自民党は11月に結党70年を迎える。安倍元首相が党内外で盤石な基盤を築いた「安倍1強」だった結党60年の2015年から状況は一変し、少数与党として難路の歩みが続く。石破首相(党総裁)ら党執行部は節目の年を迎え、党の立て直しを急ぐ構えだ。
自民は11月に結党70周年記念行事を開くことを検討している。森山幹事長は元日の年頭所感で、結党70年に触れ「大きな時代の転換点を迎える中、地域に根ざした真の国民政党として国民の不安に寄り添い、責任を果たしていかなければならない」と強調した。
自民は1955年11月15日、当時の自由党と日本民主党による「保守合同」で誕生した。そこから自民、社会両党が争った「55年体制」が確立し、各派閥が競い合いつつ、人事やカネを分け合う派閥政治を築き上げた。野党に転落した4年2か月を除き、長く政権与党として国家運営を主導してきた。
そうした伝統的な党の姿は昨年、大きく変容した。派閥の政治資金規正法違反事件を受け、当時の安倍派、岸田派など各派閥が相次いで解散を決めたためだ。野党が「政治とカネ」を巡る批判を強める中、10月の衆院選では大敗し、30年ぶりの少数与党に転落した。
その後の臨時国会でも規正法再改正を巡り、政党から議員個人に支給する政策活動費の全廃を含む野党案を「丸のみ」するなど、野党に翻弄(ほんろう)され続けた。長く「党内野党」だった首相は党内基盤が弱く、「石破カラー」は封印も余儀なくされている。
党是とする憲法改正に向けた足踏みも続く。首相は12月27日の読売新聞のインタビューで、「結党70年になるのに、なぜ実現しないのか。議論の頻度、熟度になお工夫の余地がある」と述べ、与野党間での議論を加速させることに意欲を示した。
だが、改憲に前向きな勢力は昨年の衆院選の結果、国会発議に必要な総定数の3分の2にあたる310議席を下回った。衆院憲法審査会長のポストも立憲民主党に明け渡し、実現に向けた道筋は全く見通せない状況だ。
今年は夏に東京都議選、参院選を控える「選挙イヤー」だ。加えて首相は昨年末の民放番組で、参院選の日程に合わせて衆院選を行う衆参同日選の可能性にも言及した。
首相は政策面で実績を残して党勢回復を図り、各選挙を勝ち抜きたい構えだ。首相は、党総裁としての年頭所感で「他党にも丁寧に意見を聞き、幅広い合意形成が図られるよう謙虚に取り組んでいく」と訴え、野党に対しても低姿勢を貫く考えをアピールした。