高市早苗首相が掲げる「責任ある積極財政」と“サナエノミクス”。日経平均6万円突破や賃上げの追い風のなか、政権初となる「日本成長戦略」に期待する声も少なくない。だが、筆者が入手した自民党提言の“原案”を読み解くと、そこに並んでいたのは岸田・石破政権時代と大差ない政策の数々だった。さらに浮かび上がるのは、「特別会計」と「複数年度投資」を軸にした危うい財政運営と、“サナエショック”への懸念である――。
【画像】ナフサショックで品薄状態に…環境省も「買いだめ控えて」
首相が進める政策を後押しする「応援団の結成」
高市政権が初めて描く日本の成長戦略はどのようなものなのか。国内外で「ジャパン・イズ・バック」を高らかに宣言し、強い経済を目指すという首相に期待している向きも少なくないだろう。
足元では、日経平均株価が史上初の6万円を突破し、高水準の賃上げが続いていることも日本再興に向けた雰囲気を醸成する。
5月21日には、自民党所属の8割超の国会議員(347人)が参加する勉強会「国力研究会」なるものが発足し、首相が進める政策を後押しする「応援団の結成」と報じられた。
だが、同会が重きを置くのは憲法改正や安定的な皇位継承などだ。外交・安全保障といった分野も机上に乗せつつ、保守政治家の大集団が誕生したといった見方が正しいだろう。
では、高市氏が掲げる「責任ある積極財政」とセットになる我が国の成長戦略はどのようなものになっていくのだろうか。
その答え合わせとなる「原案」を入手した
筆者は、その答え合わせとなる「原案」を入手した。だが、今夏に高市内閣が策定する初めての「日本成長戦略」は、残念ながらマーケットから嫌われるかもしれない。前段となる自民党「日本成長戦略本部」(本部長・岸田文雄元首相)の提言案を見ると、淡い期待が失望へと変わりかねない中身であることがわかる。
5月末に戦略本部の全体会合で最終調整を行い、首相に提言される予定だ。大半は政府の日本成長戦略に反映されるもので、いわば政府・与党の「原案」と言える。
それでは、具体的に提言案の内容を見ていこう。目次には、①徹底した投資による「強い経済」の構築と物価上昇に負けない賃金上昇の実現②成長の契機となる複数年度の視点・取組③成長を支える人材の結集④成長を支える資金の供給・確保⑤成長を牽引する企業の経営力の向上⑥成長を加速する国際連携―の6つが並ぶ。
「圧倒的に足りないのは国内投資である」
日本再興に向けた現状認識と重なる「徹底した投資による『強い経済』の構築と物価上昇に負けない賃金上昇の実現」においては、まず「我が国としても、『責任ある積極財政』という考え方の下、これまでにない大胆かつ柔軟な発想で、内外一体の思い切った政策を打ち出すことによって、足元の経済状況に的確に対応しつつ、経済成長を実現する必要がある」と説明。
そして、「圧倒的に足りないのは国内投資である。優先して取り組むべき17の戦略分野を中心に、様々なリスクを最小化する『危機管理投資』、先端技術を花開かせる『成長投資』の促進に徹底的なてこ入れをしなければならない」と指摘している。
日本経済の原動力になるのは「企業」であるとし、その前向きな行動変容を促すには政府自身も行動を変えていかなければならないとした上で、複数年度にわたる予算・税制措置へのコミットメントや投資、イノベーションを促進する需要の創出・拡大に取り組んでいくことが重要と説明。
日本の財・サービスが選択される「信頼できる経済圏」を構築することにより、国際秩序が大きく揺らぎ、我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中でも、「強い経済」を実現していかなければならない、と提言する。
「労働市場改革」を進めていくべき
供給力の強化に向けた複数年度にわたるコミットメントに関しては、通常の歳出とは別に予見可能性をもって実施できるよう「新たな投資枠」を創設すべきであると指摘。
経済安全保障上、特に重要な分野の投資などについては、複数年度で財源を確保した上で「別枠」で管理する政策スキームを検討する必要があるとしている。
また、償還財源の裏付けのある「つなぎ国債」の発行によって先行的な資金調達を可能としたものについては、債務残高対GDP比やPB(プライマリーバランス)などの指標において経費および財源の金額を除いて別枠で管理すべきである、と踏み込んでいる。
日本経済が直面する労働供給制約においては、「人材なくして投資は実現しない」という観点から、人材の結集を図るべく官民連携の投資を担う人への持続的な賃上げを含む投資、産業人材の育成、それらを支える働き方改革の総点検を含む「労働市場改革」を進めていくべきとする。
すでに首相は「裁量労働制」拡大に向けた検討を政府内で加速するよう指示しており、労使による議論が今後白熱していくことになりそうだ。
デュアルユース(軍民両用)の技術・生産基盤の育成
ただ、リ・スキリングや職業能力開発の推進・支援、AX(AIトランスフォーメーション)時代の産業基盤を支える人材育成に向けた高校教育と高等教育の改革など、特に目新しいものはないと言える。
首相が力を入れる経済安全保障上、重要な分野への投資環境の整備についてはデュアルユース(軍民両用)の技術・生産基盤の育成や技術流出対策の強化、貿易救済措置の執行強化を行うべきとし、経済合理性に委ねると安定供給確保が困難な領域については国による支援の方策を検討するべきとしている。
また、地域の成長については「産業クラスター」形成など産業立地に必要な公共インフラなどの整備に加え、中堅・中小企業のサプライチェーン形成、産業人材育成を一体的に実施すべきと指摘。
GXを軸にコンビナートや脱炭素電源などを核とする産業集積を実現するべく、「GX戦略地域制度」による支援と規制・制度改革を一体的に措置すべきと提言する。
あれ…? これといって目新しいものがない
さらに、我が国が優位性を持つ技術の海外展開や海外の知見の取り込みを外交的に後押しすべく、「外交機会」の活用や国際連携を通じ、デュアルユース技術も含む信頼できる先端技術エコシステムの共創やスタートアップの海外展開支援、在外公館などを巻き込んだ産学官のネットワーク強化、世界トップ人材の受け入れや日本人研究者の海外派遣などによる「国際頭脳循環」、ODA(政府開発援助)の戦略的活用にも取り組むべきという。
ここまでの内容を見て、「あれ? 一体、サナエノミクスって何だったの?」と感じる方は政治・経済に精通しているだろう。それもそのはず、これといって目新しいものはないからだ。
岸田政権や石破茂政権時代と名称こそは違うものの、政策ごとに見れば焼き直し感が否めず、ごく一部を除いて事業規模を拡大・縮小しているものが大半である。
たとえば、地域の成長を目指す「産業クラスター」の形成は石破政権時代の地方創生と同じで、当時も「産業クラスター」との言葉で議論されていたものだ。AIなど先端技術への投資もこれまで実施されており、新味は欠いている。
ただ、問題はそれだけではない。先に「原案」から抜粋して触れた部分にはワケがある。
成長戦略にとって“肝”となる部分がどうにも怪しい
それは高市政権の成長戦略にとって“肝”となる部分がどうにも怪しいからである。具体的には、何度も登場する「複数年度」の投資という点である。この投資については、現時点で「GX国債」を先例とするスキームが政府内で検討されている。
GX債とは、政府が2050年のカーボンニュートラル達成という国際公約と産業競争力強化・経済成長を同時に実現していくため、10年間で150兆円を超える官民投資が必要との観点から長期・複数年度にわたり「脱炭素成長型経済構造移行債」を発行するようになったものだ。
そもそも、GX債のフレームを描いたのは、現在は首相秘書官を務める飯田祐二元経済産業事務次官である。これはエネルギー特別会計から新設すると思われる。
新設とする理由は、財政規律を重んじる財務省とは距離を置く高市首相の意向もあるのだろう。「GX債」を先例に特別会計をいじれば、財務省から事実上「査定権限」を奪うことが可能になるからだ。
以前、最先端半導体の量産を目指しているラピダスへの支援のための特別会計法改正、そして「先端半導体・人工知能関連技術勘定」なるものがつくられたが、それと同じことになる。
償還財源の裏付けのある「つなぎ国債」については、防衛関連費の増額分から持ってくることになるのではないか。
実際、自民党の安全保障調査会は国内総生産(GDP)比3.5%への増額を目指している北大西洋条約機構(NATO)などをにらみ、日本の防衛費増額の必要性を指摘する提言案を議論している。
財務省から査定権限を奪うことにつながる特別会計の活用
財務省から査定権限を奪うことにつながる特別会計の活用、そして防衛関連費の増額分がどうなるかは国民も目を光らせておくべきだろう。
防衛力強化に向けた財源確保のための防衛増税は今年4月に始まったばかりだ。法人税、タバコ税が上がり、来年は所得税の増税が待ち構える。今後も防衛費が増額されていけば、その分の負担増は当然ながら国民が負うことになる。
首相は「悲願」とする飲食料品の消費税ゼロ化を目指しているものの、一方で他の税目が増えていくのであればトータルで本当に人々の負担感が和らぐことになるのか疑わしい。
首相は「強い経済」を唱えるものの、5月18日には新発10年国債利回り(長期金利)が2.800%と1996年10月以来29年半ぶりの高水準をつけた。
長期金利上昇は、住宅ローン金利の上昇を招くだけではなく、企業の経営にも影響を与える。日銀が保有している国債の含み損も巨大になるだろう。円安進行も止まらない。
4月29日にはニューヨーク外国為替市場で円相場が下落し、一時1ドル=160円台半ばをつけた。政府・日銀は円安是正のための為替介入に踏み切ったが、円安が進行すれば輸入物価が上昇し、国民生活を脅かす。
はたして、高市政権初の「成長戦略」はマーケットや国民からどのように受けとめられることになるのか。もしも、それが期待外れに終わり、長期金利のさらなる上昇や円安進行につながっていけば、「サナエショック」が起きない保証はない。今後は、日銀の利上げ実施のタイミングにも注目が集まりそうだ。
文/竹橋大吉 写真/shutterstock
投稿者「F.Krueger」のアーカイブ
高市首相「中傷動画」疑惑に逆ギレ答弁連発 質問した野党議員の制止振り切り“ご飯論法”で一気まくしたて
週刊文春が報じた疑惑の「中傷動画」について、26日の参院内閣委員会で、高市首相があらためて追及される場面があった。
質問されたのは、18日配信のインターネット番組で、動画を作成した男性が高市首相の地元秘書とオンライン上でやりとりしていたと証言したことだ。文春も両者が交わした67通ものSNSの証拠を続報している。
■立憲民主党議員にブチ切れ
内閣委での高市首相の答弁について、新聞・テレビは<首相は男性と秘書との接点について「記録はない」と述べた><「週刊誌の記事内容は確認できなかった」と否定した>などサラリと伝えていた。だが実際は、6分程度の質疑ながら、高市首相はイラついてヒートアップし、「逆ギレ」の連発だった。質問したのは立憲民主党の杉尾秀哉議員。
「男性と秘書がオンライン会議をしたのか、していないと断言できるのか」と繰り返し問われると高市首相はこう答弁した。
「インターネット上の莫大な数のやりとりがあった中で、ひとつひとつを確認することは困難ですが、週刊誌の記事にあった内容は確認できないということです」
ネットのやりとりを詳細に確認できないのに、なぜ記事内容については「ない」と断言できるのか不思議だ。
そして、極めつきは杉尾氏のこの質問だ。
「『初当選以来、他候補を攻撃したり、人格攻撃をしたりしたことがない』と答弁している。自らの哲学に反することを、見ず知らずの人にされて、怒らないでそのままっておかしくないですか」
ここで高市首相は完全にブチ切れ。「総裁選期間中、たくさんのオンライン会議をやりました。(中略)オンラインを誰とやったか、こんな記録・記憶があるわけないじゃないですか」と、杉尾氏の制止を振り切ってまくしたてたのだ。論点ずらしの“ご飯論法”で、杉尾氏は「なんで怒らないのか聞いている」と反発。「首相辞任どころか、議員辞職にもつながりかねない重大な問題だ」と突きつけていた。
◇ ◇ ◇
メンツにこだわり、言い訳、屁理屈をこねる──。5月20日の党首討論では高市首相らしさが炸裂していた。関連記事【もっと読む】『国会答弁イヤイヤが見え見え…高市首相が党首討論で「サナエらしさ」全開“屁理屈”反論のア然』でも詳しく報じている。
同僚のみそ汁に有害物質、キャンプ座間で混入疑い 消防士を逮捕
米陸軍キャンプ座間(神奈川県座間市、相模原市)で勤務する同僚のみそ汁などに、有害物質「エチレングリコール」を混入したとして、座間署は26日、藤沢市本町4、在日米陸軍所属の消防士、生駒理一郎容疑者(34)を器物損壊容疑で逮捕した。黙秘しているという。
逮捕容疑は今年4月1~12日、キャンプ座間内の事務所の調理場で、同僚で消防士の日本人男性(60)が作り置きしていたみそ汁などに計4回、エチレングリコールを混入させたとしている。
同署によると、容疑者と男性は不仲だったという。4回とも目撃者はおらず、男性は一部を口にしていた。男性は2年ほど前から味に違和感を持ち、過去には吐き気や下痢の症状もあったという。4月に「毒物を盛られたのではないか」と署に相談していた。【真栄平研】
高市官邸の「カルビーいじめ」で…競合メーカー湖池屋&縁深い岸田元首相が猛烈とばっちり
中東情勢の悪化による原油不足を一気に可視化させたのが、食品メーカーの対応だ。カルビーは25日から「ポテトチップス」をはじめとする主力14品の包装を白黒に切り替えて販売し始めた。ナフサ不足で印刷用インクなどの調達不安が出ているため、商品の安定供給を優先させたのだ。
こうした企業努力に消費者がエールを送る一方、石油製品の供給不安を警戒する官邸側が「売名行為だろう」とクサしたと報じられ、世間はカンカン。判官びいきの矛先は競合の湖池屋、縁の深い岸田文雄元首相へ。ともに猛烈なとばっちりを食らっている。
25日、内閣記者会の取材に応じた高市首相は「ナフサ由来の石油製品は年を越えて供給継続が可能だ」と強弁を重ねたが、現場との温度差は広がるばかりだ。カゴメは「トマトケチャップ」のパッケージのトマト絵柄を減らし、日清製粉ウェルナは「マ・マー スパゲティ」の乾麺を束ねるテープを無地に切り替える。コストダウンの側面もあろうが、物不足を回避するための策と言っていい。
そうした中、SNSではこんな不穏な書き込みが相次いでいる。
〈ポテチ業界の“ナフサ格差”がヤバい〉
〈官邸が叩く相手はカルビーだけ 湖池屋には何も言わない 湖池屋にナフサが大量にあるってこと?〉
〈「湖池屋」は今後不買だな。だって岸田一族に1円たりともカネを渡したく無い〉
疑念深まる“ナフサ格差”
国内スナック菓子のシェアはカルビーが5割近くを占め、15%前後の湖池屋が追う。ポテチに限れば、カルビーが7割を握る。包装見直しに動かない湖池屋は、何らかの取り計らいを受けているのではないか──。そんな疑念が渦巻いているのだ。岸田実弟の武雄氏の夫人は、湖池屋創業者の小池和夫氏の長女。湖池屋の有価証券報告書には、夫人の兄弟にあたる小池孝会長らと並んで「岸田姓」の大株主が複数記載されている(2025年9月30日現在)。そうした事情が拍車をかけている。
湖池屋は7月出荷分から「ピュアポテト」など8品の値上げや減量を実施予定。これは中東危機を受けた対応ではないという。思わぬ火種となった包装はどうするのか。湖池屋に改めて聞くと──。
「包材含め、さまざまな部分でコストアップとなるというお話はありますが、現状、パッケージの変更などは予定しておりません。ホルムズ問題がいつまで続くか、という部分はありますが、直近ですぐに調達が困難になるということはないと考えております」(広報部)
読売新聞の世論調査(22~24日実施)によると、ナフサ供給に問題はないという政府の説明に「納得できない」は64%で、「納得できる」の25%を上回った。肌感覚との乖離が疑心暗鬼を広げているのだ。本をただせば、明らかに高市政権に原因がある。岸田元首相へ。ともに猛烈なとばっちりを食らっている。
25日、内閣記者会の取材に応じた高市首相にしても、自民党総裁選では一貫して高市首相を忌避。あらゆる面でオトシマエが必要だろう。
◇ ◇ ◇
今回の騒動も、根っこは高市政権の暴走や無為無策にある。関連記事【もっと読む】【さらに読む】などでも詳しく報じている。
「特区民泊」大阪市で駆け込み申請急増、苦情相次ぎ29日に受け付け停止…男性「民泊は利益大きく急いで準備進めた」
大阪市は、マンションの居室や戸建て住宅で宿泊営業ができる「特区民泊」の申請受け付けを29日で停止する。申請窓口のある市保健所では4月以降、「駆け込み申請」が急増している。一方、民泊に関する住民からの苦情は右肩上がりで、市は対策チームを増員し、指導に本腰を入れ始めた。(林興希、苅田円、新谷諒真)
決定前の1・5倍
受け付け停止まで残り1週間となった今月22日。「船場センタービル」(大阪市中央区)に入る市保健所では、特区民泊の申請窓口が開く午前9時前、すでに約40人が列を作っていた。
申請に訪れた同市生野区の飲食店経営の男性(44)は昨年10月、購入した中古物件を使って副業で民泊を始めた。民泊は「利益が大きい」といい、すぐにもう一軒増やすことを決め、期限に間に合うように物件を確保した。「急いで準備を進め、なんとか間に合いそうだ。近隣の人からは騒音などを心配する声が多い。風当たりが強いことを意識して運営していきたい」と話した。
市が新規申請の受け付け停止を決めたのは昨年9月30日。市内には当時、民泊が約7000施設あり、ゴミの出し方や騒音などを巡って近隣住民とのトラブルが増加していた。
市の停止決定後、昨年10月~今年4月の申請件数は月平均312件で、決定前の昨年1~9月(月平均212件)に比べて1・5倍となった。特に今年4月は434件で、5月はさらに上回るペースという。
市保健所には受け付けや物件の現地調査の担当者が約30人いるが、手が回っておらず、5月は他部署から10人以上の応援をもらっているという。担当者は「市民の不安が増しており、ずさんな対応はできない。業務は立て込んでいるが、確認を徹底したい」と話した。
全国の94%集中
内閣府によると、特区民泊は今年2月現在、東京都大田区や北九州市など全国7自治体で計8664施設が認定されている。大阪市にはこのうち94%にあたる8178施設が集中している。
市が今年2月に公表した営業実態調査(5824施設が回答)では、「苦情の窓口を周知していない」「滞在者へ騒音やゴミ捨ての注意喚起を行っていない」など、不適切な運用をしている可能性がある施設が124あった。苦情があった場合、担当者が「おおむね10分以内」に駆け付けるという市の指針を満たす施設は4割弱にとどまった。
同市西成区に住む女性(76)は「近所の民泊では、外国人旅行者がベランダでよくたばこを吸っている。臭いが洗濯物に付くし、吸い殻のポイ捨ても多い。最近も施設に苦情を言ったが、対応してくれた様子はない」と話す。
4900施設調査へ
市に寄せられる苦情も増えており、昨年1~3月は月40件を下回っていたが、今年1月以降は月80件を上回っている。
市は4月、市保健所内に設置する「迷惑民泊根絶チーム」のメンバーを従来の4倍の20人に増やし、民泊が集中する市中心部などの約4900施設を対象に立ち入り調査などを始めた。
チームは今年度中に全対象施設を調べる予定で、横山英幸市長は21日、記者団に「指導に応じない事業者があれば、認定取り消しなどの厳しい処分も当然、検討していく」と述べた。
◆特区民泊=外国人観光客の増加によるホテル不足を補うため、政府が旅館業法の特例措置としてスタートさせた。「国家戦略特区」に指定されたエリアで、「居室の床面積25平方メートル以上」「外国語案内の設置」などの条件を満たせば、マンションの居室や戸建て住宅などで宿泊営業が可能となる。
爆破予告で中止の東大五月祭。乙武洋匡氏が「三島vs全共闘と並べるのは不適切」と語る神谷宗幣氏への抗議の本質
東京大学の学園祭「五月祭」で、5月16日に予定されていた参政党の神谷宗幣代表による講演会を含む全企画が中止となった。講演会が行われた場合、期間中にキャンパスを爆破するとの犯行予告が常任委員会らに届いたことによる。2日目の17日は予定通り開催された。
作家の乙武洋匡氏は、「暴力による言論封殺は断じて許されない」とした上で、「今回の抗議は特定の思想を持つ部外者によるものではなく、差別的発言に傷ついた現役東大生が言論によって声を上げるのであれば、それは正当な主張として成立する」と説く(以下は乙武氏による寄稿)。
◆「部外者」に口を出す資格はあるか?問われるべき抗議の主体
東京大学の五月祭で予定されていた参政党・神谷宗幣代表の講演会に抗議の声が上がり、さらには爆破予告もあったことから、結果的に講演会は中止となった。暴力による言論封殺は、断じて許されない。私自身、参政党や神谷代表の思想とは相容れない部分が多いが、対象が誰であろうと脅迫には断固として抗議したいと思う。
その上で、ここでは今回のようなケースが起こった場合に、言論による抗議は可能かどうかを考えたい。まず考えるべきは「誰が」抗議をする権利を持つのかということだ。今回に関して言えば、学生ではない、特定の思想を持つ“大人たち”も抗議活動に関わっていたと伝えられる。しかし彼らは学生でもなければ、おそらくは卒業生でもない、部外者。東大生の東大生による東大生のための学園祭に口を出す立場にはないはずだ。
◆「三島vs全共闘」とは決定的に違う、東大生が抗議した真の理由
では、学生たちはどうだろう。ここは賛否が分かれてくる。今回の件に際して、1969年、三島由紀夫が東京大学に招かれ、東大全共闘と議論を交わした事例を持ち出し、「言論に対しては言論で戦え」といった声も散見された。しかし、今回の事件を語る上で「三島vs全共闘」を持ち出してくるのは適切とはいえない。三島と全共闘との対立点は、国家観や天皇制などを巡る思想の違いにあった。一方、今回の抗議は「大学に差別を持ち込ませたくない」というのが主な理由だったからだ。
神谷氏はこれまで演説中に「アホだ、バカだ、チョンだ」と特定の民族を侮蔑するような発言をしたり、「変なLGBTとかどうでもいい。あんなの教えなくていい」との発言をしたりと、批判を受けている。本人や支持者は「差別の意図はなかった」と強弁するが、多くの人がその言葉に傷つき、憤った事実は軽視できない。ならば、現役の東大生が「私たちの学園祭で差別的で誰かを傷つけるような発言がなされることがあってはならない」と抗議をすることは、ひとつの主張として成立するだろう。
次に考えるべきは、その手段だ。もちろん、爆破予告など論外だし、座り込みや来場者への威嚇といった実力行使による妨害行為にも個人的に賛同できない。しかし、プラカードやチラシなど、あくまで言論による抗議活動ならば、私は正当性を感じられる。
参政党には熱烈な支持者と強烈なアンチが併存するからこそ議論が白熱しがちだが、抗議の主体や手段を含めて、問題を丁寧に切り分け議論することが必要だろう。
<文/乙武洋匡>
【乙武洋匡】
1976年、東京都生まれ。大学在学中に執筆した『五体不満足』が600万部を超すベストセラーに。卒業後はスポーツライターとして活躍。その後、小学校教諭、東京都教育委員などを歴任。ニュース番組でMCを務めるなど、日本のダイバーシティ分野におけるオピニオンリーダーとして活動している
つくば市の病院で82歳男性の首を圧迫し殺害したとして69歳男逮捕 2人は同じ病院の入院患者
きのう夜、茨城県つくば市の病院で、入院する82歳の男性の首を圧迫して殺害したとして、同じ病院に入院する69歳の男が逮捕されました。
殺人の疑いで緊急逮捕されたのは、つくば市の無職・浜野孝司容疑者(69)です。
浜野容疑者はきのう夜、つくば市田倉の病院で、病室のベッドで寝ていた望月敬さん(82)の首を圧迫して殺害した疑いがもたれています。
警察によりますと、浜野容疑者が犯行を自ら看護師に伝え、看護師が110番通報し事件が発覚したということです。
2人は同じ病院に入院していたということですが、面識があったかなど2人の関係は明らかになっていません。
浜野容疑者は容疑を認めているということで、警察は動機や当時の状況を調べています。
死亡した作業員2人はベトナム国籍 地下のパイプでセメントに埋まる 技能実習生か 公共工事の作業中に…業務上過失致死の疑いも視野に捜査 滋賀・草津市
25日、滋賀県草津市で地下のパイプの中でセメントに埋まって作業員2人が死亡した事故で、死亡した2人は、ベトナム国籍の男性であることが分かりました。
26日午前10時半ごろ、滋賀県草津市の県の公共工事の現場で、地下12メートルにある農業用水管のパイプの中で作業をしていた男性作業員2人がセメントに埋まり、心肺停止の状態で病院に運ばれましたが、その後死亡が確認されました。
警察によりますと、死亡したのはいずれもベトナム国籍のルー・タイン・ヴァングさんとグェン・テー・フォンさんで、2人は技能実習生とみられるということです。
警察は26日以降遺体を司法解剖し死因を特定するとともに、業務上過失致死の疑いも視野に捜査しています。
「あれは〈死に地〉だ」…沖縄返還の混乱の中で取り上げられた「東京ドーム半分」の土地の真相 復興のために私財を投じた土地が行政のミスで国の所有に…家族が訴える不正義の是正
辺野古転覆事故を起こした抗議団体が自身の支持基盤・オール沖縄の構成団体であることからその対応が問われている玉城デニー沖縄県知事。「誰一人取り残さない沖縄の実現」を掲げ、9月の知事選での3選を目指す出馬表明をしたが、その陰では1972年の沖縄返還の喧噪と混乱に取り残されたままの人物がいた。沖縄県政と玉城知事が目を背け続ける半世紀を超える悲劇とは。ノンフィクション作家・広野真嗣氏がレポートする。【全3回の第1回】
「無願埋立」として取り上げられた「東京ドーム半分」の土地
「親父が生前、僕に言ったんですよ、あれは〈死に地〉だって」
“使いようのない土地”といった意味の方言で肉親の無念を語る65歳の奥間浩氏の頭髪は白い。
その白を際立たせるのは、交通誘導員の現場仕事で焼かれた赤黒い顔だ。猜疑の色がにじむその眼窩に何度も拳を押し付けた。疲弊というより悲嘆であると私には見えた。
奥間家は「門中(むんちゅう)」と呼ばれる同じ父方の血族を取りまとめる家系で、嘉手納基地そばにいくつも土地を抱えていたが、「死に地」に手を焼くうちに没落し、借金返済のために最後に残った3階建ての実家も数年前に人手に渡った。
買い手の好意で94歳の母、姉と兄がいまだに暮らしているが、あと何年続けられるかわからない。窮状を語る浩氏の目線の先にあるのが、嘉手納発着の米軍機を間近に見る、北谷(ちゃたん)町の埋立地だ。
7600坪、東京ドームの半分に及ぶこの敷地は造成から60年も経つのに草茫々の更地。番地がつかないことから「ゼロ番地」とも呼ばれる。
南に隣接する宮城海岸はサーフスポットで知られ、外国人向けホテルや住宅地が連なる。さらに南側には、観光客に人気の商業エリア・アメリカンヴィレッジが広がる。
南北19万坪に広がる一帯を自力で埋め立てたのが10年前に世を去った浩氏の父・盛行氏だ。ただその最後の一角であり、最後の財産でもあるゼロ番地は、手続きを欠いた「無願埋立」として取り上げられ、現在の登記上の所有者は、国だ。法定受託事務として県に管理権限が委ねられている。
浩氏は、「デニーさんには、聞く耳を持ってくれと言いたいです」と語る。奥間親子の代理人と沖縄県の交わらない攻防を取材すると、「辺野古新基地反対」とファイティングポーズを構えるには勇ましいが、その実、県民目線で具体的解決を導けない玉城デニー知事の実像に突き当たるのだ。
「琉球政府の指導に従って埋め立てた」
ナフサ原料の商品「品切れ」も エアコン設置にも影響 政府見解と現場の声にギャップ 福岡
原油由来の石油製品「ナフサ」の供給不足が懸念される中、その影響は、夏に欠かせないエアコンの設置工事の現場にも広がっています。専門家は、政府には現場の状況を正確に把握した上で対策をとることが求められると指摘します。
5月26日、福岡市内のホームセンターを訪ねると、ところどころに「品切れ中」の表示がありました。
■井ノ上新弥フィールドキャスター
「接着剤のコーナーでは欠品が出ていて、空きが目立っています。」
接着剤のほかに梱包用のフィルムなど、ナフサを原料とする商品が品切れとなっていました。
■ナフコ福岡空港店・花田健吾 店長
「約1か月前からこのような形になっていて、毎週発注はしていますが、入荷が不安定な状況になっています。」
塗料などを買いに来たという人は。
■建設業
「今、少ないのと値上がりで、確保するのも現場では大変みたいですね。常にあるのが当たり前だったので、また戻ってほしいですね。」
■花田店長
「どうにかお客様に提供したいと、やってはいるのですが、安定して供給できていないところは現実にありますので、大変ご迷惑はおかけしていると感じています。」
ナフサの供給不安は、夏に欠かせないエアコンの設置現場にも影響が及んでいます。
■井ノ上フィールドキャスター
「こちらのお宅では、今まさにエアコンの設置工事が行われています。これから始まる夏本番に向けて、需要が増えているということです。」
来年4月からエアコンの省エネ基準が大幅に引き上げられることで、価格高騰が懸念されている「2027年問題」。
その導入を前にエアコンを購入した“駆け込み需要”を受け、設置件数も去年の1.2倍ほどに増えているといいます。しかし。
■カノデンキ・諏訪歩さん
「部材が入らない、少ないことが大きな問題かなと思います。」
エアコン設置に必要な、ナフサ由来の資材が不足しているといいます。
資材置き場を見せてもらうと。
■カノデンキ・苅田哲さん
「正直、かなり入りづらくなっていて、特にエアコンのブロックですが、普段だったら棚いっぱいで、もう1か所の倉庫にもいっぱいあるのですが、今はこれだけしかない。」
■井ノ上フィールドキャスター
「これまでは、不足することはあったのでしょうか。」
■苅田さん
「ないですね。初だと思います。」
今ある資材だけでは、半月ほどでなくなってしまう可能性があるということです。
政府は、ナフサの国内供給に問題はないとしていますが、NNNと読売新聞が行った最新の世論調査では、政府の説明に「納得できない」と答えた人が6割を超えました。
なぜ、政府の見解と現場の声にギャップが生まれるのでしょうか。
石油流通システムに詳しい専門家は。
■桃山学院大学 経営学部・小嶌正稔 教授
「ナフサは、あまりにもたくさんの製品で姿を変えていきます。ですから、ナフサが足りることと、現場で製品がないこと自体は同じではないんです。ですから、政府の言っていることと現場の温度差が、あまりにも大きくなっている。」
小嶌教授は、政府は現場の状況を正しく把握して、関連製品が確実に流れる仕組みを構築すべきだとした上で、この状況が解消されるにはまだ時間がかかるとみています。
■小嶌教授
「ホルムズ海峡自体が開いたとしても、製品のサプライチェーンが長いので(ホルムズ海峡が開いた後)4か月、5か月、半年ぐらいは正常化するのには時間がかかる。」
先行き不透明な状況はいつまで続くのか。現場でも不安感は広がっています。
※FBS福岡放送めんたいワイド2026年5月26日午後5時すぎ放送