように回答している。
「報道については承知していますが、次の国会への提出を目指している医療保険制度改革関連法案の中身については、現在検討中の段階ですので、その内容は決まっていません。引き続き、政府内で検討を深めていきたいと考えます」
さらに記者から「検討」の中身について訊ねられると、このように述べている。
「(質問の)ご趣旨は、2年後に引き上げるのかということかと思いますが、現段階ではそれは検討していません」 (全文は「厚生労働大臣記者会見概要」(2月13日)参照)
この質疑だけを読むと、「そうか、引き上げは検討していないのか」と安心してしまうかもしれない。だが、その前に上野厚労相は「現段階では」と述べていることに留意をされたい。
しかも、その前段の質疑では「現在検討中の段階」「引き続き、政府内で検討を深めていきたい」とも述べている。つまり、2年後の自己負担上限額引き上げをあくまでも現段階では検討していないだけで、後出しじゃんけん的な「2年ごとの検証/見直し」を法案に盛り込むことについては「現在検討中」と述べるだけでまったく否定をしていない、とも理解できる。
実際に、この記者会見後の同日夕刻に毎日新聞が公開したポッドキャストでは、この2年ごとの検証を法案に盛り込む案が厚労省内で検討されていることが事実であるという前提で、その背景について、
・診療報酬や薬価のように、高額療養費制度の自己負担上限額もその時々の状況に応じて2年ごとに見直す仕組みを制度化したい ・制度化することによって、見直し案を提出するたびに世間から批判されることを避けたい という狙いがあるようだ、と厚労省担当記者が取材に基づいた推測を述べている。(毎日新聞ポッドキャスト19分30秒~)
このような厚労省側の意図が担当記者によって明らかにされている以上、先の共同通信情報は非常に真実性が高いと考えるのが妥当だろう。
さらにひとつ傍証としてあげておきたいのが、日本維新の会の衆議院選挙での公約だ。彼らの公約(維新八策2026)には「121. 高額療養費制度は国民皆保険制度の中核であり、制度見直しにおいては患者団体をはじめとする当事者の参画の機会を確保したうえで、制度設計に反映させる仕組みの構築を目指します」という文言があった。
患者団体の議論参画は専門委員会ですでに実現されているため、「何を主張しようとしているのかいまひとつよくわからない」とコメントを入れたが、この公約が言う「制度見直し」が「自己負担上限額を2年ごとに検証/見直しを行う制度化」を指しているのであれば、厚労省が検討を進めているという法案と維新の公約内容は、ピタリと平仄があう。
その後、2月17日の日経新聞や18日の毎日新聞では、厚労省が健康保険法に「長期療養者の家計への影響を考慮すると明確化」して「後期高齢者の金融所得を社会保険料に反映する仕組み」などを盛り込んだ改正案を自民党に諮って国会へ提出する方針だ、とするニュースが報道された。
ここで明記されている健康保険法改正案が、果たして共同通信が先日に報じた「医療保険制度改革関連法案」のことなのか、そして、この改正案は共同通信の第一報後に世論の大きな反発を見て急遽方向転換した結果なのかどうか、ということは、本稿執筆時では判然としない。
ただひとつ明らかなのは、高額療養費制度の自己負担上限額引き上げや、唐突な「2年ごとの検証」という制度利用者の生命線は、政府と厚労省の手で恣意的に決定されている、という現実だ。そして、彼らがそのようなことをできるのは、実は上記の健康保険法がその根拠になっているからだ、ということはここで指摘しておきたい。
健康保険法第百十五条2には、以下のような記述がある。
「高額療養費の支給要件、支給額その他高額療養費の支給に関して必要な事項は、療養に必要な費用の負担の家計に与える影響及び療養に要した費用の額を考慮して、政令で定める」
政令ならば、国会で法案として時間をかけて議論しなくても、内閣が閣議で金額等の要件を決定できる。
専門委員会でどれほど審議を尽くしても、自己負担上限額の唐突な見直しや引き上げ(あるいは2年ごとの検証)が制度を利用する当事者の知らないところで決定され、その後出しじゃんけん的な行為を阻むことができないのは、健保法にこの文言があるからだ。
仮に、この文言が「政令で定める」ではなく「法律で定める」と記されているならば、自己負担上限額引き上げ等の制度変更は閣議決定ではなく、その都度、法案として議会に提出し、その可否を衆参両院の審議に諮らなければならなくなる。どうせ健保法を改正するのなら、このような方向で検討した方が健全なのではないか。
上記新聞報道が記すように、政府や厚労省関係者が本当に「家計への影響を考慮」するつもりがあるのならば、法に則るという意味でもこのほうがむしろ適正な手続きだろう。
見直し案が実現に向けて進む状況下で、国民ができること
いずれにせよ、直近の問題は、昨年末に厚労省が発表した予算案(つまり、今回の見直し案が及ぼす様々な悪影響や皺寄せ)について、国会で果たしてきちんとした議論が行われるのか、ということだ。
一時凍結された2024年末の当初案は、そもそもの引き上げ幅が尋常ではない大きさだったために、理不尽さが誰にとってもわかりやすく、反対する側も明快な立論で政府に対応を迫ることができた。
全日本がん患者団体連合会(全がん連)が2025年1月に行った緊急アンケートでは「子供の教育費のために治療断念を検討している」など、疾患当事者の悲痛な声が多数寄せられ、それらを紹介しながら野党議員が政府に凍結を訴える姿は、多くの人々の共感を呼んだ。
しかし、今回の場合は見直し案によって生じる影響の内容が複雑で、問題提起をするにしても、わかりやすさという面では昨年と比べると若干の懸念がある。
しかも、野党側は人数面で昨年以上に劣勢であることに加え、政府側には先に述べたような見直し案の(わずかな)改善部分をことさら強調しながら「丁寧に説明」したうえで、「国民生活のために一刻も早く予算を通す」という、大義名分がある。
与党が圧倒的多数の議席を持つというのは、そういうことだ。
このように予想される政府の一方的な展開に少しでも歯止めをかけるべく、たとえば全国保険医団体連合会(保団連)は昨年3月4日から継続しているオンライン署名を、ここに来てSNSで再び熱心に呼びかけている。
この原稿を書いている2月18日現在では、24万筆以上の署名が集まったようだ。保団連は、2月19日にこの署名を厚労省に手交する予定だという(この署名は昨年の石破政権時代の3月4日に開始したものが、宛名人を高市首相と上野厚労相に変更して継続したもののようだ。
初期の署名賛同者は、宛名人が変わった現在の署名でも発起人の主旨に大枠で賛同すると解釈できるのだろうが、一時凍結前に開始した石破政権時の署名状況と現在の署名状況は異なるので、厳密なことを言えば高市政権に対する現在の署名運動は別立てにするべきだったようにも思う)。
いずれにせよ、この署名を受けとった厚労省と政府がどのような対応をするのか(しないのか)は未知数だ。
討議の場がすでに国会へ移っている以上、今回の見直し案を立ち止まって再検討するのか、あるいはあくまで粛々と法案を通すのかという意志決定のボールは、あくまでも政府側のコートにあるからだ。
高市首相は関節リウマチに罹患して生物学的製剤を投与していることを公言しており、10月の自民党総裁選前に共同通信が行った政策アンケートでは高額療養費制度の自己負担上限額引き上げに反対とも明言していた。
だが、首相就任後の11月に行われた臨時国会では「高額療養費も医療費全体を上回るスピードで増加をしております」「能力に応じてどう分かち合うかという観点から検討を進めていく」と、前政権と同内容の発言だったことからもわかるとおり、今国会でもおそらく従来の政府姿勢と同様の対応になるであろうことが想像できる。
では、今回の見直し案を含む政府の予算案の採決が粛々と進められてゆく状況を、我々国民はただ座して眺める以外に方法がないのだろうか?
ここで思い出したいのが、全がん連理事長・天野慎介氏の言葉だ。少し長くなるが、以下に引用しよう。
「議員はもちろん、より良い政治やより良い世の中の実現のために動いていらっしゃるんだろうけども、いちばん根底の部分では『最後に議員を動かすのは面子と選挙だ、それが立たなければ彼らは動かない』とお世話になっている議員秘書の方に教えられたことがありました。これが国会で要望活動をする時の要諦だ、と私は理解しています。 当たり前ですが、与党には与党の面子があるし、野党には野党の面子がある。今回に限らずどの政策課題だろうと同じですが、高額療養費制度の件で言えば、与党が避けたかったのは『野党に言われたから凍結しました』という状況です。つまり、自民党内から声が上がるか、(当時の)連立与党である公明党から言われて変えるか、どちらかしかないんです。これが与党にとって面子が立つという意味です。 野党にとって面子が立つのは、『自分たちが動いた結果、与党は政策を変えざるをえなかった』という状況です。それぞれ、面子が十分に立たないと議員の方はなかなか動いてくださらない」
※なぜ天野氏たちの訴えは見直し案凍結につながったのか? ──全国がん患者団体連合会理事長・天野慎介氏インタビュー 集英社新書プラス2025年5月1日配信より
「面子と選挙」という、ある意味で身も蓋もない現実を考えると、我々選挙民の言葉がもっともよく届く相手は地元選出の国会議員、ということになるだろう。
声を届ける方法は様々だろうが、いずれにせよ地元選挙民の真摯な声は、その選挙区から選出された議員にとって軽々に扱えるものではないはずだ。そしてそれが「与党の面子」「野党の面子」を立てることに繋がるのであれば、議員たちもその声を反映すべくある程度積極的に動くことが合理的である、という判断にもなるだろう。
要するに、選挙民の意志を国会で反映させる方法は、なにも選挙で一票を投じることだけがすべてではない、ということだ。
これを書いている自分自身でも、できることは何であれやろうと考えている。署名活動などに参加することもそうだろうし、地元選出の国会議員に声を届けることもそうだろうし、そしてこのような場で原稿を書き、あるいはこの高額療養費制度見直しの問題を書籍にまとめて広く世に問うことも、それらの方法の一形態であるだろう。
自分にできることをひとつひとつ行いながら、これから始まる国会の推移を注視しようと考えている。
文/西村章
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