高額献金「被告の兄の命を守りたい」 母親が証人尋問で語った入信の経緯

令和4年7月の安倍晋三元首相銃撃事件で、奈良地裁で13日に開かれた山上徹也被告(45)の第7回公判では、被告の母親の証人尋問が行われた。母親は法廷で事件について謝罪する一方で、被告が恨みを募らせ、犯行動機になった旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)との関係について、現在も「信仰している」と明かし、入信の経緯などを語った。
「本来は事件が起きたとき、すぐにでも謝罪すべきでしたが、なかなかできませんでした。次男徹也が大変な事件を起こし、心よりおわび申し上げます」
証人尋問の冒頭、母親は声を震わせてこう謝罪した。証言台の周囲には遮蔽板が設置され、被告からは母親が見えるが、傍聴席から様子をうかがうことはできなかった。被告は証言する母親に時折、視線を向けていた。
弁護側は証拠調べで、母親が平成5年以降、事件までに30回にわたって教団本部のある韓国へ渡航していたと指摘。母親は証人尋問で、弁護側から「信仰している宗教はありますか」と問われると、「世界平和統一家庭連合です」とはっきりとした口調で述べた。
母親によると、入信は3年。昭和59年に夫が自殺し、62年に被告の兄である長男が脳の腫瘍が原因で失明するなどして心を痛めていたとき、自宅を訪問した若い女性に勧誘された。そこで家系の問題を指摘され、救済を求めるようになった。
献金しなければ「長男の命がどうなるか分からない。(金よりも)あの子の命を守りたいと思った」と振り返り、夫の生命保険金のうち5千万円を、入信からわずか数カ月で教団に納めた。
その後も献金を続け、平成10年に母親の父が亡くなった後には家などを売却し、さらに4千万円を教団に送った。
当時被告は高校3年で大学受験を控えていたが「学校よりも献金することが大事」「(子供の将来について)なにか道があるだろうと思った」と話した。
被告は母親の献金によって家庭が崩壊したとして教団を恨み、最終的にその矛先を安倍氏に向けたとされる。量刑判断上、被告の生い立ちをどの程度考慮すべきかが争点になっている。

公明党“政治とカネ”など何度も首相追及 参政党・神谷氏は褒めたあと…“外国人パー券購入”に「罰則を」

国会では、野党になった公明党が政治とカネの問題などで高市首相に何度も詰め寄りました。一方、参政党の神谷代表は、首相の答弁について「わかりやすい」と褒める場面もありました。
追及が続く「政治とカネ」の問題。
公明党の石川議員が切り込んだのは、連立離脱の要因の1つとなった企業・団体献金について。
公明党 石川議員
「自民党と維新の連立政権合意では、高市総裁の任期中、再来年の9月でしょうか、(それまでに)結論を得るとされました。2年近くも必要だとご判断された理由をお伺いしたい」
高市首相
「この問題は、直ちに結論が出るようなものではなくて、政党間の考え方の違いというのは粘り強く調整しなきゃいけない。難しい問題だという認識を踏まえております」
公明党 石川議員
「例えば毎月何回ぐらい議論行われる予定なんでしょうか?」
高市首相
「精力的に(協議会を)開いていただきたいと希望しています」
石川議員はさらに、自民党と日本維新の会の連立合意にある「衆議院の議員定数1割削減」についても追及。
公明党 石川議員
「素朴な疑問なんですが、なぜ1割なんでしょう? 根拠ありますでしょうか?」
高市首相
「日本の維新の会から1割という提案をいただいた。身を切る改革、第一歩と。1丁目1番地ということ」
公明党 石川議員
「言われたからそのまま…そのまま受け入れた。何かお考えがあって1割は適切だと思われたとか、そういったことはない?」
高市首相
「いや、これが5割とか言われたら受け入れておりません」
公明党 石川議員
「2割だったらどうでしたか?」
高市首相
「1割というご提案は確かに、日本維新の会からいただいたもの。私もこれ持って帰ったら自民党の中で、ぼこぼこになるかと思いながら、いろいろ思いをめぐらせましたが、定数削減については、それほど多くの国民の方が反対しているわけではなく、むしろ賛同のご意見のほうが多いと承知をしております」
高市首相は「割と納得感の得られる規模ではないか」と述べた一方、根拠の明確な説明はありませんでした。
午後、質問に立ったのは参政党の神谷代表。
参政党 神谷代表
「総理の答弁を聞いていると非常にストレートでわかりやすい答弁が多くて、こういったわかりやすいやり取りが国民の支持、理解を得るのかなと」
冒頭で、高市首相を持ち上げる一方で…。
参政党・神谷代表
「外国人によるパーティー券の購入などは、これも完全に禁止すべきではないかと私たちは考えています」
外国人が政治資金パーティー券を購入することは法改正され、禁止規定が盛り込まれましたが、神谷代表は、これに罰則を設けるよう訴えました。
参政党・神谷代表
「外国人のパーティー券(の購入)一応、原則禁止ですけど、罰則がないので、ここもより厳しくすべきではないか。こういったお金による影響工作、これについての総理の所見は?」
高市首相
「外国人であれ日本人であれ、お金による影響を私たち国会議員は受けてはいけない。これは当たり前のことだと思っております」
「ご提案のような外国人からの献金、パーティー券の購入の完全禁止を導入することについては、(これまでの法改正の)経緯を十分に踏まえて検討する必要があると考えております」
参議院の予算委員会は、14日も引き続き行われる予定です。

不動産管理会社の株主権巡る訴訟で株券など偽造疑い 「乗っ取り」企図か、男女3人を逮捕

不動産管理会社の株主権を巡る訴訟で、株券などを偽造して裁判所に提出したとして、警視庁暴力団対策課は、有価証券偽造・同行使などの疑いで、職業不詳の松沢泰生容疑者(74)=東京都渋谷区=ら男女3人を逮捕した。暴対課は認否を明らかにしていない。
ほかに逮捕されたのは、いずれも職業不詳の沢田洋一(76)=新宿区、斎藤ゆかり(60)=目黒区=の両容疑者。
3人の逮捕容疑は、共謀して、令和5年3月と6年1月、不動産管理会社「ハナマサ」(東京都世田谷区)の株主権を巡る訴訟を有利に進めるため、松沢容疑者を譲受人とする株式譲渡契約書と株券を偽造し、東京地裁に提出したとしている。
暴対課によると4年12月、ハナマサが所有する埼玉県東松山市の約4万平方メートルの土地が物流関連企業に10億円超で売却され、うち約8億円が松沢容疑者の関連法人2社に流出していた。登記によると、松沢容疑者は5年1月に同社の代表に就任。ハナマサの元代表の60代男性から同月、「会社を乗っ取られる」と警視庁に相談があった。
ハナマサは昭和53年に設立。かつて食品スーパーなどを運営していたが、別法人に事業を譲渡し、現在は不動産管理会社となっている。
「ハイエナ」異名持つ容疑者、ねらいは?
「資本のハイエナ」「希代の詐欺師」-。過去にも複数の経済事件で摘発を受けてきた松沢泰生容疑者は、金融業界などではこう評され、警戒されていた。
「戦後最大の経済事件」といわれた東京佐川急便事件では平成4年、当時の同社社長らとともに東京地検特捜部に摘発され、特別背任罪で懲役5年の有罪判決を受けた。中華レストラン大手「東天紅」の株式公開買い付け(TOB)を巡る証券取引法違反事件(12年)にも関与したとされる。かつて交流のあった関係者は、「佐川急便事件当時は高級外車を乗り回し、羽振りの良さをみせていた。利用できる人間には笑顔で取り入る『やり手』として知られていた」と明かす。
ハナマサの代表権争いを巡り、反社会的勢力の存在をちらつかせることもあったという松沢容疑者。警視庁は、事件の詳しい経緯や目的などの解明を進める。(海野慎介)

無実の罪で解雇、賠償命令 男性死亡、栃木の葬儀社

栃木県鹿沼市の葬儀社で勤務していた50代の男性が自殺したのは、身に覚えのない詐欺事件に関与したと決め付けられ、解雇されたことが原因だとして、遺族が会社に約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、宇都宮地裁は13日、約8200万円の支払いを命じた。男性は無実だったと認定した。
判決によると、男性は2019年に亡くなった。別の元従業員が、葬儀で余った返礼品などを「葬家」から買い取る名目で費用を架空請求しており、会社は男性も関与したと主張した。
本多哲哉裁判長は「全証拠に照らし、関与していなかったと認めるのが相当だ」と指摘した。会社幹部が、関与したかのような証拠を作成して警察の取り調べを受けさせ、否認した男性を怒鳴り付けたとし「一方的に解雇され、心理的負荷は極めて強かった」と結論付けた。
月100時間前後の時間外労働も要因となり、男性はうつ病を発症していたと判断した。20年に労働基準監督署が労災認定した。

三陸沖、1カ月続く恐れも 「続発領域」地震調査委

政府の地震調査委員会は13日、定例会合を開き、9日に岩手、宮城両県で震度4を観測した地震などについて議論した。平田直委員長(東京大名誉教授)は会合後の記者会見で、同規模以上の地震が続けて発生しやすい「続発領域」だと指摘し「過去の例からすると、ひと月くらいの単位で続く可能性がある」と警戒を呼びかけた。
調査委によると、三陸沖では4日ごろから地震が相次ぎ、9日午後5時3分ごろにマグニチュード(M)6.9が発生。その直後と10日に、M6以上を計3回観測した。この領域では、1989年や92年にも大きな地震が連続して起きている。
調査委では、今年10月に国内で発生した地震についても議論。気象庁によると、北海道の根室半島南東沖を震源とする最大震度5弱の地震など、震度4以上を観測したのは5回だった。
鹿児島県のトカラ列島近海では、規模が大きな地震の回数は減ってきているが、10月に震度1以上の地震が37回発生しており、活動が続いている。この地域での過去の地震に比べ、活動が長期化しているとした。

起業し顧客情報持ち出しか 秘密取得疑い元社員ら逮捕

引っ越し手配や社宅管理を手がける企業「リベロ」(東京都港区)から顧客データを不正に持ち出したなどとして、警視庁生活経済課は12日までに、不正競争防止法違反(営業秘密領得、開示)の疑いで横浜市鶴見区、古吉祐太容疑者(37)ら同社元社員の男3人を逮捕した。うち1人が起業した会社で営業に利用していたとみている。捜査関係者への取材で分かった。
捜査関係者によると、3人は現在、同様の事業を行う「ビズリンク」(東京都千代田区)に所属。最後までリベロに残った古吉容疑者が情報を持ち出したとみられる。
今年1月、警視庁がリベロ側から相談を受け、捜査していた。

高市・維新「社会保障改革」に立ちはだかる日本医師会――開業医“儲け過ぎ”を明らかにした調査結果に猛反発していた!

自民党と連立を組む日本維新の会は、年間の医療費を4兆円削減することで現役世代の負担を年間6万円減らすという目標を掲げているが、そこには大きな壁が立ちはだかっている。関連の政治団体が多額の献金を自民党にしている日本医師会(日医)の存在だ。
診療所を経営する開業医の利益団体である日医は、自らの既得権を守るため、これまで「票とカネ」を武器に自民党に大きな影響力を及ぼしてきた。その実態を克明に描いた 『日本医師会の正体 なぜ医療費のムダは減らないのか』 (文藝春秋)から、開業医が高い利益を得ていることを明らかにした調査結果について記した部分を抜粋して紹介する。
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診療所の内部留保は1億2400万円
「『お前たちは休日返上で働いて、その分、儲けたからいいじゃないか』と、そういったことを言わんばかりの資料が掲載されたことは極めて残念です」
2023年11月2日、東京・本駒込の日本医師会館。前日に行われた財政制度分科会の社会保障をテーマにした議論を受け、日医会長の松本吉郎は急遽、記者会見を開き、財務省が医師らを“お前呼ばわり”したかのようなけんか腰な物言いで、怒りをぶちまけた。松本が目のにした資料は、財務省が財政審に提出した「機動的調査」のデータだった。
診療報酬改定を検討する際の基礎資料としては、厚労省が2年に1度、医療機関の経営に関する「医療経済実態調査」を実施してきたが、調査のたびに対象の医療機関が入れ替わるため、経年的なデータが把握できず、サンプル数も非常に少ないという欠陥が以前から指摘されていた。抜本的な見直しが求められていたが、一向に改善されないため、今回は財務省が独自に医療機関の経営実態の把握に乗り出した。
財務省が各地の地方財務局を動員して集計したのは、都道府県や一部の政令指定都市が公表している医療法人の事業報告書などのデータ。入手が難しかった自治体を除き、38都道府県から2万1939の医療法人の直近3年間(20~22年度)の報告書を入手して経営状況を分析した。その結果、1万8207の無床診療所の平均値で、22年度の収益は1億8800万円と20年度から12%、2000万円増加したことが分かった。診療所の経常利益率(売上高に対する経常利益の割合)は20年度3.0%、21年度7.4%、22年度8.8%と急伸していた。
診療所の利益は、本業の医療サービスで得られる医業利益と、受取利息や受取配当金、補助金などの医業外利益からなる。この医業利益と医業外利益の合計を売り上げで割ったものが診療所の経常利益率となる。同じ3カ年度の中小企業の平均経常利益率は2.6%~3.4%で、診療所が大きく上回った。医師の高齢化やコロナ禍などで、業務をかなり縮小した診療所を除けば、経常利益率はさらに高くなるとみられた。
経営が好調な診療所に対し、1750の病院の同じ3カ年度の経常利益率は2.8%、5.8%、5.0%と、すべての年度で診療所を下回った。厚労省による過去の医療経済実態調査でも、診療所の収益率は病院より高い傾向にあったが、今回の財務省の調査でそのことが裏付けられた。その結果、診療所の利益剰余金(内部留保)は22年度が平均1億2400万円で、20年度からわずか2年間で18%、1900万円も増えていた。
院長の給与が経費の5分の1
20年度の厚労省の医療経済実態調査をもとに、財務省で一般診療所の費用構造を分析したところ、平均の年間経費1億5000万円のうち、医師給与は4000万円で、うち院長が3000万円だった。医師以外の医療従事者や事務員らの給与は4000万円、給与費以外の費用は7000万円で、医薬品・材料費2500万円、減価償却費600万円、機器賃貸料300万円などとなっており、院長の給与が経費の5分の1を占めた。日医は医療従事者の3%以上の賃上げを求めていたが、財務省は診療所の費用構造の分析から、増えた分の利益剰余金1900万円は、医療従事者の3%の賃上げに必要な経費(医師以外の医療従事者の給与の合計額4000万円を前提とすると140万円)の14年分に相当すると結論づけ、診療所の医療従事者の賃上げはストック(蓄え)で十分対応できると示した。
財政審の会見録によると、分科会長代理の増田寛也は終了後の会見で、初の機動的調査について「(これまでは)エビデンスに基づくものが欠けているということで、(財務省が)調査せざるを得なかったという分野があった。この調査自体は大変高く評価していますし、極めて中立的な調査だと思っています」と述べた。増田によれば、委員からは次のような意見が出た。
「診療所の極めて高い利益率を踏まえれば、診療所の報酬単価を大きく下げ、マイナス改定とすべきだ。その際に病院については、勤務医の働き方改革や、現場の従事者の処遇をしっかり行うなど、メリハリをつけることが重要である」
「診療所の報酬単価が高いことが診療所の必要以上の開設を促し、病院における医師不足、医師偏在の加速につながる構造となっている。地域別単価の設定を含め、診療所の報酬単価の見直しが必要である」
「財務省は恣意的」と日医会長
財務省の機動的調査で、診療所の高い収益率や内部留保が初めて明らかになり、日医執行部は「診療所を狙い撃ちにした」と受け止めた。松本は会見で、怒りを隠さずに反論した。
「(財務省の機動的調査の対象になった)この3年間は、まさにコロナ禍の変動が顕著であり、コロナ特例の上振れ分が含まれています。そもそもコロナ禍で、一番(収益の)落ち込みが激しかった2020年度をベースに比較すること自体、ミスリードと言わざるを得ません。儲かっているという印象を与える恣意的なものと言わざるを得ません」
その上で、税理士・公認会計士のネットワークである「TKC全国会」が医療機関の決算データを集計した「TKC医業経営指標」をもとに、日医が4400~4800の診療所の「医業利益率」を独自に分析したところ、20年からの3年間の平均は5.0%で、新型コロナ流行前3年間(17~19年度)の平均4.6%と、ほぼ同水準であると説明した。医業利益率とは、経常利益率ではなく、補助金などの営業外利益を除いた医業利益のみの売り上げに対する割合のことをいう。
松本は「さらにコロナ特例などのコロナ対応分を除くと、(20年からの3年度の平均は)3.3%程度と、むしろコロナ流行前よりも若干悪化している可能性があります」と述べ、「診療所の経営は好調」とする財務省の分析を否定した。
ただ、TKC指標に基づく日医の独自分析で、医業利益率ではなく診療所の経常利益率で見ると、20年度が3.8%、21年度8.1%、22年度9.8%となり、約1万8000の診療所を対象とした財務省の機動的調査の数値を全部の年度で上回っていた。
政府関係者は「診療所の経常利益率が高いとする財務省のデータが、日医の独自分析で裏付けられたようなものだ」と苦笑しながら、「日医がどうして診療所の経営状況を医業利益率で説明したのか理解できない。補助金などの医業外利益も院長や医療従事者の給与になっているのだから、医業外利益も含めた経常利益率で説明すべきだ」として、こう続けた。
「日医は収益が落ち込んだ20年度をベースに経常利益率を比較することが恣意的だと言っているが、財務省は医療法人の決算資料が閲覧可能な20年度から3年分のデータで、毎年の診療所の足下の経常利益率が高いと言っているに過ぎない。すごく儲かって、溜まり(利益剰余金)も1億2400万円あるということだ。中小企業や病院の平均よりも経常利益率が高く、しかもその財源は保険料や税金で、それが過剰に診療所に溜まる構造で、『本当にそれでいいんですか』ということだ。その意味で、『これだけ儲かってもいいんです』という日医の主張は理解に苦しむ。医療は公費で、みんなで集めたお金でやっている以上、そこはちゃんと見ていかないといけない」
(文中一部敬称略)
(杉谷 剛/ノンフィクション出版)

「日本衰退の最大の犯人は消費税」「もはや議論の余地がない」…早稲田大名誉教授が断言する日本の国力を上げるための“決定的な方法”とは?

かつて世界第2位の経済大国として君臨していた日本だが、いまやその国力は目に見えて衰退している。このままでは、2030年代に予想される南海トラフ巨大地震のような国家的危機に際し、自力での復興すら危ぶまれるといっても過言ではない。生物学者であり、科学・社会・環境問題評論家としても活躍する池田清彦氏はそのように指摘するが、はたしてどのような打ち手があるのか。
ここでは同氏の著書 『明日は我が身と思うなら』 (角川新書)の一部を抜粋。池田氏の見解を紹介する。(全2回の1回目/ 続きを読む )
◆◆◆
国力の指標が軒並み下がっている日本
2036年前後に南海トラフ地震が起きたとして、日本が自力で立ち上がれるかどうかは、その時の日本の国力がどのくらいあるかにかかっている。国力というのは曖昧な言葉だけれど、その時の経済力、生産力、国民の知力と創造力、文化発信力、軍事力、資源力などの総体である。大震災で、様々なインフラが失われ、食物や電気その他の生活必需品が失われた時に、速やかにこれらを修復または作り出すには高い国力が必要だ。
国力、特に高い生産力があれば、ある程度自力で、必要なものを生産することができる。先に述べたように国力にはいろいろな指標があるが、生産力に関係するもので重要なのは、GDP、1人当たりのGDP、平均賃金、自国通貨の価値などである。30年前に比べ、国際水準から見て、これらはすべて大幅に下がっているので、日本の国力は衰退している。景気が悪くて、国民の消費力が低水準だと、生産力も呼応して下がり、いざとなった時に、簡単には増産することができなくなる。日本の国力を30年前と同水準にまで引き上げることができれば、南海トラフ地震を、乗り切れる可能性は多少は高くなる。
日本の経済を世界と比較してみたら
というわけで、まずこれらの指標がどのくらい悪くなったかを見てみよう。まずGDPだが、アメリカに次いで世界2位になったのが1968年、以降42年間2位をキープして2010年に中国に抜かれ、3位に転落、2023年にはドイツに抜かれ4位に、IMF(国際通貨基金)の予想では2025年にはインドに抜かれて5位になるという。
実際のGDPはどのくらいかというと、例えば1990年の日本の名目GDPは3兆1859億ドル、アメリカは5兆9631億ドル、中国は3966億ドルで、2024年のそれは日本4兆0701億ドル、アメリカ29兆1678億ドル、中国18兆2733億ドルであるから、この34年間で、アメリカは4・9倍、中国はなんと46倍増加したのに対して日本は1・3倍弱しか増えていない。日本が世界の経済発展からどれだけ取り残されているかがわかる。
韓国や台湾にも抜かれた「1人当たりの名目GDP」
GDPは国単位なので、人口が大きい国は大きくなるのは当然で、実際の国民の生活にとって重要な指標は1人当たりの名目GDPである。1990年、日本は、世界の第8位であった。1995年には第6位と、1990年代の終わり頃まで、日本の1人当たりの名目GDPは世界のトップクラスを維持していた。具体的には1990年のアメリカの1人当たりの名目GDPは2万3848ドル、日本は2万5809ドル、1995年は円高もあってアメリカのそれは2万8671ドルで日本は4万4210ドルでアメリカをはるかに凌駕していた。
それが2021年にはアメリカは7万1257ドル、日本は4万161ドルと日本の1人当たりの名目GDPは全く増えていないかむしろ減っている。最近では韓国や台湾にも抜かれる始末で、2024年のそれは、日本3万2859ドル、台湾3万3234ドル、韓国3万6132ドルで、世界の順位は日本39位、台湾37位、韓国33位で、東アジアの中でも、日本の凋落の速度は凄まじい。
平均賃金も伸びず、庶民の暮らしは苦しくなるばかり
平均賃金について見るとOECD(経済協力開発機構、加盟国38か国)の平均は2022年度5万3416ドルで、日本のそれは4万1509ドル、加盟国中25位である。1991年の平均賃金を100とすると、OECDの平均は2022年133で、日本のそれは103と、世界の平均賃金が30年余りで33%増えたのに日本のそれは3%しか増えていない。日本の物価はデフレとはいえ30年余りで11%上昇したので、賃金の上昇はデフレでも物価に追い付かないのである。庶民の暮らしは苦しくなるばかりだ。
国力の衰退は円が弱くなって円安が進んだことからも明らかで、1995年は円高で、4月に史上最高値を更新した時は1ドル79円75銭であった。1990年代後半から110円台になり、2011年10月に75円32銭の史上最高値を付けた。2014年頃から2021年まで110円前後で落ち着いていたが、2022年以降急激な円安が進み、現在は140円台である。円が安くなると外貨の価値が上がり、日本へ旅行する外国人が増えてくる。いわゆるインバウンドだが、外国人旅行客が増えるということは日本が衰退してきた証拠で、喜ぶべきことではない。観光は生産力の向上にはさして寄与しないので、国力の向上にもあまり役に立たない。円が安くなると輸入品の価格が上がり、物価を上昇させる原因になる。
2025年になって、賃金は上がらないのに米の価格も野菜の価格もどんどん上がり、日本はスタグフレーション(景気が停退して賃金が上がらないのに物価が上がること)の様相を呈してきた。このままの状況で、大震災が起これば、庶民は食べ物もエネルギーも入手できずに、生活苦に直面することは必定である。それまでに何とか、日本の生産力を上げて国力を回復したい。そのための方途はあるのか。
消費税を下げてみればわかること
日本衰退の最大の犯人は消費税である。これを廃止すれば、景気は間違いなく上向くだろう。1989年に3%の消費税が導入され、1997年に5%に引き上げられ、2014年に8%、2019年に10%になって現在に至っている。経済が順調ならば民間最終消費支出は右肩上がりに伸びていくが、消費税が上がると、民間最終消費支出は、必ず前年度を下回り、景気の足を引っ張る。
例えば、消費税が10%に上がった2019年には民間最終消費支出は前年度比99.1%で、2020年は前年度比95.2%に落ち込んでいる。2023年になっても民間最終消費支出が最も多かった2013年(8%の消費税が導入される前年)の97%に留まっている。もし、消費税が5%のままだとすると、2013年の水準から民間最終消費支出が平均的な上昇率である年2%上昇するとして、2023年度は373兆円(実際は296兆円)になっていたという計算になる。
消費税が導入されるのに伴って法人税が減税され、1998年から1999年にかけてそれまでの37.5%から段階的に30%に引き下げられ、2012年に25.5%、2015年から2018年にかけても段階的に引き下げられて、現行の23.2%になっている。長らく政権党である自民党への多額の政治献金と引き換えに、法人税の減税を勝ち取ってきた大企業は、「大企業が栄えれば経済が栄える」というトリクルダウン説を振りかざして、自分たちだけが儲かることに奔走してきたが、トリクルダウン説が間違っていることは、消費税を上げて法人税を下げて大企業を優先してきたのとパラレルに、日本の経済が衰退したことから、もはや議論の余地がない。
大企業が儲かっても社員の給与は上がらない
法人税を下げて、企業が儲かっても儲けの大半は内部留保(企業の黒字分を使わずに貯蓄しておくこと。2023年度の内部留保金は過去最高の600兆9857億円)になっているため、この金は市場に流れずに景気を喚起することに役に立たない。せめて、自社の社員の給与を上げることに回せば多少は景気が良くなると思うが、現状では、大企業が儲かっても、株価と役員の給与が上がるだけだ。
一方、消費税を増税すると、低所得層は消費行動を控え気味にするので、先に詳述したように景気は絶対に下がるのである。GDPの5~6割は家計の消費なので、消費税の影響は大きい。内部留保が600兆円以上あるのだから、法人税を上げるべきだ。法人の99%は中小企業で、大半は黒字すれすれか赤字なので、法人税を上げても中小企業への影響はほとんどない。
消費税は輸出企業には有利で、国内からの部品等の調達には消費税を払い、輸出先からは消費税を取れないので、支払った額ともらった額の差額が還付金として戻ってくる。例えばトヨタの2022年の消費税還付金は5276億円で日本一、2位は日産の1897億円、3位は本田の1879億円と、これらの大企業は消費税が上がっても一向に困らないばかりかむしろ得するわけだ。部品を納入する中小の下請け企業は、消費税をもらってもギリギリまで値下げさせられているのであまり儲けは大きくない。ということは大企業が得しているということだ。
食うや食わずの庶民からも容赦なく搾り取られる消費税
アメリカ大統領のドナルド・トランプが日本の消費税を廃止しろと言っているのは、日本国内で自動車を売ると10%の消費税を取られるが、アメリカに輸出すると関税は2.5%で、日本に比べ販売価格が割安になるので、実質的にダンピングになり、アメリカの自動車産業を圧迫するからけしからん、という理屈だ。日本の一般庶民にとっては、消費税は取られ損なだけだけれどね。
消費税を減税すると税収が足りなくなってやっていけないという議論がある。確かに国の税収の割合を見てみると、税収65.2兆円の内、消費税が占める割合は33.1%、所得税31.3%、法人税20.4%、その他15.2%(2022年度)となっている。それ以外の歳入として公債金が36.9兆円、その他が5.4兆円あり、国の一般会計歳入は107.6兆円である(2022年度)。
内部留保が600兆円以上ある法人からの法人税は13.3兆円で、食うや食わずの庶民からも容赦なく搾り取る消費税が21.6兆円というのは異常としか言いようがない。消費税を下げれば、景気が回復して企業の利益も上がり、労働者の賃金も上がるので、消費税の減税分を補って余りある税収が期待できると思う。だと思うなら消費税を5%に下げてみればわかる。それで数年たって税収が上がらなかったらまた10%に戻せばいいじゃないか。
通貨発行権のある日本の政府がやるべきこととは
亡くなった森永卓郎にザイム真理教と揶揄されたように、日本の財務省は均衡予算主義(税収と歳出が同じになるのがベストという考え)を墨守しており、歳出が増えたら、税収を増やさなければならないとかたくなに考えている。そのため予算が緊迫するととりあえず税収を上げようと考える。法人税の増税は大企業が反対し、所得税の増税は富裕層が反対するので、一番手っ取り早いのは消費税の増税、というわけで、消費税率はどんどん上がってきた。
しかし、MMT(現代貨幣理論)によれば、日本のような通貨発行権のある政府は、通貨を発行して歳出に充てることが可能なため、財源を税収に頼る必要がなく、均衡予算主義とは縁を切っても問題はない。また、MMTによれば、通貨発行権のある国は、通貨を発行しても、自国通貨建ての国債を発行しても、デフォルトに陥ることはない。例えば、国債を発行して償還期限が来たら、通貨を発行して返せばいい。注意することは国民経済における財やサービスの供給能力を無視して、通貨発行権を使った積極財政(通貨や国債の発行)を推し進めれば、インフレが加速するので、インフレ率を勘案しながら、通貨を発行しなければならないことだけだ。

MMTを信用するとハイパーインフレになって国が破綻すると主張する人がいるが、日本の2024年12月末時点の国債残高は1317兆6365億円もあるけれど、日本はハイパーインフレにもなっていなければ破綻もしていない。均衡予算主義はここだけ見ても経済の動向に整合的な理論でないことは明白である。インフレ率を何%まで許容するかは難しいが、2~4%を目安に、この範囲で収まっていれば、積極財政を進めていって問題はない。
大地震を乗り切るための体力
まず、消費税減税をして(最終的にはゼロにして)、景気を喚起する(民間最終消費支出を上げる)。景気が上向きになれば財やサービスの供給量を増大させなければならないので、生産力は上向きになる、生産力が上向きになれば、それに見合う通貨を発行して需要を喚起し、積極財政を推し進める。国債を発行して歳入を増やし、南海トラフ地震に備えて、自給率を向上させるために第一次産業に大幅な補助金を出し、生産者数と生産量を増やす。食料自給率は100%が望ましいが、10年の余裕があるので、毎年5%ずつ増やせば現在の38%を90%近くまで引き上げられる。
次に南海トラフ地震に備えてインフラ整備をする必要があり、そのためにそれなりの資金を投入すれば、日本の生産力は上がるだろう。景気が上向けば、賃金も上がって消費力が上がり、それに見合う供給力が必要になり、総体として生産力が上がり、南海トラフ地震を乗り切れる体力(国力)がついてくるだろう。
ここまでしてもインフレ率が低ければ、もっと通貨を発行しても問題がないわけで、ベーシックインカムをやればよい。ベーシックインカムとは国民のすべてに無条件にお金を支給することで、金持ちにも低所得層にも一律に同額を支給するのである。これは金持ち優遇と言われそうだが、確定申告で金持ちからは所得税として戻してもらえばいい。なぜ一律がいいかというと、システムが簡単だからである。低所得層には沢山配って、金持ちには配らないような制度を作ると、このシステムを立ち上げるのにコストがかかる。一律に配って確定申告の時に調整する方がコストがかからないのだ。
ベーシックインカムをどのくらいの額にするかは難しいが、最初は月に2万円くらいから始めて、インフレ率を考慮して調整すればいいと思う。1.2億人に月に2万円配るとして、年に30兆円弱の通貨を発行すればいい。1300兆円余りの国債残高があっても破綻していないのだから、これくらいのお金を国民に配っても問題はない。景気は絶対に良くなって生産力も上がり、もちろん国力も上がるに違いない。上手くいけば、南海トラフ地震を乗り切れるだろう。
〈 「いじめ以外の何ものでもない」「ほとんど詐欺である」…78歳の人気学者が味わった“高齢者講習”の残念な実情 〉へ続く
(池田 清彦/Webオリジナル(外部転載))

維新・藤田氏の“名刺晒し問題”に「地域性で品位が許容されるわけではない」「感情のコントロールができない下品なケンカ」と厳しい声

維新の藤田文武共同代表による記者名刺投稿問題について、専門家が「犬笛行為に該当する可能性がある」と指摘した。
事の発端は、しんぶん赤旗が10月29日に藤田氏の「税金還流」疑惑を報じたことだ。藤田氏側が公設秘書の会社に税金を原資とする多額の資金を支出していたと指摘する内容だった。
これに対し藤田氏は「すべて実態のある正当な取引」と反論。質問状への回答が記事に反映されていないとして、記者の名刺を自身のXに投稿した。
専門家が問題視する「犬笛」効果
毎日新聞の報道によると、専門家は記者の個人情報公開については「プライバシー侵害には当たらない」との見解を示した。記者は匿名性のある仕事ではなく、名前や所属部署について「プライバシーの合理的期待があるとは言えない」ためだという。
しかし、取材活動への妨害・威嚇行為については別の問題があると指摘。藤田氏が不都合な記事を出された直後に記者の名刺を投稿した経緯を踏まえ、「記者への攻撃や嫌がらせを意図した『犬笛』と見ることができる」と述べた。
「犬笛」とは影響力のある人物が一言呼びかけると、多数の人々が扇動される現象だ。専門家は「業務妨害や名誉毀損に相当する行為を誘発した、少なくとも認容していたとして、場合によっては藤田氏の行為が違法性を問われる可能性がある」と警告している。
政治家の品格を問う意見も
この問題を受けて、Yahoo!ニュースのコメント欄では多くの反応が寄せられている。
「自分と対立する記者に対し、個人情報を公開するという藤田氏のやり方は悪質であると感じる。自分が正しいと確信があるなら、そのことを説明すれば良いだけ」との批判的な声が目立つ。
また、「政治家には政策だけでなく、言動や態度にも品位が求められる。関西では『当たり前』とする声もあるようだけど、地域性で品位が許容されるわけではない」と、政治家の品格を問う意見も見られた。
一方で維新創設者の橋下徹氏と比較する声もあった。「当時の橋下のケンカの巧みさは別格だった。藤田みたいに感情のコントロールができない下品なケンカとは違う」との意見も見られた。
記事では、関西在住者からの「『維新しぐさ』が全国にバレてしまった」という声も紹介されている。関西では威圧的な態度が「当たり前の風景」となっているが、全国レベルでは通用しないのではないかという指摘だ。
維新は高市政権に協力し与党となったが、権力側のチェックを受けるという覚悟が問われている。
(「文春オンライン」編集部)

ハンセン病家族訴訟団長・林力さん亡くなる

ハンセン病の元患者の家族が起こした裁判で、原告団長を務めた林力さんが今月8日、福岡市の自宅で亡くなりました。101歳でした。
ハンセン病の元患者の家族が国に損害賠償などを求めた裁判で、原告団長を務めた長崎県出身の林力さん。
自身の父親もハンセン病の患者として鹿児島県の療養所に隔離され、亡くなるまでの24年半の間、離れて過ごしました。
林さんは原告団長として、元患者の家族も隔離政策で差別を受けてきたと訴え、熊本地裁が6年前、国におよそ3億7000万円の支払いを命じました。
福岡県の同和教育研究協議会の初代会長などを務めた林さん。今月8日、福岡市の自宅で亡くなりました。101歳でした。