米ワシントンでの5回目の日米関税交渉を終えた赤沢亮正経済再生担当相が8日、帰国し、石破茂首相に首相公邸で交渉結果を報告した。この後、赤沢氏は対米交渉について記者団に「そう単純なものではない。事務方、閣僚級で詰めるべきことが非常にたくさんある」と述べ、15~17日の先進7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせた合意を視野に、進展に向けて全力を挙げる姿勢を示した。
報告には林芳正官房長官らも同席。赤沢氏は記者団に、詳細は伏せつつ「(首相から)今後の進め方などについて指示を頂いた」と説明した。首脳間の直接交渉で打開を図る可能性を記者団から問われると、交渉内容は複雑だと指摘した上で「首相がトランプ大統領と話して結論に直ちに結び付くことにはなかなかならないだろう」と語った。 [時事通信社]
名古屋のホテルに男性遺体、首に絞められたような跡あり死因は窒息死…愛知県警が殺人事件と断定
名古屋市中区のホテルの一室で7日に男性会社員(32)(愛知県春日井市)の遺体が見つかった事件で、愛知県警は8日、司法解剖の結果、死因は窒息死だったと発表した。首に絞められたような跡があることなどから県警は殺人事件と断定し、中署に捜査本部を設置した。
発表によると、男性は7日の発見時、上半身が裸でうつぶせに倒れていた。目立った外傷や争った形跡はなかったが、シーツに鼻血とみられる血痕があった。
男性が帰宅せず、連絡もとれないことを心配した男性の妻が会社に連絡。男性は6日に複数の同僚と名古屋市内の飲食店に行った後、ホテルに入ったことがわかった。同僚男性が、ホテルの女性従業員とともに、部屋を確認したところ、倒れている男性を見つけたという。
現場は飲食店やホテルが立ち並ぶ繁華街の一角。
上野結梨容疑者(22) 詐欺未遂容疑、22歳女を逮捕(朝霞署)
朝霞署は5日、詐欺未遂の疑いで、名古屋市名東区猪高台1丁目、自称飲食店員上野結梨容疑者(22)を逮捕した。
逮捕容疑は氏名不詳者と共謀し、5日午後2時ごろから数回、和光市の無職男性(51)方に息子らを装って「俺だよ。仕事の契約で必要な書類の送付先を間違えた」「契約に必要な送金カードが入っており、明日返せるので300万円ぐらいなんとかならないか」などと電話し、現金をだまし取ろうとした疑い。
同署によると、詐欺と気付いた男性が同日午後2時10分ごろ、110番。その後、だまされたふりをして犯人の電話に応じた。4時5分ごろ、男性方近くにタクシーで乗り付け、周辺を歩くなど不審な動きをしている容疑者を警戒中の捜査員が発見。署に任意同行を求め、「詐欺行為のために来た」と容疑を認めたことから逮捕した。
山形大また個人情報流出か、付属中の生徒や職員2269人分…職員PCに「ウイルス感染」の警告
山形大は3日、同大付属中学校の業務用パソコンなどから生徒や教職員ら計2269人分の個人情報が流出した可能性があると発表した。これまでに個人情報の悪用などの被害は確認されていないという。
発表によると、5月26日午後5時半頃、同校職員がパソコン操作中、画面に「ウイルス感染」の警告と電話番号が表示された。電話で指示に従うと遠隔操作のソフトがインストールされ、金銭を要求された。詐欺と気付いて接続を切った。
パソコンや職員室の共有ハードディスクに保存されていたデータが流出した可能性がある。同大付属中の生徒や卒業生、教職員の氏名や住所、電話番号などのほか、成績や進級の判定に関する情報も含まれていた。同大は県警に相談した上、生徒や保護者に事態を説明し謝罪した。
同大は5月12日にも、4月に同様の経緯で、農学部の学生ら計2306人分の個人情報が流出した可能性があると公表していた。同大で記者会見した玉手英利学長は「再発防止を徹底しきれず、深くおわびを申し上げる。情報セキュリティー体制の抜本的な改善や全学的な防止体制の強化などに取り組む」と述べた。
石丸・玉木・斎藤現象とは何か…「おじいちゃんもスマホ」時代のSNS選挙元年に起きた3つの異変
※本稿は、辻元清美・小塚かおる『日本政治の大問題 陰謀論、裏金・献金、暴走SNSの本質を問う』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
2024年は、7月の東京都知事選挙、10月の衆議院選挙、そして11月の兵庫県知事選挙と、日本の選挙においてSNSの影響力がかつてないほどに可視化された「元年」だったと言える。いわゆる三つの現象がその象徴だ。
いったい、選挙の現場で何が起きているのか。有権者の意識にどんな変化があったのか。そこで、SNSに詳しい作家・古谷経衡(つねひら)に、教えを乞うことにした。
古谷は1982年生まれ。いわゆる「保守界隈」で言論活動をスタートするが、「ネット右翼(ネトウヨ)」と呼ばれる人たちの狭隘で偏向した思考に接し、彼らから距離を置き客観的な論陣を張るようになったという異色の経歴を持つ。
【小塚かおる(以下、小塚)】私と辻元さんの2人だとSNSの現状について戸惑うことばかりなので、「古谷先生、教えてください」ということで、今日は「勉強会」をお願いしました。
石丸現象、玉木現象、斎藤現象とありましたが、SNSと政治や選挙との関係性で、一気にガラガラっと地殻変動みたいなものが起きている感じがしています。それが具体的に何なのか測りかねていて。古谷さんの現状認識を聞かせてください。
【古谷経衡(以下、古谷)】私自身、ミクシィの時代からSNSをやっていますから、SNSを割と使いこなしている方だとは思います。私は今回の現象をもって、突然、SNSを使った選挙が候補者の得票に影響したとは全く思っておりません。
【小塚】えっ、そうなんですか。
【古谷】元々、こういったSNSを使った選挙対策は、特に辻元さんのいらっしゃる参議院では、自民党がJ-NSC(自民党ネットサポーターズクラブ)を組織して早くからやっていましたから。有権者の住所が各地に点在しているので、衆議院の比例ブロックより参議院の全国比例でSNSが極めて有効なんです。
【辻元清美(以下、辻元)】確かに。全国一斉に拡散できますからね。
【古谷】始まったのは麻生太郎政権(2008年~09年)の時代で、当時はたいしたことはありませんでしたが、やっぱりここ10年ぐらいはSNSを使って何かできないかと、各党がネット戦略、SNS戦略に積極的に動いているので、決して珍しくもない。
もちろん立憲民主党もやってらっしゃいますけれども、どこかの党にプラスになったり、マイナスになったりということが少し見えづらかっただけでありまして。だから、「SNSで投票行動を決めます」みたいな話は、実はここ10年ぐらいの間、ずっとあったわけです。ただ、それが可視化されたのは、確かにおっしゃる通り、2024年かなぁ、という気がします。
【小塚】10年の間にじわじわと広がり、2024年に弾けたような感じ?
【古谷】スマートフォンの普及率は今、92パーセントぐらいです。13~14年前は2割から3割なんですよね。この短い間で、スマホのユーザーが大体60パーセントぐらい増えた。そのほとんどが中高年なんですよね。
私はスマホを2009年ぐらいに買いました。09年だと普及率が10パーセント台なんですが、感度の高い若い世代はもうその頃からスマホを持っています。ここ10年で増えたのは、ガラケーで最後まで頑張っていた人たちがスマホに買い替えたというケース。だから今、おじいちゃんでもスマホを持っているでしょう。
【小塚】まもなく80歳のうちの母もガラケーからスマホに替えたのが4年前ですね。
【古谷】もちろん、普通のパソコンでSNSをやっている人もいますけれど、スマホって、寝っ転びながら使える身体特性があるじゃないですか。中高年にもマッチするスマホという機器がまず普及して、旧ツイッター(現・X)とフェイスブックを使うようになった。
面白いことに、Xがほぼ全てですね。フェイスブックやティックトック、インスタグラムはあまり政治性を帯びてないんです。特にインスタグラムは写真付きで投稿しないといけないので、どうしてもご飯の写真とか、猫や犬の写真になる。
【辻元】ほとんどXなんだ。
【古谷】他は主戦場じゃないんですよ。そういうのに感化されやすいのはミドルからその上ぐらいの世代です。特にXとXに埋め込まれた動画ですよね。あとはユーチューブ。ログインが必要ないので、すごく親しみやすいんです。
ユーチューブってSNSなの? って思われる方もいるかもしれませんが、総務省の統計ではSNSに入っている。たぶんコメントができるからなんでしょう。私の本(『シニア右翼 日本の中高年はなぜ右傾化するのか』=中公新書ラクレ)に書いているんですけど、中高年のSNS利用は圧倒的にユーチューブとXですね。利用者の母数が増えて、いよいよ可視化されてきたという面があると思います。
【小塚】そうすると、中高年がSNSを始めたことでボリュームが急激に増えて、それが可視化された。つまり影響力が大きくなったっていうことですか。
【古谷】小塚さんがおっしゃったように、2024年は東京都知事選挙の石丸伸二さんの躍進があり、玉木雄一郎さんの国民民主党が注目された衆議院選挙があり、そして兵庫県の斎藤元彦知事の再選がありました。ただ私は、この三つの選挙で起きた現象は、それぞれ少しずつ違うと思っているんです。
【辻元】そうなんだ。どう違うの。
【古谷】まず、都知事選挙での石丸さんの大番狂わせというか、2位につけた躍進については、報道されている通りで、これを支えたのは比較的若い世代、20代から40代ぐらいだと思います。
ただ、少子化が進んでいますので、メインの支持層は私と同じアラフォーぐらいでしょう。石丸さんは私と同い年です。20代ですと、演説には集まっても投票に行かない人もいるので、実際は30代、40代が中心。それでも、これまで想定されてきたような投票の主力層よりちょっと若めですよね。
【小塚】選挙結果を左右するのは50代以上の投票行動と思われてきましたからね。
【古谷】石丸さんの場合は、もちろんSNS、中でもティックトックの効果があったんですけれども、石丸さんの本を読んでいると、コスパやタイパといった、合理的な思考を推奨している。損だったらやらない、得だったらやるんだって。これを政治に当てはめることで、政治でも合理的な取り組みができるんだという考え方です。いわゆる「切り捨て」というか、そういうことを「良し」とする。ひろゆきさんや堀江貴文さんなどが好きな層と重なっています。その層って、若い子ではないんですよね。だいたい私の世代つまり就職氷河期世代なんですよ。Z世代ではありません。
【小塚】政治にコスパって、どうかと思いますが……。
【古谷】合理的に相手を論破する。そうしたものを見て、快感を覚える。政治的リテラシーは右でも左でもないような人たちです。ちょっと小馬鹿にするような「冷笑系」というやつですね。ただ、石丸さんもそうなんですが、そういう人たちは知識や教養がない人だと私は思っています。石丸さんは、自身を「漫画賢者」と名乗っていますが、はっきり言って私の方が100倍オタク。
【古谷】ただ、なんて言いましょうか、具体的な政策はなく、すごくキラキラしたこと、例えば「日本の危機です」「人生を変えたい」。そんな自己啓発本みたいなものを石丸さんは書いているんですけれども、具体的な知識はなくても、漠然としたキラキラに惹かれる人たちが一定数いると思っています。ですから、都知事選の石丸現象は、SNSが関係してはいるものの、承認欲求や注目を浴びたい人がいて、それを私は「意識高い系」って呼んでいるんですが、そういう層にリーチして都知事選で2位になったんじゃないかと見ています。
【小塚】意識高い系、ね。
【古谷】私もそうですけど、石丸さんは地方出身で東京に憧れがあって、ちょっとお勉強もできて、そこそこいいところに行くんだけれど、まだ何か足りない。何かというのは、承認されたい、認められたいという欲求。それが金銭欲に行く人もいれば、モテたいみたいな人もいる。
石丸さんの場合は、自己顕示欲なんでしょうけど、そういうものに共感する人とSNSは相性がいい。だって、具体的じゃないんですから。SNSの文字数では具体的なことは書けないんです。そこからユーチューブへ飛んだって、彼のティックトックなんかは5分とか10分。すごく短いセンテンスで、なんとなく合理的でコスパのいいようなことを言っている。でも、実際ずっと聞いていると中身が何もない。SNSとか、Xの140文字と相性が良かったんでしょうというのが、私の石丸支持層の見立てなんです。
【辻元】コスパ。タイパ。承認欲求。どれも今風だよね。
【古谷】こうした石丸現象と玉木現象を同じように扱う人がいますが、私は疑問に思っています。玉木さんの主張の正確性はともかく、いわゆる「年収103万円の壁の引き上げ」とか「若年層の手取りを増やす」については、私もアルバイトをしていた時に同じような疑問を感じていたので、悪い話ではないと思うんですね。斎藤知事の再選と石丸現象は確かに似ているんです。でも、玉木さんの国民民主党が躍進したのは、ある程度、政策的な吟味をした結果であり、自民党より玉木さんの方がマシでしょう、みたいなことで投票した人がいる。要するに、玉木さんたちは具体的な数字を出しているわけですよね。だから、具体的なものがない石丸さんとも違うし、斎藤知事とも違う。SNS戦略は上手かったとは思いますが。
【小塚】玉木現象は政策的な訴えがSNSを通じて有権者に響いた?
【古谷】これまでなんとなく自民党に投票していた、ある程度、政治的リテラシーがある人が一部、国民民主党に行った。そう考えると、石丸現象と一緒にするのは気の毒な気がします。普通の有権者に政策が刺さった。プラス、SNS効果の部分もあった。国民民主党への投票は若い世代が多いと言われますが、絶対的なボリュームでは40代、50代、60代だと思います。自民党を支持していたが、今回は国民民主党。そういうことだったと思います。
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(参議院議員、立憲民主党代表代行 辻元 清美、日刊現代第一編集局長 小塚 かおる、文筆家 古谷 経衡)
リニア建設を11年止めた「水一滴」問題の重すぎる代償…静岡県の”あっさり幕引き”を許していいのか
静岡県の第20回地質構造・水資源専門部会が6月2日開かれ、JR東海のリニア南アルプストンネル静岡工区(8.9キロ)工事による大井川流域の水資源に与える影響を話し合った。
この会議の結論で、静岡県は「田代ダム案のリスク管理、具体的なモニタリング計画について了解した」と発表した。
これで、リニア問題の最大の懸案である約10カ月間の山梨県境付近の工事で、最大500万トンの県外流出する湧水と同量を、東京電力・田代ダムの取水抑制をして大井川に放流するJR東海の「田代ダム案」のすべてを了解したことになる。
翌日3日の朝刊各紙は一斉に、「リニア 水資源議論終結」(中日)、「水資源の対話全て完了」(静岡)、「リニア水問題 JR東海との対話完了」(日経)などと伝えた。
つまり、静岡県とJR東海の間で約11年間続いた「大井川の湧水の全量戻し」の騒ぎに決着がついたと報道したのだ。
ただこれらは事実とは大きく異なる。
何よりも問題なのは、長野県境での県外流出問題は専門部会でまったく議論されていないことだ。
会議後の囲み取材で、筆者が「山梨県境の問題は終わったが、同じ状況の長野県境付近の工事で流出する湧水の問題は残っている。それは解決したことにするのか」と確認した。
これに対して、県担当理事は「長野県へ流出する湧水は静岡県のものである。専門部会ではなく、県とJR東海との協議で解決する」などとあまりにも不思議な回答をした。
もし、本当にそうならば、実際のところ、JR東海との水資源に関する対話が完了したことにはならない。それだけでなく、最初から、専門部会など設置しないで、県とJR東海だけで対話すればよかったのである。
翌日改めて担当課に確認すると、「長野県へ流出する湧水の問題をどうするのか検討するのはこれから」と対応を変えていた。つまり、まだ水資源に関する専門部会は終わっていないのかもしれないのだ。
川勝平太前知事の時代、県が「情報操作」を繰り返すことによって、あたかも大井川下流域の湧水が枯渇するような間違った印象を県民に与えてきた。マスコミも県からの情報を鵜呑みにして流し続けた結果、とてつもなく長い歳月がかかってしまった。
知事が交代して、それまでの主張を一切検証しなかったから、突けばボロが出てしまう結論となってしまった。
現知事の「スピード感を持った解決」という方針の下、今回は玉虫色の解決で済ましたが、長野県境の問題をどのように処理するかで行政に対する信頼が評価されることになる。
ただ、それまでの静岡県とJR東海の対話が何だったか担当者さえ理解できていないようだ。だから、県民には何が何だかさっぱりわからないだろう。
まずは、川勝氏の求めた「全量戻し」とは何だったのか、わかりやすく説明していく。
水問題の発端は2013年9月の環境影響評価準備書にまでさかのぼる。
JR東海はその中で、「トンネル工事で大井川上流部の流量が毎秒2トン減少する」と予測した。その毎秒2トン減少する予測に驚いたのは、大井川下流域の住民たちである。
南アルプスの地下約400メートルを貫通するリニアトンネル工事は、山梨工区から上り勾配で静岡工区に入り、約8.9キロの静岡工区から今度は下り勾配で長野工区へ入っていく。
だから静岡工区のトンネル工事で、何の対策もしなければ、毎秒2トンの湧水が山梨、長野の両県側に流出してしまうことになる。
2014年1月に開かれたJR東海主催の公聴会で、当時の牧之原市長らが毎秒2トンの湧水減少に対して強い懸念を示した。しかし、JR東海からの具体的な回答はなく、流域住民らの懸念は解消されなかった。
このため、牧之原市をはじめ大井川流域7市2町の首長が「JR東海に地下水を含む『大井川流域の水は大井川に返すこと』を原則とした保全措置を講じること」を求める要望書を静岡県に提出した。
この要望を踏まえ、大井川の流量が毎秒2トン減少する予測に対して、静岡県は2014年3月に「減少のメカニズムをわかりやすく説明するとともに(中略)トンネル内の湧水を大井川へ戻す対策を取ることを求める」などとする知事意見書をJR東海に送った。
知事意見書には「工事中のみならず、供用後についても大井川の流量を減少させないための環境保全措置を講ずること」「トンネルにおいて本県境界内に発生した湧水は、工事中及び供用後において、水質及び水温等に問題がないことを確認した上で全て現位置付近に戻すこと」を盛り込んだ。
この中にある、「工事中、工事後に発生する湧水を水質、水温等に問題がないことを確認した上で全て現位置付近に戻すこと」など、どう考えても不可能である。しかし、この文言がその後の「全量戻し」を求める根拠となった。
知事意見書を踏まえ、JR東海は2017年1月、環境影響評価の「事後調査報告書」を静岡県に提出した。
これに対して、静岡県は2017年4月に送った2度目の知事意見書で「トンネル湧水の溶存成分等の水質や水温に問題がないことを確認した上で、全量を恒久的かつ確実に大井川に戻すことを早期に表明すること」など具体的でさらに高いハードルを課した困難な要求をした。
JR東海は2017年10月までに、「トンネル内の湧水減少分の毎秒1.3トンをリニアトンネルから大井川の椹島付近まで導水路トンネル設置することで回復させる。残りの0.7トンは必要に応じてポンプアップで導水路トンネルへ戻す」方策を明らかにした。
これに対して、川勝氏は2017年10月10日の定例会見で、「あたかも、水は一部戻してやるから、ともかく工事をさせろという態度に、わたしの堪忍袋の緒が切れました」と怒りを爆発させた。
この会見から、静岡県の「全量戻し」の大騒ぎが始まった。
当時、JR東海と大井川流域の利水者11団体とリニア工事着工に向けた基本協定を結ぶ詰めの交渉が行われていた。担当職員から交渉の状況を聞いた川勝氏は「協議の詰めが行われているが、極めて傲慢な態度で臨まれている」とJR東海の対応を厳しく非難した。
リニアトンネル工事による大井川の毎秒2トン減少は、大井川の表流水を使い、流域7市へ水道水を供給する大井川広域水道企業団に許可されている水利権量の毎秒2トンと同じである。
毎秒2トンは、大井川流域の約60万人の水道水と密接に関係していた。
川勝氏をはじめ流域市町長らは毎秒2トン減少に対する「全量戻し」を強く求めた。川勝氏は「静岡県の60万人が塗炭の苦しみを味わうことになる。それを黙って見過ごすわけにはいかない。ルートを変えることを考えたほうがいい」などと主張をエスカレートさせた。
これに対して、JR東海は2018年10月、ようやく「原則として湧水全量を戻す」と表明した。これで、毎秒2トン減少の「全量戻し」は解決したかに見えた。
このJR東海の「全量戻し」の発表以後、専門部会では、毎秒2トン減少に対する「湧水全量戻し」の具体的な方法が議論の中心となっていた。
そんな中、静岡県は2019年6月になって、これまでの議論の疑問点をまとめた「中間意見書」で、「山梨工区、長野工区のトンネル工事が先行することにより、静岡県内の水が山梨・長野県に流出する可能性がある。これについての評価と対策を示す必要がある」とJR東海の回答を求めた。
JR東海は同年7月、「山梨、長野工区で先行して掘削しなければならず、これまでも説明したように県境付近の工事期間中に、山梨県側に毎秒0.31トン、長野県側で毎秒0.01トンの湧水流出を想定している。できる限り湧水流出量を低減していく」と回答している。
静岡県は、JR東海のこの回答を「ほぼゼロ回答」とし、評価しなかった。
ただ静岡県は、県境付近の工事中、山梨・長野県側に湧水が流出することをはっきりと認識していたのは確かである。
ところが、2カ月後、あまりにも奇妙なことが起きる。
2019年9月20日、地質構造・水資源専門部会長とJR東海との意見交換会が開かれた。
JR東海が山梨県側から上向きで掘削する工事中に、湧水が県外流出することを説明していると、オブザーバー参加していた難波喬司副知事(現・静岡市長)が突然、発言のために手を上げてJR東海の説明をさえぎった。
そこで、難波氏は「全量戻せないと言ったが、これを認めるわけにはいかない。流域の利水者は納得できない。いまの発言は看過できない」などと激しく反発した。JR東海はちゃんと説明しようとしたが、難波氏は聞く耳を持たなかった。
その後の囲み取材で、難波氏は「湧水全量が返せないことが明らかになった」と、まるで初めて、山梨・長野県境の工事に湧水が流出することを知ったような発言を繰り返した。
翌日の新聞各紙は1面トップ記事で、「JR東海は湧水全量戻しせず」(中日)、「湧水全量戻し一定期間は困難 県反発」(静岡)などの大見出しで伝えた。他の中央紙も全く同じ内容を地方版で伝えている。
JR東海は以前から、専門部会で山梨・長野県境の工事期間中に湧水が流出することを説明していた。それにもかかわらず、難波氏の発言を信じて、新聞各紙は初めてJR東海の「全量戻し」ができないことが明らかになったと報道した。
極め付きは、2日後の23日の知事会見だった。
川勝氏は「湧水全量戻すことを技術的に解決できなければ掘ることはできない」「全量戻しがJR東海との約束だ」「静岡県の水一滴でも県外流出することは容認できない」などと述べた。
ここで、初めて、川勝氏は「水一滴も県外流出を許可できない」と宣言した。これで静岡工区のトンネル工事に伴う毎秒2トンの湧水減少から、県境付近のトンネル工事による山梨・長野への県外流出へとテーマがすり替わってしまった。
まんまとだまされたテレビ、新聞は川勝知事の「水一滴の全量戻し」宣言を大きく伝えた。
毎秒2トン減少に対する「全量戻し」から、JR東海の約束を根拠にした新たな「全量戻し」が始まったのだ。まさに詭弁を弄することで、「水一滴」がリニア議論の主役に躍り出た瞬間だった。
当然、JR東海の対応にも問題があり、それに対する知事、副知事の戦略だったが、今回はその部分は長くなるので省略する。
このときから、川勝氏の「水一滴の全量戻し」が始まり、「毎秒2トン減少に対する全量戻し」は議論から消えた。
この全量戻しは、静岡県の水環境を守ることとはまったく違い、単なる川勝氏の「情報操作」であり、それに大井川流域の住民らも、川勝氏の「命の水を守る」のキャッチフレーズをまんまと信じ込まされてしまった。
当初の「全量戻し」の求めから約11年だが、6月2日に行われた対話のテーマで約6年間を費やした。
「情報操作」に明け暮れた川勝前知事はもちろんだが、それをろくに検証もせずに垂れ流したマスコミの罪も重い。
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(ジャーナリスト 小林 一哉)
Xの非公開アカウントで投稿し発覚…JR東海の30歳社員が乗務中の運転室で自作の看板掲げる等の「不適切行為」
JR東海は2025年6月6日、乗務中の30歳の男性社員が、運転室で自作の看板を掲げるなどして、知人に撮影させ、SNSに投稿する不適切な行為があったと発表しました。 JR東海によりますと、30歳の男性社員は2021年8月、飯田線に乗務した際、運転室で自分の名前を書いた私物の看板を掲げ、車両の表示を「普通」から「試運転」に変更して長野県天龍村の為栗駅ホームにいた知人に撮影させたということです。 また2024年2月にも、東海道本線の運転室で同じ看板を掲げ、表示を「回送」から「快速」にするなどし、愛知県蒲郡市内で沿線から知人に撮影させていました。 男性社員は2025年2月、画像を20人ほどの知人が閲覧できるXの非公開アカウントで投稿していて、5月に外部からJR東海に問い合わせの連絡があり、発覚しました。 男性社員は「限られた仲間の中で、撮影した写真を共有することで喜んでもらいたかった」「してはいけないことと分かってはいたが発覚しなければよいと考えていた」と話しているということです。 JR東海は「全乗務員に対して改めて指導を徹底し再発を防止します」とコメントしています。
中国人観光客が面識ない男に切りつけられる…右肩付近などケガ 男は逃走中 京都・下京区
6日夜、京都市の歩道で、男性が刃物で切りつけられる事件があり警察が逃げた男の行方を捜査しています。
警察によりますと、6日午後8時ごろ、京都市下京区の五条大橋近くの歩道で、中国人の男性(37)が男に刃物で切り付けられました。
切りつけた男は、その場から立ち去りました。
男性は右肩付近などにけがをして意識はあるということです。
男性は中国からの観光客でツアー客らおよそ20人と歩道を歩ていたところ、
男と何らかのトラブルになり男性は男と面識はないと話しているいうことです。
警察は殺人未遂事件として、逃げた男の行方を捜査しています。
自衛隊の「顔」車両は“トルコ製いかが!?” コマツ撤退で国内開発× 決まらない後継選定に世界が熱視線
DSEI Japan 2025にトルコの装甲車メーカー2社が出展。コマツが撤退した装甲戦闘車両の後継選びをにらんだ動きと考えられます。日本には馴染みが薄く、一度は選から漏れたトルコ製車両ですが、今回は選ばれようとする気概も感じられました。
「仕切り直し」されたコマツ撤退後の後継車両選び
2025年5月21日から23日に千葉県の幕張メッセで開催された大規模な防衛・安全保障イベント「DSEI Japan 2025」に、トルコの装甲車メーカー「オトカ」と「ヌロルマキナ」が出展しました。
DSEI Japan はアジア太平洋地域をはじめとする世界各国から、軍や法執行機関などの要人が多数訪れるイベントです。オトカとヌロルマキナは日本での知名度こそ高くありませんが、両社の製品は開発国のトルコだけでなく、世界で広く採用されています。また両社は海外で開催されている防衛装備展示会にも参加していますので、DSEI Japanを世界各国に対する自社製品のアピールの場として選択したとしても、不思議なことではありません。
ただ、両社のDSEI Japan 2025への出展には、世界各国に対するアピールに加えて、陸上自衛隊の軽装甲機動車の後継選定コンペへの参入をにらんだ、防衛省・陸上自衛隊へのアピールという狙いもあったのではないかと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
軽装甲機動車は航空自衛隊の調達分を含めると2000両近くが生産された、自衛隊の「顔」あるいはワークホースとでも言うべき装甲車です。
これまで日本は、装甲戦闘車両は基本的に国内で開発してきましたので、順当に行けば軽装甲機動車の後継車両も国内開発が有力視されていましたが、同車の開発と生産を手がけてきた小松製作所が、装甲車両の新規開発・製造事業から撤退したため、国内開発が事実上困難となりました。
そこで防衛省は外国メーカーが開発した車両を導入する方針を定め、防衛装備庁は2022年3月にタレス・オーストラリアの「ハウケイ」(ホークアイ)と、スイスのモワーグの「イーグル」を最終候補に選定。試験車両を調達して試験を行っていました。しかし、それも仕切り直しとなった模様です。
試験品の調達にまで駒を進めた防衛装備品の選定が仕切り直されるのはあまり例がありません。防衛装備庁と陸上幕僚監部が理由を明確にしていないため、真意は筆者にもわかりませんが、ハウケイとイーグルは価格が高すぎて、大量調達が困難になったという話が漏れ伝わってきます。また、ハウケイは信頼性の低さを度々オーストラリア政府から指摘されていましたので、その点も不利な要素となったのかもしれません。
「トルコ」だから馴染み薄くてダメ? ならば…
仕切り直しとなった軽装甲機動車の後継選定は、企業から情報提供を募っている段階なので、オトカ、ヌロルマキナの両社ともDSEI Japan 2025の場で防衛省・陸上自衛隊への提案は明言していませんでしたが、高い関心を持っているのは間違いありません。自社とその製品を防衛省・陸上自衛隊に知って欲しいという意欲を示していました。
オトカが大型模型を展示した「コブラII」は、価格の安さと汎用性の高さが評価され、2025年5月の時点でトルコを含む25か国と国際連合に採用された、ベストセラー軽装甲車「コブラ」の後継車両です。
採用国の一つであるウクライナでは、ロシアとの戦いに「コブラII」が使用されていますので、防衛装備品の導入で重視される実戦での有用性証明、いわゆる「コンバットプルーフ」も十分にあると言えます。
一方のヌロルマキナは「NSM-L」と「ドラゴン」という2種類の四輪駆動軽装甲車の大型模型の展示を行っていました。
ヌロルマキナは2019年11月に開催されたDSEI Japan 2019にも出展しており、この時は、NMS-Lの原型であるNMSの実車を展示していました。その後、同社は軽装甲機動車の後継車両の選定コンペにNMSを提案し、その時は惜しくも選に漏れています。
NSMは軽装甲機動車の後継車両に要求されていた能力はすべて充たしていましたが、トルコ製の防衛装備品は世界的な評価は高いものの日本では馴染みが薄く、その点が不利な要素の一つとなったと言われています。
なお、DSEI Japan 2019にはトルコ本国のヌロルマキナとして参加していましたが、DSEI Japan 2025には同社のイギリス法人ヌロルマキナUKとして参加しています。これは事実上の準同盟国である同志国のイギリスを前面に出して、商戦を行う意図があるのではないかと考えられます。
ドラゴンはトルコ本国では、トルコ語で「龍」を意味する「エジデル」と呼ばれています。あまり日本人にはなじみのないトルコ語の名前ではなく、英語で「龍」を意味するドラゴンという商品名を付けたのも、少しでも日本人に馴染みを持ってもらいたいという戦略に拠るものと思われます。
コブラIIとNMS-L、ドラゴンの価格は不明ですが、ハウケイとイーグルに比べれば安価で、能力的にも陸上自衛隊の要求を充足できるものと思われます。この条件を充たせる車両は欧米以外でも開発・製造されていますので、オトカやヌロルマキナの他にも、これまで日本では馴染みの薄いメーカーが提案してくる可能性も高いと筆者は思います。
減税どころか、まさかの「消費税増税」の布石…テレビ・新聞が報じない自民・公明・立民「年金改革」の本当の狙い
※本稿は、須田慎一郎氏のYouTubeチャンネル「撮って出しニュース」を再編集したものです。
5月30日の衆議院本会議において、年金改革関連法案が自民・公明・立憲民主の賛成を得て、賛成多数で可決された。これにより、同法案は衆議院を通過することになった。
この年金改革関連法案は、賛否が大きくわかれる内容であることは間違いない。基礎年金は、40年間にわたって保険料を収めても受け取れるのは、月々約6万6000円。老後の生活資金としては、とても充分な額とは言えないだろう。しかも今後、「マクロ経済スライド(給付額を物価や賃金の上昇率よりも低く抑え、年金財政の負担を軽減する仕組み)」によって、受け取り額は減っていく。そのため、基礎年金部分を底上げする必要があるのだ。
もともと自民・公明の与党案としては、厚生年金の積立金の一部を基礎年金部分に充当し、基礎年金の底上げを図ることが柱とされていた。
しかし、この改革を実行すると、将来的には厚生年金の一部の受給者が、受給額が減額されてしまう可能性がある。これは直ちに起こるものではないが、将来的には確実に生じると見られる。
この点については、「流用」および「付け替え」にあたるとの批判が避けられなかった。7月に参議院選挙を控えていることから、厚生年金の積立部分を基礎年金に充当するという部分を法案から削除し、世論の批判や反発を避ける形で、形だけの年金改革関連法案を成立させようとした経緯がある。
しかしながら、立憲民主党はこの自公案に対し「あんのないアンパン」と批判し、内容の不十分さを問題視した。同党は自民・公明が取り除いた積立金を基礎年金に充当するプランを再度盛り込むよう要求した。すなわち「あんを入れ直せば賛成する」と持ち掛けたのである。
この立憲民主の要求は自公にとっては渡りに船だ。
同党の要求を受け入れれば法案が可決・成立する。結果として、自公はこの提案を受け入れ、再び「あんを詰め直した」形で法案を修正し、衆議院本会議において可決に至ったという経緯がある。
では、この一連の動きにおける狙いとは何であったのか。これこそが本日の論点である。
実は施策を進めていく過程で、衆議院本会議が開かれる前に、衆議院の厚生労働委員会が開催された。この委員会において、立憲民主党の「ミスター年金」こと長妻昭衆議院議員が石破茂首相に対して、「超党派による年金改革協議の場を設置すべきである」との働きかけを行った。
この提案に対して、石破茂首相はあくまでも慎重な姿勢を崩さず、「それは国会で決めるべき事柄である」と述べ、明確に受け入れる姿勢を見せなかった。しかしこれもやむを得ない反応だった。なぜなら答弁に立った石破首相は、あくまでも行政府のトップ。その石破首相が、国会まわりのことに口を挟むのは越権行為だからだ。しかし、「国会の場で議論してほしい」という立場をとることで、事実上それに同意する格好となったのである。
このやり取りは、次のステップへ向けての一つの仕掛けとも言える。なぜなら、現在の年金改革関連法案――衆議院を通過したもの――は極めて不十分な内容であり、将来の年金受給額が減る人々への対応や国庫負担分の手当がまったく決められていなかったからだ。
また、基礎年金部分への充当についても問題がある。基礎年金部分は国と民間で折半して拠出される仕組みであり、積立金の出所は民間であるが、その同額を国が負担する。そのため、将来的には最大で年間2兆円という国庫負担が生じると見込まれている。これは遠い将来の話ではあるが、間違いなく発生する支出である。
今後の展開を考えていく上で、かつて2012年、民主党政権時代に政権与党である民主党に加えて野党である自民・公明の三党によって「税と社会保障の一体改革」が合意された経緯を思い出す必要がある。この「一体改革」の本質とは何かという点が、ここで改めて問われているのである。
年金保険、健康保険、そして介護保険(のちに少子化対策も加わる)といった社会保障制度について、民間負担で足りない部分を消費税で賄うという基本方針が、「税と社会保障の一体改革」において明確に盛り込まれた。
この社会保障制度の拡充および安定のための財源として、消費税を充てることが三党合意の中で決定された。そして、これを受けて消費税は5%から10%へと段階的に引き上げられる流れとなった。この決定により、「社会保障制度の維持には消費税が財源となる」という枠組みが確立されたのである。
こうした背景のもとで、将来的に国庫負担が段階的に増加することは避けられない。一気に2兆円の支出が生じるわけではないが、確実に、そして着実に国庫負担は増していく。しかし、「この財源をどのように確保するのか」という重大な課題が先送りされたままとなっており、今後間違いなく重い政策課題が突きつけられることとなる。
長妻昭議員が求めた「年金改革協議の場を設けよ」という提案には、こうした意味が込められている。すなわち、増大する国庫負担に対してどのように財源を確保するのか、それが消費税によって賄われるという前提を踏まえ、自民・公明と立憲民主党が協議体を形成し、制度的にスムーズな運用を進めていこうとする狙いがあるのである。
このような重要な背景については、新聞やテレビといった報道機関が、もっと深く踏み込んで報じるべきだ。将来的に振り返ってみたとき、「自民・公明と立憲民主党が消費税増税に向けた第一歩を踏み出した」と位置付けられる出来事こそが、この協議の場の設置である。
過去の経緯を冷静に見れば、それは明白だ。
さらに踏み込んで言えば、立憲民主党内で、消費税減税を選挙公約に盛り込もうという気運が高まっていた時のこと。長妻昭議員はまだ党の最終的な方針が定まっていない段階で、かつて自らが会長を務めていた東京都連合会(立憲民主党の地方組織)の所属議員を一人ずつ呼び出し、「消費税減税に賛成するな」と釘を刺して回ったのである。
これは筆者の確認している限りでも、東京都連に所属する複数の国会議員に対して行われており、恐らくそれ以外の議員にも同様の働きかけがなされたと推察される。つまり、長妻議員は年金改革関連法案を巡る動きを見据えたうえで、明確な意志をもって消費税減税に反対していたと見ていい。
長妻氏は「ミスター年金」として知られる人物であり、年金制度を安定的に維持していくためには、国庫による財源支出が不可避であるという立場をとっているのだろう。過去の経緯から見れば、それを支える財源として「消費税増税以外に現実的な選択肢は存在しない」と判断しているわけである。
そのため、参議院選挙対策として減税を選挙公約に掲げることは誤った判断だという立場をとったのだ。そして、そうした考えに同調するかのように、野田佳彦代表は最終的に「一年度限りの消費税減税」という形で事態を収束させる判断を下したのである。
このようにして協議の場が設けられ、時間をかけて議論が進む中で、立憲民主党が消費税減税を主張する余地はなくなった。
このような国会でのやり取り――表面上は一見、三文芝居や田舎芝居のように見える場面もあったかもしれないが――その実、重要な政治的意図が込められている。
参議院選挙後、年金改革をめぐる協議体が正式に設置される可能性は極めて高い。もちろん、他の野党にも参加を呼びかけることにはなるだろうが、最終的には、自民、公明、立憲民主の三党が主導する形で、消費税増税の方針が具体化していくものと予想される。
そうした意味で、「年金増税大連立」とも言うべき動きが始まりつつあるといえる。立憲民主党がすぐさま連立政権に加わるかどうかは現時点ではまったく不明であるが、少なくとも年金改革に関しては、閣外協力という形で自民・公明と歩調を合わせる可能性は否定できない。
いずれにせよ、自民・公明・立憲民主の三党が消費税増税に向けて動き出していることは確かだ。これは参議院選挙前の現在進行中の極めて重要な政治的動向である。国民一人ひとりがこの状況を正しく理解し、次の参議院選挙における投票行動の参考とすることが求められている。
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(ジャーナリスト 須田 慎一郎)